第154回国会 文教科学委員会 第7号
平成十四年四月十一日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 四月九日
    辞任         補欠選任
     辻  泰弘君     神本美恵子君
     山本 香苗君     森本 晃司君
 四月十日
    辞任         補欠選任
     大塚 耕平君     岩本  司君
     神本美恵子君     辻  泰弘君
     森本 晃司君     山本 香苗君
 四月十一日
    辞任         補欠選任
     扇  千景君     泉  信也君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         橋本 聖子君
    理 事
                阿南 一成君
                仲道 俊哉君
                小林  元君
                風間  昶君
                林  紀子君
    委 員
                有馬 朗人君
                有村 治子君
                泉  信也君
                大仁田 厚君
                加納 時男君
                後藤 博子君
                中曽根弘文君
                岩本  司君
                輿石  東君
                鈴木  寛君
                辻  泰弘君
                山本 香苗君
                畑野 君枝君
                西岡 武夫君
                山本 正和君
   国務大臣
       文部科学大臣   遠山 敦子君
   副大臣
       文部科学副大臣  青山  丘君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        巻端 俊兒君
   政府参考人
       警察庁長官官房
       審議官      堀内 文隆君
       外務大臣官房参
       事官       鈴木 庸一君
       財務省主税局長  大武健一郎君
       文部科学省初等
       中等教育局長   矢野 重典君
       文部科学省高等
       教育局長     工藤 智規君
       文化庁次長    銭谷 眞美君
       厚生労働省政策
       統括官      石本 宏昭君
       厚生労働省政策
       統括官      坂本 哲也君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出)

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○委員長(橋本聖子君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日十日、大塚耕平君が委員を辞任され、その補欠として岩本司君が選任されました。
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○委員長(橋本聖子君) 政府参考人の出席要求に関する件につきましてお諮りいたします。
 著作権法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に警察庁長官官房審議官堀内文隆君、外務大臣官房参事官鈴木庸一君、財務省主税局長大武健一郎君、文部科学省初等中等教育局長矢野重典君、文部科学省高等教育局長工藤智規君、文化庁次長銭谷眞美君、厚生労働省政策統括官石本宏昭君及び厚生労働省政策統括官坂本哲也君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(橋本聖子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(橋本聖子君) 著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案につきましては既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○阿南一成君 おはようございます。自由民主党の阿南一成であります。
 今日の委員会は参議院先議の著作権法の一部改正であります。放送事業者及び有線放送事業者保護のための新しい送信可能権、それから実演家の人格権の創設等であります。かなり技術的な問題も含んでおりますので、私の質疑は政府参考人を中心にやっていきたいというふうに考えています。
 そこで、その前に一つだけ遠山大臣にお伺いをしておきたいと思います。
 今年度から完全学校週五日制に移行したこともありまして、ゆとりある教育に対する批判が日に日に高まってきております。学力の低下は何としても防がなければならないと思うわけでありますが、それと同時に、徳育とか体育、こういった面についても重視をしなければならない。なかんずく、私は、心の教育というものが一昨年、中教審で打ち出されたわけですが、これがぼやけてはいけないというふうに思う次第であります。
 当局としては児童生徒の問題行動に対していろいろと対策を取っておられるわけですけれども、どうもいま一つこれという決め手の効果の上がるものがありません。私は、やはり心の教育というものをもう一度しっかりと見てみたいと考えるわけです。心の教育ということになりますと、自然や芸術などに感動するということでありまして、それを通して生命の尊厳を知り、思いやり、優しさを学ぶということが重要であろうというふうに思うわけです。
