==> 国立大学独立行政法人化に抗して
独立行政法人化問題で視野に入れるべきこと

独立行政法人化問題で視野に入れるべきこと

辻下 徹

北大農学部・農学研究科勉強会 1999.12.14


1. きっかけ(1999.8.19)評議員有志による「国立大学の独立行政法人化に関する勉強会」

2.独立行政法人化の形式的ポイント
2a)総定員法から外れる(「定員」がなくなるので「定員削減」という言い方がなくなる)
2b)大学の「5カ年目標」と「5カ年計画」を明示する。
 独立行政法人森林総合研究所法では、「業務内容は、「森林及び林業に関す
る総合的な試験及び研究、調査、分析、鑑定並びに講習を行うこと。森林及び
林業に関する試験及び研究に必要な標本の生産及び配布を行うこと。前二号の
業務に附帯する業務を行うこと。」とされ、これ以外の業務を行った場合その
違反行為をした研究所役員は二十万円以下の過料に処する」とされている。

2c) 国立大学への国費は(給与も含め)運営交付金に。使い方は学長の裁量。
	「事前審査」から「5年毎の事後審査へ」
	審査は厳重にする:(学者、官僚、政治家)による3重のチェック
	研究費は経常経費から(学内外の)公募型研究費へ移行。

3. なぜ、独立行政法人化か。
3a)表面上は行政改革の一貫、そして自自公の公約。
	 国立大学独立行政法人化が失敗したとき一番打撃を受けるのは誰か。
	(文部省「国立大学に留まれば大学が潰れる前に内閣が潰れる」)
	定員削減は目くらまし
3b) 財政改革でもない(cf. 添付資料)。

4.独立行政法人制度の構造的特徴
4a)不安定性
	「これにより市場原理が働き、効率が高まる。」という筋書き
4b)国家機関を下請け会社へ。 
	民営化の移行措置

5.独立行政法人化の真の効果:大学の<創造的破壊>
5a) 競争的環境(市場原理、弱肉強食)
	方法:経済的安定性を奪うことにより(任期制、大学自身の任期制)
5b)何についての競争かは、大学は決められない。
5b1)制度的方法:研究課題の設定の主導権を研究者から奪う。
		(補足:目標外の研究に罰金)
5b2)財政的方法:研究費を経常型から公募型に完全移行させる。
5c)大学の創造的破壊を誰が必要としているのか。
	「グローバリゼーションの国難を挙国体制で乗りきろう」という人達

6.しかし 国立大学はこのままでよいか。
6a) 評価の欠如は「評価システム」では解決できない。
	学術的相互批判のみが解決できる。
6b)「外圧を利用して一気に改革」はナチに協力した学者の最初の動機だったという。

7. やるべきこと
7a)目標はあくまで 独立行政法人化の今のプロセスを白紙に戻すこと。
7b) 長期戦と考える。(白紙の戻したとしても民営化への圧力は消えない)
7c) 学内でやること
  ・部局の意見表明、対外的意見表明、勉強会、etc
  ・ 学内の多くの層の間の具体的コミュニケーション
  ・ 学生の人達に独立行政法人化問題に関心をもってもらう。
  ・ 教職員組合の活動に協力(署名、募金等)
  ・ 具体的提案を模索(池上了氏「独立学術法人」)。
7d) 学外へ向けて
  ・独立行政法人化問題の本質を理解してもらう。
  ・ マスコミで発言している人達に独立行政法人化の本質的危険性を理解してもらう。
  ・賛成している人と公開討論を行う。
  ・ 意見広告をだす(例:125周年募金の1割をこちらに寄付してもらう)
  ・ 国立大学教職員に「特権」などないことを具体的数字を挙げて理解してもらう。
		(給与、勤務時間等などを具体的数字を挙げて)
  ・国立大学が持つ「火の見櫓」(為政者にとっての棘)の機能を理解してもらう。
国立大学の独立行政法人化問題は、世界で進行している非人間的「市場主義」
の奔流(しかし先月のTWO世界大会で反撃にあったように勢いに翳りが出始
めている)の一つに過ぎないが、市場主義自身を押しとどめる力がわずかでも
あるのは大学だけであることを納得してもらう。

  ・日本には人的資源しかないことを忘れないように訴える。
人を粗末にする歯止めない市場原理を推進する風潮は、100人に1人が刑
務所にいるアメリカ社会に一直線に突進するもので完全に間違っており、さら
に高等教育機関まで<創造的破壊>を推進することは、人的資源しかない日本
では正気の沙汰ではないこと、この点を基盤にして、訴えていく必要がある。

