Date: Sun, 22 Oct 2000 11:35:38 +0900 Subject: [he-forum 1355] 法科大学院構想批判 法科大学院構想(以下、ロースクール構想)に関して、問題点を提起し、代替案 として私案を提示します。法曹教育改革の大勢は既に決しているかに見えますが、 以下のような大きな問題点をはらんでおり、根本的に修正すべきであると考えま す。司法制度改革審議会の最終答申まで、まだ半年以上あるのですから、各方面に その問題点を十分に認識していただければ、勝負はこれからであるとも考えます。 現在までに示されているロースクール構想の問題点は、次の通りであると考えま す。 (1)設立に関して、コストが莫大にかかることで、その実現性に疑問がありま す。あえて実現させるには相当巨額な国家予算の支出が必要と思われますが、この 財政難の時代に疑問があり、よりコストをかけずに、他に優れた法曹養成の方法が あるのではないでしょうか。 このコストが莫大にかかる点につき、大学関係者の間では、ロースクールの立ち 上げだけで20億円が必要であるとの試算があるとの情報が流れており、多数の有 為な人材を輩出してきた、某有名私学ですらロースクール設立は考えていないと言 われています。大学関係のロースクールは、ふたを開けてみれば、国公立・私立す べてを合計して、20大学、総定員は1000名程度にしかならないとも考えられ ます。無論、大蔵省が巨額の補助金を別途用意するのならば、話は別でしょうが、 この財政難の時代にという気がします。結局の所、法曹養成がいわゆる旧帝大など の一部大学でのみ独占的に行われるということになりそうな雲行きです。 伝えられるように、司法試験の合格者を3千人とするならば、司法研修所も3倍 に規模拡大をする必要があり、司法研修所の教官確保の為に、裁判官の採用もまた 大幅に増加させる必要がありましょう。これだけでも巨額の国家予算が必要な筈で すが、それとロースクールの為の補助金とを併せれば、一段と巨額になるのではな いでしょうか。財政的な裏付けのある法学教育改革の議論が必要と考えますが、い かがでしょうか。 (2)今回のロースクール構想では、アメリカの法曹養成の模倣の色彩が強まっ ていると考えます。しかしながら、これは日本で行われてきた法曹養成の伝統とは 全く異なるものに、大変なコストをかけて転換しようとするものであると言えま す。日本の法学教育の伝統の次の点を踏まえるべきではないでしょうか。 まず、アメリカでは学部段階で全く法学教育が行われていないので、法律に関す る知識はすべて、ロースクール卒業者だけが、官庁・企業に提供することになって います。しかしながら、法学部のある日本では、法曹資格がなくても相当高い法律 知識を持っている人材が、官庁・企業に提供されています。この違いを無視して、 アメリカの模倣に走るのは疑問です。 次に、日本では既に大学院で、「法学研究科」を中心に、高度な法学教育が既に 行われているのであり、これを無視してアメリカの模倣に走るのは疑問です。 また日本では実務研修が、司法研修所で相当高度に行われています。アメリカで はこれほどの教育はされていません。この日本の伝統を踏まえて制度設計をすべき ではないでしょうか。 (3)ロースクール自体が司法試験の受験予備校化するとの懸念が関係者の間で は、強まっています。これを防ぐには、ロースクールに対する外部からの強力な継 続的監督をしなければなりませんが、これにも相当なコストがかかることが予想さ れます。 そもそも、現行制度の最大の問題点は、司法試験の受験者が大学教育を無視し て、司法試験予備校に通って受験技術の勉強をして合格し、法学部でのしっかりし た勉強をしておらず、質が低下してきていることにあり、司法試験合格者を増加さ せるとその弊害が強まることにあった筈です。 それならば、次のように対処すべきではないでしょうか。 私自身の考える、あるべき法学教育改革案の骨子は次の通りです。
(1)司法試験は問題の様式や受験資格などは、基本的に現行通りとし、合格者 数のみ2千人から3千人程度にまで増加させる。 |