==> 国立大学独立行政法人 化に抗して
理学研究科 教官各位

理学研究科 教官各位


数学専攻の辻下と申します。個人的にお願いがあります。

先に理学部事務から連絡がありましたように、理学部による独立行政法人化
に関する意見交換会が
       日時:平成11年10月18日(月)  16:00〜
       場所:理学部5号館大講義室
に開かれます。ぜひ、多くの方にご出席頂きたいと思います。

この会の後、会での動向を見て、研究科長が各専攻長と相談し、13日の部局長会
議での学長による、7日の7大学会議・8日の北海道地区学長会議の報告を考慮して、
理学部としての反対決議をするかどうか等の、今後の理学部の対応を計ることになっ
ています。これは10月8日の理学研究科教授会で研究科長が提案されたことである、
と私は理解しておりです。ぜひ、この会が実質的な討論の場になるよう、ご協力くだ
さい。

臨時拡大教授会の開催が決まった場合には以下の決議を提案するつもりでおります。
決議に至らない場合には理学研究科教官有志の名で公表したいと思っています。
賛同頂ける場合には、メール等でご連絡ください。また、素案ですので、お気づき
の点があればお教えください。

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理学部・理学研究科 決議案

国立大学の独立行政法人化は、日本における高等教育および学術活動全体の将
来の盛衰にかかわる、大きな転換である。

学問の主目的は、より正しい世界観・価値観を求めそれを人類に提供し続ける
ところにあり、大学教育の主目的は、学生により正しい世界観・価値観を呈示
すると同時にそれを自分で求め続ける姿勢を学ばせるところにある。この目的
によって大学は有機体をなし、その中で初めて様々な学問分野の研究・教育に
深い意義が生じるのである。

国立大学の独立行政法人化の根拠は、学問の有機的統一性を崩せば諸学問領域
同士が競うようになり学問が活性化するというものであるが、これは根本的か
ら誤っている。学問の有機的統一性の破壊は学問そのものを死に追いやるもの
で、学問の死後に残る知識の集積を断片的を教えるには大学制度は不用となろ
う。

しかしながら、一方、国立大学制度の中で、学問の有機的統一性はすでに種々
の要因により次第に失われつつある傾向は否めず、たとえ独立行政法人化の危
機がなかったとしても、学問は崩壊の可能性を孕む危機的状況にあることも確
かであると思わる。

国立大学の独立行政法人化は万難を排して回避しなければならない一方、それ
を回避した後で現状を何も変えるつもりがないのならば回避に努めることは徒
労となる。したがって、目下の急務は、国立大学制度の中で学問の有機的統一
性をいかにすれば回復できるのかを真剣に考え具体的改革案を立案していくと
ころにある。

国立大学独立行政法人化の危機は、学問・教育の有機的統一性が喪失するか回
復するかの重大な岐路であると判断し、北海道大学理学部・理学研究科は、国
立大学独立行政法人化の回避に努めることと、国立大学制度の中で大学の研究・
教育を根本からの再構築を目指すことを努めることとを決議する。

独立行政法人化問題の帰趨に責任のある位置におられる、北海道大学評議員、
北海道大学学長、国立大学協議会、文部省に対し、国立大学独立行政法人化の
諸問題の検討と平行して、国立大学制度維持となった場合の、根本的改革の具
体案作成作業を早急に進めることを要請する。
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(以下は補足的説明です。)

北大の独立行政法人化についての態度は、「反対」という塗料が次第に色あせ
て最後に「賛成」の地が現れるという経緯を想像してしまうのですが、そのよ
うな経緯は望ましいものではありません。独立行政法人化するならば、その帰
結の全貌を覚悟した上で選択すべきであって、この覚悟が学内世論とならない
段階での独立行政法人化の選択は避けなければなりません。独立行政法人化を
呑むにしてもしないにしても、明確な覚悟は必要です。

この件について、理学部内部で、反対でもない賛成でもない、よくわからない、
関心がない、成り行きにまかせよう、というようなことにならないことを願っ
ています。
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この問題について、重要な争点として、私見では、次のようなものがあります。

(0)問題は「学問・教育の自由」のないところで学問・教育など可能なのか、
という点に尽きるのではないか。(「学問教育の自由、大学の自治」は美辞麗
句か。)独立行政法人化は「学問・教育の自由」(の法的歯止め)を失うこと
を意味する。それは大学の存在理由の核心を失うことではないなのか。

(1)(非は明らかだが)この問題はもう決まっていることだ、というのは本当か。
(1−1)「もう決まったことだ」という意見に、明確な根拠はあるのか。
(1−2)しかし、間もなく決まってしまうということは確かである。
  ・1999年11月17−18に国大協
  ・2000年初頭、国立大学について文部省としての方向付けを行う
  ・2000年4月〜7月通則法・個別法等関係政令制定作業
  ・2000年7月、定員削減計画策定
(1−3)これを見てわかるように、個別法などが決まる前に態度を決めることが
 要求されている。白紙委任状の提出が求められている、ということではないのか。
(1−4)10月4日の臨時の九州地区国立大学学長会議は、
  国大協に対する要望書を採択した(添付資料3を参照)。