 私の知っている団体で、花を生けることを通して情操教育を行っておるところがあります。この活動は、花による美化、それから花による情操を豊かにする活動、これを通して将来を担う子供たちの健全で心豊かな育成を目指しておるわけであります。これまでに、子供の表情が明るくなった、あるいは進んで環境美化に取り組むようになった、あるいはまた意欲的に学校生活を送るようになった、あるいは命の尊さを知り感謝の気持ちが芽生えた、いろいろ報告が上がっておるようであります。
 これまでもなかなか心の荒廃をいやす完璧な方法というものが見付からないわけでありますが、このような情操教育もその一つの方法ではなかろうかというふうに考えております。昨今、心の状態が体に大きな影響を及ぼすことは医学的にも明らかになってきておるわけであります。
 例えば、総合学習の中で小学校低学年に対して、学校の校庭に花壇を子供たちの労力で作る。そこに種をまいて花を育て、それを教室に飾り、また自宅に持ち帰り、自分の勉強部屋であるとかリビングに生けると。そのお花と会話をする。例えば、お水を上げるのを忘れておった。お花がしおれておるというときにはお水を上げるのを忘れてごめんねなどとお花と会話を交わす。翌日は見事に元気を取り戻したお花を実体験するということによって生命の大切さを理解させるといったようなことを小学校の低学年の情操教育の中に取り込んではどうかというふうに思うのであります。
 文部科学省では、現在、科学技術・理科、数学教育を重点に行うスーパーサイエンスハイスクール校の指定を考えておられます。私は、情操教育重点校の指定も是非検討をしていただいてはいかがかと、こう思うわけであります。必ず情操教育として成果が上がるのではないかと思うわけでありますが、遠山大臣の心豊かで生きるたくましい子供を育成させるための決意をお伺いいたしたいと思う次第であります。
○国務大臣(遠山敦子君) さすがに薫り高い参議院における第一質問者の第一問目の御質問であると感銘を深くしながら拝聴いたしました。
 私も花好きの一人でございます。情操教育の重要性について花を例にしてお話しくださいましたけれども、本当に、自然に触れる、あるいは自然の生命の豊かさといいますか神秘さというものを感じながら情操を培っていくという意味で、花を育て、それを生け、そして花に語り掛けながら日常を過ごすというすばらしいその生き方というのは、私は情操を高める一つの大変有効な手段ではないかと思います。
 そもそも、日本人は古来から山川草木に生命力を感じてきた民族でありまして、仏教伝来以来、お花というのは仏の前に供える供花として発達して、室町時代、生け花が盛んになったわけでございます。今日は池坊政務官おいでになりませんが、あの方は最も古い華道の家元の夫人でいらっしゃいます。
 花に例えて言いますと、やはり私は、花は自然の化体する最も美しい結晶の一つでございますし、それを育てるということの楽しみもありますし、今お話しのように、それに触れて心和ませる、それは見る人のすべての心を和ませる不思議な力を持っておりますし、更に進めば、華道という道に進めば、これは他の書道、武道などと同じように非常に奥の深いものでもあろうかと思っております。そのようなきっかけを学校において与えるということは大変有意義ではないかと思っております。
 情操を深めるということで、音楽であれ、あるいはそういった自然物であれ、いろんな方法があろうかと思いますが、いずれにいたしましても、学校教育で、小学校の家庭科や理科におきまして、そういう植物を育てたり、その成長の様子などを調べる学習としても取り上げながら、生命を愛護し尊重するという態度を育てていくというのは大変大事だということで、それも指導の一つの項目として挙げております。また、総合的な学習の時間におきましては体験的な学習を積極的に取り入れるということといたしておりまして、今お話しのように、花を育てたり生け花を体験したりする学習活動を通じての子供たちの情操を養う取組も見られるところでございます。
 さらに、道徳につきましては、先般、心のノートというのを作成いたしまして、今年からすべての児童生徒に行き渡るようにいたしておりますけれども、その中でも自然に触れることの大事さを含めて情操教育の重要性、あるいはそれを達成できることを目標としたいろんな子供たちに考えさせるテーマを載せているところでございます。
 こういう意味で、情操の大事さはもうすべての学校においてすべての子供たちに体験させてあげるべき非常に大事なことだと思っておりまして、私どもも、今の御指摘を踏まえながら、今後ともそういうことに十分力を入れて、確かな学力とともに心の教育というものをしっかりやっていく、そういうことは非常に大事だというふうに認識いたしております。
○阿南一成君 どうもありがとうございました。
 それでは、次に著作権法の改正の質疑に入らせていただきます。
 まず最初に、今回のこの法案の大きな柱の一つであります放送事業者等の送信可能権についてお伺いをいたします。
 我が国の著作権法は世界でも高い水準にあると言われております。昭和六十一年、オンデマンド型の送信に関する権利を既に著作者の権利として世界に先駆けて取り入れております。著作権者等の送信可能権についても、平成九年に更に先進諸国の先頭を切って取り入れておるところであります。当時としては画期的な法改正と言われました。情報が急速に進んでいる中で、世界をリードしてインターネット等への法的な対策を行った姿勢は十分に評価されるものであるというふうに思っております。そして、今回の法案では、放送事業者と有線放送事業者に送信可能権を付与するということでありまして、これもまた更に世界を一歩リードすることではなかろうかと思うのであります。
