==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
「経済」2000.11 p109-123

独立行政法人化で大学の自立性は高まるか
--国立大学財政の実態と財政自治権の視点から

岡田知弘(京都大学教授)・二宮厚美(神戸大学教授)

抜粋

おわりに−−独立行政法人と大学の財政自治権

以上で明らかになった国立大学財政の貧困、また大学財政の自立性、民主制、 固有性の欠如あるいは希薄化は、戦後の大学政策、とりわけ80年代後半以降 の大学改革政策が生み出したものである。それは、大学人の責任というよりも、 自民党提言がいうように「国の責任」であり、政治の責任である。この点を明 確にすることなく、独法化すれぱすべて解決すると強弁してみても、何ら説得 力はない。大学財政に即してみれば、文部大臣が強調する自律性や自主性を大 学から奪い取ってきたのは文部省それ自身だからである。 しかも、独立行政法人の制度的限界は、これまで多くの論者が指摘してきたよ うに、名称とは逆に、その本質が「行政に従属する法人」だという点にある。 少なくとも財政面から見ると、自由度が増すのは、中期計画期間内の運営費交 付金の使用と剰余金の積み立て、予算執行における弾力化、給与決定であり、 基本金の積み立てや長期運用は不可能である。また、渡しきり補助金として強 調されている運営費交付金は、外部からの評価と結合して配分されるシステム である。その意味で、今年度開始の積算校費制度の見直しは、独法化への財政 的地ならしといってよい。 しかも、文部大臣説明によると、予算執行、給与決定、組織編成などの諸 規制をできるだけ緩和して、運営の自由度を高め、学長の権限を拡大すべきで あるとしている。このようなシステムの下では、時々の政治家や官僚、財界人、 学界ボスなどの「国策」親に対応した評価基準に基づいて、現状よりもはるか に財政誘導的な資源配分がなされ、それに応じて学長が学内民主主義を無視し た大学運営を行う可能性が強い。首都圏における大学連合の動きは、その先例 ともいえる。その意味で、大学財政の自主性と民主性は、独法化のもとで一層 形骸化するといってよい。 さらに、問題なのは、運営費交付金と大学の独自財源との関係である。独立行 政法人の会計制度によると、大学個が外部資金や授業科・附属病院収入等を増 大して独自財源を拡充した場合、それに応じて運営費交付金は滅額する関係に ある。これはあたかも、地方自治体における「地方税=独自財源」と「交付税 =依存財源」との関係と酷似している。そこでは、大学間で競争的資金を奪い 合う競争が進行すればするほど、国庫から交付される交付金は少なくてすむこ とになって、独法化手法による行政改革の目的である行政コストの削減が実現 されることになるだろう。 だが逆にこれは、大学の固有め機能である教育・研究活動が、現状よりもさら に不安定化し希薄化することを意味する。ここではまた、小淵論文が指摘して いるように、学生の授業料負担の増大や、教職員の削滅といった経費節滅圧力 も高まるに違いない。 国民の付託に応え、大学の本来の活動を再生、拡充するためには、冒頭で述べ たユネスコ勧告型の大学自治と財政自治権の確立が必要不可欠である。それは、 独立行政法人制度の枠組みでは原理的に不可能であって、21世紀には真の意 味での自立性を有する大学の「法人化」が強く求められていること、この点を 最後に指摘しておきたいと思う。