To: kihonkei@sta.go.jp
From: Toru Tsujishita 
Subject: 「科学技術基本計画案への意見」

科学技術庁科学技術政策局科学技術基本計画室 殿

募集要項に従い、以下の意見を提出致します。よろしく
ご検討くださいますようお願い致します。

辻下 徹


意見(794字)

 当該科学技術基本計画には重大な欠陥がある。日本の
研究者社会の協力体制を弱め、日本社会総体の研究能力
の質を急速に低下させるリスクが高い。
  知の創造と活用により世界に貢献できる国、国際競争
力があり持続的発展ができる国、安心・安全で快適な生
活のできる国を目指すことは良い。その目的のため、科
学技術と社会のコミュニケーションを深め、産業を通じ
た科学技術の成果の社会への還元すべく、科学技術の重
点化戦略、基礎研究の推進、国家的・社会的課題に対応
した研究開発の重点化を計ることも妥当であろう。それ
には、科学技術システムの改革と 研究開発システムの
改革に取り組むことも必要なことは言うまでもない。し
かし、具体的な改革計画に問題がある。
 改革の具体的方針は、競争的な研究開発環境の整備/
任期制の広範な普及等による人材の流動性の向上/若手
研究者の自立性の向上/評価システムの改革/制度の弾
力的・効果的・効率的運用/人材の活用と多様なキャリ
ア・パスの開拓/創造的な研究開発システムの実現、な
どとなっているが、通底するものは「競争原理を徹底す
れば研究活動が活性化する」なる仮説への依存である。
  当該仮説は検証されていないし、ニュージーランドで
は反証されている。この仮説を盲信し15年前に大学・
研究機関の企業化を断行したニュージーランドでは、知
識や情報の囲い込み現象が起こり研究機関間の協力関係
が薄くなるとともに、経年的な研究者意識調査によれば、
大学の大多数の研究者の志気は明白に低下している。
 当該科学技術基本計画は、研究者社会全体の協力体制
を根底から衰退させる欠陥を伴っている。それは構造的
なものであり「研究者の倫理」のような精神主義で克服
できるような性格のものではない。徹底した競争原理が
もつ致命的リスクを見据えた上で計画全体を再検討する
ことが日本社会の未来に責任あるものに強く要求される。