COEに関する社説
2002.10.4
毎日10/05 「トップ30」 どこがいいのか分からない
北國新聞10/4: 重点大学研究 基準明確にし過程の公表を
山陽新聞10/4:◇21世紀COE 示したい大学の存在感
京都新聞10/2:「審査に不透明さ」もれた大学に不満も/COEプロ 京滋は京大・立命館大のみ
朝日10/4:トップ30――これが起爆剤なのか
日経10/4:国立大圧勝の「COE」選定
東京新聞10/4:卓越大学拠点 もっと透明でないと
河北新報10/3:大学間競争激化も 東北の関係者 新たな序列化警戒
北海道新聞10/4:大学COE*研究意欲を促す制度に
讀売新聞10/4:研究業績評価 信頼獲得で大学改革につなげよ
毎日新聞社説10/05 「トップ30」 どこがいいのか分からない
大学の先生たちは、自分のペースで研究を続けてきた。ところが、文部科学省が、「さあ世の中は変わった。もっと競争しなくては」と尻をたたき始める。先生たちは右往左往である。
大学の状況は今、そのように見える。
文科省は「大学構造改革」の旗を振っているが、その文科省も旗を授けた小泉純一郎首相から、尻をたたかれている。
「21世紀COE(卓越した拠点)プログラム」も、改革策の一つ。いわゆる「トップ30」だ。世界最高水準の研究教育拠点作りを目指し、論文応募で採択された国公私立大学の研究機関には国の予算を、重点的に配分する。
審査を続けてきたプログラム委員会が、その結果をこのほど公表した。採択されたのは申請163大学464件中、50大学113件である。その判断が妥当であったかどうかを問う前に、審査方法そのものが多くの問題を抱えていることを指摘せざるを得ない。
申請は5分野に分かれている。部会で書類審査し、ヒアリングの対象を絞り込んだ。部会の判断を経て、委員会が了承した。
まず問題なのは審査の時間が、あまりにも短かったことだ。多くの部会長も認めている。原因は文科省側にある。動きは昨年6月、遠山敦子文科相が突然発表した「大学の構造改革」(遠山プラン)に始まる。
国立大の再編・統合や法人化も強調している。狙いは、大学にも競争原理を導入することにある。
募集開始は今年の6月で、審査の時間は8、9月しかない。拙速が避けられない日程である。これでは、ヒアリングも受けられずに落とされた研究機関は納得できないだろう。
さらに問題なのは、審査の過程がほとんど公表されていないことだ。採択の基準は次の3点だったという。(1)すでに、世界的レベルで拠点として認められている(2)5年間で拠点になりうる(3)研究内容がユニークである。
しかし、「研究の秘密」などを理由に、採択された研究が、この3点のどれに当てはまるのかすらも明らかにされなかった。不採択組については何も分からない。
競争を促すには、社会の目が欠かせない。しかし、これでは出発点である審査の是非すらも、社会的に評価するのは不可能だ。
遠山プランの発表当初から、「採択は旧帝国大や特定の私立大に偏るのではないか」と指摘されている。結果は、その通りになった。どこまでユニークさが評価されたのか、疑問がわいてくる。
こうした問題の背景には、「とにかく大学でも構造改革の格好だけはつけよう」という、文科省の安易な姿勢がうかがえる。
ぬるま湯状態の大学を改革することは必要だ。
しかし、「密室状態」では大学に新しい風を巻き起こすのではなく、逆に現状を固定させる。これを打ち破るには、社会的な評価にさらされるだけの情報を公開することが前提だ。
『北國新聞』社説Iヌ 2002年10月4日
重点大学研究 基準明確にし過程の公表を
文部科学省の「二十一世紀COEプログラム」(旧称トップ30大学構想)で、国公私立五十大学の百十三件の研究プログラムが選ばれた。世界最高水準の研究教育拠点づくりを目指す事業であり、北陸では金大自然科学研究科(大学院)の一件だけが認められた。
国立大の独立法人化を控え、事業は第三者評価による予算配分を初めて本格的に実施したものとして注目された。しかし、文科省の委嘱を受けた評価委員会の審査は非公開であり、審査基準もあいまいである。しかも結果の公表は選ばれた大学と研究テーマだけで、個々の選定理由や評価の説明はなされなかった。こうしたことから、大学の横並び意識を打破し各大学が特色を出す好機と評価する一方で、国による新たなランク付けにつながるとの懸念も広がっている。
