==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
論説紹介

「大学の民営化は学術研究の将来を危うくするか?」

桑原雅子(桃山学院大学教育研究所)・後藤邦夫(桃山学院大学文学部)

科学・社会・人間」72号p3−17
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全文
広い視野から国立大学の独立行政法人化を分析。「国立大学にいる国家公務員でなければ、基礎科学は維持できない等々」の意見に対し、『「国家」への依頼心を赤裸々に顕わすこのような昨今の論調を見聞するにおよんで、われわれはこの国の学問のコアの存立に対して、心寒い思いを隠すことはできない』と批判し、「最も警戒すべきことは、政府側の既得権擁護と大学側の既得権擁護とが癒着・合体した奇妙な体制が実現されることである。」と指摘し、次を提言している。

  1. 一時的な条件悪化を恐れず、国立大学は基本財産を持つ「独立法人」となっr、私学との差は、教育と研究の委託契約に基づく国の資金支出の多寡のみとすべきである。

  2. 高等教育費に関わる公的資金の支出は増額すべきである。ただし、多元的な評価に基づき異なる基準による複数の資金供給のチャンネルを公私を問わず整備すべきである。関連して、民間資金の投入や寄付を促進する制度改革が必要である。

  3. 組織体としての大学の構造は複雑である。その管理システム自体の研究開発が緊急の課題であり、成果を急がなければならない。

なお、第三者機関について、
『「大学評価・学位授与機構」(仮称)は従来の「学位授与機構」を受け継ぐ限り文部省に限りなく近い組織であり、その第三者性が担保されるとは考えられない。単一の組織に属する「審議会」の顔触れをどのように多様化しても、所管官庁の一部である「事務局」の実質的権限によって支配される事例をわれわれは見てきたのである。それを防ぐには以下の方法をとるほかはない。

  1. 複数の評価機関を設置し、それぞれが独立し、「固有の異なる評価基準」を事前に明示すること。

  2. 評価機関には公募による期限付きの専従の専門職を配置し、実質的な評価を行う体制を持つこと。これはNFS(全米科学財団)が多年にわたり実行していることである。いわゆるピア・レビューは 、繁忙な研究者による短期間のサイド・ビジネスとして行われるかぎり、知名度や大学名に基づく不完全な評価に終わるおそれが常につきまとう。

  3. 資金の出所についても可能なかぎり分散することが必要である。国費についてもそのような方針がとられるべきであるし、それ以外に、多くの価値観が異なる財団が十分に機能するような施策が進められなければならない。』