05/26 16:24 共: 自民の了承得て難局打開 大学に厳しい提言
共同通信ニュース速報
中曽根弘文文相が国立大の法人化を表明する過程には「大学の特
殊性に配慮して特例措置を取る」との文部省方針に対し、自民党の
了承を得るという高いハードルがあった。
法人化に反対の声が強い国立大側と、特例措置に抵抗感を示す政
府の行政改革推進本部との板挟みの形になった文部省は、昨秋「ま
ず与党から文部省方針と軌を一にする結論を得て、これをてこに法
人化を進める」という戦略を立て、自民党文教部会に働き掛けた。
同部会は当初、文部省方針に近い内容の提言案をまとめたが、同
党の行政改革推進本部は修正を要求。五月上旬にようやくまとまっ
た提言は、特例は認めたものの、大学にはかなり厳しい内容となっ
た。
自民党内で法人化問題が初めて取り上げられたのは今年一月。文
教部会の研究グループ(座長・麻生太郎元経企庁長官)の主要メン
バーと、ふだん教育とは縁の薄い行革や財政関係の議員ら約十人が
、議員会館に近いホテルの一室に集まり、問題点を洗い出す非公式
の勉強会を始めた。
「大学ごとに法人化する必要があるのか。統合を進める必要があ
る」「大学ごとに法人化した場合、経理や人事を独立してやるのは
無理だから一くくりにして法人化すべきだ」。さまざまな角度から
意見が出た。
文教部会のメンバーには、最初から行革関係者を巻き込んで勉強
会を進めることで、その後の調整をスムーズに進めたいという思惑
があった。
三月末、文教部会は「独立行政法人通則法をそのまま国立大学に
適用することは不可能」「学長人事は大学の主体性を尊重」など、
大学に配慮した提言案をまとめた。しかし、思惑通りにはいかず、
党の行革推進本部側からは「このままでは認められない」と異論が
相次いだ。
結局、学長人事については「推薦委員会を設け、納税者を参加さ
せるなど選考方法の適正化を図る」との一文を追加。大学の存廃に
も「国費で運営する国立大の運営や組織の在り方に国が相当関与す
ることは当然。特に大学の存廃などには、国が大きな責任を負う」
と踏み込んだ。
同党の太田誠一行革推進本部事務局長(前総務庁長官)は「国立
大は税金を使う以上、国民の共有財産であるべきだが、今の大学に
はそういう認識が欠けている」と指摘。「今後、文部省が勝手に法
案をつくっていいというわけではない。こうした視点を取り入れる
よう注文を付けていく」としている。
[he-forum 937] 朝日新聞05/27
『朝日新聞』2000年5月27日付
国立大の法人化表明
10年めど移行方針 公立大も視野に 文部省
文部省は二十六日、東京都内に国立大学の学長らを招集し、九十九すべての
国立大と大学共同利用機関を国から独立した行政法人とする方針を正式に表明
した。早ければ再来年の通常国会でで法人化のための法案を成立させ、「国立
大学法人」などの名称で十年程度のうちに移行を完了させたい考えだ。さらに
文部省は、全国に七十二校ある公立大学についても「国立大に準じた対応を検
討する」とし、設置者である自治体から離れて法人化できる方向で制度を見直
す考えを新たに明らかにした。国立大に加えて公立大も法人化の見通しが出て
きたことで、大学の「護送船団」方式は崩れ、競争と淘汰の時代に入るのは必
至の状況となった。 (2面に解説)
学長らの会議で中曽根弘文文相は「法人化すれば国の規制が緩和され、自主
性が大幅に拡充する」と強調した。文部省は近く有識者による会議を置き、具
体的なシステムづくりに入る。大学の自治を配慮した法律もつくるとしている。
「公立大の法人化」は、活性化の方策として浮上した。公立大は自治体財政
に支えられているものの、独自の資金集めがしづらく、予算の使い道も融通が
利かない欠点がある。文部省は自治省などと協議するが、省内には▽国立大に
ならい、新法を作って独立行政法人のような法人格を与える▽自治体出資の
「公社」をつくって運営する方式をとる▽地方自治法などを改正し、設置者は
自治体のままで運営の自由度を増す「実質的な法人化」を目指す―などの案が
ある。
国立大法人化
「弱肉強食」防ぐ必要
予算規模 最低限の保証不可欠
(解説)「国立大学に法人格を与える」という考え方は、実は四十年も前から
大学関係者にあった。それはとりもなおさず、今の制度では、国立大は文部省
の一機関でしかないため、「組織の改組もままならない」といった理由からだ。
しかし、政府が検討してきた法人化案は、こうした思いをくんだものではな
い。もともとは、政府が「二〇一〇年度までに国の直轄機関の人員を二五%削
減する」との方針を掲げたことに始まっており、数合わせの手段として、約十
二万五千人の教職員をもつ国立大に手をつけようとした経緯がある。
文部省は、自民党との交渉の中で「大学の事情に配慮した法律をつくる」と
いう約束を取り付けたため、法人化を最終決定したという。学長人事などで大
学の自主判断を優先できる見通しになり、一応は最低限の自治が確保できると
判断した、としている。
文部省は公立大についても法人化を検討する考えだが、法人格を与えれば、
「高待遇で実力のある研究者を招く」「寄付金や企業からの受託研究費を直接
大学の収入にする」といったことが可能になる。有力大学には「飛躍の好機」
ととらえるところも少なくないだろう。
ただし、法人化に際しては、「弱肉強食」の環境にしないことが強く求めら
れる。一口に国立大学といっても、陣容や環境は千差万別だ。地方大学や教員
養成系などの小規模大学には、「有力大学と同じ尺度で評価されたら、とても
もたない」「予算配分が激減し、立ちゆかなくなる」という不安が強い。全体
をバランスよく発展させるには、少なくとも現状の予算規模は各大学、各分野
に「最低ライン」として保証することが絶対条件だ。その上で、自由競争によっ
て上積みして獲得できる予算を増やす必要がある。
文部省が想定する「全国立大学の法人化」にも再考を求めたい。個々の大学
の意見に耳を傾け、現在の形態で残りたいという要望があれば、受け入れをた
めらうべきではないだろう。
(社会部・村上 宣雄)
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[he-forum 938] 東京新聞05/27
『東京新聞』2000年5月27日付
国立大独法化を正式表明
文相 2003年度から順次移行へ
中曽根弘文文相は二十六日、東京都港区で開かれた国立大学・大学共同利用
機関長会議で、国立大学を独立行政法人化させる方針を正式に表明した。来月
にも国立大や財界の代表を集めた調査検討会議をスタートさせ、独法化に向け
た詰めの作業を進める。地方大学を中心に反対する大学もあるが、国立大学協
会は検討作業に協力する方向で動いており、全国立大学の法人化がこれで固まっ
た。既に独法化に向けて学内の検討作業を始めた大学もあり、早ければ二〇〇
三(平成十五)年度から順次独法化移行が始まる見通しだ。
(解説3面に)
中曽根文相は、独法化が持ち上がった発端やこれまでの経緯、さらには法人
化の利点などを説明。「独立行政法人制度の下で(中略)国立大学を独法化する
方向で、法令面での措置や運用面での対応など(中略)具体的な検討に速やかに
着手したい」と大学に合わせた特例法などの形で独法化することを明言した。
公立大学についても独法化を検討することを明らかにし、国立大と公立で統
