国際輸血学会会長  ポール V. ホランド博士の手紙

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2002年6月19日

日本輸血学会会長   十字猛夫 先生

拝啓
輸血部を始めとする大学病院の中央診療部の業務を外部の民間検査機関に委託し、その長となる教官は診療科の副主任が併任にするという提言が、日本の国立大学病院長会議によってなされたことを伺いました。
私の知る限り、欧米のいかなる大学病院においても、直轄の輸血部は必ず専任教官が運営にあたっています。この専任教官は一般に、輸血の専門家であり、他の科の専門家が輸血部長を兼ねるということはありません。この提言は思慮に欠けた不当なものであると私は思います。
ほとんどのregulatory bodies(註1)はこのような取り決めに黙ってはいないでしょう。一般に欧米では、輸血の専門家が輸血部の長となり、科の専任の責任者を勤めるのが望ましいというのがregulatory bodiesの意向なのです。そうでなければ、病院がinspection
and accreditation(註2)に合格することはないでしょう。
輸血部長に期待されるのは、病院の輸血委員会、あるいは臨床医との直接の連携によって、血液や血液成分を適正に使用するための最良のガイドラインをつくり、血液の不適切な使用や、大切な血液を期限切れにするような無駄使いを減らすことです。他の診療科、特に血液や血液成分を使う診療科から来た臨床医を輸血医学部門の長として迎えた場合、regulatory bodies(註3)同士で利害の対立が起きることが考えられます。
言うまでもなく、専任の専門家が、この分野における医学部生や医療専門学校生の教育と、研究において中心的な役割を果たすのです。
つまり私は、専任の輸血専門医がfull-timeで輸血部の部長として、輸血部の管理運営に責任を持つべきものと信じています。専門家でもなく輸血部専任でもない臨床医が、輸血部の運営をすることは、適切とは思われません。
この件に関してまたお話がありましたら、遠慮なくご連絡下さい。

敬具


国際輸血学会会長  ポール V. ホランド

註1 ここでは、米国における、FDAのような各医療機関の質を外部から査察する組織とかんがえられます。
註2 輸血部の管理機構、設備、職員の技能等について,外部の第三者の査察を受けます。 
註3 ここでは、各医療機関内での医療の質を保証するための査察組織を想定しているものとおもわれます。