Date: Tue, 1 Aug 2000 16:39:44 +0900 From: 立石雅昭Subject: [reform:03043] 宮脇氏講演 To: reform@ed.niigata-u.ac.jp 各位 新潟大学 立石 雅昭 文章が練れてなくて恐縮です。重要な内容なのですが、十分まとめる力がなくて残念 です。しかし、さまざまな場でこうした独法下での財政問題の学習は重要だと改めて 思いました。
客観的に本質的な問題点を指摘
宮脇 淳氏講演会(7月31日)報告
−独法下における国立大学予算−
北海道大学大学院法学研究科教授宮脇 淳氏の「国立大学の法人化問題と予算会計制度」と銘打った学習・講演会が新潟大学で開催された。氏は参議院、経企庁などで奉職の後、この4月から北大に移られたとのよし。行革推進本部の独立行政法人設置形態に関する委員会でも財務関係の専門家として参画、また、文部省や国大協の設置形態検討会議の委員もなされているとの紹介があった。およそ1時間強の講演と約30分の質疑が行われた。
独法化が先行している他省庁研究機関などに関する枠組みをふまえて、今後、大学の独立行政法人化の制度設計の中で論議される会計制度の問題がきわめて客観的に語られ、財政問題に疎い我々にも、その問題点が比較的リアルに把握できる講演だったといえる。
なお、以下の報告は私の力量不足から講演内容を十分フォローできていないところもある。宮脇氏の意が十分伝えられていない面もあるかと思う。
講演は大きく以下の4つについて行われた。
3月自民党の高等教育研究グループでの提言を受け、文部省は5月「国立大学の独立行政法人化」の方針を提示した。それを受けて、文部省の制度設計のための調査検討会議に国大協が参画するとともに、国大協は設置形態検討特別委員会を発足させた。文部省の調査検討会議は実質的には10月から審議が始められ、13年末には概要がまとめられ、14年にはその細部が詰められる予定であるが、それに先だって国大協は8月上旬から特別委員会での審議が始められる。ここで重要なことは、独立行政法人の財政に関する枠組みは先行している他省庁諸機関においてその制度運用がすでに始まるということである。すなわち、この8月末には来年度概算要求の枠組みが出され、併せて中期計画も提出されるのである。国立大学の独立行政法人の制度設計に関する議論と平行してこうした運用が始まるということであり、基本的に通則法下での独立行政法人である以上、この枠組みからどれだけはずれることができるか問題となる。
また、政府は今後、行革と財政危機への取り組みを強めると考えられ、その中で特殊法人の見直しが提起されるであろう。具体的には個々の特殊法人は民営化するか、廃止するか、あるいは独立行政法人化するという3つの選択がある。また、来年参議院選挙があることも関連して財政の見直しの中で、特別会計制度の見直しが14年度予算から浮上してくる。来年4月までには何らかの提示があるであろう。私見としては特別会計制度は独法の制度設計に先行して議論される。これらの点は大学の独法に強く関連してくる。この2年間の国立大学の独法化に関する議論をみていて感じることは、大学関係者の議論が常に後手後手に回っていることである。
1)会計基準の汎用性
独法会計基準は汎用性を持たねばならない。すなわち、独立行政法人だけでなく特殊法人などほかの法人格への適用と独法機関相互の間での普遍性が求められる。総務庁自体はこの独法化は国立大を念頭に置いていなかったのであり、国立大が独法化する必然性はないとみている。大学が独法化すれば大きな矛盾がでるとみられる。しかし、文部省や大学が自ら希望して参画する以上、制度の基本は守ってもらわねばならない。国立大の独法化は政治の動きの中ででてきたことであり、通則法の枠内での独法が基本である。仮に郵政のような特別法の制定を考えるには、2つのハードルがある。一つは私立学校との差別化を明確にして目的を書ききれるか、ということ、今ひとつは特別法による法人を少なくしようとしている内閣法制局に十分説明しうるか、ということである。結果として独立行政法人通則法の枠内で特例措置を盛り込むことを目指すことになるであろう。
2)「剰余金」を繋ぎ手に中期計画が連結
独立行政法人会計基準の特徴は「剰余金」を繋ぎ手にして前後の中期計画が連結している点にある。仮に予算として10億円受け取った法人は、複式簿記型では負債を10億抱えることでもあり、これを中期計画で想定された行政サービスの質と量によって評価された収益によってこの負債を減じていかなければならない。仮に5億円の人件費を支出しても、評価によってそれが4億円分にしか算定されない場合、負債残高は現金(予算)残高を1億上回ることになる。これを今後の行政サービスの中で取り戻さねばならない。
最初の期の中期計画と予算は従前と大きく変化はないであろう。しかし、2期目は評価が導入されるとともに、欠損、負債などとともに剰余金が反映され、様々な格差が生じるであろう。評価は成果振興基準(目標がどれだけ達成されたか)、あるいはコスト進行基準(現行に近い)のいずれに沿って行うかによってかなり異なり、どのように行うかが問題である。
逆に剰余金が生まれた場合(例えば、6億円の評価がなされ、1億円が生み出された場合)、それは独法側の努力で生み出された資金という見方と中期計画が不適切であったために生じた資金という見方もできる。そのまま独法の資金として留保できるとは限らない。あくまでも独法の行政サービスは中期計画に沿ったものでなければならず、余剰金・積立金の使途も中期計画に基づき、その順番に従って行わなければならない。