合する可能性を示唆した。
今後の具体的な検討については、国大協会長経験者らによる懇談会の下に調
査検討会議を設置し、二〇〇一(平成十三)年度中に報告を求める方針を明らか
にした。
検討課題には(1)組織運営のあり方や経営面での体制強化策(2)中期目標・中
期計画・評価の内容や方法(3)学長を含む教員人事や事務局人事のあり方(4)国
からの運営費交付金の支給方法―などを挙げた。
一部大学を国立のまま残すことは「全大学が移行するのが筋」「反対だから
ある大学が残ることはできない」と否定した。
国大協会長の蓮実重彦東大学長は「私ども国大協の多くの人が検討会議に参
加する覚悟を持っている」と話し、今後は同省と協力して作業を進める意向を
表明した。
国立大の独法化は昨年四月の閣議決定で「大学の自主性を尊重しつつ、大学
改革の一環として検討し、二〇〇三年までに結論を得る」とされた。
しかし、独法化することで二〇〇一年から始まる国家公務員の二五%定数削
減を一部免れる可能性が浮上したため、文部省は早い段階で独法化移行を決定
できるよう検討を急いできた。
昨年九月には、独法化する場合に必要な条件を列挙した「検討の方向」を提
示したが、今月になって最大与党の自民党がその線に沿った提言をまとめたこ
とから、正式に独法化への移行を明確にした。
国立大独法化 大学選別時代の幕開け
(解説)
文部省が国立大学を独立行政法人化させる方針を正式に表明した。地方を中
心として依然として反対する大学は少なくないが、これで、国立大学が設置形
態を変えることはほぼ確定したといえる。
先進国の大学のうち、法人格を持たないケースはむしろまれだ。文部行政の
一機関のままでは、自律的な運営がままならないことも事実で、法人化そのも
のはこれまでも多くの大学人が求めてきたことだった。
ところが、それが行政改革に端を発したことが問題を複雑にしてしまった。
行政改革は、基本的に行政組織の効率化、減量化を図るためのものだ。独立
"行政"法人は、そのために編み出された手法だった。
登記所や造幣・郵便局を想定してつくられたため、独立行政法人の枠組みを
示す通則法には、中期目標を所管大臣が指示することなど「大学の自治」とまっ
たく相いれない部分がある。
このため同省は昨年、大学側の意見を取り入れた「検討の方向」を発表。通
則法は一部を修正すべきだとする考えを示した。この日の中曽根弘文文相の説
明も基本的にその路線を踏襲したものだが、行政改革本部を含めた自民党のお
墨付きを得ている点で、より確実なものになった。
国立大学協会の蓮実重彦会長(東京大学長)はいまだに独法化の是非を表明し
ていないが、今回の説明を「一定の評価を与えられる」と好意的にとらえた。
今後は独法化像を詰めるための検討会議に国大協からも加わり、影響力を行使
していくことになるだろう。
大学改革の流れは、自主・自律性を高める代わりに、競争を増す方向で進ん
でいる。少子化も進み、特徴のない大学は学生にそっぽを向かれることが予想
される。現に各大学は危機感を強め、統合や連携の動きを強めている。独法化
は、国立大学選別の時代の幕開けといえるかもしれない。
(社会部・加古 陽治)
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[he-forum 939] 読売新聞社説05/27
『読売新聞』2000年5月27日付社説
◆法人化を大学改革に生かせ◆
国立大学を独立行政法人化することが本決まりとなった。文部省が制度の具
体的検討を始めるが、真に大学改革につながる制度となるかどうか、課題は多
い。
独立行政法人は、民営化まではできない国の業務を、外部化することで効率
的、効果的に遂行することを目的に構想された。しかし、自由な教育研究活動
を目的とする大学が、経済的な側面からだけ規定されるのは言うまでもなく適
切ではない。
二十六日開かれた国立大学長会議で、文相は、独立行政法人の一般的な形を
規定した通則法との間を調整する特例法を設ける考えを示した。これによって
他のいずれの独立行政法人とも違う、大学の特性を生かした独自の制度が可能
になるという。
しかし、現時点ではその具体的な姿がまったく見えて来ない。多くの国立大
学関係者が不安を抱いているのは当然だろう。
例えば予算執行について文部省は、使途を特定しない国からの運営費交付金
と、教育研究活動の評価を反映させた傾斜配分があり、柔軟さが増すと説明し
ている。しかし、交付金と傾斜配分の比率はどうなるのかについては何も決まっ
ていない。
授業料についても現時点でははっきりしない。仮に完全に自由化されたら、
高くても学生が集まる大学と安くしなければ集まらない大学など、大学間に格
差が生じ、それが悪循環を招く可能性もある。
こうした懸念は特に地方の国立大学に強い。現状では産業界などからの支援
も少ない地方大学が、一気に中央の大学と対等の立場で競争することには無理
があるとする主張にはそれなりの説得力がある。
全国に均等に配置された国立大学が、これまで地域の教育、文化、産業の基
盤を支えてきたのは間違いない。地方分権の流れからも今後重要性を増す地方
大学への一定の配慮は必要だ。授業料に国がある程度関与するのもやむを得な
いだろう。
学長人事がどうなるかについても各大学の関心が高い。自民党が学長選考の
見直しを打ち出していることもあって、大学の自主性が阻害されると受け止め
る向きもあるようだが、これは間違いだ。
法人化されれば、教員の給与は大学ごとに労使協約で決める。組織改革など
も基本的には大学の裁量に任される。学長にはそれらを混乱なくこなしていく
強力なリーダーシップが求められることになる。
学内力学などが優先し、人気投票のようになっているこれまでの選挙を見直
すのは当然だ。大学の経営能力という観点から、学内外の幅広い層を集めて適
任者を選ぶ仕組みを考える必要がある。
これら新制度の詳細は、識者などによる調査検討会議を設け、来年度中に取
りまとめるという。大学の活性化のため、学生そして国民のため、という基本
を忘れずに、いい制度を立ち上げてほしい。
少子化の進行で、大学が淘汰(とうた)される時代は近い。実際に統廃合の
動きも出始めている。国公私立大学の配置はこの先どうあるべきなのか。国立
大学の独立行政法人化を機に、その論議も始める必要がある。
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[he-forum 941] 毎日新聞05/27
独立行政法人化 文相が正式表明
99国立大学
中曽根弘文文相は26日、東京都内で開いた「国立大学長・大学共同利用機関
長等会議」で、全国の99国立大学を、大学の自治や研究活動などに配慮した独
立行政法人にする方針を公式に表明した。文部省は6月中にも、国立大学関係
者や公私立大、経済界、識者など幅広い分野のメンバーによる調査検討会議を
設け、法人化について制度や法の具体的な検討に入る。独立行政法人化に反対
してきた国立大学協会の蓮實重彦・東京大学長は会議後の会見で「(内容の一
部に)私としては一定の評価はし得る」と述べたが、協会としての態度の表明
は保留した。
(29面に解説)
会議で中曽根文相は経緯を説明したうえで「大学の特性に配慮しつつ、国立
大学を独立行政法人化する方向で、法令面での措置や運用面での対応などにつ