8.資料など
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh (辻下)
http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/Alink_daigakushin.htm 
(全国大学高等専門学校教職員組合)

  政府研究開発投資17兆円 

「科学新聞」1998年 9月18日号


 1)各年毎の予算の使い方:
 科学技術基本計画に基づく、平成8年度から12年度の5年間に17兆円と
する政府研究開発投資の目標は、残りの2年間で何とかクリアーできる見通し
が明らかになった。
        1996  3兆円;  1997  3兆円; 1998  3.6兆円
        1999, 2000 年に7.4 兆円を使えば、目標の17兆円を達成
 これまでの状況をみると、平成8年度3兆円(当初予算2・8兆円、補正予算
0・2兆円)、9年度(当初予算3兆円)、10年度(当初予算3兆円、補正
予算0・6兆円)で累計9・6兆円となった。あと11年度と12年度の2年
間で約7・4兆円となれば目標に達する。
 そのためには、(以下略)
        ---------------------------------------

2)政府の科学技術関係の予算  大枠 実項目(単位億円)
http://www.sta.go.jp/policy/seisaku/81228.html

文 部 省(13,487)   通商産業省 ( 5,081)    
科学技術庁(  7,719)        厚生省    (1,017)
農林水産省  (1,091)               防衛庁      (1,465)  
郵 政 省  (743)                   建設省     (412) 
環 境 庁  (233)                   運輸省    (229)
外 務 省  (131)                  労働省      (44) 
大蔵省(23)    警察庁(22)  法務省(21) 
日本学術会議 (13)  経済企画庁(11)  国会(9)  国土庁(9 ) 
自治省(8)      北海道開発庁(2)   
                                 ***合計    3兆1,511 億円
省庁を横断するプロジェクトが増加しつつある。

2a)省庁の枠(金額は1997年度の額:毎年計上)

文部省 
  未来開拓学術研究推進事業   220億円 87件
(96年度は110億円だったから、翌年は2倍に増加している)
科学技術庁
  戦略基礎研究推進事業   240億円 60件
 厚生省(96年には10億円で出発)
  保健医療分野における基礎研究推進事業 240億円    17件
農林水産省(同上 19億)
  新技術・新分野創出のための基礎研究推進制度 37億円 20件 
通商産業省 
  新規産業創造型研究開発促進新事業 35 億円     45 
郵政省
  創造的情報通信技術開発開発推進制度 9 億円 15件
運輸省
  運輸分野における基礎研究推進制度  8億円 15件

 1996年に未来開拓推進事業が始まった時、この予算を審査する事業委員会の
委員98人のうち34人が助成金を受け取るリーダーになったとする「予算ぶ
んどり」行動は、Nature Vol. 383 p.369 '96 にすっぱ抜かれた。
                                       
2b)省庁を横断した項目
〈ライフサイエンス関係〉
1.ゲノム関連研究の推進  265億円 
   科技庁、文部、厚生、農水、通産省 
2.脳科学研究の推進   265億円
   科技庁、文部、厚生、農水、通省、郵政省 
3.動物・植物・昆虫による有用物質生産技術の研究開発 8億円(★新規)
  農水省、通産省 

(健康・生活安全関係〉 
4.内分泌かく乱化学物質の影響に関する調査研究の推進  71億円 
  科技庁、環境、厚生、農水、通産、労働、建設省 
5.ダイオキシン類に係る調査研究の推進  44億円
  環境庁、厚生、農水、通産省 
6.疾病対策等健康関連科学技術に係る調査研究の推進  248億円
  科技庁、文部、厚生、農水、労働省 
7.地震調査研究の推進 
8.防災科学技術の推進(地震調査研究を除く) 30億円  
  北開庁、科技庁、農水、通産、運輸、郵政、労働、建設、自治 
9.医療機器・福祉用具開発の推進 
    38億円、他に60億円の内数 
    厚生省、通産省 
10.地理情報システム(GIS)の整備のための研究開発の推進 
    20億円   国土庁、通産、郵政、建設省 
11.大容量情報の超高速伝送・処理の実現を目指した研究開発の推進 
    22億円   科技庁、通産省、建設省 (この他、関連研究
  として地球シミュレータの開発(科技庁) 55億円
12.21世紀の高度道路交通システム(ITS)実現のための情報通
   信システムに関する研究開発    26億円  運輸、郵政、建設
13.公共電気通信システムの共同開発    15億円
   文部省、農水省、運輸省、郵政省、自治省  
14.次世代超音速機技術の研究開発の推進   66億円 科技庁、通産

