==> 国立大学独立行政法人化の諸問題

プロジェクト研究費配分は大きな成果を産まない


Date: Thu, 22 Jun 2000 16:05:08 +0900
From:Yuichi WATANABE
Subject: [reform:02935] プロジェクト研究費配分は大きな成果を産まない
To: reform@ed.niigata-u.ac.jp

各位:
  校費をカットして、そのプールをプロジェクト経費として学内公募する
動きが、伝染病の様に広がり始めた。じっくりと研究を積み重ねてきた
能力ある研究者なら、この配分が非効率的、非効果的なものになるのではな
いかと「直感」するものの、応募しなければ損だから、仕方なく認めるという
態度へと向かうのが現実ではないかと身辺の動きを見ても思う。
  このプロジェクトにいち早く踏み切った新潟大学に籍を置く一人として、
プールした何億円もの金を「泡(or 粟=誰かが濡れ手で掴む)」の様に分け
与える事は、今はやりの tax-payers に本当に胸張って実施する行為では
決してないという立場から、直感ではなく、事実をもって主張しようと以下の
記事を送付したい。
  あちこちでプロジェクト方式が取り入れられようとしているこの時点で、
このような愚かな制度でムダに金を使うことそ阻止する論拠として利用願いたい。

========== 資料 ======
科学技術白書 1997(平成9)年度

第一部 開かれた研究社会の創造をめざして

  第二節 研究者や民間企業はこう考える

 科学技術庁の委託により、政策科学研究所が国立試験研究期間の中核的研究者を
対象に行った調査の結果:

p.21  最大成果を上げた研究についての、促進的・阻害的要因
   (図 1-2-5)

 ++成果に促進的に働いた因子+++++ (高いものから順)
P1)自分の関心・意欲が生かされた
P2)自分の知識・技術・経験
P3)研究者に許されたテーマ運営の自律性
P4)所外研究者との研究交流
P5)学会参加・発表の自由度
P6)研究に注力できる個人生活・研究所生活

 −−研究に阻害的に働いた因子−−−−−(低いものから)
M1)研究雑務の処理体制(不備)
M2)研究資金使用期間の制約(予算年度などの)
M3)研究者の処遇システム
M4)研究所を対象とした評価制度
M5)研究資金用途の制約(費目間の流用制約など)

 筆者コメント: 学部や組織を横断したようなプロジェクトが推奨されて
  いるが、研究の最大の成果はやはり自由なテーマ設定(P1〜3)など
  自分の関心に沿った研究活動の保障であることがわかる。
    他方、阻害因子の4番に注目すべきだろう。研究組織評価(M4)は研究
をむしろ阻害しているのである。これに予算申請のための書類、内部の審査委員の
選出と  決定プロセス、一年もない予算消化期間(M2)の後に成果報告書を書か
せる「雑務」の増加により、研究に注力できる生活(P5)は破壊される
   ===============================

 p.23  最大成果をあげた研究資金の性格 (図1-2-7)

第一位)研究所の経常的研究費(均等配分)50.2%
第二位) 国の助成費・政府出資金    43.8%
第三位) 研究所の重点配分                       26.3%
第四位) 官民の共同・受託研究費    11.5%
第五位)  その他の研究費                         11.8%

 筆者コメント: ここでも均等に配分することが、成果を上げる研究に結びつく
   結果がでている。学内の審査で配分を行う行為は第三位の研究所内の裁量に
   もとづく重点配分に相当すると思われるが、大変この寄与率は低い。

====まとめ=====

 更に詳細なデータを加え、新潟大学の中では、研究成果と予算についての
勉強会(主催は未定)を開催しようと考えている。もし新潟だけで惜しいと
思われる北陸(or 関東周辺)の大学の方があったら、少し集まってこのよう
な会を催す必要もあろう。
 法人化に反対するとともに、少しでも国民の税金を研究の成果に結びつく方向
を指向するのは、我々が一瞬も忘れてはならない、最も重要な義務である。

 科学技術立国体制に伴い、任期制が持ち出されて以来、予算の重点配分、評価に
伴う配当を官僚が主導して言い出した時から、科学技術白書(有馬氏の氏名が冒頭
にあったのでこの書はいかがなものかと思ったが、何と大変役)に立つデータが含
まれており、図書に眠らせておくのは、惜しい書物である事を知った。
 
 真実を明らかにする研究にそんな莫大な金が要るものか、我が国の基礎研究を
発展させる元となった、均等配分の経常費のメリットは強調してもし過ぎることは
ない。上の事実を大学で調査するならば、更に経常費の重要性が高まると、少なく
とも投稿者は予測している。

 学内プロジェクトが始まったとたん、組合活動を相当経験した者までもが
獲得に走る姿を露にするのは、まさに現実主義者への転向としか言い様がない。


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