 そこで、まず最初にお伺いをいたしますが、放送がインターネットで無断送信されている現状を行政としてどの程度把握をしておられるんであろうかと。また、放送事業者等は、送信可能化権の創設前の現時点においてはその侵害行為に対してどのような対策を講じているのか。また、この送信可能化権の創設後、侵害防止に対する体制整備について放送事業者等はどのような方針を持っていると文化庁は聞いておるのか、併せてお伺いをいたしたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君) 日本民間放送連盟から得ました情報によりますと、インターネットによる放送番組などの無断再送信のまず形態としては次のようなものがございます。
 一つには、地域ごとに放送曜日の異なる番組を最初の放送の日に全国に再送信してしまうと。これによりまして、後で放送を予定していた放送局にとっては、番組の視聴率が下がったりスポンサーが付かなくなったりしてしまうという弊害が出ていると。
 二つ目には、有料放送の番組、テレビ局が最近あるわけでございますが、その有料放送に一人だけが加入をいたしましてインターネットを通じて多くの仲間に番組を流してしまう。これによって有料で視聴する人が減少してしまうというようなことがございます。
 三つ目には、特定の地域のみで放送されるスポーツ番組を全国に再送信してしまうということで、この地域のテレビ局が後に全国放送したり、そのスポーツ中継をビデオ販売しようとしても、そのようなビジネスがなかなか難しくなるといったような状況がございます。
 日本民間放送連盟では、これらの無断再送信の行為につきまして情報収集を行っているわけでございますが、推計でございますけれども、こういった無断再送信の件数は全国で約四万件程度に上るのではないかというふうに言われております。
 それから、現実に、今回措置をいたします送信可能化権というのがまだないわけでございますので、各放送局はどういう対応をしているかという現状でございますけれども、番組のこの無断再送信というのは、多くの人々に見せるために、通常はそういうことをする人のホームページなどで予告を行った上で行われることが多いというふうに承知をいたしております。したがって、各放送局などが番組名による検索をインターネット上で行えば比較的容易に無断再送信を発見することができるわけでございます。
 ただ、現状では、放送事業者等にインターネットでの無断再送信を差し止める権利が付与されておりませんので、このような方法によって無断再送信を発見した場合でも、メールなどによって警告を発するということはあるわけですけれども、それを差し止めるという権利がないために、こうした警告は放送されている音楽などに係る権利侵害について行うといったような形でございます。
 今回、法改正によりまして、放送事業者にインターネットでの無断再送信を差し止める権利、いわゆる送信可能化権が付与されますと、こうした無断再送信は放送事業者自身の権利を侵害するということになりますので、放送事業者等が自ら権利を行使できるようになるため、単なる警告ではなくて、差止め請求を行ったり、無断再送信をしている人に対する損害賠償請求とか、場合によりましては刑事告訴などの手段も取れるということになるわけでございます。
○阿南一成君 ありがとうございました。
 そこで、今回の放送事業者等の送信可能化権の対象でありますが、固定されていない放送のみとされております。したがいまして、固定された放送は対象から外れておるわけであります。法案の条文で見ますと、「放送を送信可能化する」となっておりまして、放送の固定物を送信可能化するという文言は入っていないようであります。
 放送事業者等の権利については、新しい条約の策定に向けて現在作業中であるということで、我が国もWIPOに対し放送機関に関する条約案を提案をしておられますようですが、その提案した条約案を見てみますと、その第七条の利用可能化権の規定については、放送及びその固定物を利用可能化すると、つまり送信可能化の状態に置くことを許諾する権利として定めておるわけでありまして、今回の著作権法改正案と我が国が提案した条約とはその保護対象が異なっているのではないかと思うのであります。
 放送をそのままインターネットに無断で載せることは今回の法改正で差し止めることが可能となりますが、一度固定した上で無断でネットに載せる行為は今回創設される送信可能化権では差し止めることができないのでありまして、法の実効性に不足があるのではないかという指摘もあります。
 そこでお伺いしますが、送信可能化権の対象を固定された放送と固定されていない放送に区別をして議論をされる理由はどこにあるのか、また送信可能化権と複製権との関係はどのように解したらよいのか、お伺いをいたしたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君) 今お話がございましたように、今回の送信可能化権の対象は固定されていない放送ということになっているわけでございます。
 それで、まず放送がありまして、それを受信をして、それを録音、録画しないでそのまま無断でインターネット上で再送信するということについては、先ほど来お話し申し上げておりますように、現在、放送事業者にはそれを差し止めるなどの権利がないわけでございます。しかし、昨今の状況を見ますと、インターネットの高速化、大容量化などのいわゆるブロードバンド化が進みまして、放送を受信をして、固定せずにそのまま無断再送信をするということが増加しつつあるため、今回、放送事業者にその無断再送信を差し止める権利を付与するということにしたわけでございます。
