==> 国立大学独立行政法人化の諸問題

高分子機能学 学科内意見交換会用資料


Date: Wed, 31 May 2000 13:43:47 +0900
From: Nobuhisa Watanabe
Reply-To: reform@ed.niigata-u.ac.jp
Subject: [reform:02848] 独法問題意見交換会用資料
To: reform@ed.niigata-u.ac.jp

今日の午後、自分の所属で意見交換会があります。そのために資料を作ってみ ました。特に新しい情報があるわけではないですが、参考までに投稿します。 渡邉信久 --- 060-0810 札幌市北区北10条西8丁目 北海道大学 大学院理学研究科 生物科学専攻 生体高分子解析学講座 * 大学は病んでいます。しかし政治はもっと病んでいます。 * * 私は大学の教育・研究目標の設定を行政に委ねたくはありません。* * 私は大学の教育・研究の評価を行政に委ねたくはありません。 * * 私は国立大学の理念無き(独立行政)法人化に反対しています。 * ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 高分子機能学 学科内意見交換会用資料 状況: 5/9 自民党文教部会・文教制度調査会「提言これからの国立大学の在り方につ いて」 5/11 自民党政務調査会提言「これからの国立大学の在り方について」 5/16 文部省 文相私的懇談会で独法推進を決定(出席者は4人!) 5/19 臨時国大協理事会 5/26 文部省 国立大学・大学共同利用機関長等会議で国立大学を独立行政法人化す     る方向を表明(文部大臣説明) ----- 6/13 国立大学協会総会(定例) 6/15 国立大学学長会議(定例) 6/19以降 国立大学の独立行政法人化に関する検討会議(仮称)(約1年間で 検討)        2001年7月「中間報告」,2001年12月「最終報告」 ------------------- 自民党「提言」について ------------------- ○ 「国立大学法人」や「調整法」というような名称が出て来ているが,依然と   して独立行政法人通則法に基づく国立大学の独立行政法人化であることには   変わりが無い.行政改革推進本部は「行政改革」の問題として国立大学の独   立行政法人化をとらえている.「提言」も「行政改革推進本部幹部会におい   て了承された」としている. ○ 「大学の運営に配慮した規制の緩和」が謳われているが,人事(任命や罷免   等)において依然として国が大きな権限を握ることになる.(何のために   教育公務員特例法が制定されていたのか?)   かつ,評価システムの導入により資源配分のコントロールも可能となる.   しかし,もちろん「評価」の具体的方法は怪しい.   提言にある「競争的な環境の整備」は,自由な環境での「競争」ではなく,   「適切な評価」システムにいかに擦り寄るかの「競争」だろう. ○ 「国が,その運営や組織編成の在り方に対して,相当な関わりを持つことは   当然」と言うときの「国」とは?   河口堰,ダム,原発,薬害...果たして「国」が常に正しいか.   (ちなみに「独法」に対する私の強い嫌悪は,一昨年?国研の独法化に際し   て,「国」である当時の野中官房長官が「ごちゃごちゃ反対するようなとこ   ろは予算を削ってしまえ」というような主旨の発言をしていたところにもあ   る.)   「専門の学識経験者の意見を聴く」にせよ,「大臣が目標を指示したり,計   画を認可する」システムである.「学識経験者」というものも極めて怪しい. ○ 学長選出に,「学外の関係者及び学内の代表者(評議員)からなる推薦委員   会を設けた上で,これに『タックス・ペイヤー』たる者を参加させる」など   と提言されているが,おそらくは,その種の「代表」は産業界から選ばれる   のだろう.いわゆる普通の納税者国民の利害と反する可能性が大きい.   国旗・国歌法後の国立大学でのどたばたを見ても,政府自民党が望む学長像   は容易に想像できる.自民党提言の「必ずしも適任者が学長に選ばれないよ   うな状況」とはどういう意味か.   学長の権限強化とともに教授会(評議会も)の権限の大幅縮小が言われる.   昨年9月の文部省の検討の方向にあった,大学の「自主・自律性」は実質削   られてしまった.   「教授会」に問題があるのであれば,別の「自治」システムを開発する努力   をすれば良いのであって,トップの権限強化に安易に進む必要は無い.例え   ば学生も含めた直接民主制とかの実験の可能性もある.そういう試行錯誤を   行うにも独立行政法人の枠組みは邪魔だ.   任期制の大幅な導入も提言されているが,身分の不安定化が問題なだけでな   く,これも自治には同様の害がある.(そこがねらいかも知れないが.)   大学の成員が自分の所属する大学の自治に責任を負わないようなシステムは   先が暗い. ○ 競争原理の導入を謳う反面,大学に財務運営の自律性はなく,自由に組織を   作って運営できるわけでもない.