いて具体的な検討に速やかに着手したい」と述べた。
【澤 圭一郎】
(解説)
国立大の独立法人化
"地域格差"懸念も 地方「財源配分が不透明」
文部省が26日に公式表明した国立大の独立行政法人化は、1997年の行政改革
会議の報告が発端だが、大学改革よりも「行革」の視点が出発点だったことか
ら問題がこじれてきた。
国立大学協会(国大協)は「通則法(独立行政法人に関する通常の規定)を適用
した独法化は反対」の姿勢を示してきたが、この日の会見で蓮実重彦会長(東
京大学長)は特例法など国大協側の主張の一部が盛られたことで、一定の理解
を示した。しかし、会議の質疑で、地方の国立大学から反発する意見も出た。
国立大が独法化されれば、国直轄という制約から解放され、大学の裁量権が
高まる。国の交付金の使い道なども大学に任されるなど組織の自由度が増し、
活性化も期待できるといわれる。だが、都市部の規模の大きい大学と地方大学
との格差を懸念する声もある。
地方の国立大や業績が見えにくい基礎研究の分野にかかわる人が不安になる
理由がそこにある。今回、文部省は「独法化になっても独立採算制ではなく、
国の交付金など財源措置があり、分野を問わずバランスのとれた教育研究環境
の整備ができる」と明言した。しかし、地方大学には「大学ごとの配分が不透
明」「将来的にどうなるか分からない」という不安が残る。
今回の方針決定で、国立大同士や国立大と公立大の統合も現実味を帯びてき
た。一方で、私立大関係者からは「国が金を出し続け、公務員の身分を維持す
るなら、何のための独法化か」と不満の声も上がっている。
【澤 圭一郎】
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[he-forum 942] 日本経済新聞05/27
『日本経済新聞』2000年5月27日付
国立大法人化 来年度中に具体像
文相が方針 自主性配慮、特例法で
中曽根弘文文相は二十六日、国立大学を国の行政組織から分離し、法人化す
る方針を正式表明した。国立大以外の法人は、もっぱら事務の"アウトソーシ
ング"を目的とした「独立行政法人通則法」によって組織や運営が規定される
が、同法を直接適用せずに、特例法などを制定して大学の自主性を確保する。
文部省は近く関係者や有識者で構成する調査検討会議を設置。二〇〇一年度中
に制度の具体像をまとめる。
公立大の適用も検討
同省は法制面を整備した上で二〇〇三年度以降、すべての国立大を独立行政
法人に移行させたい考え。明治以来約百二十年続いた国立大制度は大きな転換
点を迎える。
文相はまた、公立大にも法人格を与えることを検討する意向を表明。今後、
設置者が異なる国・公立大を統合する動きも各地で加速しそうだ。
同日開いた国立大学長会議で文相は、「国立大が法人格を持たず、権利義務
の主体となり得ない以上、裁量権は制約される」と述べ、行政改革の視点でな
く、大学の自主性や多様化を促す意味で法人化を推進すべきだと強調した。
一方で、「通則法をそのまま適用した場合、大学の主体性が損なわれる恐れ
がある」と述べ、教育、研究面で大学の裁量を確保する特例措置を、通則法と
は別の法律で規定する方針を表明した。
独立行政法人の共通規範を定めた通則法は、法人の役員は主務大臣が任命▽
大臣が法人の目標を策定▽外部機関が法人の業績評価を行う――ことなどが柱。
文相は、このうち(1)学長、教員人事(2)教育研究の目標・計画の策定(3)業績
評価(4)評議会、教授会などの運営――に関して独自の制度を法律で手当てす
べきだと述べた。
国立大学協会の蓮実重彦会長(東大学長)は同日の記者会見で、「一定の評価
ができる。話し合いのテーブルにつく用意はある」と述べた。
地方大は切り捨て警戒
国立大法人化をめぐり、文相は二十六日、法人化のメリットを強調して各大
学に理解を求めたが、これを額面通りに受け止めた大学人は少ないようだ。
九州のある国立大の学長はこの日、「地方では産学協同研究を行っても(採
算面で)大学の持ち出しになるケースが多い。(法人化は)地方大学の切り捨て
につながる」と訴えた。
これに対し文部省は「法人化は独立採算制ではない。今までの予算に応じた
運営費交付金が手当てされ、バランスの取れた教育研究の環境が整備できる」
と説明した。しかし赤字国債の増発で危機的な国の財政を考えれば、先に自民
党文教部会の提言に盛り込まれた「大学の再編、統合は国の責任で行い、選別
と淘汰(とうた)も避けられない」との文言がより現実味を帯びるのも確かだ。
自民党内には、伝統的な「教授会の自治」について「既得権の擁護に終始し
ている」との批判が強く、どこまで大学の自治が保障されるかは不透明。大学
の個別事情に応じて、率先して法人化するグループと、そうでないグループに
国大協内部が二分する可能性もありそうだ。
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北海道新聞5月27日朝刊
文相 国立大学法人化を表明
来年度中に結論
公立大学も検討
中曽根弘文文相は26日に東京都内で開かれた国立大学長会議で「法人化によっ
て大学の自主性が大幅に拡大し教育研究の進展を図ることができる」と述べ、
国立大を国の直轄運営から分離し、独立行政法人化する方針を正式に表明した。
6月にも国立大関係者らによる検討会議を設置、2001年度中に制度の詳細
について結論を出す。文相はまた公立大についても「国立大に準じた対応を検
討する」と述ベ、法人格を持つことを可能とする方向で検討する意向を明らか
にした。昨年九月に当時の有馬朗人文相が法人化を進める文部省案を提示、関
係機関との調整を進めてきた。今月に入り自民党が法人の長は大臣が任免する
などとした「独立行政法人通則法」を変更する調整法(特例法)制定を骨子と
した法人化案をまとめたのを受け、文相が正式表明に踏み切った。
同省の方針は九十九大学すべてを一大学一法人とし、教職員は公務員型。国の
運営費交付の基ともなる事業などの評価は第三者機関にゆだねる。今後はこう
した評価基準や財政、人事、教育研究体制など具体的な制度づくりが焦点とな
る。国立大学の法人化は一九八○年前後の「臨調・行革」路線を受け検討され
てきた。これに対して「地方大学の統廃合が加速するのではないか」という大
学側の懸念があるが、「法人化とは直接関係しない」(同省幹部)との見解を
示している。
会議後、記者会見した国大協の薄実重彦会長(東大学長)は「文相の提案は調
整法の制定など、私たちが主張してきた点にも初めて触れている。文部省と同
じテーブルにつく可能性は出てきたが、国大協としての公式見解は近く開催す
る総会で決める」と述べた。道内では北大のように法人化の是非や形態を議論
するワーキンググループを設置した国立大もあるが、各大学には「基礎研究・
教育の切り捨てにつながる」などの理由で反対も根強い。
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5/27(土)の西日本新聞
国立大法人化を表明 文相、来月にも検討会議設置
国立大学の法人化問題で中曽根弘文文相は二十六日、都内で国立大学長らを
集めた会議を開き、教育研究機関としての特性に配慮した形の独立行政法人化
を目指す方針を正式に表明した。文部省は六月にも制度の具体化に向け、関係