 一方、放送をいったん固定、録音、録画をいたしまして、それをインターネットで再送信するということにつきましては、無断で放送を録音、録画すること自体が複製権の侵害ということになりますので、既にその点については放送事業者が差し止めることが可能になっているわけでございます。それで、今回は固定されていない、録音、録画せずにそのまま無断でインターネットで再送信することについてそれを差し止める権利を付与することにしたものでございます。
 なお、先生のお話にございましたように、いったん固定された、録音、録画された放送に関しましては、放送事業者に対して無断で再送信や再放送、譲渡、貸与などを差し止めたりする権利を与えることについては、現在、世界知的所有権機関、いわゆるWIPOにおきまして新条約の制定に向けた総合的な検討が進められております。この点につきましては、その条約の検討状況を踏まえながら、引き続き私ども検討してまいりたいと思っております。
○阿南一成君 それから、今回の法改正のもう一つの大きな柱でありますが、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約、いわゆるWIPO実演・レコード条約において規定されております実演家人格権、これを新しく創設をしておられるようであります。
 主な国の実演家人格権にかかわる著作権法上の整備、これは調査室が外部に委託をいたしまして調査をいたしたようでありますが、ドイツ、フランス、イタリアは、保護の範囲に差はありますけれども、実演家人格権の規定が整備をされておるようであります。アメリカ、イギリスでは実演家人格権について格別の明文規定はないということになっておりますが、アメリカは既にWIPO実演・レコード条約に加入をいたしております。この条約によって人格権の保護を図っておるのであろうと。また、イギリスについては近々この条約に加入をするという情報のようであります。
 しかし、このWIPO実演・レコード条約上の実演家人格権は聴覚的実演、つまり音の実演について定めるものでありまして、アメリカなどは映画制作会社は非常に強力でございますので、映画などの視聴覚的実演にかかわる実演家人格権についてはいまだに国際間の合意がなされていないというふうに聞いております。
 昨年の十二月に文化審議会の著作権分科会から出された「審議経過の概要」においても、音の実演については実演家人格権の付与が必要であるとしながらも、この視聴覚的実演については、現在関係者間で協議が行われている、その協議の経緯を踏まえて、付与することを検討することが必要であるとするにとどまっております。しかし、今回の法案では、この審議会の検討を飛び越えまして、また条約上の義務も上回って、視聴覚的実演を含めた実演家人格権の付与がなされているようであります。
 そこでお伺いしますが、この実演家人格権の創設に当たり、音の実演に加えて視聴覚的実演も含めることとなった経緯について御説明を願えればと思います。
○副大臣(青山丘君) 御指摘の実演家人格権に視聴覚的実演を含めてきた経過でございますが、このたびの実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約において、音の実演について人格権を付与するということが要請されてきております。しかし、昨年十二月に、今御指摘のありましたように、「文化審議会著作権分科会審議経過の概要」の中にこのようになっておりますが、「条約上の義務を超えて、いわゆる「視聴覚的実演」についても実演家に人格権を付与することについては、現在関係者間で協議が行われており、その協議の経緯を踏まえて、付与することを検討することが必要である。」とされたところであります。この「審議経過の概要」を踏まえまして、関係者間で協議を進めてきたところ、合意が形成されましたので、今回の改正において俳優の演技などの視聴覚的実演についても人格権を付与することとしました。
 また、今御指摘のありましたように、諸外国では、実演家に人格権を付与している国のほとんどが音の実演だけではなくて視聴覚的実演も保護の対象としてきました。さらに、視聴覚的実演の保護全般について、先ほど御答弁の中にもありましたように、世界知的所有権機関、WIPOにおいて条約の策定作業が今進められておりますが、その内容は人格権を付与するということが暫定合意されております。
 したがいまして、こうした動きを踏まえて、今回、改正において視聴覚的実演について人格権を付与することとさせていただきました。
○阿南一成君 ありがとうございました。
 次に、公表権についてちょっとお伺いをしておきたいと思います。
 今回創設される実演家人格権には、芸名などを表示あるいは表示させないことができる氏名表示権と自己の名誉や声望を害するような実演の変更、改変などを受けないようにすることができる同一性保持権の二つがあるのでありますが、それに対して著作権者に認められている人格権には氏名表示権と同一性保持権に加えまして公表権というものがあります。著作物をいつ発表するかについての権利等を言うのでありますが、今回の改正の目的ともなっているWIPO実演・レコード条約の締結のためには氏名表示権と同一性保持権で足り、国際的にもこの条約に沿う形になるのであろうかと思います。また、そもそも実演家は本来外部的に提示、表現をすることを基本としておりますので、実態的な面でも大きな問題はないと思うところでありますが、一応確認のために実演家人格権に公表権がない理由をお聞きしておきたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君) ただいま先生からお話がございましたように、現行の著作権法では、著作者に対しましては著作者人格権として名前の表示を求める権利、いわゆる氏名表示権と、改変されない権利、同一性保持権と、それから著作物を無断で公表されない権利、いわゆる公表権、この三つの権利が付与されているわけでございます。このうち公表権というのは、著作物を公表するのかしないのか、公表するとしたらいついかなる形で公表するかを著作者自身が決定できる権利でございます。