そもそも,国立大学の現状を実際に分析し   た上で「提言」するならば,例えば事務官や技官の大幅な増員の必要性を謳   い,そのためにこそ総定員法の枠を外さなければならない,とか,になるは   ずではないか? ----------------- 文部大臣説明について ----------------- ○ 「国立大学の特性や,役割,機能に照らして,国立大学についても十分適合   するものであると考える」独立行政法人制度を国立大学に適応する場合に,   「調整法」や「特例法」の検討の必要性や,「組織運営」「人事」「財務会   計」に「極めて広範多岐」の検討課題があるとあらためて言っているだけで   具体的な「説明」は何も無いに等しい.たとえば昨年の9月20日の「国立大   学の独立行政法人化の検討の方向」にあった「諸点」がどのようにして「十   分かつ適切に確保され」ようとしているのかの説明すら無い.   また大学側との調整や合意もなく,責任政党の政策は重視すべきとして,上   記の自民党「提言」の直後にこのような方針の「説明」がなされ,これをもっ   て「文部省が国立大学の独立行政法人化を正式表明」と報道されている. ○ 「今後の国立大学等の在り方に関する懇談会」の下に「調査検討会議」を開   催し,平成13年度中にとりまとめをお願いする.それを踏まえて最終的な   結論を得たい,としている. ○ 面白いのは,大学に対してさまざまな規制や財政誘導を行っている主体であ   る文部大臣が,「説明」のなかで,「独立行政法人制度は,日常的な国の規   制が緩和されることにより,透明性の高い手続きの下に,国立大学の自主性,   自律性を大幅に拡大し,教育研究の柔軟,活発な進展を図ることが期待でき   る制度であります」などと言っていることか.そう思うのなら,さっさと規   制や誘導を撤廃する努力をまずすればよいだけだ.   まして「(国立大学のままで)規制緩和を進めたとしても,文部大臣の広範   な指揮監督権の下に置かれる状況には変わりはなく」などと言っている(昨   年9月の文部大臣あいさつにも「文部大臣の広範な指揮監督権」という同じ言   い方が出てくる)が,これは文部省設置法6条2項「文部省は,その権限の   行使に当たって,法律に別段の定がある場合を除いては,行政上及び運営上   の監督を行わないものとする」に反するのではないか,と指摘されている. -------------------------------------------------------------- 私にとっては問題は極めて単純. 現在行われようとしている「改革」が,日本国憲法第23条や教育基本法第10条 に反するものなのではないかを良く見極める必要がある.学問の自由が保障される のか.そのための大学の自治は保障されているのか.そして,もしもそうでないな らば,日本国憲法第12条に従って,これを止めさせる努力をしなければならない. 「改革熱」にのって,自律的に改革出来ない大学の現状と独立行政法人化問題を同 時に議論すべきではない. 北大内の状況としては,独立行政法人化問題を考える北大ネットワーが2月に全 学電子アンケートを行った.352通の回答を得たが,最終的な意思決定の方法 については 74% 全構成員の投票をすべきである 16% 評議会決議がよい 4% わからない 2% 総長一任がよい 1% 北海道大学として態度を明らかにする必要はないと思う という結果だった. (多少卑怯な言い方に聞こえるかも知れないが)「改革」を行おうとする者が何に 従って「改革」を行おうとしているのか,きちんと責任の所在を認識するためにも, 全学構成員の意志を問うべきだと考える.それすら出来ないようでは,既に大学の 自治は破綻している. 上記アンケート結果にもあるように,多くの構成員はこの法人化に対して個々の意志 を表明することを望んでいる. =========================参考============================== 日本国憲法 第23条 学問の自由は,これを保障する. 第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は,国民の不断の努力によつて,これを 保持しなければならない. 又,国民は,これを濫用してはならないのであつて,常に公共の福祉のためにこ れを利用する責任を負ふ. --------- 教育基本法 第10条 教育は,不当な支配に服することなく,国民全体に対し直接に責任を負っておこ なわれるべきものである. 2 教育行政はこの自覚のもとに,教育の目的を遂行するに必要な諸条件の 整備確立を目標として行われなければならない. ======================================================= 現時点での問題点を整理するための資料としては,例えば ○ 全大教資料 No.99-21   自民党文教部会・文教制度調査会「提言これからの国立大学の在り方について」   に関する「論点整理」 http://www.dango.ne.jp/fuj/dokuhouka/zendaikyo/jiminteigenronten.htm ○ 自民党提言の虚像と実像/首都圏ネットワーク見解   http://www.asahi-net.or.jp/‾bh5t-ssk/net/netjimu000518.html 等が詳しい.