剰余金はその1/2位は国庫納入が考えられている。また、次期中期計画でその剰余金に見合った運営交付金が削減対象となる可能性もある。こうしたリンケージをはずすことが可能かどうかが議論されるであろう。
3)資本金と基金
独法会計基準ではキャッシュフロー管理が徹底され、基金という概念は存在しない、従って、独法は独自にpoolやfundをもてない。
民間では減価償却引当を見込み、収益の中から積み立てて内部留保を厚くできるが、独法ではこれは不可。中期計画ではrunning costを含めて計上し、予算規模は大きくならざるを得ない。無償で貸与される資産も予算措置がなくても計上しなければならない。
4)連結とセグメント会計
独法先行機関にはないが、病院や大学では連結が議論されている。子会社や財団に相当する出資金について今後人事関係含めて議論される。当然、学部ごとのような細分化された会計単位が導入されるであろう。
5)独法創設時における資産評価(現物出資)
すべて移行するかどうかはまだ決まっていないが、基本は新潟大学で管理しているものは国の所有であっても現物出資として新潟大学の資産として計上することになろう。その際、時価評価となる。配当金は求めないが、国は出資者である。国立学校特別会計は1兆円強の累積赤字を抱えており、この整理が問題となる。一部、国有財産のまま法人は貸与という予算措置も考えられる。新設大学では定置が地方自治体のものである場合があるが、この扱いは現物出資になるかどうかは問題。
3.財政問題検討の枠組み(この項はまとめ的なものであり、レジメから)
1)法人格の位置づけと国の財政制度との連関性 (国全体における高等教育に対する資源配分確保) →法人格は公共法人 →特定財源並びに特別会計機能 2)中期計画と予算会計制度(高等教育内の資源配分の姿) →業務方法書と中期計画の雛形 →運営交付金など算定ルール →基金概念の導入(財政コントロールの領域) 3)資産・負債管理 →外部資金調達の関係 →信用形成 →資産の運営・管理 4)ディスクロ →会計基準などの設定 →財務諸表のあり方 →会計処理システム
(1)独法化、別法人に関わらず、独自の予算会計制度を形成する必要がある。
(2)特定財源及び特別会計機能の維持・形成
特別会計ではなく、一般会計から直入するとすると、大学予算は財政状況や景気に影響されやすくなる。独法で特別会計が維持できるかどうか、特定財源の絡みもあり、制度設計の重要な柱となる。
(3)財政と中期計画などの関係
独法は行政の中の1法人であり、中期計画に盛り込まないことはできない。中央省庁等改革委員会では業務方法書(定款)はかなり概略的に、中期計画で細部を詰めるとしている。交付金算定ルールは地方交付金算定の仕方と近くなる。予算額は生産額そのままではなく、減額せざるを得ないであろう。組織統合や上積み方法が採られる。
なにに使ってもよいが、5年で赤字がでた場合は外部資金の導入や借金が考えられる。
補助金適正化法の適用を受けることになるが、現行ではきわめて細かく規定されている。この使途制限の排除が必要となる。
外部資金は一応別枠とされるが、キャッシュフローに組み込まれ、運営交付金に影響せざるを得ないであろう。外部資金が潤沢になれば、民営化が強く押し出されることになる。もともと、独法はアウトソーイングが根底にある。
会計処理は公認会計士による監査が義務づけられる。独法化によって公認会計士は戦々恐々としている。それはどこまで、監査結果の責任に耐えられるか、ということで、詳細な情報の提供を求めるであろう。そのために膨大な作業が必要となる。ここに重要性の原則が必要だが、独法の監査基準はまだできていない。
赤字になれば、借金も導入することになるが、大学間で信用力に格差があるのが現実。共同借入機関の必要性もいわれている。処理システムも共同化が進むであろう。企業会計的処理に対応できるようになるには2〜3年はかかるであろう、財政情報が大学にはないものもある。
経常経費はどんどん削られる。別枠の繰り入れシステムや特定財源が必要であろう。財投によって病院運営や移転などが借入で行われることになるが、借金をどうするか、累積赤字は精算して出発するとしても、その後の赤字をどうするかは大問題であろう。
最後に、仮に独法の制度設計はよくても、会計制度自体によってコントロールは簡単であり、動かなくなる可能性もあることが話されました。
以上、まとめてみると、最初の期は何とかなっても、問題は2期目、平成20年であり、中期計画に対する国の関与、特に大蔵などの大きな関与はさけられないことが明らかにされました。質疑の中で、独法の会計制度はinsensitiveで、何もない制度ですが、大学側に納税者への説明責任をきっちり果たすことを求めるものだということ。大学は高等教育についてもっと国民に対してその役割を説明する責任があることが強調されました。
十分、まとめきれなくて恐縮です。講師に対しても失礼かと存じます。しかし、こうした話はもっと多くの大学人が学ぶべきだと感じました。特に政治の流れのままに独法化への道を突き進もうとする一部大学人は、日本における高等教育を守るために奮闘している人々がいることを銘記するべきでしょう。
なお、独法下における会計基準についての詳細なQ & Aが8月中には出される予定とのことです。会計基準についてはそれから検討に入るとのことでした。
立石 雅昭 新潟大学理学部地質科学教室 〒950-2181 新潟市五十嵐2の町8050