者や識者による調査検討会議を設置、二〇〇一年度中に結論をまとめる。【3
面に解説】
独立行政法人は本来、行政のスリム化を狙った制度。国立大を行政組織から
切り離すことで、弾力的な予算執行や学科編成などが可能な反面、大学の規模
や所在地によって大きな格差が生じかねず、地方の大学を中心に慎重論が根強
い。
今回の文相の方針表明は、国立大の同法人化について、自民党が「特例法
(調整法)」で対応することを容認したため、文部省が「見切り発車」した格好
だ。ただ、同省は現段階では新たな法人制度の中身をほとんど示しておらず、
具体化作業の方向次第では、国立大学協会などの反発も予想される。
学長会議で中曽根文相は「大学改革は従来手法の限界が見えてきた。国際水
準の教育研究を展開するには、国立大にふさわしい法人化を検討する時期だ」
と述べた。
質疑では「法人化の前提に、国立大は仕事をしていないとの誤解に基づく
『国立大いじめ』の風潮がある」「新法人の制度について文部省のより具体的
な提案がないと、大学に持ち帰っても議論ができない」といった意見が出た。
また文相は、自治体が設置する公立大学についても、国立大の法人化に準じ
た対応が必要との考えを示した。
(3面)
国立大学の独立法人化 市民と共に議論を 地域社会の未来に直結
【解説】国立大学の独立行政法人化問題は二十六日、新法人の制度設計にあた
る調査検討会議の設置と、二〇〇一年度中に結論をまとめるとのスケジュール
が示されたことで、いよいよ具体的に動き始める。文部省は、公立大にも新法
人の制度を準用する意向。中央主導の大学再編を避けるためにも、地方からも
「分権時代」にふさわしい国立・公立大のあり方について、大学の地元を巻き
込んだ議論を積み重ねる必要がある。
【1面参照】
私大の学生の七十五パーセントは三大都市圏に集中しているのに対し、国立
大は六割以上がその他の地域に所在するなど全国に一定のバランスで配置され、
地域の産業、文化、教育の基盤を支えている。市民運動や公益活動の担い手に
なっている大学教官も少なくない。国立大の存在感は、地方の方が都市部より
相対的に大きいといってもよい。
その国立大のあり方が一変する可能性を秘めた法人化問題。これまでの議論
は、文部省や学長、政党など一般市民と無縁の場所で続き、その意味を多くの
市民が理解しているとは言いがたい。
文部省によると、九州地区の国立大は法人化反対の最強硬派。「経済性ばか
り追求すると、立ち行かない大学がでる」と懸念しているからだ。地方の国立
大の盛衰は、それぞれの地域社会の将来に直結した課題。文部省が方針決定し
た今こそ、各大学は地元の自治体や産業界、市民と一緒に知恵をしぼるときだ。
[he-forum 944] 北國新聞社説05/28
『北國新聞』2000年5月28日付社説
地域の支援、連携が不可欠
文部省は国立大を独立行政法人化し、来年度中にも新制度の詳細をまとめる
ことを決めた。これまで国に守られてきた「護送船団」の大学がそれぞれ法人
格を与えられた新しい組織に変わることになり、大学が独自色を出さなければ
存続が危うくなる可能性がある。金大、富大も法人化に備えた取り組みを始め
ているが、地域との連携を密にし、十分な支援が得られる改革に努めてもらい
たい。
法人化で大学がどう変わるのか、見えてこない部分が多いが、地域の大学に
とっては大きな懸念が先に立つ。文部省は「大学の自主性を大幅に拡大し、教
育研究の進展を図る」利点があるとする。しかし、それは護送船団の中核をな
してきた旧帝大などの大学には通用しても、規模や予算が格段に違う大学には
厳しい制度となる。似たような学部や学科が分散する北陸では、大学間の大胆
な連携、学部の統廃合が迫られよう。
さらに、国が大学の予算にどうかかわっていくのかも、大きな問題となる。
法人化では、企業などからの研究費収入を増やす利点が指摘されている。地域
の産業界や自治体などとの連携が求められるのだが、北陸などの場合、大企業
が集中する地域に比べてハンディがある。財政基盤の強弱は、教職員の待遇や
学生の授業料などに必要以上の格差をつける結果を招きかねない。文部省は特
例措置によって大学の自主性を確保するとしているが、地域の実情に配慮した
財政措置が不可欠であろう。
文部省は制度の具体案をまって、十五年度以降に独立行政法人に移行させる
方針という。スケジュールは着々と進むが、大学側の対応にはまだ遅れが目立
つ。大学や学部の自治の建前が、急激な変革への対応を鈍くしてきたことは否
めない。国立大がこれまで以上に、地域の教育や産業、医療などに貢献するた
めに、大学側のより積極的な取り組みを期待したい。
法人化は避けられぬ時代の流れであろう。さらに、少子化の進展で、大学・
短大の志願者数と入学者が同数になる「全入時代」が十年以内に到来するとさ
れている。法人化への対応には、私大を含めた競争の戦略も求められている。
地方の大学の切り捨てにつながるという警戒感が根強いが、そうならないため
に、大学側の努力に加え、地域からも望ましい大学像を積極的に提示して改革
に反映させたい。
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[he-forum 945] <毎日新聞社説>国立大学 理想の法人目指す一歩に
<社説>国立大学 理想の法人目指す一歩に
毎日新聞ニュース速報
文部省が国立大学の独立行政法人化に踏み切ることを決め、26日、全国9
9の国立大学学長に伝えた。国立という設置形態に手が加えられるのは、大学
制度120年余の歴史でも初めてのことだ。ここ十数年進められている数々の
改革の中でも、最も重要な転換といえる。
しかし皮肉なことに、この重要な転換は、当事者である国立大学、文部省の
発意によって、大学改革の理念から提起されたものではなかった。省庁再編に
伴う行政改革の一環として、国の業務の効率化、公務員定数削減を眼目に持ち
出されたのである。このことが、事の本質をゆがめ、複雑にした。
国立大学が多くの問題を抱えているのは事実だ。組織や人事、財政の細部に
至るまで、国に縛られている硬直化したシステムが、大学の教育研究の活性化
を阻む要因になっていることは否定できない。親方日の丸意識から、旧態依然
の現状に安住、改革を怠ってきたことが沈滞を招いているとの批判も免れない。
国立大学という設置形態が、これから先も今のままでいいとは思えない。法人
化に向けての検討は必然だろう。
ただ、法人化にあたっては、さまざまな形態がありえた。教育研究機関にふ
さわしい法人を探る努力が必要だった。しかし今回は、初めから独立行政法人
という枠内での検討を余儀なくされた。文部省、大学審議会、大学関係者が真
剣な取り組みを怠ってきたツケというほかはない。
文部省の方針は、独立行政法人制度を前提とするものの、主務大臣による
(学)長の任免、中期目標・計画、評価などについては、通則法とは別に、調
整法か特例法を新たに制定して対応するというものだ。今後有識者による検討
会議を開催して、具体的な作業に入る。来年度中に結論をまとめ、実施に移す
という。
事ここに至っては、独立行政法人制度のもとで少しでも大学にふさわしい法
人に近づけていくよう努めることが、当面の課題になるだろう。通則法をその
まま国立大学に適用するには無理があり、調整法で対応するという文部省方針
