==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
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財務省見解についての懸念

2001.10.30

Date: Tue, 30 Oct 2001 11:58:56 +0900
From: Toru Tsujishita 
Subject: 財務省見解についての懸念

文教科学委員会委員
文部科学委員会委員
各位

 本日から高等教育・学術研究関係の審議が国会で始まります。大学構造改革
に関連する種々の法改正も審議されると思いますが、この問題は社会的な関心
が低く、当該問題を担当される皆様方の見識に、日本の文教体制の浮沈が懸かっ
ていると思います。どうぞ、文教・科学政策については、党派を超えて、皆さ
ま方御自身の信念と見識を土台とした実質的な審議を展開し、政府の文教政策
に誤りがあればそれを修正し、不足があればそれを補うようにしてください。
高等教育制度・学術研究体制に対する大手術が、誤診に基づいて行われたり、
誤った診療方針に従って「大胆」に行われたりすることによって、日本社会の
知的基盤が壊滅することのないよう、慎重な審議をお願い申し上げます。

 早速ですが、10月10日の財務省財政制度等審議会財政制度分科会歳出合
理化部会及び財政構造改革部会合同部会で示されました文教科学予算に関する
財務省の見解(添付資料参照)についての懸念を述べたいとおもいます。この
会議において、財務省の桑原主計官は、高等教育・学術研究予算削減の具体的
方針を種々論じていますが、その中で、高等教育の「受益者負担の徹底」を強
調し、(1)次期科学技術基本計画の24兆円の一部とされている国立大学施
設設備計画の財源を国立大学学生に負担させること、(2)大学別、学部別の
学費の設定、(3)奨学金事業の廃止に向けた検討、(4)国立大学法人化に
よる大幅な予算削減の方法の検討、などが表明されています。

 高等教育や学術研究の活性化が、予算を削減し生き残り競争を強いることで
実現できるという考えは、遅効性効果を目指して行わなければ失敗する教育・
研究という事業の特殊性を考慮に入れないため、間違っているとおもいます。
しかし、現実には、この考えを唯一の支えとする高等教育・学術政策が進行し
ています。この状況に強い危惧を感じております。

 与党の議員の方々の中にも、このような政策が間違いであると判断されてい
る方も少なくないと推察しております。ぜひ、この問題については、党派を超
えて議論するよう、内閣に働き掛けてください。また、各議員の見識を活かし
て超党派で文教科学問題を論じ判断することによって初めて日本にとって本当
に良い文教科学政策が実現できるはずですから、他の政党の方々も党議拘束を
外すことを党に働きかけてください。

 以上、よろしくお願い致します。


辻下 徹

北海道大学大学院理学研究科数学専攻
〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目
TEL and FAX 011-706-3823
tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst

資料:

財務省財政制度等審議会財政制度分科会歳出合
理化部会及び財政構造改革部会合同部会
2001.10.10 議事録抜粋
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目次
(0) source
(1) 桑原主計官の説明の抜粋 
(2) 国立大学法人と独立行政法人の関係
(3) 質疑
----------------------------------------
(0) source

議事録全文は財務省ウェブサイトにあります。
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/gijiroku/zaiseic131010.htm

財務省が検討している学術・教育関係財政削減法の一覧表が以下にあります:
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaiseic131010a/2-1.pdf

*1 文教科学関係の議論を抜粋し行番号を付けたものをつぎに置きました。
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/a10-zaiseishingikai.html

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抜粋(数字は上の資料*1 における行番号です)
(1) 桑原主計官の説明の抜粋 

○育英事業  72 

61 「別の言葉で申しますと、機関助成からできるだけ個人助成の方向へ、そ
れから、機関助成の中でも、できるだけ競争的な資金配分をいたしていきたい
なと考えております。」

127 「もう1つのポイントがございまして、教育・研究職の返還免除制度とい
うものがございます。・・・これにつきましても、若手研究者の確保という政
策目標があるのでしょうが、その達成手段として、果たして適当なのか。それ
で、(参考)に書きましたように、別途、日本学術振興会で特別研究員制度み
たいなものがございまして、ドクターコースの人たちに研究奨励費というもの
を支給している。これを相当伸ばしてきておるということも踏まえて、廃止の
方向で検討すべきではないかと考えております。」

