==> 国立大学独立行政法人化の諸問題

国立大学等独立行政法人化調査検討会議最終報告の行方

中間報告「新しい「国立大学法人」像について」への138通の意見書の扱い

辻下 徹tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
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主要資料
連絡調整委員会議事録より注目発言(2002.2.21)

192 ○「今いる職員を、そういうマインドを持った新しい人と取り替えられるのなら我々は取り組めると思うが、既存の方をそっくり残しておいて、その上でマインドだけ変えて色々と叱咤激励しても、そのうちの大半の人は背を向ける可能性も十分ある。 ・・・・

201 したがって、ハードランディングをする気なら大いにやっても良いとは思っているが、ソフトランディングをするなら少し色々な形で知恵を出さないと、法人化すべき大きな目的自体が吹き飛ぶような事件がおきかねないということを、少しでもよいからテイクノートしておいたほうが良いのではないかというのが私の意見である。」

263 ○「せっかくの我々の志がそういう考慮のために、死んでしまうのではないかということを考える。」

281 ○「事務局長も含めて全部配分するのか、あるいは各都道府県のように各大学が文部科学省に派遣をお腰いして、そして拒否権も含めて大学側がその裁量権の行使を今とは違った形で出来るのかどうか、このような問題が今後非常に気になってくる問題である。」

397 ◇「・・・確かに議論に参加されていない方、あるいは職員の方々からす れば、文字だけをみているので大丈夫なのかという不安があり、それをどうす るかということではないかと思う。それは我々の責務でもあるし、国大協など も活用しながら、どういう形でPRし、あるいは理解を深めてもらうかという ことについては工夫させていただきたいと思うし、また文言等でも言葉を足し た方が良いところは更に検討させていただくが・・・」

449 ○「したがってこのようなことは公務員型であっても出来そうであるということを前に言っていたではないかと言われては困るので、一番主要な、今まで全く出来なかったのはまさにこの「外国人の学長、学部長等の管理職への登用」ということであるため、少なくともこれをまずトップに持ってきていただきたいと思う.」

教育公務員特例法に関する意見
文部科学省 国立大学等の独立行政法人化調査検討会議連絡調整委員会 2002.1.25 配付資料

運営組織の具体案について独立行政法人通則法パターン「公務員型」と「非公務員型」職員の比較(公務員制度改革大綱を踏まえたもの)法人化後の職員の身分に関する主な意見非公務員型主張者の偏り)|公務員制度改革大綱のポイント

