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2004年9月17日

大学界有志から大学設置・学校法人審議会への緊急要望書

首都大学東京の設置認可を急がないでください


文部科学省 大学設置・学校法人審議会 御中

貴審議会の大学新設などに関するご努力に対して敬意を表します。

さて、私たちは九月の貴審議会において首都大学東京の設置について審議されると聞いております。それに関しまして、私たち、国公私立大学の教職員有志は、この段階では設置を認可されないよう要望いたします。

以下に述べます要望の趣旨をご理解いただきまして、貴審議会では「首都大学東京」への認可につきまして、日本における大学の質を保つという貴審議会の使命を踏まえて、慎重な審議をしていただきたく、お願い申し上げます。

私たちは日本の現在の大学の現状と将来に関して関心を持っております。そして、大学の設置そのものについては関係者の間でさまざまな思惑や意見の相違、衝突があることは幾分かは承知しております。

しかしながら、昨年8月以来、東京都が都立大学改革において行使している行政権力は濫用の域に達しており、多くの大学関係者にとって看過できないものとなっています。貴審議会が今回首都大学東京の設置を認可し、行政権力による直接的な大学支配にお墨付きを与えることになれば、種々の荒廃が大学界に広がっていくことは不可避です。

この一年間、私たち大学関係者は、東京都立の4大学における尋常ならぬ事態に注視してきましたが、衆人環視の中で東京都は、都の方針に批判的な大多数の教員の意見を無視するにととまらず、行政権力を悪用して教員を屈伏さようとして来ました。そのような過程から出てきた「首都大学東京」設置案は、以前から行政と大学管理者の一部が手にしようと躍起になっていた組織方針を、すなわち討論の過程で起こってくる種々の異論を認めず、上意下達を貫徹する軍隊にも似た構造を目指しています。このような組織では大学は本来の機能を果し得ないことは、大学で教育と研究に携わったことがあるものにとっては自明なことです。このように、大学本来の機能を深く損う構造を根幹に据えた首都大学東京を無修正で認可することは、全国で進行している公立大学の法人化に同様の瑕疵を広めることになることが懸念されます。

ところで、文部科学省は、地方行政への干渉となることを懸念し首都大学東京には一切口出ししない方針のようですが、地方自治を尊重しつつも、憲法や教育基本法を無視する地方教育行政の逸脱を是正指導することは、中央政府の使命の根幹に位置付けられます。その使命を忘れないよう文部科学省に忠告することも、貴審議会の役割であることにご留意ください。

以上のような理由により、私たち、全国の国公私立大学教職員有志は、貴審議会が、首都大学東京設置案の種々の重大な瑕疵について実質的に吟味し、必要な修正を東京都に勧告するよう文部科学大臣に答申し、その瑕疵の除去のための準備期間を当事者に与えることにより、日本の大学の品質が留めどなく劣化することを防ぐ使命を誠意をもって果敢に果され、貴審議会の独立性と存在意義とを人々が知るようになることを切望します。

賛同者代表 栗山次郎(九州工業大学教授)

連署者名簿:連署者 277 名