144 「育英奨学事業のところの3つのポイントで、無利子奨学金の絞込み、そ
れから大学院返還免除制度の廃止、それから高校奨学金の地方移管、3つとも、
実は行革推進事務局が8月に出しました指摘事項にも入っておりまして、・・・」


○国立大学授業料・入学金 160 

172「授業料、入学料、基本的に隔年置きに互い違いに引き上げております。
そういう意味では、今回問題になるのは、この順番でいきますと授業料の引上
げということになります。」

194 「国立はすべて、文科系も理科系も医歯系も1本、一律の授業料、入学料
でございます。この辺も、どう考えていくのかというのが議論になろうかと思
います。」

○国立大学施設整備 198

219 「施設整備に充てられるような学生納付金の相当程度の引上げを、今回検
討すべきではないかなと考えております。」

○国立大学関係まとめ 251

 251 「以上を大体まとめますと、国立学校、受益者負担の徹底及び自己財源
の充実、特に、先ほど見ていただきました「国立大学等施設緊急5か年計画」
等を踏まえた施設整備等に充てるための学生納付金の増額や、学校財産処分収
入の一層の確保等が1つのポイントかなと。」

 257 「国立大学の法人化に向けて、市場原理、競争原理の徹底等による自律
化・自立化の推進をしていく必要があろうかと。必ずしも14年度は、大学別と
いうのは、今の状況ではちょっと無理だとは思いますけれども、行く行くは大
学別、学部別授業料の導入が必要になってくるであろうと。それから、競争的、
重点的資金配分、事務組織等の合理化の徹底、これらを議論していきたいなと
考えております。」

○ 私学助成について 264

289 「私学助成ですけれども、競争促進を図る方向での助成内容の見直し、特
別補助への一層の重点化等、これは行革でも言われております。それから、個
人支援を重視する方向で公的支援全体を見直す中で、機関補助である私学助成
のあり方を見直す。」

○ 義務教育費国庫負担金 297

330 「義務教育費国庫負担金、以上のような論点を踏まえまして、国と地方の
役割分担等の観点からの負担対象等の見直し、それから・・・定数改善計画の
中で、非常勤講師というものも使えるようになっておる。それから、小泉内閣
で補助教員に社会人を、3年間でですけれども5万人登用しようというような
計画もございまして、そういうものも踏まえ、定数改善計画を見直す余地がな
いかどうか、そういう議論を今しておる最中でございます。」

○ 科学技術  356

408 「そういうことも受けまして、私ども、予算編成をしていく中でも、今申
しました重点4分野へ優先的な配分をすると。重点4分野の中でも、さらにめ
りはりをつけていく。それから、大規模プロジェクトにつきましては、必要性、
緊急性、費用対効果等を十分に検討する必要があると考えておりまして、特に
新規着手については慎重に対処してまいりたいと。」

415 「大きな柱の2つ目としては、先ほど申しましたように、競争的資金を拡
充していく一方で、1人当たりという、いわば平板的な配分の仕方をしておる
基盤的経費については、抑制していきたいと。あとは、先ほど申しました評価
の徹底を図っていきたい、こういう方針で臨んでいきたいと思います。」

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(2)国立大学法人と独立行政法人との関係

文部科学省担当の桑原主計官が「財務的な面で、独立行政法人と国立大学法人
について違いはない」と説明しています。次の一節は、国立大学法人化で財務
省が何を目指しているかを明瞭に説明しています。

「要するに、運営費交付金というのは、最後のしりを単に垂れ流すのではなく
て、もうこれだけしか、あなたにはあげませんよと、基本的には固定でやって、
あとは自由にしなさいという制度でございますので、そういうところを突破口
にして、財政負担をできるだけ縮小するような方向で運営はしていきたいとい
うことでございますけれども、制度的に、今よりずっと減らせる制度にできる
かどうかというと、なかなかそこは難しいと思います。ですから、とりあえず
運営費交付金という形をつくらざるを得ないとは思いますけれども、それを一
体どういう形で、どういう額で出していくのかというところが、今後の勝負に
なってくるのだと思います。それについては、今後の議論でございます。」