中期目標の作成手続のバリエーション案 より
  • A案:文部科学大臣が大学から提出された意見(大学が作成した原案)を基に国立大学評価委員会の意見を聴いて定める。
  • B案:文部科学大臣が全大学共通の基本方針を定め、これに基づき各大学が中期目標を作成し、大臣が国立大学評価委員会の意見を聞いて認可する。
  • 11月30日のNHKニュースで「・・・有識者会議はその後、この中間報 告を一般に公開して意見を募集していましたが、これまでに寄せられたおよそ百五十 件の意見の整理がほぼ終了したことから、来月十九日に会合を開き、三か月ぶりに論 議を再開することになりました。」とありました。意見138通を到着順に掲載した 257ページの印刷物が関係者に配付されていますが、もしかすると「意見の整理」 とは、これだけのことに過ぎない可能性があります。この推測が正しいとすれば、募 集した意見を真剣に吟味し参考にする意思があるのか疑わしいように思います。 (国立大学協会も参考にしてほしい)鋭い意見や重要な指摘や意見も多く、一部の関係者の書棚で埃を被るだけに終わるのは忍びないものを感じます。書かれた方の承諾を得られたものを紹介していきたいと思います。
    田中鹿児島大学長の意見書
    新聞報道・社説
    中間報告へのパブリックコメント・意見表明で公表されオンライン化されているもの
    国立大学理学部長会議国立大学農学系学部長会議国立大学協会独行法反対首都圏ネットワーク事務局全国大学高専教職員組合中央執行委員会日本科学者会議日本科学者会議大学問題委員会独立行政法人化阻止全国ネットワーク全国大学院生協議会理事校会議独立行政法人化問題を考える北海道大学ネットワーク北海道大学教職員組合渡邉信久(北海道大学) |辻下 徹(北海道大学) |秋田大学教職員組合山形大学職員組合(森川幾太郎)東北大学職員組合小田中直樹(東北大学) |筑波大学教職員組合一橋大学社会学研究科教授会千葉大学千葉大学文学部・文学研究科将来構想委員会 千葉大学理学部 教育・研究体制検討委員会東京大学21世紀学術経営戦略会議東京大学大学院理学系研究科将来計画委員会東京大学地震研究所東京大学職員組合静岡大学教職員組合新潟大学職員組合渡辺勇一(新潟大学) |村上宣寛(富山大学) |愛知教育大学独法化反対有志の会名古屋大学職員組合中央執行委員会|名古屋大学職員組合図書職員部会| 名古屋大学職員組合定員外職員部会|名古屋大学職員組合中央執行委員長(椿淳一郎)| 名古屋大学職員組合中央執行委員会書記次長(河合利秀)名古屋大学医学部保健学科/有志京都大学職員組合吉村洋介(京都大学) |京都大学職員組合定員外部会大阪大学教職員組合中野元裕(大阪大学) |栗山次郎(九州工業大学) |佐賀大学教職員組合独法化反対宮崎大学実行委員会鹿児島大学教職員組合 女性部・定員外職員部会鹿児島大学教職員組合
    パブリックコメント紹介
    辻下の意見より抜粋
     中間報告の序文にも明記されているように、調査検討会議の使命は、独立行政法人制度を利用して国立大学にとって意義のある法人化を実現できるかを吟味することであった。確かに、大学の機能を損なう欠点を修正するだけでは全く無意味であり、格段の積極的意義がなければ、制度変更に膨大な大学の諸資源を費やし、日本の高等教育と学術研究を長期間混乱させ停滞さかねない法人化を正当化することはできないだろう。・・・
    国立大学若手教官の意見より抜粋
    2000年5月の国立大学長・大学共同利用機関長等会議において文部大臣(当時)は、「独立行政法人制度は・・・この制度の目的や・・・国立大学の特性や、役割、機能に照らして、国立大学についても十分適合する」とし、「今後の国立大学等の在り方に関する懇談会」の下に調査検討会議を設置し、「国立大学を独立行政法人化する方向で、法令面での措置や運用面での対応など制度の内容についての具体的な検討に、速やかに着手したい」と述べた。これが、「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」の設置に際しての文部省の考え方である。

    これとは異なり、私は、独立行政法人は国立大学には全くなじまない制度であると考えている。そもそも独立行政法人制度とは、国家機能を集中し、行政の効率性を図る目的に合致する制度として生み出されたもので、国家の無謬性を前提とするものである。だが、国家は無謬ではありえない。いつの時代にあっても、国家や社会に対して独立した立場から警鐘を鳴らしつづけ、また国家的利害に左右されない価値を創造・継承しつづける社会制度は維持されなければならない。大学制度は、このことに自覚的であった先人たちの叡智の賜物である。大学が果たしてきた役割を、現世代の短絡的志向によって改変することは許されない。

    したがって、出発点において全く異なる前提にたつ調査検討会議の中間報告に対して、私がコメントすべきことはないともいえるが、この文書が今後の国立大学政策に適用された場合の影響を考慮して、中間報告に関連する意見・要望事項を述べることにしたい。


    1. 文部科学省およびその調査協力者会議に対する要望事項

    (1)調査検討会議は長を決めておらず、最終的な文責者が誰なのかもはっきりしない。「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」が「今後の国立大学等の在り方に関する懇談会」(以下、「懇談会」と略す)の下に位置づけられているのなら、今回の中間報告についても、「懇談会」がこれを受理し、「懇談会」の責任において文書を公表、意見を聴取するのが適正な手続きである。
    「懇談会」は、すみやかに調査検討会議の中間報告に対する審議をおこない、この文書に対して責任ある評価を下されたい。

    (2)調査検討会議は、「組織業務」「目標評価」「人事制度」「財務会計制度」の4つの委員会において、1年弱の期間、審議をおこなってきたが、審議過程において浮上してきた検討課題についての「調査」を十分におこなっていないきらいがある。
    少なくとも以下の諸点については、すみやかに調査し、その結果にもとづいて今後の審議をおこなわれたい。

    @全学的コンセンサスと学長のリーダーシップを調和させる方策を明らかにする材料として、法人が設置する大学(私立大学)がとっている具体の運営方法、工夫と問題点・課題。