 お話ございましたように、今回の法改正により実演家の方々に付与される人格権は、氏名表示権と同一性保持権のみで、公表権は付与されないということになっております。
 これは次のような理由によるものでございます。
 まず第一は、お話にもございましたが、今回の改正は基本的に実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約を締結するために行うものでございますが、この条約では実演家の人格権として氏名表示権と同一性保持権のみが規定されておりまして、公表権の付与は義務とされていないということがございます。
 また第二には、実演というのは通常公表を前提として行われることが多いために、実演家の皆様方の団体からも特に公表権の付与については特段の御要望がなかったということもございます。
 また第三には、実演家の方々は、実演を行う際に、契約によりその実演の公表について取り決めておくことができるわけでございますので、そういうことでいいのではないかということを考えたわけでございます。
 こうしたことから、今回の改正におきましては実演家の人格権としては公表権というものを付与するということとはしていないものでございます。
○阿南一成君 今回の改正で認められることとなりました実演家人格権に例外規定が設けられておるようであります。
 氏名表示権については、実演の利用の目的及び態様に照らし実演家がその実演の実演家であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるとき、もう一点は公正な慣行に反しないと認められるときは省略をすることができるとなっております。
 また、同一性保持権については、実演の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変又は慣行に反しないと認められる改変については適用をしないというふうになっておるわけであります。
 これらの例外規定はあくまでも例外規定でありまするので、この規定はこれでいいと思うのでありますが、やはりこの規定が拡大解釈をされた場合には例外でなくなるという懸念も少しはあろうかと思います。
 そこで、例外の範囲を明確にしておきたいと思うのであります。例外規定にありまする利益を害するおそれがないとき、それから公正な慣行に反しないとき、そうしてやむを得ない改変、公正な慣行に反しない改変とはそれぞれどういう場合を言うのか、できれば具体的な例を示して御説明を願えれば有り難いと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君) 実演は多数の実演家によって行われることが多いわけでございますし、またその実演を編集して利用する場合とか、あるいは部分的に利用するといったような場合もございまして、実演の円滑な利用というものを阻害することがないように、氏名表示権、同一性保持権につきましては、実演家の方々が権利行使ができない場合、こういうものも今回規定をしているわけでございます。
 まず、名前の表示を求める権利でございます氏名表示権につきましては、実演の利用の目的及び態様に照らしまして実演家がその実演の実演家であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときや、公正な慣行に反しないと認められるときは実演家の氏名表示を省略することができると、こうしているわけでございます。
 ちょっと具体的に申し上げますと、実演家の利益を害するおそれがないときの例といたしましては、例えばデパートとか喫茶店などでよくバックグラウンドミュージックが流れているわけでございますけれども、そのバックグラウンドミュージックをだれが演奏しているのか一々名前を言うというのはその場の雰囲気を壊すわけでございますので、そこまでは氏名表示を求めないといったようなことがございます。
 それから、公正な慣行に反しないときの例といたしましては、例えば映画の一番最後にずっと出演者の名前などが出てくるわけでございますけれども、この映画のエンディングロールにおけるいわゆるエキストラの方の名前までも全部表示しなさいと、例えば五千人とか一万人とかのエキストラを使う映画もあるわけでございまして、そういうエキストラの氏名表示などは省略できるといったようなことを意味しております。
 それから次に、改変されない権利でございます同一性保持権につきましては、これも実演の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしましてやむを得ないと認められる改変、あるいは公正な慣行に反しないと認められる改変は同一性保持権の規定を適用しないということにいたしております。
 このやむを得ない改変の例を申し上げますと、例えば機械の性能とか特性の問題のために、実演家の方々の音声とか映像を正しく再生、伝達できない場合などもあり得るかもしれませんので、そういう場合にはこれはやむを得ない改変だということになろうかと思っております。
 それから、公正な慣行に反しない改変といいますのは、例えば映画をテレビなどで放送することがよくあるわけでございますが、その際に、放送時間に合わせて再編集をするというようなことがございますので、これはこれまでも行われてきたことでございますし、公正な慣行に反しない改変と言えるのではないかと思っております。
 いずれにいたしましても、これらの措置によりまして、実演家の方々に氏名表示権と同一性保持権は付与するわけでございますけれども、種々のコンテンツの円滑な流通を阻害することがないように配慮をしているところでございます。
