==> 国立大学独立行政法人 化に抗して
日本学術会議会長談話

国立大学の独立行政法人化問題に関する
日本学術会議会長談話

http://www.scj.go.jp/data17-130-4.html より転載
                                  平成11年10月27日          
                                        日本学術会議会長          
                                          吉 川 弘 之          

 現在,中央省庁等改革推進本部を中心に推し進められている行政
改革の一環として,国立大学の独立行政法人化が急速に現実味を帯
びだしている。文部省においてはもちろん,国立大学協会において
すらも,仮に国立大学が独立行政法人化される場合の制度設計等に
ついて踏み込んだ検討を急がざるを得ない状況にある。

 しかしながら,研究・教育等の文化の創造に関わる活動は,通常
の行政活動と異質なものであるから、行政改革・国営事業効率化の
視点のみから拙速にこの問題に対する結論を出すならば,我が国の
将来の高等教育・研究に取り返しのつかない禍根を残すおそれがあ
る。日本学術会議は,この問題について深い関心を抱かざるを得な
い。

 これまで国立大学は長い伝統に支えられつつ,幅広い学術分野に
わたるバランスのとれた連携によって,我が国の高等教育の発展に
基本的な役割を果たすとともに,世界の学術研究に貢献してきた。
併せて,全国各地域における高等教育の機会の保障,地域における
学術拠点として文化の発展にも多大の貢献をしてきた。日本の高等
教育・研究の発展を考える場合には,国際社会の中で将来の日本を
いかなる国にするのか,その中で高等教育・研究はいかにあるべき
か,それを実現するためには,国公私立を問わず,いかなる大学や
研究機関が必要で,いかなる人材が育成されなければならないか,
また国の果たすべき役割,特に投入すべき国費はいかにあるべきか
など,国際性を含む広域性,先見性を含む長期性,社会・経済・政
治・文化等多分野を視野に収めた統合性をもった将来構想に基づい
た国策としての検討が見逃されてはならない。

 国立大学自身による果敢かつ不断の自己改革は必要である。だが
同時に,国立大学の独立行政法人化の検討に際しては,設置形態の
変更に伴う制度設計の決定などを含め,高等教育・研究に係わる我
が国の学術諸機関等の多様な意見を十分に聴取したのちに,慎重に
進められることの必要性を強く訴えたい。