研究者同士が競争的な環境の中で、互いに切磋琢磨することは国際競争力のあるユニークな大学づくりには欠かせない。また地方大学は旧帝大系大学に比べて、総合力ではあるいは劣っているとしても一分野に限れば世界に伍して行ける研究は少なくない。そうした研究が見落とされることのないよう、評価委員会は今後、ランク付け批判を払しょくする審査基準の明確化や選考過程の公表に努めてもらいたい。
今回、日本海域を取り上げた金大、乾燥地科学に挑んだ鳥取大など、地方大では地域の特徴や強みを生かしたものが選定されている。私立大でも、超電導材料研究の青山学院大、特殊な電子顕微鏡で新素材開発に挑む名城大など一芸に秀でた大学が選ばれた。
しかし、全体としては現在の無競争の科学研究費補助金(科研費)の配分額に応じて選定されたと言える。今年度の科研費配分は、国立大65%、旧七帝大では約五割であるが、採択プログラム数の74%は国立大で、旧七帝大に限れば全体の四割強を占めている。ある程度主観的な評価もやむを得ないが、これでは将来性ある研究を育てようというもう一つの事業趣旨の実現は難しい。
今後、文科省は残りの五分野でも研究プログラムを公募する。大学は次回の選考に向けて態勢を整え、頑張ってもらいたい。
『山陽新聞』社説 2002年10月4日付
◇21世紀COE 示したい大学の存在感
先駆的な研究に予算を重点配分する文部科学省の「21世紀COEプログラム」として、五十大学の百十三件の研究が選ばれた。
COE(センター・オブ・エクセレンス)とは、卓越した拠点の意味。大学院博士課程レベルが対象で、最高水準の研究拠点をめざす大学に予算を重点支援し、個性ある大学づくりをしようというのがプログラムの狙いである。
背景には、日本の大学に国際的な研究者が集まらず、逆に優秀な人材が海外流失している現状への危機感があろう。当初は「トップ30大学構想」として打ち出し、その後名称が変えられたが、生き残りをかけ申請した大学も多かったはずだ。
申請は百六十三大学から四百六十四件を数えた。だが、選ばれた研究は国立大が三十一大学八十四件と大半を占め、これに対し私立大は十五大学二十五件にとどまった。
まさに“国高私低”の様子がまざまざだ。こうした結果は従来の「科学研究費補助金」の配分割合と似た傾向で、関係者から「序列化を助長しただけ」との批判が聞かれても不思議はないであろう。
審査は非公開、しかも公表したのは選ばれた大学名と研究テーマだけ。これでは選に漏れた大学にとっては、理由も分からず、門前払いされたに等しい結果ではないか。選考は、評価基準を公開するなど透明性を高める努力をしてもらいたい。
21世紀COEは、すぐに世界的に競争力のある研究になるかどうかは別にして、大学の高度化や研究教育活動の活性化にインパクトを与えるのは確か。岡山大は今回選ばれなかったが、次回の挑戦では大学の存在感を十分に示すことが大切だ。
『高知新聞』社説Iヌ 2002年10月4日付
【COE】「集中」を促すだけか
国際競争力を持つ個性豊かな大学を目指そう、世界最高水準の研究拠点を分野ごとにつくろう、そのために予算を重点配分しよう――。
そんなうたい文句で文部科学省が今年から始めた「21世紀COEプログラム」も、一皮めくれば、明治以来の「格付け」を温存しつつ、「集中と排除」の論理を強化して大学の淘汰(とうた)を促す格好の方策ではないか。
公表されたプログラムの審査結果を見ると、そうした見方も説得力を持つ。
採択された50大学・113件のうち、11件ずつ採択された東大、京大を筆頭に7つの旧帝大で46%を占めた。私大では早慶が仲良く5件で並ぶ。どうみても既成の「序列」が反映されており、四国ではわずかに愛媛大学の申請した一件が選ばれたのみだ。
大学には既に厳しい改革の波が打ち寄せているが、高等教育のレベルアップという課題でいきなり出てきたのが今回のCOEプログラムだ。
センター・オブ・エクセレンスを略したCOEは、「卓抜した研究拠点」を意味する。昨年6月に文科省が示したいわゆる遠山プランで「トップ30構想」として打ち出されたが、大学のランク付けだと批判されて名称を改めた。
「ミニ東大」やまともな研究態勢を持たない大学がはびこる現状にあって、教育機関への研究予算にめりはりをつけ、科学技術立国の足元を底上げするという意味では、注目していい試みだろう。
