評価基準



調査方法

評価基準の設定と日米間の
ノーマリゼーション

構成要素の重み付け



調査方法
前節「2.3 「産学連携」の構成要素」で述べた各構成要素ごとに、各大学がどのようなレベルにあるかをピン・ポイントするために、3つのアプローチを採用した。すなわち、

である。各構成要素と上記3つの調査における項目との関係は、図表3.1に示す通りである。大学に対するインタビューには27項目の調査項目がある。そして、企業に対するアンケートには9つの調査項目が、一般公開情報の収集には2つの調査項目を設定した。それぞれの調査項目は、大学別に比較・評価するものと、日米の国としての違いのみを比較・評価するものとの、2種類があり、同図の一番右の列に「大学ごとの評価」「国ごとの評価」として示してある。

図表3.1からも明らかであるが、「産学連携」の状況を正確に掴むために最も重視したのが「大学に対するインタビュー」である。

図表3.1 「産学連携」の構成要素と調査方法との相関



「企業に対するアンケート」は、企業がステークホルダーとして、大学をどのように見ているかがアンケート調査の重点であり、その他のアンケート項目は、大学に対するインタビューの「逆の立場からの検証」といった意味合いで行った。

また、「一般公開情報収集」はあくまで補足的に行った。残念なことに、一般に公開されている数値情報は極めて少なく、あったとしても、「産学連携」の検証にはほとんど使えない。前述したが、例えば、企業からの奨学寄付金の額は、その大学の社会的位置付けの過去からの積分値に比例している。従って、企業からの奨学寄付金の多寡の比較は、本プロジェクトで比較しようとしている「産学連携」とは、なんら相関を持たない。

以下に、インタビューとアンケートにつき、どのような考え方にもとづき、どのようにデザインしたかを簡単に述べる。


3.1.1 大学に対するインタビュー

27項目のインタビューの内容は「付録1:大学に対するインタビュー・ガイド」の通りであり、詳しくはそこに譲るが、各インタビュー項目ごとに1から5の、5つのレベルを設定した。各インタビュー項目ごとに、各大学がどのようなレベルにあるかをピン・ポイントすることが必要であり、このための工夫が5つのレベルの記述である。図表3.2の例にある通り、5つのレベルをできうる限り詳しく、具体的に記述することにより、限られたインタビューの時間の中で、その大学のレベルを0.5きざみで、かなりの確信を持ってピン・ポイントできるようにした。

図表3.2 インタビュー・ガイドにおける5つのレベル(例示)

212.「人」は大学に留まり、物財/サービスによって貢献する

2121.「物財」としての知的財産によって貢献する

b.資産化のための努力:大学として、研究者の間に埋もれた知財を掘り起こし、資産化する努力に関しーーー?

  1. 関心ない。そもそも大学として、そのようなことを考える必要はない。
  2. 知財の特許化は、大学に与えられた使命の一つであるという認識が教職員の間に浸  透しつつあるが、組織的対応には至っていない。
  3. 知財の特許化は、大学に与えられた使命の一つであるという組織的認識の元、特許化のための専門組織設立に向け、検討にはいっている。特許権の所在、特許使用料の配分等の学内ルールは概ね確立されている。ただし、外部との協同開発における、権利配分に関するルール化は、まだまだである。
  4. 特許化のための専門組織ーーーたとえば技術移転管理局(Office of Technology    Transfer、外部の民間特許管理会社との長期的契約も含まれる)ーーーがあり、ここが積極的に特許化努力と行っている。一般職員が横滑りして運営しており、改善の余地は大きい。特許権の所在(外部との協同開発における権利配分も含む)、特許使用料の配分等のルールは確立されており、すべての教職員に明確になっている。
  5. 特許化のための専門組織があり、ここに特許のプロを配しており、長年の運用実    績を誇る。国際特許申請の手続きにも精通している。特許化のプロセスはすべての    教員に明確になっている。



各大学に対するインタビューは、詳細インタビューと補足インタビューに分けて行われた。詳細インタビューはその大学の「産学連携」の責任者に対して行ったものである。責任者とは、学部長であったり、研究所長であったり、ある場合は「産学連携」のための組織の事務長や担当者であったりする。また特に米国の場合、ミッションが細分化されており、一つの大学のインタビュー・メモを仕上げるのに、最多6件の詳細インタビューを必要とした。一件のインタビューには2時間から5時間を要した。

詳細インタビューの最後に、「産学連携」の阻害要因と促進施策につき、インタビューイーの考えを伺った。

1件から6件のインタビューによって作った詳細インタビューの結果を、多面的に検証するために補足インタビューを行ない、インタビュー・メモを仕上げていった。補足インタビューが全く必要ない大学もあれば、5件の補足インタビューを行ったところもあった。インタビュー・メモを作った組織単位は図表3.3の通りである。