は、現実的といえる。ただ、具体的な肉付けはすべてこれからだ。検討会議に
は広い視野からの丁寧な論議を望みたい。
法人化は、個別大学の自由度を増す半面、厳しい競争を強いる。弱肉強食と
なるのは避けられず、地方や教員養成系など基盤の弱い大学には何らかの配慮
が必要だ。大学関係者は、自らの存在意義をアピールし、理解を得るよう努力
してほしい。
長期的には、21世紀の日本の高等教育をどうするのかという視点からの新
たな取り組みが欠かせない。
日本の高等教育に対する公的投資水準は、欧米諸国に比べて極めて低い。抜
本的な改善が必要だ。
国立と私立の関係にもメスを入れる時期が来ている。大学も学生も、70%
以上は私立だ。しかし国立大学に1兆5000億円の税金が投入されているの
に対し、私立大学には3000億円の私学助成が出ているにすぎない。大学・
短大進学率50%の時代に、これだけの格差を正当付ける理由は見いだしにく
い。
これからの時代の「国立」大学の存在意義は何なのか、どんな法人が望まし
いのか、私立の法人はどうあるべきなのか、公的投資の配分はどうするのか、
根本的なところからの論議が求められている。
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[he-forum 949] 琉球新報社説05/28
『琉球新報』2000年5月28日付社説
国立大法人化・自主・自立性を損なうな
文部省は、昨年九月から本格的な検討を進めてきた国立大学を国の組織の一
部から切り離して独立行政法人化する方針を二十六日の国立大学長会議で正式
に表明した。
国の行政改革のひとつとして浮上した問題だが、この間、とりわけ大学関係
者からは「教育・研究は効率性の観点になじまない」「いたずらな競争原理に
さらされ統廃合が進む」など、批判、反発の声が出てきた。琉大でも「大学改
革を考える教職員懇談会」で「教育の機会均等を脅かし、大学の自治を侵害す
る恐れがある」など、反対意見が強まっていた。
しかし、表明は事実上の「決定通知」、国民的論議が深まっていない中での
決定だ。これで百二十年の歴史がある日本の大学制度は、最大の変革期を迎え
ることになる。
懸念の声に象徴されるように、大学の教育研究活動は、大学人の自由な発想
が尊重されて初めて実があがる。自主性こそが学問研究をリードするエネルギー
である。また、国づくりの根幹を支える人材を育てる役割を担うことから教育
の視点は「百年の大計」と言われる。カネや時間がかかる。共通認識でもあろ
う。
もちろんわれわれも現在の大学の在り方をまるごと肯定しているわけではな
く、危機意識に触発されて大学内部からも変革の時代に対応した改革が端緒に
現れてきている。
法人化によって、組織、管理運営、予算・会計など、がんじがらめの国の規
制から解放され、大学が自主性、自立性を発揮する余地が広がるなら大いに結
構だ。だが、そこに文部省と水面下の綱引きをした自民党行革本部、文教部会、
文教制度調査会の思惑が見え隠れする。
自民側は、大学の特殊性に配慮し、大学の基本組織、目標・計画、評価、学
長人事、名称について調整法の必要性は認めたが、国が運営や組織に相当関与
するのは当然である。カネも出すが、口も出すとの露骨な姿勢だ。大学側には
かなり厳しい内容である。
法人化で、大学の生命線である自主性、自立性が損なわれるようなことにな
ると、何のための法人化かと言わざるを得ない。
国立大学協会会長の蓮実重彦東大学長は一定の評価をしたが、「地方大学の
衰退を招く」と反対姿勢も根強い。文相は公立大も法人格を持つことを可能と
する方向で検討する意向も表明した。いずれにせよ国立大学が護送船団方式で
守られてきた時代は終わる。
少子化が進み、具体的に大学間の統合計画も進んでいる。特色と魅力ある大
学づくりをしなければ淘汰される。
法人化は今後、財政、人事、教育研究体制などの具体的な制度づくりが焦点
となる。その中で大学側が、法人化には自主性・自立性の確保が不可欠である
ことを再確認して、制度づくりの論議で禍根を残さないように望みたい。
[he-forum 947] 沖縄タイムス社説05/28
『沖縄タイムス』2000年5月28日付社説
国立大の法人化
避けられない変革の加速
中曽根弘文文相は二十六日の国立大学長会議で、国立大学を独立行政法人に
する方針を正式に表明した。
これまで全国の国立大は、こぞって法人化へ反対の意向を示していたが、事
実上の「決定通知」を、文部省から突き付けられた形である。
大学統合など大学変革の流れが一気に加速するのは必至だ。
開学五十周年を迎えたばかりの琉球大学(森田孟進学長)にとっても、これ
からの大学の在り方や方向性を根本的に見直す必要に迫られることになる。
森田学長はかねて、法人化で国立大が生き残るための「産学」連携は都市部
の大学でこそ可能であり、地方の大学は縮小を余儀なくされると、危ぐを訴え
てきた。
しかし今、法人化へ大きく歯車が回転した。大学の生き残りをかけて、すで
に取り組んでいる大学の改革を一層進めることになるだろう。
弾力的な学科編成や教職員配置を実現し、亜熱帯地域にある唯一の国立大と
して、個性的で特色ある大学カラーを存分に発揮できるかが問われる。
地域へ果たしてきた役割への影響も懸念されるが、これまで以上に地域との
密着を図らなければならないだろう。
森田学長は、地域のニーズにこたえる人材育成や研究に取り組むことで、よ
り地域に根差した大学づくりを実現する考えを明らかにしている。
国立大の法人化は、国の規制でがんじがらめになっている組織や管理運営、
予算・会計を解放し、大学の自主性や自律性を広げる契機としなければならな
い。
大学を国のコントロール下に置こうといった動きもあるが、それを許しては
将来へ禍根を残すことになる。
そのためにも、「大学の自治」を尊重する「調整法」など設ける特例措置が
ぜひとも必要である。
文部省も、国際水準の教育研究を展開するためには、大学が独立性を高め、
柔軟な意思決定をする必要を認めている。
国立大学が親方日の丸で運営される時代ではなくなる。大学の自主・自律性
と改革への力量が試される。
[he-forum 948] 南日本新聞社説05/28
『南日本新聞』2000年5月28日付社説
独立行政法人 地方大学の切り捨てが心配だ
文部省が、国立大学を独立行政法人にする方針を正式に表明した。国の行政
組織の一部としての位置付けから、独立した法人格を持つ大学に変わる、とい
うものである。
法人化によって、大学が自主性を発揮する余地が広がるなら歓迎すべきだが、
これまでの動きを見る限り、問題も少なくない。効率性を求めるあまり、大学
の自主性が損なわれるようでは、何のための法人化なのかと問いたい。
大学の教育研究活動は、大学人の自由な発想が尊重されて初めて実が上がる。
大学を博物館や図書館など他の行政組織とひとくくりにして、法人化するには
無理がある。
にもかかわらず、政府の目指す法人化は国家行政組織のスリム化を目的に、
国家公務員数の削減を最優先したものだ。大学の自治や独自性にかかわる課題
は二の次になっている。大学を国のコントロール下に置こうという姿勢があか
らさまだ。国立大学協会が反発してきた理由もそのへんにある。
文部省は、大学に関しては独立行政法人通則法を直接適用せず、特例法など
