朝日新聞「大学の力ー転機の教育」取材班への要望辻下 徹2003.01.06Date: Tue, 07 Jan 2003 00:02:48 +0900 From: TSUJISHITA Toru To: syakai4@ed.asahi.com 朝日新聞「大学の力ー転機の教育」取材班 殿 謹賀新年 署名入で11名の記者の方が担当されることに意気込みを感じました。そこで、 お願いしたいことがあります。 私は一国立大学教官として、3年ほど前から、国立大学の独立行政法人化につ いて関心を持ち、その経過を追ってきましたが、貴社を含め、マスメディアの 報道が政府の主張と見解をほぼ忠実に繰り返えすことに終始してきたことに、 強い懸念を感じています。 この3年間、大学セクタでは、独立行政法人化を批判する動きが数えきれない ほどありました。しかし、マスメディアは「大学では根強い反対がある」と一 言を繰りかえすだけで、反対運動の全貌を具体的に報道したことがなかったこ とには意図的なものすら感じます。反対運動の報道は「文部科学省記者クラブ」 に属するメディアには好ましくないことは自明なだけに、記者の方が無意識に フィルタをかけてしまってきたのではないかと、気になるのです。 実際、この3年間、大学社会と学術団体からは 数多くの声明・批判意見があり ました。種々の運動も続いています:旧文部省の独立行政法人化調査検討会議 に参加協力することを決めた2000年6月の国立大学協会総会の合意事項の撤回 を求め、 67国立大学の804名が署名しました(2001.1)。2001年5月に、大 学外の著名人や国会議員、学生、も加った「独立行政法人化阻止、全国ネットワーク」が結成され、様々な活動を開始しました。2001年9月の中間報告には、 120 余りの パブリックコメント (2001.10)が提出されたにもかかわらず、整理 もせず、到着順に印刷して委員に配布されただけでした。2002年3月に、ネッ トの呼び掛けに応じて、最終報告の内容に抗議し、市民170名が文部科学省を囲む「人の鎖」をなしました。「独立行政法人化阻止、全国ネットワーク」は 昨年10 月に ユネスコにアピールを送りましたが、それに関して、世界科学者 連盟会長は、日本の国立大学の独立行政法人化が、世界全体で進行している、 一部勢力による知的資源の独占の動きと明らかにリンクしている、として、各 国の科学者会議に日本の科学者による独立行政法人化反対の運動を支持するよ うに求める アピール を出しています。 こういった種々の活動を「根強い反対意見がある」という抽象的な一言で済ま せるのは、報道の中立性に反するように感じます。それが少数意見であったと しても、報道しないのはジャーナリズムの使命の放棄と思いますが、実際には、 独立行政法人化で大学の本来の機能が深くダメージを受けると考えていない大 学人は居ないのですから、なおさらのことです。日本人の長けた「被統治能力」 のゆえに、黙々と独立行政法人化に耐えようとして「法人化対策」に奔走して いるに過ぎません。 設置基準の大綱化以来10年余も間断なく続いてきた無意味な制度改革で振 りまわされ、大学社会は疲れています。大学自身に責任があることだけに、士 気の低下はかなりのものです。そこに、大学を良くするはずもない、国立大学 の独立行政法人化(国立大学法人化)が実施されれば、新潟大学の渡邊勇一氏 が言うように「大学は悲鳴を上げずに、弱ってゆく。知を支えてきた意欲は墓 場へ向うであろう」。 世界はthink globally, act locally をモットーとして動こうと努力している ときに、日本社会は、think locally, act globally という愚行かつ、世界に とって迷惑な動きを開始しようとしています。国立大学の独立行政法人化も国 益を最優先するだけの、まさに、think locally, act globally そのものの大 学改革であることにご注意ください。 ぜひ、この企画では、独立行政法人化や遠山プランが大学を破壊するだけでな く、世界の流れにも反するものである、という見方も十分取りあげることで、 国民が、行政の見解を批判的に検討できる機会を用意して欲しいと思います。 なお、ご参考までに、メールマガジン「国立大学の独立行政法人化問題週報」 と、国立大学関係者に配布している「国公立大学通信」を今後、転送させて頂 きます。 辻下 徹 (以下略) |