○阿南一成君 次に、著作権侵害の取締り対策、それから省庁連携についてお伺いをしておきたいと思います。
 昨今、ファイル交換ソフトを使って音楽CDなどの著作物をインターネットで無料配信する行為が横行をしておりまして、アメリカではいわゆるナップスターが大問題となっておるようであります。これに対して我が国では著作権者の送信可能化権が法律できちんと規定され、これに基づきファイル交換ソフトを使って著作物を無断送信していた者が昨年の十一月、京都府警のハイテク犯罪対策室などにより摘発をされております。これに対してコンピュータソフトウェア著作権協会の専務理事は、新聞でありますが、世界でも前例がない、意義は大きいと大変感謝と称賛の言葉を述べています。我が国の著作権法の水準の高さを証明しておる一つの事例であろうかと思うのであります。
 しかしながら、同じようにまた報道によりますと、アメリカのソフト権利保護団体の調査では、平成十二年に我が国で使用されたソフトのうち約四割が不正コピーによるものと言われております。また、その損害額が十六億七千万ドル、日本円にすると約二千三十億円、大変な莫大な額でありまして、アメリカに次いで世界で二番目に不正コピーが多いという不名誉な調査結果であります。また、日本レコード協会等の調査では、ネット上の音楽交換ソフトによるレコード会社の被害額が約百四十三億円に上るというようなことが報道をされています。
 そこで、我が国の文化の発展のためにはこのような事態に対し厳しく対処することがやはり必要であると思うのでありますが、最近の著作権侵害事犯の状況及び取締り体制の整備状況について警察庁にお伺いをいたしたいと思います。
 それから、二番目でありますが、著作権法を所管する文化庁、そしてその取締りを行う警察庁、それぞれ密接な連携も重要ではないかと思うのでありますが、文化庁、警察庁の方針を併せてお伺いをいたしたいと思います。
○政府参考人(堀内文隆君) 著作権侵害事犯につきましては、平成十三年中は全国で五十一事件七十九名を検挙しているところであり、最近五年間を見ますとほぼ横ばい状態で推移しているところであります。最近の特徴としましては、ファイル交換ソフトを使用した事犯など、インターネットを利用した新しい形態の事犯が目立っております。
 警察におきましては、これまでも生活経済部門を中心として著作権侵害事犯の取締りを行ってきたところでありますが、近年の情報通信技術の進展によりましてインターネット利用の著作権侵害事犯が新たに出現したことを踏まえ、都道府県警察においてはハイテク犯罪捜査官の養成やコンピューターなどの資機材の整備など取締り体制の充実を図っているところであり、また警察庁におきましてもハイテク犯罪の捜査を技術的に支援する部門の強化に努めているところでございます。
 また、著作権侵害事犯の取締りに当たっては、御指摘の警察庁と文化庁との間を始め、これに権利者を加えた十分な連携を確保する必要があると考えております。これまでも取締りに関する情報交換、広報啓発活動などについて相互の協力関係を築いてきたところでありまして、今後も引き続き官民一体となった緊密な連携を図ってまいりたいと考えております。
○政府参考人(銭谷眞美君) 先生から御指摘がございましたように、著作権侵害の取締り対策の実効性を確保していくためには、著作権施策を担当いたします文化庁と実際の犯罪取締り等を担当いただく警察庁との間の連携が必要であると認識をいたしております。
 文化庁では、従来から、警察庁や各都道府県県警との間で著作権侵害事例に関する情報交換を行ったり、あるいは各都道府県県警等からの照会に対しまして専門的な立場からの助言等を行っているところでございます。また、文化庁所管の権利者団体等と警察庁との連絡協議に参画をするとともに、権利者団体の方々が各都道府県県警と連携をして著作権侵害事犯対策に取り組むことについて必要な助言等を行っているところでございます。
 今後とも、警察庁等と適切な連携を進めてまいりたいと考えております。
○阿南一成君 ありがとうございました。
 次に、やはり音楽のネット販売の対応についてお伺いをしておきたいと思います。
 最近の音楽ビジネスは、インターネットを使った販売が盛んに行われております。携帯電話の着信音楽、いわゆる着メロでありますが、これは急成長産業となっております。JASRACの使用料徴収額は、CD販売が伸び悩む中にありまして、着メロなどによる音楽使用料の急増で一千億円を突破しておるとのことであります。また、CD販売についても、大量の情報をやり取りできるブロードバンドの普及によりまして、ネットを使用した音楽配信事業が本格化する動きもあるのであります。
 報道によりますと、アメリカのネット販売最大手の経営者は、十年後には全体の八五%はネット販売になるだろうという見方を示しております。我が国においても、既に大手レコード会社等においてはインターネットを使った音楽配信事業に力を入れているのではないかと思うのであります。
 そこで、音楽のネット販売について、レコードの発行との関係及びその保護期間の起算点がどのようになるのか、また、今後ますます拡大するであろう音楽のネット販売について、権利保護上どのような問題が出てくると想定をされるのか、そして、その問題に対してどのような対策を講じていく方針であるか、お伺いをいたしたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君) お話のございましたように、音楽のネット販売を始めといたしまして、著作物につきましてインターネットを用いた新たな利用形態が急速に進みつつございます。
 そこで、まずお尋ねの音楽のネット販売とレコード発行との関係、保護期間の起算点の問題について御説明をさせていただきます。
