==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
 

鹿児島大学長 田中 弘光: 国立大学法人化についての疑問と提案

1 国立大学法人化についての疑問と提案 2 3         平成13年6月12日 4         鹿児島大学長 田中 弘光  5          他      20名 6 7  今般、設置形態検討特別委員会における中間報告が「国立大学法人化につい 8 ての基本釣考え方」と「国立大学法人化の1つのありうる枠組」として第13回 9 同委員会に提出され、後者はさらに「国立大学法人化の枠組」と名称変更され 10 た上で私たちに配布されました。「基本的な考え方」と「枠組」の間には乖離 11 があり、具体的に機能するのは後者の方であると思いますので、ここでは「国 12 立大学法人化の枠組」の問題点について3点疑問と提案を述べたいと思います。 13 14  (1)「国立大学法人化の枠組」は、細かな字句の修正を除き、基本的な点 15 で独立行政法人通則法と変わりがないように思われます。これでは、昨年106 16 回国立大学協会総会で合意された「独立行政法人通則法を国立大学にそのまま 17 の形で適用することには強く反対するという姿勢は維持され、今後も堅持され 18 るだろう」(注1)という合意事項そのものをみずから撤回することにならな 19 いでしょうか。この点は社会に対してどのように説明したらよろしいのでしょ 20 うか。政治的圧力等の問題もあるかと思いますが、その前に大学人として大学 21 本来のあり方を正々堂々と主張すべきであると考えます。昨年の合意の中には 22 「国立大学協会の意向を強く反映させるための努力を行う用意がある」(注2) 23 という事項もあったのです。 24 25  (2)特に重要なのは、大学の目主性・自律性と予算配分との関係に関わる 26 部分です。この点に関して欧米各国では「大学に対する資金交付に当たって、 27 政府の干渉を抑制するため」(注3)さまざまな方策か講じられております。 28 「政府による目標の指示、実行計画の認可、変更命令というような「独立行政 29 法人」的手法を採っている例(注4)はありません。たとえばイギリスの場合、 30 目標や計画こ関する書類は「高等教育機関が独自に作成するものであって、ファ 31 ンディンク機関が評価したり、認可、承認等するものではない」(注5)との 32 ことであります。目標や計画は企画立案機能に関わることであり、企画立案は 33 大事の主体性に任すべき事柄と考えられているからであります。 34 35  このような事情を勘案するとき、目標や計画は「事前チェック」からはずす 36 のが大学にふさわしいと考えます。またその方が、行政改革の基本精神である 37 「事後チェック」〈自主性を増すために考案された手法)という考え方にも合 38 致するのではないでしょうか。さらに、中期目標の指示、中期計画の認可、教 39 育研究の評価、運営費交付金の交付という一連のやり取りが生み出す膨大で煩 40 雑な事務量の発生を回避することもでき、「効率性の追求」という行革の目的 41 にも合致することになるでしょう。この場合、評価は大学の「事業」全体に事 42 後的になされることになります。 43 44  (3)また予算配分の現状に関して、次のような事情があることも念頭に置 45 ぐべきであると考えます。国立大学法人化の有力な導火線となった「単年度会 46 計の弊害」という問題は一部の有力な大学に年度末近く膨大な予算が投下され 47 るため、その年度内に使い切れない事態に直面して発生してきたものです。ま 48 たこの間いわゆる「種別化」も着々と進められてまいりました。 49 50  さて、このように一方では「種別化」を押し進めつつ、他方では全国立大学 51 を「同一の」制度設計の中に納め、「斉一的に」競争下に置くというのは深い 52 矛盾ではないでしょうか。きわめて不公平と考えざるをえません。経済産業研 53 究所長青木昌彦氏は「いわゆる教育・研究機関の改革は、国として一つの政策 54 が提示され、それに沿って斉一的に行われるというようなものではあり得ない 55 だろう」(注6)と言っておられますが、上述のような「種別化」が国の高等 56 教育政策の基本的方針となりつつある現在、私ども値国立大学のいわゆる「種 57 別」にふさわしい設置形態を正面から検討していくべきであると考えます。 58 59  (注1)「国立大学協会」(平成12年6月14日)における確認事項のI(注2) 60 同確認事項の3(注3)「大学の設冠形態と管理・財務に関する国際比較研究」 61 (国立学校財務センター)3頁。(注4)同3頁。(注5)同36頁。(注6)「大 62 学改革課題と争点」(青木昌彦他編、2001年2月)「まえがき」4頁。