大学評価機構照会事項についての北大学長への要望書


Date: Fri, 27 Oct 2000 00:03:25 +0900
To: bureau
From: Toru Tsujishita 
Subject: 大学評価機構照会事項について


                      平成12年10月26日
 
北 海 道 大 学 長

丹 保 憲 仁 殿


国立大学協会に対する以下の要望がありますので、お取り次ぎ頂ければ幸いです。

また、丹保学長におかれましては、大学評価機構評議員として運営を担っているお立
場からも、機構の第三者性の堅持、大学を真に活性化させる大学評価の実現につき、
尽力をお願いします。

 
       辻 下 徹
             独立行政法人化問題を考える北大ネットワーク会員

-----------------------------要望内容---------------------------------------
                
大学評価機構から国立大学協会に10月末を期限とする照会のあった「平成12年度 
に着手する大学評価の内容・方法等について(案)」(以下「評価方法案」と略す)
http://www.niad.ac.jp/hyouka/hyouka-houhou.PDF
について、以下の4点につき早急に検討し、回答に反映させることを要望する。すで
に回答済みの場合には、回答内容を早急に公表して頂きたい。

「評価方法案」では、すべての評価項目について、評価結果を固定された文で表現 
し、「組織」の「研究内容及び水準」の評価を「教員の個別の業績を基にする」とし 
ている。また、「評価方法案」では「設定された研究目的及び目標に照らし」評価を 
行うとしている。


【要望1】「評価方法案」で示された4段階固定表現(実質的点数化)は外し、自由
な記述だけにする。

(理由)大学評価機構設立に伴う法改正の国会審議が行われたが、3月21日参議
院文教・ 科学委員会で中曽根前文部大臣が「このため、評価結果は、各大学がそれ
ぞれ設定した目的、 目標に沿った教育研究活動の状況、つまり学校によって学校の
方針もある、大学によって方針もあるわけでございますから、全国一律の機械的な
評価をするということではなくて、そういう各大学の状況や、またすぐれた取り組み
とか、あるいは改善を要する点を点数化ではなくて記述によって明らかにすることを
考えておりまして、御指摘のような点数化の評定を行うことは考えておりません。」
と答弁していることに反する。
 3月21日、参議院文教・科学委員会議事録:
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/00321-bunkyou-kagaku.html#tensuu

次の項目にも妥当することだが、国会審議での政府回答に反する運営を国家機関が、
行なうことは、政府の背信行為となる。所轄省である文部省自身は当然警告してい
ると思うが、念のため国立大学協会からも警告すべきである。


【要望2】研究者の個人業績の評価内容・方法等は各大学の判断に委ね、評価機構
への報告事項とはしない。

(理由)同じく、3月21日参議院文教・科学委員会で、河村前文部省政務次官が
「この大学評価・学位授与機構は、個人の評価は予定をいたしておりませんで各大学
を評価の対象としておりますが、その中で、学部ごと、あるいは研究科、それを中心
に評価をしていこうということを今考えておるわけでございます。」
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/00321-bunkyou-kagaku.html#kojin
と答弁していることに反する。


【要望3】目的・目標に対する達成度で行う評価は学術研究には適しない。

(理由)目標達成型研究を諸々の研究の中心に据えることは、本来の学術研究活動
を「萌芽的研究」「基礎的研究」と名付けて周辺に位置づけることを意味する。この
ような偏った研究観を基にした評価がもたらす<競争的環境>では<個性輝く>こと
などありえず、学術研究の質の広汎な低下をもたらすであろう。


【要望4】大学評価機構の全活動を文書で公開し、大学評価機構の評価機能を、種々
の主体が自由に評価できるようにする。

(理由)大学評価機構が第三者性を保てるかどうか、大学だけでなく、政・官・財か
らの独立性を保てるか否かは、評価の意義を左右する。また、評価機構・評価委員の
評価能力が、種々の団体による評価を受ける体制を確保しなければならない。これが、
国立大学協会の最終報告で必要性を強調した「レイマンコントロール」のための最低
条件である。このために、すべての審議過程は議事概要ではなく発言者が明記された
議事録として公開し、評価結果に対する大学からの申し立てに対する審議内容も公開
する。なお、「評価方法案」自身に到るまでの審議過程も当然公開されなければなら
ない。さもなければ、大学について文部省が調べたいことを列挙したものが「評価方
法案」ではないか、という疑いは消えない。



