==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
国立大学協会
会長 蓮實重彦殿

意見書の提出について

独立行政法人化問題に関する以下の意見書を、国立大学協会の会則第28条に従って、文書で提出させていただきます。定例総会における議論において参考として頂ければ幸いです。

辻下 徹

北海道大学 大学院理学研究科 数学専攻
〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目
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意見書

独立行政法人化問題における二重の危機と二重の好機

 国立大学は独立行政法人化問題において二重の危機に直面しています。一つは独立行政法人化によって学問の自由を喪失するという危機です。これは大学が大学とは似て非なるものに変えられてしまう深刻な危機です。しかし、それを遥かに越えるおぞましい危機があります。独立行政法人化のような馬鹿げた危機を、政治的な圧力に屈して回避しえないこと自身が、国立大学が精神的活力を失っていることを証明し独立行政法人化が正しいことを示してしまう、という危機です。精神的活力と学問の自由とは表裏一体ですから、独立行政法人化を国立大学が認めれば、国立大学は学問の自由を失うだけでなく、そもそも学問の自由など不要な存在だったという烙印を押されてしまうのです。

 いま日本という国では次世代が困ることが到るところで平然と行われています。次世代の運命に国民の大半が無関心になった時点で国は滅んでいると言えましょう。独立行政法人化により日本社会の知的基盤が受けるダメージの被害を受けるのは次世代の人達です。彼等は、前世代の過誤にすら気付かない中世のような知的薄明時代に生きることになります。そのことに私たちは無関心であってはならないのです。

 その反面、国立大学は独立行政法人化問題において二重の好機に遭遇しています。独立行政法人化を回避しえたとき、学問の自由の意義を深く再認識し精神的活力を取り戻すだけでなく、学問の自由を守り抜くことを通して国立大学全体に、改革の上滑りな掛け声に替わって精神的活気がみなぎり、大学間には新しい相互信頼と連携が築かれ、大学は日本社会の真の知的リーダーとしての矜持を持ち、その義務を果たすことに熱意を持つようになるに違いありません。