 今回の法改正におきましては、新設する第四条の二におきまして、レコードの発行は、公衆の要求を満たすことができる相当程度の複製物が作成、頒布された場合と規定をいたしておりまして、CDなどの有体物を相当程度作成、頒布した場合にはレコードの発行ということに該当するわけでございます。他方、音楽をネットのみで販売をするという場合には、これは複製物の作成、頒布というものには該当しないためにレコードの発行には該当しないということになります。この規定は、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約の発行の定義に基づいたものでございまして、この条約においても音楽のネット販売はレコードの発行には該当しないということとされております。
 そこで、今回、レコードの保護期間の起算点につきまして、CDなど有体物で発行されたものにつきましては、これまでその起算点が録音されたときであったものを、発行されたときに変更するということにいたしております。
 なお、ネット販売は、先ほど来申し上げておりますように、レコードの発行に該当しませんので、保護期間の起算点は従来どおり録音されたときからということになるわけでございます。
 次に、今後拡大するであろう音楽のネット販売について、著作権法上どういった問題が生じてくるのか、それに対してどういう対策を講じているのかというお尋ねに対して御説明を申し上げたいと存じます。
 最近、こういうインターネットを用いた新たな著作物の利用形態が進む中で、私ども大切なことは、音楽などのコンテンツの創作者の権利を適切に保護して、そして創作者の方々のインセンティブの確保に努めるということと、同時に、ネット上の無断利用を防ぐコピープロテクションや電子透かしなどの技術の活用と新たな利用形態に対応した契約システムを組み合わせることによりましてコンテンツを円滑に流通させるという、この二つのことが今後大切になってくるというふうに思っております。
 最初の、コンテンツの創作者の適切な保護の問題につきましては、既に先生からもお話がございましたけれども、インターネット対応のために、昭和六十一年及び平成九年にインターネット等を用いた無断送信を差し止める権利を著作者、実演家、レコード製作者に付与をいたしまして、また現在、今御審議いただいております改正案におきまして、世界で初めて放送局、有線放送局にも同様の権利を付与することとしているわけでございます。この点、我が国は国際的に見ても高い水準の法整備を進めているというふうに思っております。
 次に、そのコンテンツの安全な流通を確保するという点でございますけれども、これはむしろその新しい技術を活用してコンテンツの無断利用を防止するということが大事かなと思っております。
 具体的には、例えば無断コピーを防止するためのコピープロテクションを施すこと、無断利用の発見を容易にするため電子透かしを埋め込むことなどがございます。法整備としては、平成十一年にコピープロテクションや電子透かしなどの回避、改ざん等を禁止する措置を講じているところでございます。
 さらに、このコンテンツの安全な流通といった観点からは、今後は契約システムの構築ということが私ども大きな課題ではないかと思っております。このため、経団連などの産業界や関係省庁等との連携協力によりまして、新たな利用形態に対応できる契約システムの研究を今進めているところでございます。
 こうした契約システムと、先ほど来申し上げておりますコピープロテクション、電子透かしあるいは自動課金システムといったものを組み合わせまして新しいビジネスモデルの開発を促進していくという必要があろうかと思います。
 先ほどお話ございましたけれども、このようなビジネスモデルの一つの成功例といたしましては、着信メロディー、いわゆる着メロの配信システムがございます。これは平成十一年ごろから開始をされたシステムでございますけれども、平成十三年には、推計でございますけれども、売上げとしてはこの着メロは約八百五十億円に達するとも言われております。
 ちょっと長くなりまして恐縮でございましたが、今後とも良質なコンテンツが多く創作され、かつ円滑で安全な流通が促進されますように新たな利用形態に対応した対策を講じてまいりたいと考えております。
○阿南一成君 ありがとうございました。
 次に、著作権思想の啓蒙普及についてお尋ねをしておきたいと思います。
 情報化の急速な発展により、パソコンなど創作及び利用の手段が普及し、簡単にクリエーターにもなりかつユーザーにもなるという状況であります。言うならば、すべての人が著作権についてしっかりとした認識を持たねばならない時代に突入をしたというふうに考えるわけであります。
 そこでお伺いしますが、著作権に関する啓蒙についてどのような教育を小中学校、高校などで行うこととしておられるか。また、法改正の経緯などを広く国民に伝えるためにも、審議会での議論をホームページなどを活用をして広く国民に伝えることも必要ではないかと思います。この点についても御見解を賜ればと思います。
○副大臣(青山丘君) 御指摘のとおり、近年、インターネットやパソコンが相当普及してまいりました。情報化が進んできております。そういう状況の中で、著作権に関する知識、理解、認識というものはすべての国民にとって必要で欠かすことのできない重要な認識だというふうに理解しています。
 そこで、このような状況の中で、小中学校それぞれこの著作権の保護や情報モラルの必要性について説いているところでありますが、中学校では技術・家庭科の情報とコンピューター、高等学校では教科「情報」であるとか公民などでコンピューターやインターネットを活用する際の著作権の保護、それから情報モラルの必要性について指導することとなっております。