(2)5〜10年の範囲では、独立行政法人化で<得>をする、という見方も
あるが、本当か。
(2−1) 国立大学全体の連帯を崩したという「汚名」と「罪悪感」を厭うの
は「大人げない」ことなのか。
(2−2)国立大学と大学研究者への不信感・侮蔑を、決定的に世論に刻印す
るものではないのか。
(2−3)一方、独立行政法人化選択後、大規模な制度変換業務に大半の教官
は忙殺され、<得>をする筈のこの5〜10年にも真剣な研究・教育のための
時間など残らないのではないか。

(3)独立行政法人化は廃学準備であることは、ほとんど確かではないのか。
(3−1)文部省が北大を廃学する積もりはないとしても、何の保証にもなら
ない。(独立行政法人化後は、廃学処理は政府の日常政務となるから。)
(3−2)廃学後、民営化(公営化)していけるのか。その際、国有財産をど
こまで譲渡してもらえるのか。廃学の場合に道立化が可能性かどうかについて、
検討する必要はないのか。
(3−3)北大が生き延びても、高等教育の機会が、経済的にも場所的にも、
有意に制限されることは国難といえないか。

(4)現状維持+定員削減ではやっていけないという懸念は、本当か。
(4−1)しかし、院生には深刻であるかもしれない。
(4−2)また、小講座では死活問題かもしれない。
(4−3)この懸念は、独立行政法人選択への「誘因」として人工的に形成さ
れたことを忘れていないか。
(4−4)一方、現状維持の場合にでも10%を越える定員削減に唯々諾々と
従うのはおかしい。(国立大学として残る場合には、文部省は25%削減、大
蔵省は10%削減という極端なことが、世論に通用するのか。)

(5)国立大学に留まることは、世論の理解を得ることはできない、というのは本当
か。
(5−1)<特権>を守ろうとしているという誤解を解かなければならない。
(5−2)改革が進まないという理由で、改革の努力を全部押し流す洪水を引き起こ
すことは許されるものではない。
(5−3)長期的な世論操作が行われてきている可能性はないのか。
(5−4)国立大学が日本の文化の質と多様性を支えていることは事実である。
(5−5)国立大学消滅後、研究時間の欲しい研究者は海外流出し、広い層に
に亘って優秀な若い人材は外国で学ぶしかないという事態、開発途上国と同じ
事態、が発生することが予想される。これは、日本が文化的後進国となること
を意味し、世界史の背景に退くことを意味する。この点を理解してもらうよう、
われわれがあらゆる方向で努力することで、世論に目覚めてもらうことは可能
である。

(6)「対案」を考えなければ反対できないという意見があるが本当か。間違っ
た公理の上に立てられた理論は、それがいかに壮大なものであっても、公理の
誤りを指摘すれば十分ではないのか。
(6−1)しかし「国立大学に留まる」というのは、国立大学制度を維持する、
というだけであり現状維持ではありえず、その中身については、独立行政法人
化に匹敵する大改革を構想していかなければならないのではないか。
(6−2)現状維持の積もりで反対するとすれば意味が全くないことは確かで
ある。反対する根拠は、改革すらできなくなってしまう危機を回避するためで
あって、危機回避後には、これまでとは質的に異なる努力を要求されることは
当然である。

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昨日(10月14日)に配付された、理学研究科長からの部局長会議の報告の
中に、大学には法案提出権はないのだから、最終的には文部省の考え次第のこ
とであり、反対することには意味がない、という内容がありました。大学には
国立学校設置法を左右できないのは自明な指摘です。しかし、もうひとつ自明
な指摘は、国立大学が一致して反対したとき、そして、世論がその意味を理解
したときには、それを無視することは文部省もできないということです。また、
もう一つ自明なことは、文部省が何を言っても政府はそれを無視できるという
ことです。

辻下 徹
数学専攻

追伸
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ご協力により、独立行政法人化問題専用の、理学研究科教官の電子住所リスト
のエリアス(別名)ができました。
 (略)
宛にメッセージを送ると、ほぼ全員に配送されます。

メールアドレスをお持ちにもかかわらず、受け取られない方がおられるようで
したら私まで連絡くださるようお伝えいただければ幸いです。また、このリス
トからの削除を希望される方は、私までお知らせください。

独立行政法人化関連以外のことには使わないようお願いします。

このリストは、この問題が解決した後は破棄する予定ですし、何か不都合が生
じた場合にも、同様にしたいと思います。
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参考資料
(1)10月14日 千葉大学理学部の声明
(2) 7月22日 千葉大学文学部の反対決議文の一部
(3)10月 8日 臨時九州地区国立大学学長会議の国大協への要望書
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(以下略)