==> 国立大学独立行政法人 化に抗して
ちぐはぐな文化行政 [reform:02358] より転載

ちぐはぐな文化行政

朝日新聞11月20日付け
記者の目
ちぐはぐな文化行政
国立美術館・博物館の独立行政法人化
          
           学芸部編集委員・田中三蔵氏
          (朝日新聞11月20日付け)

 芸術の秋深し。美術館・博物館が集中する東京・上野公園一帯がにぎわって
いる。今年は新顔が加わったから、ちょっと目新らしい雰囲気だ。
 その一つは、10月に開館した東京国立博物館の平成館。開館記念特別展と
して「金と銀―かがやきの日本美術」展を開いている。弥生時代から江戸時代
までの、国宝50点を含む約300点。満腹感を感じるほどだ。1日平均の入
場者は昨年秋の特別展の2倍強にあたる約3200人という。
 もう一つは、東京芸術大学大学美術館。やはり10月に開館し、開館記念の
「芸大美術館所蔵名品展」を開催中だ。高橋由一の「鮭」などの重要文化財や
奈良時代の「絵因果経」といった国宝も含む150点。平日でも入館まで数十
分待ちという行列ができる人気だ。
 まずは、めでたい。だが、実は、手放しで喜べる状態ではない。以前から話
題になっていた国立美術館・博物館の独立行政法人化の姿がはっきり見えてき
たからだ。
 7月に独立行政法人通則法が成立し、再来年4月に国立美術館・博物館が独
立行政法人に移行することが本決まりになった。その個別法案が、今の臨時国
会に提出され、衆議院で審議中である。
 それによると、国立西洋美術館、東京と京都の国立近代美術館、大阪の国立
国際美術館の4館が、一くくりで「独立行政法人国立美術館」を作り、一人の
理事長を置く。同様に、東京、京都、奈良の国立博物館3館が1つの「独立行
政法人国立博物館」となる。また、東京と奈良の国立文化財研究所は「国立」
の名をはずした1法人となる。
 職員は、国家公務員とほぼ同じ身分の「国家公務員型」。所蔵品は国有のま
まにするか、法人所有にするか未定。しかし、美術館・博物館の現場では法人
所有になるという暗黙の了解のもと、すでに収蔵品のリストアップ作業を始め
ているという。また、研究部門より企画部門の増員、強化へシフトしていると
も聞く。
 異なる専門の美術館が1グループになることについて、美術館関係者は反対
してきたがかなえられなかった。高階秀爾・国立西洋美術館館長は「各館の独
立性を保つよう求めてきたのに、認められなかった。館ごとの独立性、自主的
活動が保証されない恐れがある」と不安を隠さない。
 一方、「新国立美術展示施設(ナショナルギャラリー)」(仮称)の建設計
画が動きだした。同ギャラリーについて3年前に設置された文化庁長官の諮問
機関「基本計画検討協力者会議」(平山郁夫座長)が、3月に出した報告書に
基づく。
 それによると、全国規模の公募展や大型企画展への施設提供が目的。情報収
集・提供や教育普及活動もする。東京都六本木7丁目の現東京大学生産技術研
究所の一部、約3万平方メートルの敷地に建設し、展示施設は1万4千平方メ
ートルと大規模なものだ。
 総事業費は約420億円。早ければ2001年度に着工し、05年度完成、
06年度開場を目指す。基本設計は設計業者を「プロポーザル方式」と呼ぶ公
募形式で決める予定で、その準備中だ。
 所蔵品は持たない、いわゆる貸し館で、学芸員を置くかどうかすら決まって
いない状態だ。外国の著名美術館・博物館が、学芸員のいない館に、優品・名
品を貸してくれるかどうか、心配される。
 片方で、ほとんど理念的論議をせず国立施設を切り離し、効率化の名の下に
研究部門を軽んじ、他方で典型的な「箱もの」を作る。このちぐはぐさ。美術
はある時代の精神活動や魂の形見のはずだが、国は全く人集め商品としか考え
ていないようだ。精神のありかたを尊重し、研究する気もシステムもない社会
は、荒廃を生むだろう。
 だから、芸大美術館のにぎわいも黙って喜ぶわけにはいかないのである。国
立大学もすでに独立行政法人化への道を歩んでいるからだ。