==> 国立大学独立行政法人化の諸問題

日本高等教育学会第3回大会


プログラム 辻下から準備委員会へ メーリングリスト参加者からのコメント 大磯学会員から辻下へ 辻下から大磯学会員へ

プログラム

2000年5月20日(土)〜21日(日) 桜美林大学 5月20日(土) 9:15〜 受 付 10:00〜12:00 自由研究1   ・高等教育財政1   ・教育課程とその改善1   ・大学評価   ・高等学校と大学1 13:00〜15:00 自由研究2   ・高等教育財政2   ・授業研究   ・大学院   ・学習/意識・意欲1   ・高等学校と大学2 15:10〜17:40 課題研究1・2  1.日本型プロフェッショナル・スクールは可能か  2.大学の設置形態:国立大学の法人化をめぐって 18:00〜20:00 懇親会           (学内食堂にて) 5月21日(日) 9:30〜 受 付 10:00〜12:00 自由研究3   ・高等教育政策   ・教育課程とその改善2   ・学習/意識・意欲2   ・自己評価と改革 13:00〜13:30 総 会 13:40〜16:10 公開シンポジウム 大学改革とリーダーシップ  シンポジスト;   國井利泰 (法政大学教授、前会津大学学長)   野田一夫 (宮城大学学長、前多摩大学学長)   絹川 正吉(国際基督教大学学長)  司会:佐藤東洋士 (桜美林大学学長)  指定討論者:天野郁夫 (学会長、国立学校財務センター教授) ●参加費: 大会参加費 (当日)¥4,000 (事前)¥3,500        懇親会費 (当日)¥5,000 (事前)¥4,500 *21日(日)午後の公開シンポジウムは、無料でご参加いただけます。 〒194-0294 東京都町田市常盤町3758 桜美林大学 大学教育研究所内 日本高等教育学会第3回大会準備委員会 TEL: 042-797-2661 (内線 3508) FAX: 042-797-8633         E-mail: herd@obirin.ac.jp

辻下から準備委員会へ

Date: Fri, 5 May 2000 11:52:50 +0900
To:   "日本高等教育学会第3回大会準備委員会" 
From: Toru Tsujishita
Subject: [he-forum 868] 日本高等教育学会第3回大会への期待
Cc: he-forum@ml.asahi-net.or.jp, reform@ed.niigata-u.ac.jp

日本高等教育学会第3回大会準備委員会 殿

先日「高等教育フォーラム」メーリングリスト[he-forum 844] で

> 日本高等教育学会第3回大会
> 2000年5月20日(土)〜21日(日) 桜美林大学

のプログラムが紹介されました。

私は国立大学の独立行政法人化について強い危惧を抱いており、5月20日(土)の

>15:10〜17:40 課題研究1・2
>  2.大学の設置形態:国立大学の法人化をめぐって

というセクションに大きな期待を寄せています(遠隔地にて参加はできませんが)。

しかし、素人の私に理解できないのは、日本の高等教育体制に「世紀に一度あるかな
いか」と言われるほどの変革である国立大学法人化が政官財主導によって間もなく実現
しかねない今、なぜ、高等教育の専門家が多く集まるところでのメインイベント(
21日13:40〜16:10の公開シンポジウム)のテーマが「大学改革とリーダーシップ」
のような漠然とした(見方によれば国立大学法人化を前提としたような)テーマなのか、
という点です。

日本高等教育学会は、日本の大学制度が現実にどう変化していこうとしているのかその
未来には関心がないのでしょうか。大学は単に研究対象でしかないのでしょうか。<日
本の高等教育体制が国立大学の法人化でどのよう衰退していったか>といったテーマで
著作になるくらい明確に分析できるような時が来るまでは、国立大学の法人化などは学
問的な関心事にならないのでしょうか。

専門家なればこそ単純な結論は出せない、ということも有りうることは十分理解でき
ますが、専門家には素人に見えない種々の問題点がもっと詳細に見えているのではない
でしょうか。そして、例えば高等教育全体を委縮させる危険性など極めて大きいと判断
された場合に、それが表明されれば、専門家から発せられた警告として、政策立案者は
無視することはできず、その危険性を回避する可能性も高まるはずです。大学が病気に
なったあとにそれを分析するのではなく、「予防」にも力を割いていただけないもので
しょうか。

単純な結論はないとしても多くの高等教育研究者の方々がそれぞれ思うところを表明を
して頂きたいと強く祈願しています。同僚の多くもそれを期待しています。

高等教育について学問的に考察する余裕のない大学関係者・政治家・官僚・財界・国民
向けに、この問題の専門家たりうる研究者の組織の一つである日本高等教育学会から、
国立大学法人化についての学術的視点からの議論・発言があることを期待しております。
そして様々な場で、高等教育に携る多くの大学教員の素朴な疑問に応え、開いた議論を
展開して頂ければ、と願っています。

辻下 徹
北海道大学大学院理学研究科数学専攻

メーリングリスト参加者からのコメント

『「高等教育学会」は半官半民のかたちでできた「学会」である。教育関係では、こ
のような行政関係者と大学研究者が協力して学会を作る例は、初等中等教育行政にか
かわってすでに前例がある。研究者は行政の情報が手に入り、行政官は学会理事にな
り退職後私立大学教授あるいは「学識経験者」として審議会委員となる。通常の学会
でイメージする専門家集団と見るべきではない。』

大磯学会員から辻下へ

Date: Sat, 06 May 2000 00:01:46 +0900
From: Oiso
Subject: [reform:02771] 日本高等教育学会会員から辻下徹氏へ
To: reform@ed.niigata-u.ac.jp

このMLで初めて発言します。私は日本高等教育学会の会員ですが、学会は基
本的に中立であり、政治的な目的を追求する場ではないと考えております。
 国公立大学にも独立法人化を支持する教員が少なくないと思いますし、そ
のプラスマイナスについて議論することは必要だと思います。しかし、初め
からネガティブな結論を強く示唆しながら、学会をあらかじめ中傷するよう
な公開質問状を流すという行為は、学問を否定することと同じではないで
しょうか? 

