プロジェクトの背景と目的






プロジェクトの背景

プロジェクトの目的

比較・評価の対象とした日米の大学







1.1 プロジェクトの背景

バブル経済の崩壊後、日本経済の停滞感は一向に払拭されない。企業経営者も投資意欲を欠き、従業員も元気が出ず、また新卒学生は「超氷河期」とも称される就職難の状況にある。一方、米国は80年代までの停滞の時代をようやく抜け出し、再び活性化の時代にある。両国の産業競争力に関する80年代までの一般的認識から考えれば、わずか5年にも満たない間の認識変化ではあるが、隔世の感を抱かせる。

米国産業界のこの復活は、産業界の自助努力によるのは勿論である。しかし、この復活劇の中で、大学もまた大きな役割を担ったと考えられている。ひとつには、日本の生産技術手法の米国産業界への移転が挙げられる。ここで言う「日本の生産技術手法」には、品質管理手法(いわゆるTQC、米国ではTQM)をはじめ、「チームワーク」等の「日本的経営手法」のすべてを含む。マサチューセッツ工科大学(MIT)などエンジニアリング・スクールの教授陣は、日本企業が日本的仲間意識のもとで「暗黙的」に行っていた企業活動を「形式化」し、産業界が「使える」かたちに翻訳したわけである。これは、産業界に対する大きな知的貢献と言える。現在もMITで最も人気のある講座は「TQM」に関する講座であるという。

いま一つ、米国の大学が自国の産業界に貢献した例を挙げれば、「ベンチャー」に対するそれであろう。現在米国では多くのベンチャーが勃興し、情報通信産業を代表とする新産業分野では、「興奮の時代」の到来と言われている。こんな中で大学は新しい技術を創造し、また人材を産業界に排出してきた訳である。例えば今、インターネットの世界で名を馳せているネットスケープ社やヤフー社は、大学が「技術と人材」を「企業価値」に、そして「国力」に転換した好個の例と言える。

大学の社会的存在意義は、学問を通じて社会に貢献することである。米国においては、大学に蓄積された知的資産を企業を通じて商業化することにより、社会に貢献していく姿勢が明確になっていると考えられる。これに対して、日本では、大学に蓄積された知的資産をどのように活用して社会の中で生かしていくかが不明確なままになっている。 また、かっての「象牙の塔」の雰囲気を色濃く残し、米国に見られるような「産学連携」は極めて希薄であると考えられている。残念なことではある。しかしこの事実を積極的にとらえれば、「日本も米国から学ぶものがたくさんある」「日本も改善の余地がたくさんある」とも言えるわけである。まさに80年代、米国が日本企業をベンチマークし、そこから多くを学んだように。

日本経済の生命線はこれまでも、そしてこれからも「技術」である。大学が産業界と連携し、産業界の技術的ニーズに応え、新しい技術・新しい産業を創造し、また必要な人材を供給することが、今求められている。国力としての技術力の低下が懸念される今日、「産学連携」がこれに真正面から答えることができれば、大変有意義なことである。




1.2 プロジェクトの目的

以上のような視点から、日米の「大学と産業界との連携」状況を比較・評価し、そこからなにかを学ぼうとすることは、まさに適宜を得たものと言える。本プロジェクトは、日米の大学が「大学と産業界との連携」を「いかに組織的に、かつ構造的に行っているか」を、比較・評価するものである。すなわち、「産業連携」を、 を目的として行われた。




1.3 比較・評価の対象とした日米の大学

比較・評価の対象とする日米の大学は、 の中から、図表1.1の通り、日本の大学9校、米国の大学6校を選んだ。日米とも地理的になるべく分散するように大学を選んだ。特に日本の場合、東京に集中しないように考慮した。また、国公立、私立のバランスも考慮した。

図表1.1 比較・評価の対象とした日米の大学
大学名 国公立 私立 本部の所在地 略称
日本 東北大学 宮城 東北大
筑波大学 東京 東大
東京工業大学 京都 京大
慶應大学 東京 早大
東海大学 京都 立命
米国 Massachusetts Institutue of Technology カリフォルニア UCB
University of Illinoisカリフォルニア Stanford
California Institute of Technology ペンシルベニア CMU





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