==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
<<独立行政法人化に関する講演会の報告>>
<<独立行政法人化に関する講演会の報告>>
2000年5月31日 島根大学教職員組合中央執行委員会
島根大学は5月28日、文部省大学改革推進室長杉野剛氏を招いて最新の情報を得
る目的で講演会を開催した。日曜日にもかかわらず相当数の事務職員を含む約170
名が参加し、関心の高さを覗わせた。
杉野氏は講演(1時間)で3つの視点から独法化の話をした。
第1は、「小さな政府」と独法化の問題で、行革会議の3つの手法(水平的分業・
垂直的分業・定員削減)の紹介。
ただし、「行革の視点から大学は変えられない」として、「大学だけは平成15年ま
での延長戦(99年4月閣議決定)に入った」と。
第2は、新しいルールは大学にふさわしいか?として、杉野氏はまず通則法を大学
にそのままあてはめたらどうなるかを明快に説明した。
参加者に賛否を問い、(賛成2:反対約30:わからない約130)を確認したあと
、通則法の問題点として(1)中期目標の一方的指示、(2)評価、(3)学長人事
をあげ、(1)については「大学とは教育研究のめざすところを自身で決めることが
できるものであり、大臣が個々の大学に目標を申し渡すことは絶対にやってはいけない。
本当にそう思っている。」と述べた。
(2)については「文部省内部に置かれる評価委員会は、国立青年の家など大学とは
性格の異なる所管の機関を評価しなければならない上に、どうやって99もあり、そ
れぞれに個性をもった大学を評価をできるか」と問題を指摘した。
(3)については「これも中期目標と同様、政府が一方的に学長を連れてくるのは問
題で、学内で責任をもって選ぶことが必要である。
学長を自ら選ぶというのは、国立大学発足以来現在までの歴史のなかで培ってきたル
ールであり、これからも基本的に守っていくべきだ」と明言した。
その上で杉野氏は、文部省はこの制度を「リフォームして大学に適用したい−−独
法化が行革からこういう形で設計されたからといって文部省はイージーオーダー路線
を捨てたくない。
オーダーメードは難しい選択肢で、仲間がいない(他省庁は既に独法化)、私学との
関係でやりにくい」と指摘。
「リフォームできないのではないかという議論もあるが、公務員法に対する教特法の
ように、これまでなんとかしてきたではないか」と述べた。
第3は大学にとって法人格をもつことの意義。
「世界の大学の標準は法人である−−法人化は民営化ではないし、独立法人は予算の
保障がある制度だと考えている。」、「たしかに通則法には『当分の間』とあるが、
永遠に保障するなどと書けるはずがない」。
「2年くらいかけてルールブック(設計図)をつくる」と述べた。
杉野氏は最後に、「どういう場合でも(独法化してもしなくても)これからは『評
価』の時代だ」として講演を結んだ。
その後30分間質疑がおこなわれた。
(質問)大臣説明にある「現時点では」という表現は何を意味するのか?
−−(回答)「9月20日学長会議からの経過を踏まえてということだ。」
(質問)閣議決定の平成15年と大臣説明に言う時期とのズレは?1年早まってい
ないか?
−−(回答)「閣議決定は生きている。『結論を得る』とは厳密に何を指すか?その
中身が問題だが、15年はデッドラインだ。」
(質問)藤田論文が指摘した10%定削は?
−−(回答)「総務庁はまだ何も言ってきていない。努力はするが、見方とすれば、
平成13年度からたんたんとかけてくる可能性がある。定削との関係だけからいえば
独法化を早く決めた方が有利だと思う。」
(質問)そもそも独法化は行財政改革の議論の中から出てきた話で、しかも競争的環
境の下に置かれれば、地方大学への投資が結果として削減になることがおこらない
のか?
−−(回答)「大学改革が重要で予算拡充はその前提だ。ただ保障はない。財政改革
と行政改革は別だと考えている。大学の個性や伝統も正当に評価されるべきで、評価
は多面的に、また透明性を確保して行われなければならない。」
(質問)朝日新聞では県立移管の話があるが?
−−(回答)「文部省内にそういう意見を持つ人を私は知らない。それに自治体の財
政難のことを考えても有り得ないだろう。」
(質問)先日の自民党提言では、最終的に国の責任において大学の再編統合を行うと
あったが、その点、大臣説明も本日のお話もニュアンスが違うようだ。
特に地方大学、また基礎領域の部分が、それなりの努力を継続して評価を受けている
にも関わらず、国によるある特定のビジョンによって縮小、統廃合されたりすること
のないよ
う、どこかに明記してシステムとして保障すべきだ。
−−(回答)「提言で言っているのも、国が頭ごなしにということではない。
国が最終的に決めるというのはアタリマエのことであり、いままでもやってきたこと。
ある大学とある大学とが当事者同士話をして一緒になりたい、ということになれば、
文部省としてはできるだけ応援しましょう、ということだ。
私としては提言の言い方に違和感はない。」
(質問)5年後の評価は結果のみが審査されるのか?
−−(回答)「5年ですべてということではない。どこまで進捗したかも対象となる。」
(質問)設計が具体的な通則法のもとで調整法によるリフォームは可能か?
−−(回答)「一緒にこれから考えていきたい。」
大要以上の内容でした。
講演は、これまでの流れのなかで、「なぜ国立大学に独立行政法人制度を適用したい
と考えるようになったか」、「それにはどういう良い点と良くない点があるのか」に
ついて文部省の見解を説明したに過ぎず、国立大学長等会議(5/26)の内容には
触れませんでした。
質疑は限られた時間のもとで十分に問題点が抽出されたわけではありませんが、結局
「行政改革」からの押し付けであることは自明なことですし、総論で「学問の自由」
・「大学の自治」を如何に力説しても、通則法下でリフォームは可能か?との問いに
「これから検討」とかわさざるを得ないあたりが文部省の苦しいところでしょう。
公的投資の拡充などについても「保障はない」というのでは、われわれは一層注意深
く監視を続ける必要があります。
(文責:星川和夫・田村達久・田中則雄)