                                     大礒正美(Oiso, Masayoshi)
                                     静岡県立大学国際関係学部教授

辻下から大磯学会員へ

Date: Sat, 6 May 2000 10:29:51 +0900
To: reform@ed.niigata-u.ac.jp
From: Toru Tsujishita
Subject: [he-forum 870] Re: 日本高等教育学会会員から辻下徹氏へ[reform:02771]
Cc: he-forum@ml.asahi-net.or.jp, herd@obirin.ac.jp

大礒正美  様

ご発言ありがとうございます。

いくつか誤解されているようですので、返事の形式で補足させて頂きます。

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大礒> 学会は基本的に中立であり、政治的な目的を追求する場ではないと考えております。

もちろんそうでなければなりません。だからこそ、政治的意図を排除し高等教育その
ものにとっての影響という視点だけで国立大学の独立行政法人化を専門家が分析した
とき、どのような点が論点になり、どのような議論があるのか、それが明確になるこ
とに期待があるのです。

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大礒> 国公立大学にも独立法人化を支持する教員が少なくないと思いますし、
大礒> のプラスマイナスについて議論することは必要だと思います。

状況を誤認識されていると思います。

独立行政法人化を支持する国立大学教員はいないと思います。独立行政法人通則法に
基づく独立行政法人化は、通則法の内容を知った人は皆反対していますし、<支持派>
(正確には条件闘争派)も、特例措置の内容次第というだけで、正論に基づいて法人化
を支持しているわけではありません。(なお、公立大学協会も大学を独立行政法人化す
ること自身の意味を分析し、懸念を表明しています: 公立大学協会 公立大学のあり方検
討会報告『分権時代の公立大学』2000年3月)

国立大学独立行政法人化の案が浮上した平成9年から2年間、文部省も含め、高等教
育・学術関係者全体が一致して反対してきました。正論では(通則法の骨格が変わら
ない以上特例措置をいくら付加しても)独立行政法人化が有害無益であることは自明
なことだ、と私は思います。大学・学部・学科・教員のあらゆるレベルで安定性を奪
って、評価法が後でわかるゼロサムゲーム(どころかサバイバルゲーム)をさせるこ
とは、高等教育・学術研究そのものへのプラスマイナスを考慮すれば(生き残る者に
とっても)マイナスであることは明らかではないかと思います。とくに、多くの教員
・研究者が非常勤になることにより、一時的には種々の効果が上がっても、長期的に
は身分が不安定な高等教育・学術研究畑にはそもそも若い人が来なくなり日本は知的
弱小国になることはかなり確実と思われます。3月末の自民党文教部会の提言が実現
し名前だけ国立大学法人になったことろでこのマイナスは少しも変わりません。

にもかかわらず何故に陰で<支持>する人達がいるのか。理由は様々で、それ自身が
国立大学が置かれている困窮の多様性と国立大学が抱えている諸問題を浮き彫りにし
ています。(大きな大学では)25%一律定員削減(この数字自身の根拠は曖昧で、
時には30%と脅されることもある)よりはましだ(しかし独立行政法人化後は定員
という概念がなくなり全体では50%削減になるかもしれない)、あるいは、(多額
の研究費を常望める分野では)研究費で人が雇えるようになる、あるいは、(学閥が
人事権を握っていることに業を煮やしている人は)外から暴力的に改革されない限り
大学は変わらない、あるいは、(経営的才覚のある人は)種々の規制がなくなり自由
に活動ができるようになりそうだ、あるいは(行政指導に苦しむ大学幹部は)これで
行政からの縛りがゆるまるのではないか、等々。

その全体の背景には<政治決着>の絶対視があります。要するに、独立行政法人化は
非に決まっているが独立行政法人化が不可避ならば現実的に次善を考えなければ、と
いうのが「独立行政法人化支持」の内容です。不可避ならばその中で良いものを掴む
しかない、という現実的な態度のことです(この態度自身が不可避性を支えている
ことは明らかです)。こういった現実的視点からのプラスマイナスの局所的議論が高
等教育学会とは関係がないことは、おっしゃるとおりだと思います。


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大礒> 初めからネガティブな結論を強く示唆しながら、学会をあらかじめ中傷するよう
大礒> な公開質問状を流すという行為は、学問を否定することと同じではないでしょうか?

国立大学教員の大半は、教育・研究・(特に<大学改革>により膨れ上がっている)大学
運営等の種々の活動で手いっぱいで、法人化問題についての判断をより適切にするのに必
要な、大学という存在についての全体像を形成するだけの時間的・精神的な余裕が絶対的
に不足していると痛感しています。多くの大学教員のこういった思いを書いた積りです。

日本の高等教育の1/4を担う部分が教育・学問とは何の関係もない論理で大きく変え
られようとしている状況で、その変革が高等教育全体にとって何かプラスがあるのかど
うか、大学を日頃研究対象としている研究者集団が学問的立場から冷静に分析しようと
しないことこそ、学問(の存在意義)を否定することではないのでしょうか。

以上のように、批判する意図はありますが、中傷する意図はありません。批判に対して
なんらかの実質的応答があることを期待して出したものです。私のメールを「中傷」と
言われること自身、高等教育学会を中傷していることにならないでしょうか。

辻下 徹
北海道大学大学院理学研究科数学専攻