==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
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大学システム改革への提言

「大学システムの改革に関する研究会」有志

2002.2.1


一 大学の使命と責任の確認
二 大学システムの多様化と多元的評価の必要性
三 大学の自立と経営責任の明確化
四 政府と大学の関係の見直し
五 大学と社会との関わり

大学システム改革への提言

今、大学改革が急速に動き出している。個々の動きはおおむね正しい方向にあ ると判断するが、次の二点において我々は危惧の念を持つ。 一 日本の高等教育システムのあるべき全体像が示されないまま、個別の改革 が一見バラバラに進行している。 二 高等教育システムの改革にあたって政府と大学のあるべき関係が明確になっ ていない。 天然資源の乏しいわが国が世界に伍して競争力を確保していくためには、大学 における教育研究の振興を図ることが最重要課題である。そのため大学改革の 断行が求められる。その際、大学のあるべき姿を明確にしながら、種々の施策 を総合的に進めていかねばならない。しかるに、大学のあるべき姿に関しての 大学からの発信はほとんど皆無である。大学からの発言の多くが「自分の大学 がどうなるか」といった近視眼的かつ利己的としか思われないものであること にも危惧の念を抱く。政府と大学の関係をどのように位置づけるか、政府の役 割は何か、といった視点からの議論もほとんどない。 われわれはこうした状況に危機感を抱いている。そこで有志が集い、二〇〇一 年八月から九回会合をもち、大学のあるべき姿に関して議論を重ねて、ここに 『提言』として世に問うことにした。各界の理解を得て日本の高等教育システ ムがますます正しい方向に変革していくことを念ずるものである。 平成十四年二月一日 「大学システムの改革に関する研究会」有志(アイウエオ順) 池上徹彦  生駒俊明  石 弘光 石倉洋子  井村裕夫  浦 環 大橋徹郎  笠見昭信  草原克豪 黒川 清  桑原 洋  小間 篤 坂内正夫  鈴木基之  土岐憲三 中村 崇  野村浩康  前田正史 なお、本提言は個人としての意見をとりまとめたものである。

一 大学の使命と責任の確認

・大学の使命は第一に教育、第二に研究であり、それらを通して社会に貢献す ることである。 ・大学の教育研究は、人材育成と学術の創造・伝承・普及を目的とし、現在価 値にとらわれない将来価値を生み出す。したがって、その時々の政治的、宗教 的、思想的な干渉を受けることがあってはならず、そのためにアカデミックフ リーダムが保証されなければならない。 ・大学には、社会の公器として、その使命を全うする社会的責任があり、その ため情報を公開して高い透明性を保つ必要がある。

二 大学システムの多様化と多元的評価の必要性

・大学の役割の多様化に対応して、教育中心大学と研究中心大学を区別したう えで多様な大学システムを設計し、そのなかで各大学が自己の位置づけを明確 にする。 ・大学システムの多様化に対応して、多元的で透明性の高い基準や評価制度を 設け、各大学がそれぞれの種別に応じて評価される仕組みをつくる。 ・社会および学生のニーズの多様化に応じて履修形態等を多様化し、学位授与 は学力の目標達成をもって行う。

三 大学の自立と経営責任の明確化

・競争的環境のもとで競争優位な経営を可能にするため大学の経営的自立性を 確立し、入試のあり方、教職員の雇用条件、教育研究組織の改廃、財源の確保 などを各大学の責任において自由に決定できるようにする。 ・法人化後の国立大学の運営機構として、教育研究に責任を持つ機関と経営に 責任を持つ機関とを分離して設置する。

四 政府と大学の関係の見直し

・政府は、高等教育を国の最重要戦略の一つとして位置づけ、高等教育基本法 を制定する。高等教育基本法には、高等教育システムの基本構造、政府と大学 の関わり方、政府の財政支援などを明記する。 ・国の資金は、政府から独立した複数の教育および研究助成機関(カウンシル) が高い透明性を保って配分する。その上で研究資金に関しては国公私立の区別 なく、研究内容を踏まえた機会均等な配分が可能となるシステムとする。 ・政府は個々の大学の管理運営について直接監督・指示しない。

五 大学と社会との関わり

・大学が社会に貢献するだけでなく、社会の側にも大学を支援・育成していく 責任がある。特に産学連携は大学と企業の相互作用であり、双方向的でなけれ ばならない。 ・法人化後の国立大学は、公的資金のみに頼ることなく、社会からの協力を得 て多方面から財源を確保する。 ・大学と社会の相互作用関係を強化するため、大学は社会のニーズを的確に把 握するための装置を備える。 以上