==> 国立大学独立行政法人 化に抗して
埼玉大学教育学部教授会の意見

埼玉大学教育学部教授会の意見


                                                     平成11年10月27日

       埼玉大学長  兵 藤 ツトム 殿  

                      教育学部長 加 賀谷 熈彦

              「独立行政法人化」に関する文部省の「検討の方向」
                 (9月20日付)に対する教育学部教授会の意見

      教育学部は本件に関する学長からの要請を承けて、まず10月1日の教授
     会での意向に沿い10月8日に「教育学部「独立行政法人化」問題検討特別
     委員会」(以下、検討委員会と略記)を設置発足させた。ついで検討委員
     会からの教授会への討議資料(正・続)を下敷きにして10月15日、22日
     (臨時)の二回にわたり本件について種々の角度から検討を加えた。以下
     にその結果得られた基本見解とそれに対する補強意見を報告する。10月29
     日に予定されている関東甲信越地区の国立大学長会議において本報告を活
     用してくださるよう切望する。

     [ア:基本見解]

           本教授会はまず、本年7月に公布された「独立行政法人通則法」
          は大学の在り方と両立しないと認識する。この認識を前提にして、
          9月20日の文部省案には(主要なものだけでも)以下の三つの問題
          点が見いだされた。
           ①「独立行政法人」という名称に反して、また文部省自身の「国
          立大学の運営は、教育研究の特性に照らし、自主性・自律性と自己
          責任を基本として行われるべきものである」(9.20付文書冒頭)と
          いう文言に反して、大学は企画立案・財政・運営・人事・評価等の
          面で決定的に従属的・他律的な状況に瀕するであろうことが明白で
          ある。これは、「独立」という形容がつかない一般的な「法人」に
          認められている<自主性・独立性>をすら欠く事態といえる。[下
          記B1参照]
           ②9月13日の国大協「中間報告」は①の事態をあらかじめ危惧
          して、国立大学法人において「経営と教学の一体化」を確保するた
          めに、国立大学に関する「個別法」は「通則法」と基調を異にした
          「通則法修正型」でなければならないと述べているが(p.4)、文部
          省案は「通則法調和型」になっていると判断せざるをえない(①と
          ②は事柄としては同じ)。
           ③文部省案には国立大学行政法人の教職員を「国家公務員とす
          る」と書かれているが、「通則法」では「独立行政法人」のうちで
          も「特定」のものの役員・職員を国家公務員とするとあるだけで、
          国立大学行政法人がその「特定独立行政法人」と認定される保障は
          なく、現時点では大学の教職員の身分保障が不明確である。  以上
          の諸点から本教授会は、文部省案に示されている「独立行政法人」
          は、日本の社会と歴史から付託された研究と高等教育を遂行すると
          いう大学の使命を果たすべきシステムとしてはふさわしくないので
          はないか、という危惧を強く抱いた。よって本教授会は本案は大幅
          に修正される必要があると考え、本案に賛成することができない。

     [イ:補強意見]

           上記の[ア]を基本見解として認めたうえで、なお次のような補
          強的な意見も表明され多くの賛同を得た。
           ①法規作成上の常識から考えて「通則法」とは基調を異にした
          「通則法修正型」の「特例法」を成立させることはきわめて困難と
          思われるから、国立大学の独立行政法人化に原則的に反対する態度
          を表明することがこの時期における大学人にふさわしい見識ではな
          いか。
           ②「企業会計原則」(通則法37条)について「検討の方向」が何
          も言及していないのは不可思議であるが、この企業会計原則が大学
          の長期的・基礎的な研究教育になじまないものであることを確認し
          ておくべきであろう。
           ③今後さらに厳密な議論を積み重ねることが必要だとしても、そ
          れ以上に、独立行政法人化の正体は何であり、それが日本の将来に
          とって"悪"であることを誰にも分かりやすく説き明かし、広く世間
          に訴えていく必要があるだろう。

     [ウ:質問]

           教授会の議論のなかで、学長から会議の席上、文部省から出席の
          担当官に次の質問をしていただきたいという要望があった。
           質問:文部省としては本当にこの「検討の方向」によって大学の
          研究・教育が今後とも長期的に維持され発展していくことが可能で
          あると考えておられるのかどうか。もしその答がイエスであるばあ
          い、その根拠を明確に示してほしい。

     [参考資料]

           参考のために以下に、検討委員会が二回の教授会に提出した「討
          議資料」のうち、[A]と[B1]の部分を再掲する。

          [A]「独立行政法人化」がここまで差し迫るにいたった背景・経
          緯の認識と、予測される今後の推移の把握
             o 膨大な累積赤字国債等による国家財政の窮迫。バブル崩壊後の
               長期的構造不況。
             o 国家機構の大規模なリストラの必要性。
             o 行政改革会議第27回「独立行政法人(仮称)制度構想(試
               案)」H.9.8
             o 「中央省庁改革基本法」H.10.6成立
             o 「独立行政法人通則法」H.11.7公布
             o 国家公務員に占める大学教職員の比率の大きさ(20%強)。
             o 法人化せずとも2001年から向こう10年で国家公務員の25%削減
               がスタート。
             o 少子化による若年層人口の減少。    
             o 大学進学率の急上昇による大学の大衆化。
             o 産業界から大学への<産学協同>の緊密化の要請。
             o 従来文部省は大学の独立行政法人化に消極的ないし反対だった
               が、今年6、7月ころ 法人化やむなしへと戦略を転換。
             o 2000年3月文部省内で国立大学全体に関する「個別法」案を作
               成、早ければ2001 年に法人化スタート、という確度の高い観
               測。
             o 他
          [B1]文部省の「検討の方向」の内容の把握、問題点ないし意義
          の確認
             o 業務 99大学が法令のなかで a.研究大学、b.専門職養成大
               学、c.教養大学に明確 にランク分けされることが想定され
               る。以後大学の性格と運営がこれに規定さ れる。
             o 組織 学長選出をはじめ、大学の管理機構の自治権の大幅制
               限。
             o 目標・計画 中期計画(文部省案で5年)に研究・教育が強く
               拘束される。
             o 評価 総務省の審議会、文部大臣(評価委員会+大学評価・学
               位授与機構(仮称))、  運営諮問会議(学内)、による三
               重四重の監視。
             o 人事 教職員の身分が流動化する。スリム化(リストラ)の可
               能性大。
             o 財務 企業会計原則採用による経済合理性の強化。
             o 財務 財源(運営費交付金)の保障が流動化する。
             o 財務 授業料の大幅値上げ必至。
             o 財務 外部から資金を導入するに要する知的身体的労力と、<
               産学協同>にまつ わる種々の問題性。
             o 他面、通則法に対して文部省案はある程度防波堤になっている
               ともいえる。
             o よって、他省庁からの圧力により文部省案からさらに後退する
               可能性が高い。
             o 他                           
                     (以上)