==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
Date: Thu, 09 Mar 2000 13:06:36 +0900 Subject: [hiroba] 独法化問題シンポジウム報告 From: 大野 栄三To: hokudai-hiroba@melon.math.sci.hokudai.ac.jp 北大広場のみなさんへ 下記のシンポジウムに参加しました。ご参考までに、その内容を簡単に報告します。 ただし、私の主観的重みづけが入っていますので、その点はご了解ください。 日時:3月5日(日)午後1時〜5時 場所:学士会館(東京) テーマ:日本の学術・文化の充実を---国立大学の独立行政法人化問題を考える--- パネリスト 阿部謹也(共立女子大学学長、前一橋大学学長) 藤森研 (朝日新聞論説委員) 伊藤谷生(千葉大学理学部教授) 和田肇 (名古屋大学大学院法学研究科教授、全大教委員長) 参加者:全大教の発表で145名 1.全大教副委員長のあいさつ 文部省は昨年12月に決着と言っていたが、事態はそのように推移していない。 これまでの反対運動への感謝と、今後の運動展開へのお願い。 効率万能主義、経済市場主義のあらわれのひとつが、国立大学の独法化問題である。 このままでは、日本の学術・文化をひっくり返すことになりかねない。 2.山形大学学長からのメッセージ 地方国立大学の立場から。 国立大学の独法化の議論には、21世紀の学術・教育についての充分な議論がない。 地方国立大学は戦後、半世紀の間、重要な役割を担ってきた。地方の振興を考える なら、全国の文部省方針は役割の放棄である。 3.パネラーの発言 (1)阿部謹也 国立大学の独法化に対する反対運動は極めて低調である。大学として反対声明を出 したところは限られている。大学院重点化をしている大学からは反対声明がなかった のではないか。また、学生からの反対の声も聞こえない。反対しないのは、独法化に ついて知らないからではない。文部省の方針と通則法のちがいについては、今では説 明する必要もない。 (有馬文相と次のような会話があったそうです) 阿部「中期目標に達しない大学、できない大学はどうなるのか?」 有馬「そういう大学は国立大学に残ればよい」 阿部「そんなことができるのか?」 有馬「そのときには、25%の削減は受けないとだめだ」 しかし、その後、有馬文相は「独法化しても、25%削減を免れるかどうかわから ない」と発言している。法制局で法案をつくるとき、通則法と矛盾する文言をいれら れないだろう。 地方大学は、地域の人々がこの大学を残してほしいと望まないとだめだろう。東京 の大学はどうだろうか? 国民がこの問題に関心を示さないのはなぜか?自分の子どもが国立大に入学した後 のことには関心がない。入学までのこと。国立大での研究には興味・関心がない。 一橋大学学長の時、これまでの旧態然とした学問に入っていける学生は1割程度で あり、残りの8〜9割は何をして良いかわからず、4年間模索していると思われた。文 化とは人間と人間の関係からしたたり落ちてくる滴である。滴の研究に終始している 学者(大学の)が多い。人間関係にまで戻らなければ国民にはわからない。学者が農 民、漁師、・・・と学問、民主主義、自由について話し合えないとだめだ。 日本の大学、学問は、納税者に何が返せるのかを考えるべきである。この一言を言 いたくて、本日はパネラーとして参加した。 (2)伊藤谷生(A4、3ページのレジュメあり。全体の内容はそちらを参照) 理科系と独法化の問題を話したい。 通産、産業技術総合研究所(電総研等の工業技術院の研究所の独法化)では、管理 部門の人数が全体の30〜40%を占め、人事と研究が分離せず、一手に体制を取り仕切 ることができるような状態になっている。そこは、戦略企画本部と呼ばれて、ミッショ ンの選別、実行計画等を決定することになっている。 この10年間の大学改革である有馬路線は、今回の危機を深化したのではないか。 大学人として痛みは伴うが、そのあたりの実情を徹底的に分析する必要がある。 大学院生の量産、教授、助教授ポストを増やし、助手ポストを減らす等のやり方は、 若手ポストの激減になり、それをごまかすために任期制を導入した。このあたりの量 的分析が必要だろう。1991年に10大学体制の形成と有馬改革路線が始まる。ここから 大学院重点化路線へと変化した。