ところが、大学に競争を持ち込む以上、その前提である公正なルールが確保されなければならないのに、今回の選考はそこをないがしろにしている。審査は非公開で選定基準もあいまい、選定の過程も理由も分からないといった具合で、評価の客観性はどこにも保証されていない。
こうなるのは、高等教育の全体像を国がしっかりと描けていないせいだろう。すそ野を狭めて頂上を高くすればいいといった単純な発想なら、土台そのものが揺らごう。
疑問だらけの制度運営で選から漏れた大学が受けるダメージは、決して小さくはあるまい。受験や企業採用の動向にも悪影響を与え、研究者の求心力にも直結する。その多くは地方の大学である。
そればかりではない。日の当たる研究を追う風潮を高め、地道な分野の研究が敬遠されかねない。プログラムの再考を求める。
『京都新聞』2002年10月2日付
「審査に不透明さ」もれた大学に不満も
COEプロ 京滋は京大・立命館大のみ
文部科学省が二日発表した「二十一世紀COEプログラム」で、京滋では京都大と立命館大の二大学が選ばれ、多くの大学は選からもれた。当初の予想どおり「旧帝大」優位だったうえ、審査の過程や基準が不透明なことに、各大学からは不満の声も上がっている。
京都大は十一件で東京大と並んで最も多くのテーマが採択された。金田章裕副学長は「(東大と平等に)数合わせをしたわけでなく、厳正な選考の結果と思う」とする。
他の大学からは科研費の配分順位など旧来の序列と変わらないとの批判があるが、金田副学長は「今回公募対象となった理系分野はもともと国立大が優勢。ある程度仕方ないのでは」と話す。
一方、立命館大は私大としては早稲田大、慶応大(各五件)に次いで多い三件が採択された。「国立大のまねでなく、個性ある大学づくりを目指してきた結果」と長田豊臣総長。私大唯一の放射光装置や伝統芸能のデジタル保存など、特色ある研究活動が評価されたとする。
今回、京滋からは、同志社大、龍谷大、京都産業大、京都工芸繊維大、京都府立大、京都府立医科大、滋賀医科大なども応募したが、結局選ばれなかった。また私大はほとんどが関東で、関西は立命館大と近畿大だけが選ばれた。
COEを含め、大学改革を進めるには評価の公平性や透明性が必要不可欠のはずだが、今回は評価の経緯などがほとんど明らかにされていない。龍谷大の河村能夫副学長は、「百八十億円もの公金を使う以上、文科省は説明責任を果たすべきだ。特に客観的評価が難しい人文科学系などはどんな指標を用いたのか公表してほしい」と批判。京都工繊大は「選ばれた大学が五年後にどんな業績を挙げたかも、きちんと公にすべきだ」(平山鋭副学長)と注文する。
これに対し選考した委員会の江崎玲於奈委員長は「評価は主観的なもの。評価者の見識に任せるしかない」としている。
朝日新聞社説2002年10月4日
■トップ30――これが起爆剤なのか
競争原理の導入で、世界最高水準の研究拠点づくりをめざす「21世紀COEプログラム」の選考結果が発表された。
COEはセンター・オブ・エクセレンスの略で、卓越した拠点の意味だ。文部科学省の当初の構想では「トップ30」と呼ばれていた。
生命科学など5分野で、国公私立の大学院博士課程が出した研究計画の中から、予算を重点配分するものを選ぶ。1回目の今回は50大学113件が選ばれた。
大学が競い合いながら研究能力を高めるという方向は、間違っていない。
しかし、結果を見ると、すでに世界的定評がある京大の先端生命科学が入るなど、旧帝大や大規模な国立大学が並んだ。佐賀大の海洋エネルギー研究をはじめ、地方の国立大や私大は「学際・複合・新領域」で健闘したが、埋没した印象がある。
いくらか新しい芽が出てきたが、まだまだ古い序列が幅を利かしているというところだろう。
旧帝大や大規模大学は、研究者個人に与えられる科学研究費補助金や文科省の予算配分で優遇されてきた。実力があることは分かるが、それがそのまま踏襲されるのでは、新制度を導入した意味がない。
来年度からは、医学系など5分野を追加するほか、学生への教育にとくに力を入れている大学・短大を100校ほど選び、予算を厚くする予定である。そこでもまた、旧帝大を中心に選ぶようだと、他大学の意欲がそがれてしまうだろう。
こうした古い序列をこわすには、もっと情報を公開する必要がある。