以下は、上の前後の議論の抜粋です。

---国立大学法人化についての質疑 710-776------------------------------

質問〔渡辺委員〕

710 「・・・・ところが、今度は国立大学法人という考え方で、独立行政法人
との違いということが書いてあるけれども、独立行政法人というものの概念は、
そもそも独立採算である、企業会計原則を取り入れる、非官庁化を図る、国費
の負担を減らすというようなことであったんだけれども、これを読んでいると、
多少、学外の者を入れたり、第三者の評価を入れると、学長選挙なんかをどう
いうふうにするか、これも余り明確ではないけれども、そういうことだけで、
財務的には、やっぱり今までどおり、国の税金をたっぷりもらって、国立大学
の特権を享受していこうと、こういうことのように思えるんだけれども、もう
ちょっと財務的な面で独立行政法人と国立大学法人との考え方の違いを説明し
てもらいたいと思うんですが。」

回答〔桑原主計官〕

 735 「財務的な面で、独立行政法人と国立大学法人について、財務というと
ころで、特に国立大学法人だから違ってくるというようなことはないと思いま
す。
 ただ、国立大学法人という新たな形態をつくるわけですから、そこについて、
一体どういう財務体系にしていくかということは、新たには議論できると思い
ます。
 ・・・・
 そこで、結局、運営費交付金の、話になると思います。独立行政法人におい
ても、運営費交付金というのは、やはり今出しております。国立大学法人につ
きましても、これは国立学校から国立大学法人になったからといって、すべて
国庫の負担をなくすことができるかというと、それは、現実的ではないと思い
ます。そこで、ある一定の運営費交付金というものを、独立行政法人と同じよ
うな形で出すことになろうと思いますけれども、ここからは、実はやはり運営
の話になって、実際の運営費交付金の算定の仕方、それから、その後のまた運
営費交付金をどう出していくのかという実際の問題になっていくんだと思いま
す。
 そこで、結局、一生懸命努力したところについては、ある程度インセンティ
ブは必要ですけれども、要するに、運営費交付金というのは、最後のしりを単
に垂れ流すのではなくて、もうこれだけしか、あなたにはあげませんよと、基
本的には固定でやって、あとは自由にしなさいという制度でございますので、
そういうところを突破口にして、財政負担をできるだけ縮小するような方向で
運営はしていきたいということでございますけれども、制度的に、今よりずっ
と減らせる制度にできるかどうかというと、なかなかそこは難しいと思います。
 ですから、とりあえず運営費交付金という形をつくらざるを得ないとは思い
ますけれども、それを一体どういう形で、どういう額で出していくのかという
ところが、今後の勝負になってくるのだと思います。それについては、今後の
議論でございます。」

〔渡辺委員〕「 国の負担も余り変わらんし、悪いことには、学長とか学部長を
選挙する制度ぐらい悪いものはないと思っているんだけれども、その方向に、
さらにそれを固めようというのには反対であることだけ、ちょっとつけ加えて
おきます。」

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(3) 質疑応答より

質問〔三木谷委員〕
429 「寄付金制度を抜本的に改革する。基本的には、非常に低額の税額で国立
大学あるいは私立大学への寄付というのができるということにすれば、実業家
の人たちは、どんどんとお金を出すのではないかなという感じがしておりまし
て、その問題と、これは非常に密接に関連しているのではないかなと思ってい
るんですけれども・・・・いかがでしょうか。」

回答〔桑原主計官〕
447 「所管という意味では、主税局でございますので、責任
を持ってお答えするというあれではございませんけれども、三木谷委員のよう
なご批判をいただいたところでございますので、また、これにつきましては、
私どもとして勉強していきたいと思っております。」

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資料終わり