91年ごろから、大学院生は急増し、助教授・教授の 教官数と事務職員の数が逆転(教官<事務→教官>事務)となっている。 海外のレビューアーも参加している東大地震研の外部評価報告では、研究支援職員 の不足が問題であると指摘されている。 (3)藤森研 外から、ふつの国民が道見ているのかを語りたい。基本的には阿部氏と同じ意見で ある。 独法化についての朝日新聞の社説では、その出自が胡散臭いこと、中期計画、目標 は国立大にはおかしいことを述べている。しかし、独法化ということ自体は、全くの ナンセンスとは言えない。国立大は、長いタイムスパンも含めた上で、何の役に立っ ているのか?そのことについて大学人は何を考えているのか?国民にはわからない。 世間は国立大の独法化について、なぜ冷たく無関心なのか?90年代半ば、戦後50年、 憲法50年で、市民社会は新しい社会へと、時代の流れの底層で入っているのではない かと思う。たとえば、オンブズマン、住民投票、市民立法等。これらの動きに賛成で ある。国民ひとりひとりが主体となろうとしている。一方、70年代以後、レーガン、 サッチャー、中曽根と規制緩和の流れが、表層にかぶさっている。 専門家集団が、市民ひとりひとりからの批判を受け始めている。たとえば、HIV問 題では、日本の医学会の体質が問われた。帝京大学の阿部教授は、善くも悪しくも旧 態とした権威であった。2,3人死ぬかもしれないが、私にまかせときなさいと言った。 しかし、時代の流れは権威が仕切るのではなく、インフォームドコンセントである。 権力が強引に国立大学に手を突っ込むことと、国民ひとりひとりの国立大学への批 判とはちがうのだが、その区別がはっきりとしない。 国民ひとりひとりには、国立大学とは教育機関であると映っている。 日本は、格差拡大に向かっている兆しがあるのではないかと危惧する。高等教育が このような格差拡大とどう関係するのか。学術・文化の価値はある。しかし、高等教 育は階層間のはしごか、階層固定の道具なのか。大学人はどう考えているのか。 小中高の教育内容は3割削減される。総合的学習が進む。自分は総合的学習に期待 するし、日教組でも総合的学習に積極的に取り組もうという先生が多くみられた。大 学はこのような動きにどう応えるのか。 また、学校歴をどう考えているのか。大学入試が問題である。 (4)和田肇 状態は動いている。現在、微妙な所に来ているのではないか。 私見として(全大教委員長としてではなく)、1)国公私大学の共存が重要。国の 高等教育に対するヴィジョンを明らかにし、私立大学への財政援助問題について、ど れだけ共通の議論ができるか。2)学生、助手、職員の大学自治への参加をどうする のか。3)この十数年、日本の大学の教養改革の結果、教養教育が解体した。法学に は教養が重要である。しかし、学生には一年生から専門を教えている。大学院重点化 で教官が、教養教育に熱心ではない。大学人の自己責任の問題。 独法化してもしなくても、国立大学には問題はある。全大教を中心に、新しい提案 をしていくべきである。 4.Q&A ・岡山大「大学審の後、なぜ独法化がでてきたのか」 阿部「教育は論じやすく、金がかからない。根本には財政問題があるだろう。21世 紀の教育について等を審議会などで発言すると座がしらける。 地方国立大は、この50年間にどういう歴史を持っているか。水野行政改革委員長 は「地方の駅弁大学」という言葉を使っている。彼は、地方国立大の現状を知らない。 多くの地方貢献を大学はしている。 生涯学習が大事であるが、現在の生涯学習は学問の余滴を国民に与えているのでは ないか。教養教育を公開して、生涯学習として組織すべきである。そのためには研究 者の意識改革、学問の再組織化が必要である。 地方大学でこのような話をすると、「自分たちは研究者だ」という反発を買うだろ う。しかし、県知事が国立大の概算要求と関係し、積極的に押す、県民が国立大に期 待している地域もある。 5.フロア発言 (1)全国大学院生協議会(一橋大院生) 大学院生でもシンポジウムを開催した。院生はハード、ソフトの両面で悪い状況に ある。ゼミは多人数化し、指導に問題がある。大学によってはM1で指導教官がいない ところもある。専修(社会人)コースの学生が増えているが、研究者養成コースと専 修コースで同じカリキュラムが実施されている。研究者養成コースの学生にとっては 迷惑なところもまる。無責任な大学院改革、重点化である。