〈地球科学・環境関係〉  
15.地球変動予測に関する研究開発の推進 
16.原油流出による海洋汚染への対応能力の向上  10億円
    科技庁、環境庁、運輸省、建設省  
17.ライフサイクルアセスメント(LCA)手法の確立 11億円
    科技庁、環境庁、農水省、通産省、運輸省、建設省 
18.南極地域観測事業の推進     45億円 文部省 
19.国際深海掘削計画の推進     37億円  科技庁、文部省 
20.成層圏プラットフォームの研究開発     20億円 科技庁、郵政省 
21.自律型無人潜水機の研究開発  科技庁、文部省 

〈宇宙開発関係〉〈原子力開発利用関係〉  省略
     ===============
II. よりよい研究環境を整備するための施策における連携の推進 

24.特殊法人等による提案公募型の基礎研究推進制度の推進 
   701億円 科技庁、文部、厚生、農水、通産、運輸、郵政
25.ポストドクター等1万人支援計画 
26.研究開発型ベンチャーの創出による研究成果の活用の促進 
27.産学官の連携の促進 
  科学技術振興調整費(科技庁) 302億円
    科学研究費補助金(文部省) 
    (特定領域研究)  82億円
    (地域連携推進研究費) 33億円(★新規) 
    地域研究開発促進拠点支援事業(科技庁) 15億円 
    大学連携型産業科学技術研究開発制度(通産省)36億円
28.知的基盤の整備 
    知的基盤整備推進制度(科学技術振興調整費)(科技庁)38億円
    知的基盤創成・利用促進研究開発(通産省)   4億円(★ 新 規 ) 
29.生物遺伝資源等の整備  27億円、他に71億円の内数  
    科技、環境、文部、厚生、農水、通産 
30.地域における科学技術の振興 
             地域結集型共同研究事業(科技庁) 42億円
          科学技術振興調整費(地域先導研究)(科技庁)9億円
            地域連携推進研究費(文部省) 33億円(★新規) 
 提案公募型技術開発研究事業などがこれに含まれるのか=夏に配布された
          地域先端技術共同研究開発促進事業(農水省) 4億円 
          地域コンソーシアム研究開発制度(通産省) 38億円
          地域提案型研究開発制度(郵政省) 11億円の内数
31.国の研究開発活動を総覧するディレクトリデータベースの構築・提供
     6億円    科技庁、文部省 

III. 研究開発の厳正な評価の実施  (金額 非記入)
「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的
    指針」(平成9年8月内閣総理大臣決定)に沿って研究開発の評価の効果的
    な推進を図る。(関係省庁における評価の実施状況等を9月17日に科学技
    術会議政策委員会に報告。) 
  研究開発の評価を効果的に推進するため、関係省庁連絡会議を開催。 

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3)研究費全体の考え方、科学技術基本計画(閣議決定)より引用
http://with.mri.co.jp/Sangyougijutsuka/r6-7.html#no2-3
III. 多元的な研究資金の拡充

(a)競争的資金の拡充
 研究者の研究費の選択の幅と自由度を拡大するとともに、競争的な研究環境
の形成に貢献する競争的資金の大幅な拡充を図り、これにより、競争的資金が
研究資金において占める比率が高まるよう措置する。このため、平成8年度か
ら本格的に導入された特殊法人等を活用した新たな基礎研究推進のための経費、
科学研究費補助金、科学技術振興調整費、民間能力の活用を含めた公募型の研
究開発を推進するための経費、各省庁において国立試験研究機関を選択して配
分する共通横断的な分野の研究開発を推進するための経費等の多様な競争的資
金の大幅な拡充を図る。

(b)多様な研究開発の推進のための重点的資金の拡充
 研究開発推進の基本的方向に沿って、基礎科学の重点的な推進を図るととも
に、社会的、経済的二一ズに対応して、大学、国立試験研究職関、特殊法人等
の研究開発機関において行われる研究開発や各種研究開発制度により行われる
研究開発が効果的かつ重点的に推進されるようにするため、上記の競争的資金
の拡充と併せ、多様な研究開発の推進のために必要な研究資金の拡充を図る。

(c)基盤的資金の充実
 国立大学等や国立試験研究機関における研究者の自主性が重要な基盤的な研
究活動を着実かつ効果的に推進できるよう研究者が経常的に使用できる研究資
金及び研究開発施設・設備の運営に係る経費の充実を図る。

 ★(c)は付け足し、校費は理系では削減される措置が決まった。