発表された選考結果は大学名と研究テーマ、簡単なコメントに限られた。選に漏れた理由を当事者の大学に知らせるとはいうが、どんな評価で当落を分けたのかは公表されなかった。これでは、何を競えばいいのか、どのように挑戦すればいいのか、という肝心なことがわからない。
審査した日本学術振興会によると、選考基準は実績、可能性、独創性である。しかし、結果からは実績にかなり比重が置かれたとみられても仕方あるまい。
むしろ、可能性や独創性を重視すべきではないか。産業の最先端に特化した研究に対象をしぼった分野があってもいい。意欲はあるもののふだんは日の当たらない大学を選ぶことが新たな刺激を生み出す。
国立大学は法人化を控える。私大はますます経営が厳しくなる。特徴や将来構想を打ち出さないと存在すら危うい。
応募した大学では、学長を中心に学部や学科、研究室を超えてテーマを設定したものが少なくない。研究者間の交流を増やすテコの役割を果たしている。
今回の試みを世界最高水準の研究拠点をつくる起爆剤にしようと本気で考えるならば、評価や仕組みも世界水準に近づけるように磨きをかけなければならない。
日経新聞 2002年10月4日社説2
国立大圧勝の「COE」選定
国公私立すべての大学を対象に、世界水準を目指す優れた研究計画に国の予算を重点配分する文部科学省の「21世紀COEプログラム」の初の選定結果が発表された。
遠山文部科学相が「大学の構造改革」の一環として、第三者評価を通じて大学の研究活動に競争原理を高める目的で導入した「トップ30」を発展させたもので、大学院博士課程レベルの研究を対象に今回は生命科学、化学・材料科学、情報・電気・電子、人文科学、学際・複合・新領域の5分野から日本学術振興会が50大学、113件を選んだ。内訳は東大と京大の11件をトップに、旧帝大グループを中心にした国立大と早慶など一部の私学に集中、地方大学などとの「体力差」をあからさまに反映したものとなった。
今回の対象領域が自然科学系中心だったことなどからある程度予想された結果とはいえ、大学院重点化政策などでもともと国費の手厚い配分を受けている旧七帝大などに対し、加重的に国の研究資金が投入される構図に疑問や批判も多い。
また研究計画の評価基準や選定の経過が公表されていないため、大学や研究者の知名度が目立つ選定結果に対して、参加大学から第三者評価の信頼性への疑問も少なくない。
「トップ30」計画はもともと、国際的な水準に見合った高度な研究に国が重点的に投資することを通じ、「研究中心」や「教育中心」などの特色に応じて日本の大学をすみ分けさせることを目指した。そのために全体の5%に相当する30校を選別するという構想に対し、「国が大学のランク付けをするのはおかしい」という批判が広がり、研究計画ごとの選定に落ち着いた経緯がある。
生き残りへ競争が激しさを増す日本の大学で、国際的水準の研究を発展させるために国が競争的な資金の比率を高めることにさほどの異論はなかろう。ただ国から配分される教員への経常的な研究費や税制面での格差など、国公私立という設置形態による競争条件の違いを問わずに一律の評価基準で資金配分を進めれば、大学のヒエラルキーを固定化することにもなる。第三者評価のしくみの改善を通して、流動的な競争環境を整えることが必要である。
東京新聞社説2002年10月4日
卓越大学拠点 もっと透明でないと
世界的に卓越した研究拠点をつくる、という文部科学省第一回「21世紀COEプログラム」事業は、選考の物差しも、採否の理由も示されていない。税金を使う以上は、もっと透明にすべきだ。
昨年六月、文部科学省が発表した大学改革案で、世界でもトップ級の研究拠点に育てる大学を、各分野ごとに三十くらいずつ選ぶ「トップ30」の構想が打ち出された。
この構想には、「大学をランク付けするのか」という批判の声が上がった。文部科学省は「誤解を解くため」構想の名前を「21世紀COE(センター・オブ・エクセレンス=卓越した大学研究拠点)プログラム」に改めた。大学単位でなく、研究拠点単位で選定するのがミソだ。
今回選ばれたのは、生命科学など五分野百十三拠点で、本年度は百八十二億円が配分される。