を制定して自主性を尊重する考えだ。それでも予算や人事、研究教育体制といっ
た具体的な内容は不透明のままで、不安はぬぐいきれない。
法人化で懸念されるのは、大学間の格差がいっそう拡大されることだ。人気
のある大学とそうでない大学に二極化される恐れがある。授業料も一律でなく
なるし、学生の募集にも影響が出るだろう。統合や再編が進み、最終的には消
えていく大学も出てこよう。
こうした危機感は特に地方の国立大学に強い。文部省は「法人化しても独立
採算性ではなく、これまで通り運営費交付金が手当てされる」というが、国家
財政の危機的状況からすると、うのみにはできない。選別と淘汰(とうた)は
避けられず、地方大学の切り捨てにつながる事態は予想できる。
地方大学は、これまで地域の発展のために大きく貢献してきた実績を持つ。
今後も教育、文化、産業など多面的な分野で重要な役割を担うことは間違いな
い。
文部省は、近く専門家会議を発足させ、具体的な制度づくりの検討に入るが、
こうした実態を考慮して、大学改革を進めてほしい。並行して、大学側にも魅
力ある大学をつくる努力が求められる。
[he-forum 950] 東京新聞社説05/29
『東京新聞』2000年5月29日付社説
国立大学が変わる好機だが
文部省が国立大学の独立行政法人化に向かって、一段と踏み出した。大学は
やみくもな効率化にはなじまないものの、自主、自律の組織へ変わる好機かも
しれない。
中曽根弘文文相が国立大学の学長などに、独立行政法人(独法)化のための
調査検討会議を発足させると明らかにしたことで、国立大学の独法化への動き
が、さらに一歩進んだ。
もともと独法化は、行政の効率を高めるのが最大の狙いだ。ところが、大学
には基礎研究のように結果がいつ出るか見当もつかない分野や、とほうもなく
資金と人材が要る割に、目に見える成果が上がるとは限らない大型研究もある。
効率化にはなじむまい。
学長の任免権を大臣が握るとか、大臣による中期目標の設定など、独法化に
よって大学の自主、自律、自己責任の原則が損なわれる恐れがある。
中曽根文相もこのあたりを考慮し、独立行政法人通則法に調整を加える考え
を示している。問題は調整の中身だ。部分的な手直しぐらいで、二十一世紀に
ふさわしい知の発信拠点に向かって、国立大学が自己改革を成し遂げることが
できるかどうか。
独法化そのものは、いくつかの利点を持っている。例えば、文部省の予算面
や事務局人事を通じた規制を緩め、より柔軟な予算の使い方が可能になる。人
事でも、大学側の主体性をある程度は発揮できるようになろう。
大学の自主、自律を尊重するなら、一歩進めて、自治体や企業からの委託研
究費や寄付講座、寄付金、特定目的奨学基金の設定など、独自の財政基盤づく
りを積極的に認めるべきだ。
こうした経営面の努力が、政府支出の削減につながっては意味がない。わが
国の高等教育に対する国費支出の割合は欧州諸国に比べて著しく低い。施設、
設備の充実を含め、むしろ大幅に増額することが望ましい。
大学の運営は、例えば理事会といった機関を設けて一任し、学長や教員人事
に政府が介入することは慎まねばならない。理事会も、年功序列や学部間の回
り持ちといった発想ではなく、経営手腕や実行力を物差しにして、学長や執行
部を選んではどうか。
理事会への学外の人材の起用、大学の経営や研究内容についての情報の公開、
説明責任の明確化、学長や教授の任用に当たっての契約制採用、教育と研究に
対する外部の第三者機関による厳正な評価の導入など、独法化を機会に実現を
図るべきことは多い。
旧態依然とした学部構成の組み替えや、学部あるいは大学のあいだの連携、
地域の国立大学の合併などを大胆に展開するきっかけにもなろう。
国立大学協会は早急に具体案をまとめ、独法化が官僚主導に陥らないように
してほしい。あるいは、独法通則法を微調整するより、まったく別の法律を考
えるほうが適切かもしれない。
国立大学は国民の資産である。専門職や研究者の養成を含めて、知の発信拠
点として広く支持されなければ、民営化や統廃合もあり得る。関係者はそのこ
とを肝に銘じてもらいたい。
[he-forum 951] 四国新聞社説05/29
『四国新聞』2000年5月29日付社説
自主と自律は保てるか
文部省が、国立大学を独立行政法人にする方針を国立大学長会議で正式に表
明した。国の行政組織の一部としての位置付けから、独立した法人格を持つ大
学になる、というものである。近く専門家会議を発足させ、具体的な制度設計
の検討に入るという。
法人化によって組織、管理運営、予算・会計など、がんじがらめの国の規制
から解放され、大学が自主性・自律性を発揮する余地が広がるなら大いに結構
だ。
だがこれまでの動きを見ていると、自民党行革推進本部などを中心に、大学
を国のコントロール下に置こうという姿勢が一段と強まっているのも事実だ。
法人化で大学の自主性・自律性が損なわれるようなことになるなら、何のため
の法人化かと言わざるを得ない。
大学の教育研究活動は、大学人の自由な発想が尊重されて初めて実が上がる。
だが、独立行政法人通則法は国家行政組織をスリム化するためのもので、企画
立案機能と実施機能を分け、企画立案は主務省で行うというものである。単な
る実施機関という位置付けは、とうてい大学になじむものではない。国立大学
協会が反発したのも当然である。
この半年、大学の自治確保を目指す文部省と通則法の徹底により行革の実を
上げたい自民党行革推進本部が水面下で激しいつばぜり合いを続けてきた。そ
の結果が先に公表された自民党文教部会・文教制度調査会による提言である。
提言は「大学の特性から必要な措置を調整法に定めて国立大学法人に移行さ
せるべきだ」とし、大学の基本組織、目標・計画、評価、学長人事、名称の五
点について調整法の必要性を認めた。目標を決める際には大学の意見を尊重す
ることなどの留保条件を付けたというものである。
これで大学の自治確保に一定の見通しがたった、というのが文部省の見解だ。
だが、提言に至る水面下の折衝プロセスを見ると、文部省の言うように直ち
に「大学の自治が確保された」とは言い難い危うさを感じる。
まず学長人事について自民党当初案は「大学の主体性を尊重した手続きとす
る」となっていた。それに行革チームから「自主性だけでは駄目だ」とクレー
ムが付き、提言は「大学の意向を適切に反映しうる手続きとする」と大幅に弱
められた。
再編・統合についても「大学の自主性を尊重しつつ積極的に再編統合を推進
すべきだ」という当初案は「自主性は尊重しつつも、最終的には国の責任にお
いて積極的に…」と変わり「国立大学については、国が、その運営や組織編成
の在り方に対して相当のかかわりを持つことは当然である」という一文も入っ
た。
これからも国が運営や組織編成に口を出すという露骨な姿勢である。昨年九
月の学長会議で「できる限り自らの権限と責任において大学運営できるよう法
人格を持つことが適当」とした前文相の言葉と程遠いものだ。そこにあるのは、
目標・計画の認可や業績評価を通じて国が国立大学をコントロールし、効率を
上げるという行革の論理でしかない。
しかし学問研究というのはテーマを国家が決めるような行政の下請けではな
い。考古学などすぐには結果の出ない分野も、貴重なものであることに変わり
はない。行革の文脈に、学問研究の将来を閉じ込めるような流れをそのまま追
