==> 国立大学独立行政法人化に抗して
北大数学教官へのメール

北大数学教官へのメール

                         平成11年8月20日

数学科教官各位
                                 
辻下です。

昨日の独立行政法人化についての「勉強会」に出席してわかったことですが、本日の
理学部の教授を対象とした「独立行政法人化の説明会」は、事実上、独立行政法人化
自身の賛否を全学に問う場ともなっています。できるだけ出席して、理学部としての意
見の形成に参加して頂きたいと思います。

独立行政法人化は、政治情勢から不可避に見えても、大学人として明確に反対を表明
しておかなければならないものと考えます。間違っても「自主的に」独立行政法人化
を選択するようなことがあってはならない、と思います。以下、そのように考える背
景を簡単に述べておきたいと思います。

まず、行政改革の流れの中で国立大学も血を流さなければならないことは不可避であ
る、という認識は適切なものと思われます。問題は、どのような形で血を流すか、と
いう点です。

副学長の説明では、血の流しかたとして3つのオプション
(1) 現状維持して10%〜25%の定員削減、大幅な予算削減 
(2) 独立行政法人化(この場合の定員削減・予算削減は全く不定、)
(3) 大学独自の行政法人化(これは全く不明)
があり、これらはまだ何も公式には決まっていない、ということでした。

私の印象では、(1) をぬかるんではいるが確かな道を歩くことにたとえるとすれば
、(2,3) は底の知れない泥沼をこれから作らなければならない呪文を唱えながら歩く
のに相当すると思われます。これまでの資料を見れば、独立行政法人制度は数値化で
きる単純業務を想定した制度で、大学という中身を盛るには全く適していない容器で
す。たとえば、現在の大学が当たり前に享受している「研究教育の自由」「運営(人
事・予算等)の自主・自立」なども、独立行政法人化してしまった場合には、個別法
を理想的に作ってかろうじて維持できる可能性が皆無ではない、というような性格の
ものです。
 また、(2,3) の場合に、大学にとって適切なものに制度を調整していくために費や
される知的労力は、大学院化の場合の比でないことはいうまでもありません。

行政改革の見掛け上の実績を増やす以外に、国立大学の独立行政法人化にポジティヴ
な意義がないことは多分誰が考えても明らかで、独立行政法人化には国大協が一貫し
て反対を表明し、東大学長が記者会見までして改めて反対を明確に表明しているわけ
です。

昨日の勉強会での質疑応答を聞いていてわかりましたが、北大執行部の姿勢は、「北
大も公式には反対であるが、政治的な情勢を見ると不可避のようであるから独立行政
法人化が決まってしまった場合に備えて、準備をしておかなければならない」という
ものです。最悪な場合に備えた準備が不可欠なことは当然のことです。

しかし、奇異な印象を受けるのは、反対を押し切られたときの場合の準備ばかりして
いて、反対を押し切られないための努力は何もしていない、という点です。北大のこ
れまでの中身の存続に関わる決断である以上、全学投票をして全教職員の意思を確認
しすべきである、と思われます。少なくとも、理学部教授会としては反対である、と
いう確認の決議をすべきではないか、と思っています。

最後になりますが、独立行政法人化が実現された場合に、3〜5年の中期目標への達
成度についての(数量的な)業績評価に基づく予算配分という形式を骨組みとしてし
ているので、数学科は他学科以上に試練を受けるのではないか、という危惧を感じて
います。と言っても、ことの重大さからすれば学科単位の損得など問題ではない、と
いう感はありますが。

辻下