件数の内訳は国立大74%、公立大4%、私立大22%となっている。ところで二〇〇二年度文部科学省科学研究費補助の大学分について、件数別の配分割合をみると、国立70%、公立7%、私立23%で、COEの割合とよく似ている。これは偶然なのか。それともこの配分割合が、暗黙のルールにでもなっているのか。
もう一つ気になるのは、配分件数の43%が旧帝国大学七校に集中しており、東大と京大が各十一件と、突出していることだ。私立で一番多い慶応と早稲田は各五件で、こちらもきちんと横並びである。
政府の高等教育における研究投資は、これまで東大、京大を筆頭とする旧帝大が大きな割合を占めてきた。COEも同じ流れなら、新しい制度をつくった意味は何なのか。
疑問を払いのけるには、選考の基準や理由を明らかにすれば済む。ところが、審査委員会の説明を聞く限り、選考の基準は「委員の議論の結果」で、合格、不合格の理由は当事者にしか告げないという。
審査委員からは「ノーベル賞の選考理由だって公表されていない」という声があった。だがノーベル財団は民間機関だ。財政難の中で税金を使うのとは違う。
日本が持続可能な発展を目指すなら、最先端の科学研究に多大の支援が求められる。研究によっては、思い切った金額の配分も必要だろう。従来の延長線上にない創造的な研究を見いだすには、これまで学界の主流から重視されてこなかった研究を再評価する試みも欠かせない。
文部科学省は、国民の支持を得てCOEを発展させたいのなら、再審査申し立ての機会を設けるほか、積極的に情報を公開してほしい。
『河北新報』2002年10月3日付
大学間競争激化も 東北の関係者 新たな序列化警戒
文部科学省が2日公表した21世紀COEプログラム。「世界最高水準の研究教育」という看板を懸けて応募した東北の各大学は、五つの分野ごとの選考結果に悲喜こもごもの表情を見せた。COEプログラムが動き出したことで大学間競争の激化は必至。「新たな格差が生まれるのではないか」と、危機感を募らせる声も挙がった。
東北では、東北大を除いて唯一、生命科学分野で食い込んだ秋田大。三浦亮学長は「大学の大きな旗印として掲げるにふさわしい」と手放しで喜んだ。秋田大のプロジェクトリーダーの稲垣暢也大学院医学研究科教授は「旧帝大が独占するのではないかという懸念もあったが、地方大の中ではいい仕事をしているという自信はあった」と述べ、「今後、一つでも大きな発見ができれば」と抱負を語った。
「正直言ってほっとした」。化学・材料科学分野で採択された東北大の井上明久金属材料研究所長は安どの表情。論文引用件数ランキングの材料科学分野で世界1位を誇る東北大にとって、COEに採択されるのは当然との雰囲気があったといい、「これで、世界に認知される資格を得た」と強調する。
ただ、大学全体の採択件数を見ると東北大は5件にとどまり、東大、京大(いずれも11件)など、ライバルに水をあけられた形だ。「採択されるための情報を躍起になって集めるなど、迫力が足りなかった」(馬渡尚憲副学長)との反省も聞かれる。
『北海道新聞』社説10/4
大学COE 研究意欲を促す制度に
文部科学省が進める大学改革の柱の一つ「二十一世紀COEプログラム」の審査結果が公表された。
COEは「センター・オブ・エクセレンス(卓越した拠点)」の略で、日本の大学を世界最高水準の研究拠点に育てるため、資金を重点配分する新しい制度だ。
横並び主義と指摘されるように、どの大学も同じ学部学科をそろえ、似たようなテーマの研究をしていていい時代ではない。
とくに大学院では、創造的で世界に通用する研究が必要だ。国内の大学に国際的な研究者が集まらず、頭脳流出が続く現状は改善する必要がある。
トップレベルの研究環境を整え、人材を優遇して国際競争力を高める体制づくりは急務といえる。
大学の研究基盤づくりの予算には、研究者個人に補助金を出す科学研究費補助金があり、本年度は約千七百億円が投入されている。
COEはこれとは別枠で、自然科学七分野と、人文、社会などの計十分野の大学院博士課程レベルを対象に研究テーマを選び、各研究に五年間にわたって毎年一億−五億円を配分する。
今回選定したのは五分野で、五十の国公私立大、計百十三の研究テーマだ。道内では北大が四件、帯広畜産大が一件の計五件が選ばれた。
それぞれ、生命科学や地球環境領域などで貢献が期待される。優れた人材を集め、育てていくことで研究をリードしてもらいたい。