認したりすれば、将来に大きな禍根を残す。
いくら外側から枠をはめて追い立てても、大学人がその気にならなければ成
果は出ない。自主性こそが学問研究をリードするエネルギーである。法人化に
は、大学の自主性・自律性確保は欠かせないことを再確認することが必要だ。
いずれにしろ国立大学が護送船団で守られていた時代は終わる。実績を上げ
なければ、十分な予算も回ってこない。特色を出し、受験生に魅力ある大学を
つくらなければ淘汰(とうた)される。大学人には、自主・自律と自己責任が
ワンセットであることの自覚を求めたい。
[he-forum 952] 京都新聞05/29
『京都新聞』2000年5月29日付
慎重に意見集約 京大
国立大の法人化方針受け
文部省が二十六日、国立大学を法人化する方針を正式に表明したことで、京
滋の各国立大学でも法人化に向けた論議が活発化しそうだ。
京都大では、昨年夏に副学長と学部長らをメンバーとする「設置形態検討会」
を発足。法人化を含め、将来の研究教育や予算のあり方などについて内部で話
しあってきたが、京大としての統一した見解はまとめていない。昨年末からは、
京大や東京大や大阪大など国立七大学の副学長会議で、法人化への対応を検討
している。
京大の長尾真総長は、法人化については「予算が減るのではないかという心
配はあるが、予算の使い方や人員配置など大学の裁量が広がるなどのメリット
がある」と一定の評価をしている。しかし、法人化にあたっては学長の選考方
法などの改革について、「大学自治が損なわれ、学問の自由を尊重する京大に
はふさわしくない」として学内からの強い反発も予想される。このため、京大
全体の意見集約については、今後も慎重に進める方針だ。
京都教育大では、教授会で検討を進めているが、今後は近畿の他の教育系大
学とも話し合う見込み。京都工芸繊維大では、学長を委員長とする「大学将来
計画委員会」で今後の対応を検討するという。
滋賀大の川嶋宗継副学長は「週明けにも大学の最高決議機関である評議会を
開いて対応を考えたい。独立法人化になれば(研究費などの面で)厳しいと思
うが、研究に支障が出るようなことがあれば大学としては致命的だ」とし、滋
賀医科大は「詳しいことは聞いておらず、学長からの報告を待ちたい」と話し
ている。
[he-forum 961] 信濃毎日新聞社説05/31
『信濃毎日新聞』2000年5月31日付社説
社説=国立大法人化 将来像を見据えつつ
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国立大学の大きな転機といえる。国の組織から切り離し、独立した法人にす
る方針である。中曽根文相が進めることを正式に表明した。具体化するため、
文部省が近く検討会議を設ける。
研究が効率一辺倒に流れないか、地方大学への影響は…。心配は依然、消え
ていない。高等教育の将来に禍根を残すものであってはならない。
大学が変革を迫られているのは確かだ。勉強しない学生を安易に卒業させる
状況が続いてきた。研究の水準を高める課題も重い。国際競争が激化するなか、
教育や研究の質向上が急務である。
文相は、法人化により弾力的に学科を編成したり、教職員を配置できるよう
になると指摘した。国の組織から離れることで規制が緩み、大学の自主性や自
立性が高まるなら、それは悪くない。
気掛かりな一つは、国立大の法人化が行政改革の流れで出てきたことだ。政
府は独立行政法人化も含め、国家公務員を十年で二五%削減する方針を示して
いる。大学をどうするかではなく、行政スリム化の狙いで始まった論議である。
独立行政法人はコスト削減に努めたり、効率化の計画を管轄する大臣に報告
して評価を受ける。必ずしも大学の活動になじむ仕組みではない。すぐには成
果の出ない研究分野やテーマが扱いにくくなるようだと、ひずみを生じる。
文部省は、独立行政法人の制度をそのままは当てはめず、「大学の自治」を
尊重する「調整法」か「特例法」を設け、特例措置を盛り込むとしている。た
だ、まだ具体的に詰めてあるわけではない。財政や人事、教育研究体制などの
制度について、来年度中に結論を出す。
これからの大学像をどう描くかという観点から、文部省は論議を尽くす必要
がある。文相は「公的投資の拡充を進める」と大学教育の予算拡大に取り組む
姿勢も示した。日本の高等教育への財政支出は欧米に比べ、見劣りする。実現
に向け、突っ込んだ検討を期待する。
大学の側も、いよいよ手をこまぬいていられない。自己改革に一段と力を注
ぐときだ。複数の国立大が連携し、互いに単位を認め合うといった取り組みが
現に各地で模索されている。
信州大学はカリキュラムの見直しなどが活発だ。例えば、医学部は臓器移植
などの研究を専門に行う独立専攻を大学院に設けた。工学部は学部から大学院
修士課程まで六年間の一貫教育を検討している。それぞれに工夫を凝らし、個
性化や魅力アップを図ってもらいたい。
存在感を確かにする一つのカギは、地域とのつながりにある。この点でも、
地域の人たちを対象にした教育学部の「出前講座」など、試みは始まっている。
地道な活動を積み上げ、開かれた大学づくりを一層進めてほしい。
信大の将来は地域の産業や活力にかかわる重要な問題である。この機会にあ
らためて関心を向け、ともにもり立てていく方策を探ることが大切だ。
[he-forum 962] 北日本新聞社説05/31
『北日本新聞』2000年5月31日付社説
国立大学法人/自主・自律性が生命線
文部省が、国立大学を独立行政法人にする方針を国立大学長会議で正式に表
明した。国の行政組織の一部としての位置付けから、独立した法人格を持つ大
学になる、というものである。近く専門家会議を発足させ、具体的な制度設計
の検討に入るという。
法人化によって組織、管理運営、予算・会計など、がんじがらめの国の規制
から解放され、大学が自主性・自律性を発揮する余地が広がるなら大いに結構
だ。だがこれまでの動きを見ると、自民党行革推進本部などを中心に、大学を
国のコントロール下に置こうという姿勢が一段と強まっている。
行政改革の文脈に、学問研究の将来を閉じ込めるような流れをそのまま追認
するようでは、将来に大きな禍根を残す。自主性こそが学問研究をリードする
エネルギーである。法人化には、大学の自主性・自律性確保が欠かせないこと
を再確認すべきだ。
この半年、大学の自治確保を目指す文部省と独立行政法人通則法の徹底によ
り行革の実を上げたい自民党行革推進本部が水面下で激しいつばぜり合いを続
けてきた。その結果が先に公表された自民党文教部会・文教制度調査会による
提言である。
提言は「大学の特性から必要な措置を調整法に定めて国立大学法人に移行さ
せるべきだ」とし、大学の基本組織、目標・計画、評価、学長人事、名称の五
点について調整法の必要性を認めた。目標を決める際には大学の意見を尊重す
ることなどの留保条件を付けた。
これで大学の自治確保に一定の見通しが立った、というのが文部省の見解だ。
だが、提言に至る水面下の折衝プロセスを見ると、直ちにそうとは言い難い危
うさを感じる。
学長人事について、自民党当初案では「大学の主体性を尊重した手続きとす
る」となっていたが、行革チームから「大学の自主性だけでは駄目だ」とクレー
ムが付き、提言は「大学の意向を適切に反映しうる手続きとする」と大幅に弱
められた。