修士の学生数を増加して、 大学によっては、修士学生が博士学生の2倍のところもある。半分は博士課程に進め ないが、その後の進路を考えて重点化しているのか。就職がない。 (2)日教組高校教育部長 独法化には反対である。 小中高の教育と大学の接続について、1)大学入試の改善を要望する。中教審答申 は、センター試験を資格試験として使用することを認めていることは評価できるが、 全体として失望した。2)大学における教育・研究の機能について。研究が重要なの はわかるが、教育について弱かったのではないか。研究と教育が融合するというのが 理想だが、現状、教育が弱く、充実していない。これには教員養成も関係する。3) 大学改革と高校改革を連携していほしい。大学が3つのタイプに分割するのは、高校 の格差につながる。大学と高校の日常的連携が必要。 (3)東京芸大 (4)東京理科大職組 私立大学では独法化が話題になっていない。まわりの教官も独法化されるものと思っ ている。今後、組合で議論していこうとは考えている。私学助成は憲法違反だという 発言があるが、私学の一部には独法化を考えているところもあるといううわさがある。 研究予算増を狙ってのことと思われる。私学学校法の改正があって、私学は独法化か、 企業化の形態へとシフトするのだろうか。国立大の独法化問題が終わると、問題にな るのではないかと考えている。 (5)公立大学協会で仕事をする私立大学の院生 戦後、地方のつくった公立大学が、国立大学の学部へと昇格(?)していた。80年 代は転機であった。公立大学が増加して66校になった(将来は100校になるだろ う)。財政基盤が弱く赤字のところもあるが、さまざまな経営ノウハウを検討してい る。文部省は独法化に耐えられない国立大は地方へ移すことも考えているらしい。早 晩、地方移管が問題となるだろう。しかし、公立大は横並び意識が強く、自治体がしっ かりとした理念を持っているわけではない(広島では、3つの公立大を統合して独法 化することが打診されているし、東京では都立大の統合が言われている)。 (6)山形大の取り組み 独法化問題山形大学ネットワークの発足。23号のニュースを発行。メーリングリ ストでの議論。署名では、教官の90%以上が署名。国会議員に山形から国立大学が なくなっても良いのかと聞くと、それは困るという返事がかえってくる。 (7)和歌山大学からの要望 署名活動を延長し、全大教は署名をつづけるべきである。 (8)東大 東洋文化研究所 組合:図書館職員部会 学生、教官は増加しているが、図書館職員は減少。今の学生は充分なサービスを受 けていない。 (9)北海道教育大学札幌校 大内氏 教授会レベルでほとんど議論されない。今後、積極的に運動を展開していきたい。 (10)京大職組 大西 納税者への説明責任について。5〜6年前、外部点検評価、自己評価が問題となり、 全学で検討した。そのとき、学部から報告書を出したが、それに教官の書いた論文を 添付した。その主旨は、基本的に社会が社会科学を評価するのではなく、社会科学が 社会科学を評価するのだというものである。この意見をどう考えるか。 (11)国公労連 すでに独法化が決定している機関について。一般会計のシーリングがきついしばり となるだろう。個々の機関の性格によって、さまざまな議論があり、濃淡がある。今 後は労働条件の問題、労働協約に取り組むとともに、仕事、機関の役割を再確認した い。 6.パネリストからの一言 阿部、伊藤は省略 藤森「独法化の問題をきっかけにして、大学と市民のつながりが地方国立大でできて いるようだし、していくべきだ」 和田「1.大学人は好きなことをやれるということに甘んじていないだろうか。 2.全大教でいろんな人に参加してもらいシンポジウムを企画したい。 3.各職場で積極的に取り組んでもらいたい」 この後、閉会のあいさつがあり終了。 ******************************************** 北海道大学 教育学部 教育方法学講座 大野 栄三 TEL/FAX: 011-706-3100 e-mail: eohno@edu.hokudai.ac.jp http://www.hokudai.ac.jp/educat/teacher/ohno.html 060-0811 北海道札幌市北区北11条西7丁目 ********************************************