図表3.3 インタビュー・メモのリスト
              
大学名学部/研究所名インタビュー・メモ
東北大学金属材料研究所
工学部
付録2.1.1
付録2.1.2
筑波大学付録2.2
東京大学生産技術研究所
先科学技術研究センター
工学部
付録2.3.1
付録2.3.2
東京工業大学付録2.4
京都大学付録2.5
慶應大学環境情報学部
理工学部
付録2.6.1
付録2.6.2
早稲田大学付録2.7
東海大学付録2.8
立命館大学付録2.9
Massachusetts Institute of Technoiogy 付録2.10
University of California at Berkeley College of Engineering
Lawrence
付録2.11.1
付録2.11.2
University of Illinois 付録2.12
Stanford University 付録2.13
California Institute of Technology 付録2.14
Carnegie Mellon University 付録2.15


例えば、東北大学は、工学部と金属材料研究所に対し、詳細インタビューを行った。「産学連携」を行う産業界に対する窓口は、上記両組織の他に、素材工学研究所、流体科学研究所、電気通信研究所等あるが、組織の大きさや実績、「産学連携」に対する姿勢等総合的に判断し、工学部と金属材料研究所の両組織を選び、詳細インタビューを行い、東北大学全体の「産学連携」の状況を推察した。このような背景により、一つの大学に複数のインタビュー・メモがあるところがある。ちなみに、東京大学の先端科学技術研究センターは、その設立の経緯からして工学部と極めて近い関係にある。従って、インタビュー・メモは一つにしてまとめた。そして、インタビューの項目ごとに、両組織のレベルが違う場合のみ、そう記すこととした。


3.1.2 企業に対するアンケート

アンケートの内容は、「付録3:企業に対するアンケート」に日本企業向けと米国企業向けがある。米国の企業は、基本的に日本の大学をパートナーとしては見ていないため(一部にパートナーとして考えている企業もあるが)、日本の大学に対する質問を削除した。

企業がステークホルダーとして、大学をどのように見ているかがアンケート調査の重点であり、また、教員を雇い入れた実績やその評価を聞くことが重点である。従って、アンケートを送付した企業は、基本的に「大企業」のみである。日本では、日立、味の素、東京ガス、東燃といった技術系一部上場会社が中心であり、米国では、3M、Caterpillar、Northrop Grumman、Eastman Chemicalといった、やはり技術系のFortune500クラスの会社が中心である。送付先は各企業の研究所長もしくはそれに準ずる人とした。

日本の「産学連携」の方が遅れていると一般に考えられている。そのため、日本のアンケートの方が、大学に対するインタビューを「逆の立場からの検証」といった意味合いにおいて、より重要になってくる。日本ではまた、「産学連携」が今こそ必要と一般に考えられているため、アンケートの返答率が高くなることが予想された。以上から、日本では250通ほどのアンケートを送付し、米国では200通ほどを送付した。

結果として、日本での返答率は約50%で110通程の返答、米国では20%で40通弱の返答を得た。



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評価基準の設定と日米間のノーマリゼーション
大学に対するインタビューの各項目に5つのレベルを設け、0.5きざみで評価したのは先に述べた通り。同様に、アンケートや一般公開情報の結果分析も、5つのレベル、0.5きざみで評価した。この計9段階の評価と、図表2.3 第3世代の産学連携との間のリンクは、図表3.4の通りである。

図表3.4 「産学連携」の9段階評価と「第3世代の産学連携」との関係
                  
構成要素の9段階評価11.522.533.544.55
第n世代の産学連携11.251.51.7522.252.52.753



  日米両国の大学と産業界の社会的な位置付けや文化の違いにより、インタビューやアンケートの結果の単純な数値比較が、大きな誤解を生む可能性がある。この種の誤謬を排除するため、米国側のインタビューには必ず日本人が同席するようにした。そしてすべての調査が終了後、全体で総合的な評価をし直し、インタビュー各項目の5つのレベルの表現や9段階の評点を、必要に応じ変更し、これをもってノーマリゼーションとした。例えば筑波大のビジョナリー型研究サービスは、付録のインタビュー・メモではかなり進歩的なことを行っている記述となっているが、米国のそれと比較すると、まだ緒に付いたばかりというのが現実であり、評点はさほど高くない。





構成要素の重み付け
「産学連携」を構成する各要素は、「産業連携」に及ぼす影響の度合がそれぞれ異なる。重要度の全体を100とし、これを各要素(の集合)に割り振ったのが図表3.5である。結果として「1.ステークホルダー/戦略」が100のうちの15、「2.プロセス」が最も重要で60、「3.組織」「4.資源」がそれぞれ10と15となっている。

このような重み付けとなった経緯を若干示せば、以下のようになる。まず、図表3.5全体を俯瞰 し、「21.「研究機能」によって貢献する」が最重要であると考える。これに大きな点(最終的に55ポイントとなった)を当て付ける。これとの相対で、他の点数を決めていく。「1. ステークホルダー/戦略」と「4. 資源」は同程度に重要で、しかし「21.「研究機能」によって貢献する」と比べると三分の一以下とすべきと考えられる。次に、「32. 処遇制度」は重要で、従って「3. 組織」が前二者の次にくる。「22.「教育機能」によって貢献する」は、本プロジェクトでの重要度は相当低いと感じられる。そしてそれぞれ割り付けられたポイントが100となるように調整する。すなわち、以上のプロセスは、プロジェクトの過程でプロジェクト・メンバーが感じてきた最良のバランスを、数の形で表現したものである。


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