再編・統合についても「大学の自主性を尊重しつつ積極的に再編統合を推進
すべきだ」という当初案は「大学の自主性は尊重しつつも、最終的には国の責
任において積極的に…」と変わり「国立大学については、国が、その運営や組
織編成の在り方に対して相当のかかわりを持つことは当然である」という一文
も入った。
これからも国が運営や組織編成に口を出すという露骨な姿勢である。
いずれにしろ国立大学が護送船団で守られていた時代は終わる。実績を上げ
なければ、十分な予算も回ってこない。特色を出し、受験生に魅力ある大学に
しなければ淘(とう)汰(た)される。大学人には、自主・自律とともに自己
責任の自覚が求められる。
[he-forum 963] 熊本日日新聞社説05/31
『熊本日日新聞』2000年5月31日付社説
<社説> 国立大法人化 自主性は確保されたのか
中曽根弘文文相は、国立大学を独立行政法人化する方針を先の国立大学長会
議で正式表明した。
事実上の決定通知で、近く専門家会議を発足させ、具体的な制度づくりの検
討に入る。
文部省は公立大についても、これに準じた対応を進めるという。
これまで国の保護下、護送船団方式で守られてきた国公立大学も教育・研究
分野で厳しい競争の時代を迎えることになる。
法人化によって「大学の自主性が大幅に拡大、教育研究の進展を図ることが
できる」と文相は述べた。
その通りなら結構なことだ。
だが、具体的な検討はこれからであり、大学の自主・自律性が本当に確保さ
れるのか、しっかり見守っていく必要があるだろう。
独立行政法人化は、国の行政機関のうち企画立案部門以外の現業やサービス
部門などを切り離し経営感覚を持った別個の法人にすることで効率化を図ろう
というものだ。省庁再編に伴う行政改革の流れの中で打ち出された。
独立行政法人のあり方を定めた「独立行政法人通則法」(昨年成立)は、行
政組織をスリム化するために、企画立案機能と実施機能に分けて、企画立案機
能を主務省で行う―というものだった。
だが、自由な教育研究活動を目的とする大学が、単なる実施機関との位置づ
けに対して、とうていなじまないと、国立大学協会が反発したのも当然だった。
このため、文部省は大学の自治を尊重する観点から通則法の下に「調整法」
(もしくは特例法)を設けて調整を図ることにした。
これは自民党文教部会・文教制度調査会が先に公表した提言に基づくものだ。
提言は大学の基本組織、目標・計画、評価、学長人事、名称の五点について調
整法の必要を認めていた。
調整法を設けることで大学の自治確保に一応のめどが立った、というのが文
部省の考え方だ。
ただ、先の提言をめぐる折衝では自民党行革推進本部を中心に、大学を国の
コントロール下に置こうと激しい巻き返しも見られた。
学長人事について当初案では「大学の主体性を尊重した手続きとする」となっ
ていたが、行革本部の異論で、「大学の意向を適切に反映しうる手続きとする」
と改められた。
こうした経緯を見ると、目標・計画の認可や業績評価を通じて、国がコント
ロールし、効率を上げようという姿勢が強くうかがえる。
とは言え、法人化の流れを受けて、大学間の統合計画などは、すでに進んで
いる。法人化へ向け動き出した以上、具体的な制度づくりの中で懸念が払しょ
くされるよう望みたい。
法人化によって自由度は増す半面、競争は激しくなる。大学の力量が問われ
る。実績を上げなければ予算も回って来なくなる。
経済界などから支援のある大学とそうでない基盤の弱い大学との格差が生ま
れそうだ。
また「地方大学の衰退を招く」との声もある。地方大学が地域で果たしてき
た役割や地方分権の流れを考えれば、何らかの配慮が必要だろう。
検討会議は来年度中に結論を出す。大学側も大いに主張して活性化につなが
る改革にしてもらいたい。
[he-forum 964] 徳島新聞社説06/01
『徳島新聞』2000年6月1日付社説
独立行政法人化
地方大学こそ改革早めよ
全国にある99国立大学の独立行政法人化が、本決まりになった。文部省は
近く、国立大学の独立行政法人化に向けた検討会議を設置し、2001年度中
に新制度の詳細をまとめる。
独立行政法人は、1996年の「橋本行革ビジョン」で導入の方向が示され、
97年の行政改革会議の最終報告で地方分権とともに明記された。
国の機関に法人格を与え、民間の経営手法を取り入れることで効率化を図る
のが狙いで、行政改革の一環。国立の博物館、病院などは、順次、独立法人に
移行することが決まっていた。
しかし、行政改革を目的とした「独立行政法人通則法」を国立大学にそのま
ま適用すると、「主体性を損ない、教育研究の向上に結びつかない」(中曽根
弘文文相)として、同法の下に特例措置を設ける考えも示されている。
このため、独立行政法人となる国立大学の具体的な将来像は、検討会議の議
論を待たなければならない。だが、国に守られてきた国立大学が、戦後初の大
変革を求められるのは確かだ。
日本の大学は、国・公・私立の設置形態にかかわらず、少子化により本格的
な競争と淘汰(とうた)の時代を迎える。地方の大学は、特に厳しい環境にさ
らされることが予想され、国立大学の独立行政法人化を機に、地方大学こそ
「生き残り」への改革、個性化が求められる。
国立大学の教職員数は、約12万5000人に上り、郵政事業に次ぐ規模で
ある。独立行政法人化は、国家公務員の削減、行政のスリム化を図る効率化の
発想から生まれており、当初は反対していた文部省も、特例措置を設けること
で国立大学を「聖域」としなかった。
独立行政法人の共通規範である通則法は、主務大臣による役員任命のほか、
大臣による中期目標の設定、外部機関による業績評価を定めている。
文部省は、大学の自主、自律を尊重するため、国立大学については、このう
ち学長・教員人事、教育研究の目標設定、業績評価、組織の運営−に関して独
自の法律を整備したうえで、2003年度以降には、すべての国立大学を独立
行政法人に移行させたい考えだ。
これに対し、国立大学サイドは「自主性が損なわれる恐れがある」と抵抗を
続けてきた。だが、国による「護送船団方式」に守られ、予算や人事、組織の
硬直化を見過ごしてきた「官体質」の変革が求められているのは確かで、独立
行政法人化は時代の流れである。
ただ、地方大学には危機感が強い。独立行政法人化には、産業界の支援拡大
や予算の柔軟な使い方などのメリットがある半面、産業基盤が脆弱(ぜいじゃ
く)で全国均等に設置された地方大学と旧帝国大学を頂点とした都市の有力大
学との格差がさらに大きくなりかねないためだ。
また独立行政法人化後は、各大学が経営安定と生き残りを図るため、学生の
獲得合戦を激化させることが予想され、地方の大学には不利である。
それだけに、地方大学こそ改革のテンポを早めることが求められており、す
でに山梨大学と山梨医科大学、香川大学と香川医科大学の合併構想など生き残
りへの模索が表面化している。
「10年後は、一部の有力校を残し、多くの国立大学が合併などでなくなっ
ているかもしれない」と言われるほど独立行政法人化の影響は大きい。
地方の大学としては有力校の1つである徳島大学や、教員養成のための単科
大学の鳴門教育大学、さらに激しい学生の奪い合いに巻き込まれるであろう徳
島の私立大学も無縁ではない。
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