「通産ジャーナル」
大学等連携推進室長インタビュー




「大学等連携推進室」は昨年4月に設置されたと伺っていますが、どのような背景で設置されたのですか。

 昨年3月に、新商品の開発・生産、新生産方式の導入等による新たな経済フロンティアの開拓(事業革新)を行う事業者に対して支援を行うことを内容とする「事業革新法」が制定されました。この法律の中で、国は事業者の事業革新の円滑化を図るため、研究開発や人材育成に関して大学等との連携・協力が円滑になされるように努めることとされるとともに、衆参両院の附帯決議においても、産学連携の重要性と積極的な政策展開の必要性が指摘されました。
 すなわち、企業と大学との連携(産学連携)による研究開発などは、大学の独創的な技術シーズと企業のビジネス・ニーズとを的確に結びつけ新たな技術の事業化を飛躍的に効率化し、新規産業育成など経済フロンティアを拡大する原動力として大きな役割を果たすものであり、積極的に推進していくことが必要であるとされたものです。
 このような背景を踏まえ、通産省においても、産学連携による研究開発や人材育成をより一層推進していくための組織体制を整備することとし、昨年4月に当室が設置されました。


 新たな経済フロンティアを拡大していくためには、産学連携による研究開発は不可欠なものであると思いますが、どのような現状にあるのですか。

 大学側の産学連携に関わる基本認識は、かつての「営利企業との連携は学理の探求とは相容れない」との考え方から、「双方に実益のある連携に対する理解」へと、徐々にではありますが変化が感じられます。
 実は、1994年度には、産学連携による研究開発は、企業と大学との共同研究、企業から大学への委託研究、奨学寄附金の総額は、国立大学だけでも約600億円に上るのです。しかしながら、これらの取り組みの実態を見ると、その多くに、企業側は優秀な学生を獲得するためのリクルート経費、大学側も少ない研究費を補填する資金とそれぞれの固有の思惑があることも事実です。米国のスタンフォード、MITなどの大学においては、大学の知的資産を中核として、ヒューレット・パッカード、DECなど多くの新しい企業が孵化し、ベンチャー企業として巣立ったわけですが、米国に見られる産学連携の形態とは、実態的にはかなりの程度差異が見られます。
 一方、米国を始め、海外の産学連携の実態を参考としつつ、より実質的な産学連携を進めていこうとの意欲的な取組みも見られます。立命館大学がリエゾンオフィスを設け企業との連携を進めているほか、東大の駒場リサーチレゾナンス、筑波大学のTARA、早稲田大学の本庄リサーチパークなど本格的な産学連携構想が動き出しており、今後の進展が期待されるところです。


 産学連携による研究開発を推進していくに当たっては、現在どのような課題があり、どのように取り組んでいかれるのですか。

 企業と大学との連携により研究開発を推進に当たっての課題としては、資金面の問題と制度面の問題とに大別されます。
 資金面については、平成7年度よりスタートした提案公募方式のファンドは平成8年度には6省庁総額320億円もの規模に拡大します。マルチ・ファンドは、大学側に競争意識を醸成するとともに民間企業との連携の道も提供しています。その他、産学連携を推進する企業側へは、補助金や低利融資、税制といった支援策を用意しています。また、研究施設の充実の問題についても、平成7年度に民活法を改正し、産学連携による研究開発・企業化のための基盤施設の整備を行う事業者に対する補助金、低利融資等の支援を実施して行くこととしました。
 一方、制度的問題については、これから取り組むべき課題が山積しています。そもそも、大学と民間企業とは、その存在意義、形態、運営方法等が全く異なるの組織であり、連携推進には相互理解の深化を進めなければなりません。双方からの十分な情報提供を行うとともに、忌憚のない意見を交換することが必要となります。十分な相互理解を踏まえた上で、産学連携を進めていくためには制約となっている諸制度について、必要な見直しを進めていくことになります。
 例えば、大学で生み出される知的資産の権利化、民間企業への権利付与の問題、大学が保有する知的資産についての情報提供の充実、大学教官が産学連携の下で研究活動を行うにあたっての諸制約の緩和、事務手続きの抜本的な合理化等従来から指摘されている問題ではありますが、十分な議論を経て着実に制度改善を進めていきたいと思います。
 また、このような取組みは、各通商産業局においても、地域の大学と産業界との連携の促進を図るため進められていますが、地域の取組みとも連携を図って行きたいと考えております。


 文部省との連携も必要であると思いますが、文部省とはどのように連携を図られていますか。

 大学に関する諸制度の問題については、文部省との連携が不可欠です。当室が設置されてから様々なチャネルで文部省とも意見交換を進めてきましたが、この2月から文部省内に産学連携の推進のあり方について勉強するための検討会を設置して頂くこととなりました。通産省も検討会に参画することとなっています。当室としては、企業側のニーズを汲み上げて諸制度の改善に貢献していきたいと考えており、更に、企業側についても従来の学生確保の観点のみでない、本来の産学連携のあり方について十分な議論をお願いしたいと思っています。


 昨年、科学技術基本法が成立し、今年の夏には、科学技術基本計画が策定され、我が国の研究開発制度の見直しの検討も行われると伺っていますが、企業と大学との連携による研究開発制度に関してはいかがですか。

 昨年12月に制定された科学技術基本法の中で、政府は科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、科学技術基本計画を策定することとされています。昨年末から科学技術会議の場において検討が開始されて、本年夏を目処に取りまとめ作業が進んでいますが、この計画策定に当たっては、政府の研究開発投資額の早期の倍増(例えば、2000年まで)とともに、人材、資金、研究開発成果等に係る制度面での改善を行い、柔軟かつ競争的な研究環境を整備することを検討課題としています。
 産学連携についても、政府と民間との連携という位置づけで、必要な対応が検討される予定です。
  大学における研究は、政府の研究開発活動に占める割合(予算規模で4割強)、若い研究人材の教育等の面から中核的な位置づけにあり、基本計画の策定においても議論の焦点となります。例えば、人事制度面では、昨年8月、文部省大学審議会において大学教官の任期附任用制度の導入することの必要性が指摘されている他、労働者派遣業法の見直しにより研究開発の業務が追加となる等の規制緩和の動きもあり、計画においても積極的な対応策が盛り込まれることを期待しています。


最後に、今後、業務を進めていくに当たってのお考えを一言お願いいたします。

 当室は昨年4月に設置され、産学連携による研究開発推進などのための施策もまだ緒についたばかりです。これらの施策は、経済構造改革推進のためには不可欠なものであり、今後大いに前進させていかなければなりません。また、通産省の業務としても新しい行政分野であることから、失敗を恐れることなく果敢にフロンティアを開拓していくことを心がけたいと思います。産学連携を進めるには、文部省、科学技術庁などの関係省庁との連携・協力が必要であることは言うまでもありませんが、実効性のある政策を講じられるように努力してまいりたいと考えています。





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