==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
Date: Tue, 16 May 2000 18:29:07 +0900
To: Toru Tsujishita
From: shoichi fujita
Subject: 大学憲章
 

大学憲章

我ら大学人は我が国の大学125年の歴史を振り返り、先人の教えと、大学の歩んで来た道を吟味し、輝かしい伝統と、業績、そして、忌まわしい過ちの全てを理解し、誇るべき伝統を未来に伝え、過ちを再びくり返すことの無いよう、ここに大学憲章を制定し、我らの基準・軌範とし、これを遵守することを誓うものである。

 大学とは、個人の尊厳を重んじ、真理と世界の平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造を目指す教育を行う高等教育機関である。

我が国の大学は、100年あまりの短い歴史のうちにも、高度な教育を国民に提供し、国の各方面の指導者を要請する傍ら、優れた研究成果をもって、学問研究のレベルを世界の水準までに高めることに多大な貢献をして来た。東洋の一小国から、今日、世界第二の大国と言われるまでに我が国が成長したのも大学教育に負う所が多い。

 一方、大学と行政との関係においては、明治初期に我が国に学校教育の制度が導入された時、西欧の大学の長い歴史の教訓として培われて来た学問の自由、学の独立、大学の自治の概念も紹介されたが、我が国では、この概念は政権に支持されるには至らず、政権によって教育が支配され、国家主義教育が大学をはじめ初等中等教育をも支配し、我が国を戦争へと導く精神的背景の形成手段として使用されてしまった苦い経験がある。戦後、これへの反省から、憲法で学問の自由が保証され、教育基本法にも学の独立の精神が唱われている。これらの精神に基づけば、大学における教育研究は、大学の良心に基づき、国民に対し直接に責任を負うものであり、普遍的真理の探究と教育と言うその使命から、その時々の政権に支配されるてしかるべき性質の物では無いといえる。これらはしかし、国の定めた法であり、大学人が自らの学問教育の基本理念を宣言したものでは無い。

 そこで我らは、大学の崇高な目的を達成するために、そして、再び過ちをくり返さないために、大学に不可欠な以下の諸条項をここに記す。これらは、大学の設置形態のいかんに関わらず大学に保証されなければならない権利と大学が守らなければならない義務として、大学人および国民が銘記すべきものである。

「教育研究の目的」

第1条 大学における教育研究は世界の平和と人類および地球上の生命の福祉に資するもので無くてはならない。

「教育と研究」

第2条 大学は人類が蓄積して来た英知に加え、その時代の最新の知識を教授し、考える力を育成し、文化の創造と発展に寄与する場である。この目的遂行のためには、大学が先端的研究の場であり、教員はその研究の遂行者でもあることが必要である。

「大学の社会的貢献」

第3条 大学と大学人は、大学における研究活動を通して知り得た知識、技術等を社会に還元する義務を持つ。大学人は地域および世界に向けて、知識の普及を計らなければならない。

「教育の中立」

第4条 国公立大学およびその教員は、特定の政党あるいは宗教を支持し、またはこれに反対するための政治あるいは宗教教育その他、政治的、宗教的活動をしてはならない。なお、この条文は特定の政治あるいは宗教団体に関する事柄を研究対象とすることを禁ずるものでは無い。

「学問の自由」

第5条 大学における学問の自由、真理探究の自由の権利は、日本国憲法第23条によって、保証されなければならない。

「学の独立」

第6条 大学における教育は、大学の良心に基づき国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものであり、何人も(行政と言えども)これを不当な支配のもとに置くことは出来ない。教育基本法第10条に規定されている所は大学教育にも適用され、遵守されるべきものである。

「大学の自治」

第7条 学問の自由と学の独立を担保するためには、大学の自治が保証されなければならない。学長をはじめとする教員人事の自主選考権、大学の管理運営権、大学の理念、目標、計画の自主決定権は大学構成員に帰属するものとする。

「大学人の義務」

第8条 前三条に規定した「学問の自由」、「学の独立」、「大学の自治」の学問教育における三権は、国家と大学、あるいは、権力と学問の関係の長い歴史の教訓の中から生まれた、大学が有すべき基本的な権利であり、義務でもある。この三権がおかされようとする時、大学人は全力を斗してこれを阻止しなければならない。