配分額は理工系の研究費用としては高額とはいえないが、各大学は競うように申請した。再編・統合の圧力など、大学改革の大波の中で存在感を出そうとする大学の必死さが伝わる。
問題は、選定基準や“当落”の理由が不明確だった点にある。
選考委員会の審査は非公開で、公表されたのは選ばれた大学名と研究テーマだけだ。室蘭工大や北見工大などの申請は選に漏れたが、個々の研究テーマをどう評価し、当落のポイントはどこにあったのか。
そうした情報を開示しなければ、落選した大学側に不満や不信感が生まれるのは当然だろう。
COEプログラムは「第三者評価による予算配分」を、初めて本格的に実施した事業だ。制度の信頼性を高めるには、公正で透明な評価の仕組みが欠かせない。
地方の小規模な大学でも、ユニークな研究に取り組んでいる例は少なくない。世界の先端を行く研究もさることながら、地域から世界に発信する研究にも十分に目配りしてほしい。
健全な競争の中で研究水準の底上げを目指す視点が大切だ。COE制度の目的は研究者の意欲をかきたてることであり、大学のランク付けではないのだから。
創立5年目の挑戦が話題を呼んだ岩手県立大は選考から漏れた。塚本哲人副学長は「準備が整わなかったのが不採択の一因」と肩を落とす。弘前、岩手、山形の3国立大もランキング入りを逃した。弘前大は「何もしないで黙っていれば大学間格差が広がっていくだけ。来年度は医学系分野の募集があるので、今から準備を進めたい」(神田健策副学長)と危機感を募らせる。
博士課程を持たない福島大は応募資格がなかった。臼井嘉一学長は「地方の
大学を個性豊かに発展させる視点から見て、問題が残る」と不満を漏らす。大学の新たな序列化を警戒し、「教育重視や地方貢献といった地方の大学の特徴を伸ばすような施策、配慮を期待したい」と訴える。
讀売新聞社説 2002.10.4
研究業績評価 信頼獲得で大学改革につなげよ
これで、世界最高水準の研究教育拠点ができるかどうか。
全国の国公私立大学から、優れた研究チームによる計画を選び、文部科学省が予算を重点配分する「21世紀COEプログラム」の審査が終わった。
同省の大学改革プランの根幹をなすもので、五分野、五十大学百十三件の研究計画が選ばれた。それぞれの計画に五年間、毎年最高五億円が配分される。
大学院研究科などの研究水準はこれまで、研究者らの暗黙の了解事項にとどまっていた。それが計画の公募、第三者評価という形で、明確に判定された。
当初の同省の構想は、分野ごとに上位三十大学を選ぶものだったが、「大学のランク付けにつながる」と大学側から反発を受け、大学内でテーマごとに組織する研究チームの比較となった。タブー視されていた研究業績や可能性の評価に踏み切った意味は大きい。
応募した大学は得意分野を打ち出す戦略作りを迫られ、専攻の枠を超えて研究チームを構成するなどの工夫をした。
選ばれた研究計画は三年後に中間評価を受け、五年後に再び、今回選ばれなかったところと評価を競うことになる。
成果を上げるには、人材の育成や流動化が欠かせない。競争的な環境の下で、優れた研究成果が期待される。
初めての研究評価は、その理念も手法も、日本ではまだ確立していない現実をさらけだしもした。
評価は、研究教育活動の実績、将来構想、特色ある学問分野の三点で行われたが、個々の研究計画に対する選考理由はいまだに明らかにされないままだ。
実績評価は学会や論文・専門書の発表状況、科学研究費の助成額などを基にしている。その基礎データすら公表されないのでは、評価の基準が分からない。
将来構想や特色ある学問分野については選考委員の主観が入ることはやむを得ない。しかし、何を評価したかを明らかにすることなしには、選考は社会的信頼を得られない。
イギリスでは、大学の研究に七段階の評価をし、補助金に差をつける、厳しい研究業績チェックが行われている。大学側からの反論と批判を受け、改善を重ねる中で定着した。日本でも、説明責任の果たせる評価の積み重ねによって、理念と手法の成熟を図らねばならない。
大学評価が根付いてこなかった原因の一つに、大学関係者が、「大学の自治」「学問の自由」を必要以上に強調し、外部評価を排除してきたことがある。
研究評価の信頼獲得と大学関係者の意識改革を、ともに急がねばならない。
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