国立大学独立行政法人化の諸問題

行政に大学改革白紙委任状を発行して良いのですか?

辻下 徹

2003.5.15

From: TSUJISHITA Toru
Date: Thu, 15 May 2003 02:01:33 +0900

衆議院議員 文部科学委員 のみなさま
Cc:国会議員のみなさま

明日の文部科学委員会で採決されると聞きましたので、一国立大学教官として、
国立大学法人法案についてお手紙を差しあげることにいたしました。

審議過程で、国立大学法人法案の問題点の数々が明らかになり、法人化に賛成
している人でも、この法案で大学は終わりだ、と判断する人が急増しています。
にもかかわらず法案の採決が明日行われ無修正で可決される可能性が高いと聞
いています。世紀に一度という大学改革について、行政の提案を無修正で容認
してしまうことは、自己権益の拡大に強い関心を持つ行政の習性を考えれば、
まことにあやういものを感じます。

  野党議員の方々が、この法案の種々の問題点を広汎に的確に指摘されてきた
ことには深い敬意を抱いております。しかし、理解に苦しむことは、野党第一
党がなぜ、法案の無修正可決を帰結する「修正案提出」をされたのか、という
ことです。多くの問題点を指摘しながら、なぜ、無修正の法案が可決されるこ
とを実質的に助けるようなことをされるのか。野党の役割のなかで主要なもの
の一つは、国立大学法人法案のような、政局の争点ではない法案については、
過半数与党の案が無修正で通ることがないようにするところにあるのではない
でしょうか。

  おそらくは付帯決議で「修正」することを検討されているのでしょうが、法
案の持つ無数の本質的問題が、法的に効力のない付帯決議によって、解決する
と本当に考えている方はいないのではないでしょうか。これまでの種々の付帯
決議が何の効き目も持っていないことは、よくご存知なのはずだからです。な
ぜ、付帯決議の内容をきちんと法律にしないのですか?行政が作った法律案は
国会議員が指一本触れてはいけないような神聖なものなのでしょうか。


  与党の方にもお願いしたいことがあります。

  審議の中で、この法案は、運用次第でよくも悪くもなるが、やはり賛成であ
る、と発言された方がいました。「運用次第でよくも悪くもなる」というのは、
法案はザル法である、という言うも同然です。「運用次第でよくも悪くもなる」
法律は、肝心なことを行政の裁量に委ねる法律であり、それを知っていて通す
ことは、三権分立の一翼を担う国会の議員として、みずからの存在理由を放棄
するも同然のことではないのですか?

  また、与党議員の方にも、国立大学を独立行政法人(別名:国立大学法人)
にすることを懸念する方もおられることが、自民党のニュースで報じられてい
ました。政党政治では、政党の判断が党員の個人的判断に優先することは自然
ですが、諸政党の政治的理念とは独立した問題については、党議拘束を外して、
それぞれの議員の方々が、個人としての考えに従って採決において投票するよ
うにべきではないでしょうか。

  年々、政党政治への無関心が社会に広がっています。その理由はこういうこ
とではないでしょうか。議員のかたの大半は、所属する政党のコマとしてしか
活動が許されず、議員一人一人のかたが豊かにもっておられる個性と独自の信
念を活かして政治の舞台で活動されたならば伝わってくるはずの感動が伝わっ
てこないからではないでしょうか。

  大学改革は、どの政党に属しているかとは独立に、その意義や問題点につい
て、考え判断することができるテーマの一つだと思います。種々のアイディア
をお持ちの方もおられると思います。文部科学省という行政が作った「大学改
革」を鵜飲みにされず、党員としてではなく国会議員として、また、同時に一
市民として、国立大学法人法案の是非について判断してくださいますよう、お
願い致します。

  最後に警告しておきたいことは、国立大学法人法案は、行政への大学改革白
紙委任状だ、ということです。自己権益を守り拡大する本能を持つ行政に、白
紙委任状を出せば、大学を自己権益拡大に利用することは当然のことです。法
案がもしも可決された場合に、大学が行政の権益の道具として利用されて衰退
していったとしても、その責任は行政だけにあるのではなく、その危険性を承
知の上で行政に大学改革を白紙委任した、文部科学委員のみなさんと、委員会
採決結果をそのまま本会議採決とされた全議員にある、という点を忘れないで
頂きたいと思います。

辻下 徹
北海道大学大学院理学研究科
〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目
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