    A「国立大学法人」が事務組織編成の裁量を拡大することができるかどうかを判断する材料として、国立大学職員の残業時間、そのうちのいわゆる「サービス残業」の割合。定数外職員の人数、職種、給与・勤務時間等待遇の実態、および、法人化後の大学職員の待遇の変化の見通し。

    B大学教員人事のいっそうの流動化を図ることが適切かどうかを判断する材料として、本務校をもたない大学非常勤講師の平均年収、勤務条件、生活時間についての調査。および、これらに関する教員人事の流動化後の見通し。

    C国立大学の授業料を各大学の判断で改定することが適切であるかどうかを判断する材料として、大学進学者の家計状況(年収、授業料・生活費等の負担額およびその割合など)、および、諸外国の授業料等、高等教育費に関する家計負担率とわが国のそれとの比較。

    2.中間報告に対する意見

    (1)中間報告全般について

    2000年5月の国立大学長・大学共同利用機関長等会議における文部大臣(当時)説明では、国立大学を独立行政法人化する場合、その法制面での措置については、「(独立行政法人)通則法との間で一定の調整を図ることが不可欠」だと述べている。しかしながら、中間報告には、通則法との関連が記されておらず、「国立大学法人」が独立行政法人の一形態であることや、具体の調整点が明確でない。中間報告全般わたって、独立行政法人通則法との調整点を明示的に記述されたい。 ・・・ (7)関連するその他の課題

    ○「国としての長期的な高等教育・学術研究政策やグランドデザインの策定」について、これが課題とされたのは、国のこれまでの長期的政策等の内容や策定にかかわる手続きの限界がはっきりしてきたためであると思われる。したがって、国は、これらの策定に際して、従来とは抜本的に異なる人選・手続き等をとるべきことを明記されたい。具体的には、日本学術会議および国公私の大学団体推薦委員、非政府組織代表などが過半数を占める審議会を設置し、政府からは独立した立場からの高等教育グランドデザインの策定が図られるべきである。