【補足】「国立大学協会の大学評価に関する特別委員会」の3月30日「最終報告」
には、大学評価機構についての大きな懸念が表明されている。

「大学評価機関が、独立の機関として大きな権力をもつことになることも事実であ 
る。..評価結果が大学に大きな影響を与えることから、評価機関は巨大な権力をも 
つことにもなろう。個々の大学に活力を与え、教育、研究上の自律的なダイナミズム 
を支える、という大学評価の本来の理念が実現されるためには、大学評価機関のレイ 
マンコントロール、運営の透明性が保証されることがきわめて重要であり、それによ 
ってわが国の大学評価の将来が決定されることにもなろう。」
「創設準備委員会においては、国立大学側の委員から、大学評価機関の活動の基木 
を決定する評議員会、 運営委員会の運営の原則、構成員の選任等について意見が述 
べられ、報告にも活かされている。しかし管理運営については未決定の部分も多く、
具体的な規定について、注意深く検討し、国立大学としての見解を述べていく必要が
ある。」(詳しくは末尾に添付)

今回の照会への回答は、大学評価機構設立を積極的に支援した国立大学協会が機構の
挙動について負うている永続的な責任を果たす最初の重大な行為である。

大学評価機構の創設準備委員会には国立大学協会のWGが積極的に参加し、大学社会
内部で議論を深めることなく、機構の設立に全面的に協力した。しかし、設立後は、 
国立大学協会は経団連等の団体と同列の発言権しかなく、大学の意に反した方向に進 
み始めている。現在、国立大学協会は、大学社会内部での議論を深めることもなく、 
独立行政法人化調査検討会議に積極的に参加し、大学にとって好ましい法人化を実現 
しようとしているが、この2つのプロセスが酷似していることを国立大学協会の方々 
は正視して頂きたい。


辻下 徹
北海道大学理学研究科

TEL and FAX 011-706-3823
tujista@math.sci.hokudai.ac.jp
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh

(資料)
「国立大学協会の大学評価に関する特別委員会最終報告」2000.3.30 より
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/00330-kokudaikyou-houkoku.html

評価機関の理念と組織運営

  評価機関の基本的な役割が、大学の外の視点から大学を評価し、それによっ
て大学の自助的な改革を促して、教育研究の高度化、活性化をもたらすことに
あることはいうまでもない。そうしたメカニズムが機能するためには、第一に、
大学と社会との間に生産的な緊張関係が生み出されること、第二、にそれをバ
ネとして大学が自らの組織の中から改革への意志と実践を生み出すこと、この
二つが必須の条件となる。国立大学は、このような観点から大学評価機関を、
自らの改革の契機として積極的に位置づけてきたのであり、全国立大学が事務
職員定員を、大学評価機関に振り向けるという形で協力を行おうとしているの
もそのためであった。しかし他方で大学評価機関が、独立の機関として大きな
権力をもつことになることも事実である。組織的にも、新機関は常勤の教官お
よび事務職員だけでも百人規模と、非常勤の評価委員を含めれば千人規模であ
り、小規模の大学を越え、予算も大きなものとなる。国際的にみても、評価機
関としては最大規模といえるであろう。それは評価機関の課題からすれば当然
ともいえる。しかしその一方で、このような規模の大きな組織は、ともすれぱ
組織の存続を自己目的化しやすく、この機関が評価のための評価機関に陥る危
険もないとはいえない。また評価結果が大学に大きな影響を与えることから、
評価機関は巨大な権力をもつことにもなろう.個々の大学に活力を与え、教育、
研究上の自律的なダイナミズムを支える、という大学評価の本来の理念が実現
されるためには、大学評価機関のレイマンコントロール、運営の透明性が保証
されることがきわめて重要であり、それによってわが国の大学評価の将来が決
定されることにもなろう。
  このことは大学評価機関の管理運営について、社会および大学の側の意見が
十分に反映される機構を、明確に規定しておく必要があることを示している。
また新機関において、大学評価と従来の学位授与機構の機能とが併存すること
から生じる管理運営の問題についても、十分に注意を払う必要がある。創設準
備委員会においては、国立大学側の委員から、大学評価機関の活動の基本を決
定する評議員会、運営委員会の運営の原則、構成員の選任等について意見が述
べられ、報告にも活かされている。しかし管理運営については未決定の部分も
多く、具体的な規定について、注意深く検討し、国立大学としての見解を述べ
ていく必要がある。
---------------------------以上---------------------------------------