==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
美濃口 坦 様 はじめまして
美濃口 坦 様
はじめまして。北海道大学理学研究科(数学)の辻下 徹と申します。
「ドイツで大学はすべて「地方大学」」をとても興味深く読ませて頂きました。
国立大学が欧米式の法人格を持つことは意義の深いことであることには同感して
います。同僚の多くもそうだと思います。
ただ、いくつかの点を看過されている(かもしれない)ので、御意見を伺えれば
と思って筆をとりました。
(1)独立行政法人化の目的は、大学に予算使用の裁量権を拡大するなど、行政面で
の自主性を持たせるということが中心です。学術的には国策大学の性格を強めるもの
で、学問教育の自由は減らす政策になっています。
自民党文教部会の麻生委員会の最終報告(3月30日)
http://www.asahi-net.or.jp/~bh5t-ssk/net/nethefo766.html
http://www.asahi-net.or.jp/~bh5t-ssk/net/nethefo767.html
http://www.asahi-net.or.jp/~bh5t-ssk/net/nethefo768.html
で明言しているように、法人化の目的は大学に競争させるためなのです。競争できる
ためには、自主性が必要であろう、だから、法人化しよう、という論理です。
(2)文部省は独立行政法人化後も、行政指導を弱める積りはない、と幹部が公式の
講演で明言しています:
http://gauge.u-gakugei.ac.jp/cerd/cerd99/preface.htm
制度と運用は不可分で、これまで以上に強い権限(改廃を含む権限)を持つ主務省(
文部科学省)・監督省(総務省)の2重統制下で、国策大学の性格は強化されていき
ます。
文部省の下にある大学審議会等のこれまでの人選を見ても、
>メンバーの選定にあたっても大学関係者、中央官庁、更に地方自治体の声が
>均等に反映する仕組みをつくることもできるのではないのか。
というのは非現実的な希望的観測としか私には思えません。大学審議会でも、大学関
係者が入っていても国公私を越えた議論がなされているわけではなく、国立対私立と
いうレベルの意識で議論がなされています。e.g.
http://www.monbu.go.jp/singi/daigaku/00000243/
(3)大学を、コミュニティカレッジと研究大学に種別化するということも、日本の
人事停滞を更に悪化させることは明らかです:cf
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/00329-ninkisei.html
人事停滞を解消するには、任期制はたいした効果はなく、内部昇進を禁止する文部省
令を作れば十分なのです。そうすれば、大学内外の研究者に開かれた多数の実質的公
募が恒常的にできるようになります。
(ところで確認の質問ですが、上の文書ではドイツでは任期制がない、と書いてあま
したが、知りあいのドイツ人の教員は、ドイツは教授以外には皆任期制がある、と
言っていました。実際はどうなのでしょうか。)
(4)国立大学が国民の関心をここまで呼ばなくなってしまった現状(これは国立大
学の責任でもあります)では、「条件闘争」しても「無条件降伏」と同じです。一旦
25%の削減を飲んで、国民の信頼を得るまで努力しながら耐え忍ぶのが今国立大学
が取るべき道だ、と信じています。削減逃れのために独立行政法人化を飲もうとする
人が大学内部の有力者に少なからずいますが、それこそ、既得権権益を守るだけため
の愚行で、国民に決定的に見放されてしまうのだろう、と私は怖れています。
独立行政法人化後はニュージーランド
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/99b30-newzealand.html
のようになれば、取り返しがつかないのです。
以上が私が独立行政法人化を、欧米式の法人化とは正反対のものである、と信じて反
対している背景です。
客観的な見方のできるところにおられる美濃口さんから御意見を伺えれば、ありがた
いです。なお、
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/
に私の「主張」を簡単に書いてありますので、一度ご覧いただければ幸いです。
辻下 徹
北海道大学大学院理学研究科 教授 数学専攻
〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目
011-706-3823(office)
tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/
* 政・官ダイナミックスへの盲従が大学を滅ぼし日本を滅ぼす *