    北大・渡辺信久氏の意見
    「・・中間報告をユネスコをはじめ,大学改革や大学評価に経験を有する欧米諸国の「専門家」や「有識者」に「第三者評価」してもらうくらいのことは可能だと思いますがいかがでしょうか.
    ・・・・男女機会均等の重要性は当然のことであると思いますが,大学の制度設計をしようとするような「中間報告」にわざわざ記載すべき事項であるとは思えません.ましてや大学が法人化後の中期数値目標とするようなことがらであるとはとうてい考えられません.このような議論は,委員の「良心にもとづく思い付き」をただ記したのではないかと批判されても仕方ないのではないでしょうか.これは,委員の「専門家」「有識者」としての資質にも疑問を持たせるものです.幸いなことに,このような「中間報告」は,大学が学外者の役員を登用した際に役員会で起こるであろう議論を予測させてくれます.大学の現場の状況を無視した,役員の単純な良心にもとづく意見ほどやっかいなものはないように思います.
     ・・・大学の「役に立たない部分」を削っているつもりが,結局は大学全体を削ってしまっていることに気がつくべきだと思います。」
    新潟大学・渡辺勇一氏の意見
    2)日本の大学の研究レベルを落とす、意味のない目標・計画づくり
     今回の独法化の動きの中での、極めて大きい提案は、大学全体の組織をあげての目標・計画づくりである。いまだかって誰もこの空しい作文作業に批判をしてこなかったのは、概算要求などで、理念・目標などを提示しないと、省庁の認可が得られないという状況での「我慢のため」だった。・・・
    2a)教育も、研究も、個人の活動が基礎である。
     授業など教育活動が一人で努力する地味な作業であることは、誰の目にも明らかであり、誰しも常にその孤独を感じているものである。だからこそ、教師「個人の評価」が学生によってなされることが可能となる。
     他方研究はどうだろう。ノーベル賞は決して組織には与えられず、研究者個人に与えられている。研究者の常識であるけれど、自由闊達な発想というのは、共同ではむしろ束縛される危険があるのである。共同研究は、頭というより、技・考え方・議論の面で限定的になされることが多い。
     上の様な事が単純明瞭に解っている筈なのに、なぜ教育研究の理念・目標づくりが組織的に行われるのだろうか。これは教育研究を理解していない人間が強要したものとしか考えられないのである。教員は教育や研究を始める時に、相当確固とした計画目標を持っているものである。これはしかし長い作文に書いて示せるものではなく、教育に関しては、「yyyを解りやすく理解させたい」程度のもの、そして研究については「xxxの謎を解きたい」程度のものである。
      現在の研究教育の理念・目標計画の作文が、何故空しいのか。それは、個人的な活動レベルで生き続けている教員達が、組織全体の目標を作らされるからである。このようなものを、いくら立派に作成しても、何の役にも立たないし、その作業そのものが、研究・教育の時間を食いつぶすことになるのである。労働時間のこの様な甚大な侵食が起きている事を最も痛感し、研究教育の荒廃を感じ初めているのは、昨今の大学教員である。」
    3)競争を組織間に持ち込むことの愚
     もうひとつ、運営交付金の多寡を暗示しながら、将来の法人の間に競争を煽るという点についても言及したい。私は研究教育成果が競争により促進されるとは考えないが、最大限譲って顔の見える個人の間での競争は、時に刺激になるかも知れない。しかし前項でも述べた様に、研究・教育が個人を中心に行われる観点からは、組織ぐるみでの競争は、様々な問題を引き起こす。   優秀ではないとみなされた組織の研究者は、全員低い位置におとしめられるべきなのであろうか。また逆に選別された組織の人間が全て優秀ということはない。もし組織間の競争が歪んだ形で行われれば、数々の優秀な人間が捨てられてしまうだろう。」
    ●競争を評価する体制の不備と難しさ
    ・・・・科学技術基本計画に添って、巨額の投資が「未来開拓型予算」として、文部省に付けられたとき、その審査に当たった有名大学の教授達の半分近くが、自らの研究室に予算を当ててしまい、ネーチャーで厳しい批判を浴びた事実がある。これが、我が国の研究評価システムの致命的な脆弱性を示す厳然たる現実である。
     真の改革は、学問・研究・教育に携わって苦闘している現場の人間の声を聞かなくては達成できない。無理矢理にその言葉を封じ込めれば、因果応報という言葉で示される結果が必ず訪れる。最高の高等教育を受けたはずの、文部科学省を始めとした官僚の人達が、ここに示された「大学いじめ」としての意味の強い、報告案の内容を理解できない筈はないと信じつつ批判の文を閉じたい。
    大阪大学・中野元裕氏の意見より
    大学のもつ社会への最大の貢献は、学問の追究を通して社会に将来像を提示し、次代の社会を担う若者たちに知的バックボーンを与えることによって彼らの自信を深め、また社会参加をエンカレッジすることにあると思います。特に現今の社会状況は、高度経済成長期を過ぎて定常型社会(持続可能な社会)への過渡期にあり、旧来の常識が通用しない新たな局面を迎えようとしています。大学は彼ら若人が倫理観のない専門バカに堕さぬよう意を配り、彼らの自発性と柔軟な発想を伸ばし、定常型社会への軟着陸という困難な課題に備えさせなければなりません。そんな中で、古き良き高度成長の夢よもう一度と景気対策に巨費を投じ続けるような内閣が策定する政策目標をもって国立大学という貴重な発想の源を束縛することはけして賢い選択とは言えないでしょう。
     新しい時代の新しい「常識」の萌芽は多様な発想のプールの中にこそ眠っている筈です。そして、大学は経営効率よりも多様性を旨とする機関です。様々な学問領域、多様な組織構造が混然としており、何かを生産するという立場からは非常に非効率に見えるかもしれません。しかしモノカルチャーのプランテーションのような効率最優先の組織では、多くの学派による活発な議論が産み出すような多様な発想は保証できないのです。中間報告に述べられている制度設計によれば、国が設定するグランドデザインという「一元的」な評価基準を用いて各大学を評価し、その評価を運営交付金に反映することになっています。このようなトップダウン方式は明らかに大学の本質である多様性を損なう危険が高く、また日本の将来をも危うくしかねないものに見えます。
    ・・・

    主要資料

  • 中間報告「新しい「国立大学法人」像について」
  • 新聞報道
  • 関連資料

  • 国立大学協会設置形態検討特別委員会報告 2001.5.21
    「国立大学法人化についての基本的考え方」「国立大学法人化の枠組」
  • 中間報告の草稿・分析・異同

  • 2001.9.29-