==> 国立大学独立行政法人 化に抗して
理学研究科意見交換会(10月18日)の報告

理学研究科意見交換会(10月18日)の報告

                                 1999年10月19日

理学研究科 教官 各位
(このメールは全学向けに配付します。)

数学専攻の辻下です。

昨日(10月18日)の理学研究科の意見交換会は、色々な角度か
らの発言があり今後の議論を適切な方向に向ける契機となったよう
に感じます。

文部省の見解「国立大学に留まることは(通則法を修正し、大学の
自治と研究教育の自由を確保する)条件闘争に負けた場合の最悪の
事態と考える」と同じ考えからの発言はありました。たとえば、

(あ)定員削減の場合には今後5〜10年は、教官の新規採用がで
きなくなる。

しかし、別の視点からの発言がたくさんありました。これまでの議
論には欠けていた考え方として、次の4点は極めて重要な洞察と思
いました。(私自身の発言はすでに 
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh
で述べていますので省略します。)

(1)独立行政法人化の利点とされることの多くが、国立大学制度
の中でも実現可能である。(これは特に重要な論点で、今後の議論
を左右するものです。最後の方でもう一度取り上げます。)

(2)定員削減は、少子化を背景とする学生定員に減少に伴って今
後当然起こることであり、今回の判断を左右するような事柄ではな
い。

(3)大学は学生が学ぶ場であるという視点からの議論が欠けてい
る。たとえば、学費が急騰することは深刻な問題である。

(4)(独立行政法人化の是非は別にしても)評価機関を評価する
機構が必要である。

なお、他の重要な意見として

(5)独立行政法人化によっても定員削減は免れないが、定員削減
が一様ではなくなる(局所的には免れる)という打算が感じられる。

(6)政治家の土俵や実業家の土俵で戦って大学人は勝てるはずは
ない。この点を思い違いしてるのではないだろうか。

(7)独立行政法人化すると、5年ごと(これだけは長くなる見込
みは決してない)の改廃審査のある会社の社員になるわけだが、そ
のとき(中身の質は問わず)評価基準に応じた業績だけ挙げようと
いう誘惑に抗しきれるという自信は誰もないのではないか。

(8)北大の若い教官の多くは将来いろいろな大学に移っていく以
上、この問題を考えるとき北大の存亡や利害を論点にすることは適
切ではない。

なお、質問として

(9)独立行政法人化についての決定はどこでいつなされるのか
だれか教えてほしい。

というものがありましたが、これについては、研究科長・評議員の
方から明確な発言はありませんでした。

これについての私見を述べます。形式的には文部省が最終的に国立
学校設置法の中の各国立大学の名前を削除する改正案を出し国会で
議決することにより決まるわけが、一般案件の中の小さな項目です
ので国会で議論されることはないはずです。しかし、国立大学が了
承しない限り文部省としてはそういう改正案を出すことは難しいこ
とは明らかですので、実質的には国立大学自身が受け入れるかどう
かが決め手になると思います。しかし、もちろん、国立大学が受け
入れないために文部省が独立行政法人化の方針を撤回したとしても
政府が独立行政法人化を強行する可能性は高いのですが、それへの
歯止めは世論だけになります。その意味で世論がどこまで支持して
くれるかが鍵となると思います。「官」への不信感は国立大学への
不信感にまで達しているという観察がありますので、国立大学制度
を維持するために世論の協力を得るには余程努力しないといけない
とおもいます。その意味でも九州地区学長会議が国大協へ要望した
こと(世論へ国立大学の意義を訴える)は核心的なことの一つと考
えまる。

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(1)について、もう少し具体的に述べます。
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独立行政法人化の利点と考えられていることの例としては、社会事
情の要請で作られてそれが任務を終えつつある部分の縮小や、研究
教育活動全般が種々の経緯で構造的に低下してしまっている部分の
改革があります。それは自発的には実行できそうもないから市場原
理を導入し否が応でも実現さしてしまおう、というのが独立行政法
人化賛成意見の中核にあるようです。しかし、独立行政法人化は両
刃の剣で、そういう部分だけでなく、重要な部分や活性を持つ部分
も含めてすべてを押し流してしまう道具です。そのような「邪悪な
道具」を使うくらいならば、国立大学制度に留まって、これまでに
なかったような大改革を国立大学自身が行うべきです。また、そう
いう改革の実現を目指さない限り、独立行政法人化反対の運動は無
意味であることは、この2ヶ月の間に多くの方の意見を聞いてわかっ
てきました。

理想的には実質的な「国立大学連合」を形成し自主的で開かれた作
業を通して、大胆かつ思慮深い具体的改革案を立案し実行していく
ことです。「大胆」というのは、たとえば(これはただ思いつくも
のというレベルの例ですが)、部局の再編成・改廃を文部省に提言
する、経費のかかる研究部門へは経費が比較的かからない部門から
の組織的「寄付」を考える、人事において(既成の権益を守る傾向
を排除するために、学内外の<人>からランダムに選んで構成され
る)「陪審員」的な実質的チェック機構を作成する、といったレベ
ルの提言です。

独立行政法人化によって可能なことは、国立大学制度の中でも可能
です。可能でないのとすれば我々にその意思がないだけです。

辻下 徹
理学研究科数学専攻 
内線3823
PS.
なお、理学研究科での決議への呼びかけは
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/99a19-sci-2.html
にあります。