 また、広く社会人全体を対象といたしまして、教育事業についてこれまで実施してまいりました講習会の開催や児童生徒を対象としたパンフレットの配布に加えて、平成十四年度から事業を更に拡大をいたしまして、児童生徒から高齢者に至るまで広く、多くの人々を対象として、それぞれのニーズに対応した総合的な教育事業を実施していく予定でおります。
 それから、著作権に関する審議会の審議の内容でございますが、それから配布された資料についてでございますが、著作権に関する審議会の審議内容については、国民の理解をいただくことが非常に重要である、これをしたがって広く公開することが重要であるという認識であります。
 そこで、我が省といたしましては、文化審議会著作権分科会の審議内容を公開する一つの方法といたしまして、議事要旨をホームページに掲載いたしております。また、文化審議会著作権分科会の配布資料につきましては原則として公開いたしておりまして、現在、希望者への配布をいたしております。今後は議事要旨の内容を更に充実をさせていくこと、それから配布資料につきましてはホームページに掲載をすることについて検討する段階かなというふうに理解しております。
○阿南一成君 ありがとうございました。
 次に、政府は、産業の国際競争力の強化や経済の活性化を進める上で知的財産の重要性が高まっておることから、関係閣僚と有識者で構成する知的財産戦略会議を発足をさせました。遠山大臣御自身もメンバーのお一人と伺っております。
 いわゆる知的財産権には特許権、意匠権、商標権、著作権など様々なものが含まれていますが、文部科学省はこれらのうち著作権の部分について制度そのものを所管しておられます。
 そこでお伺いしますが、国全体としての知的財産戦略の構築や推進において、文部科学省は全体としてどのようにかかわり、またどのようにこれに取り組んでいかれるおつもりか、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 仰せのように、知的財産を守っていきますことはこれからの日本の在り方として大変大事でございまして、これはもうむしろ国家戦略として取り組むということで、最近立ち上げられました知的財産戦略会議、積極的に参加をして協力をしているところでございます。
 昨夕も第二回の会議がございましたけれども、我が省といたしましては、今御指摘のように、著作権の制度にかかわる問題はもちろんございますけれども、それ以外に教育という角度で人材養成、知的財産にかかわる人材養成ですね、それから研究開発の振興ということで大学における知的な創造活動というものを活発にして、しかもそれを権利化していく問題等、大変重要な部分を私としては文部科学省の責務として持っていると思っております。
 そのような角度から今後ともその審議に十分に対応してまいりたいと思っておりますけれども、特に教育の分野におきましては、初等中等教育におきます知的財産に関する教育というのをしっかりやること、それから大学におきましては高度な人材を育成することによって、国際的に知的財産について、これを権利化する、あるいはいろんな係争事件においてきちんとその権利を守ることができる、そういう人材も必要でございますし、それから研究成果を財産化していくための知識、技術を持った人材を養成していくという点で大変大事だと思っております。
 それから、科学技術・学術の分野におきましては、大学などの公的研究機関における独創的な研究を通じた知的資産の創出、それからそれを適切に権利化し、活用を推進していくということで、大変大事な課題が山積していると思っております。
 このように文部科学省は知と人を生み出すという役割を持っているわけでございまして、我が省としましてはそういうことを考えて、一つは世界に先駆けた著作権制度の改善を常に図っていくこと、それから二番目には研究開発成果の創出、それから権利化、活用の推進を図っていくこと、これには様々な手段がこれからも構築されていく必要があると思っておりますが、それから第三に専門的人材の育成ということに取り組んでいるところでございまして、今後ともこの問題については日本の国を成り立たせていく、単に経済力といいますか、国力という角度から十分にこれを私どもとしてサポートをし、あるいは協力をし、あるいはむしろそれを主体的に進めるということで力を注いでまいりたいと考えているところでございます。
○阿南一成君 これで私の質問を終わります。
○鈴木寛君 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。よろしくお願いを申し上げます。
 私がまずこの著作権法改正の審議の冒頭にお伺いをいたしたいのは拡大教科書の問題でございます。
 拡大教科書と申しますのは、十分な視力を持たないお子さんが通常の教科書は読めないわけですね。そうしますと、その通常の教科書をボランティアの、今はボランティアの方々にほとんど頼っている状況でございますが、字を拡大して、図を拡大していただいて、それを使っていわゆる勉強をしておられるというのが実態でございますが、その拡大教科書が十分な教科書制度における位置付けあるいは著作権法上の位置付けがなされていないために、大変に勉強される御本人そしてその関係者に御負担を掛けている、そういう実態がございます。
 この問題について、民主党といたしましても、四月九日に民主党内にございます拡大教科書問題チーム、堀議員あるいは肥田議員からも文部科学省にお願いに伺ったところでございますが、正にすべての子供の皆さんが学ぶ権利というものがこれは憲法で保障されているわけでございます。適切な教科書がすべての子供にひとしく提供をされなければいけないというふうに思いますし、そのために教科書検定制度あるいは教科書無償制度というものがあるというふうに理解をいたしております。
 非常に大事な問題だと思いますが、費用の問題、著作権の問題で、先ほど申し上げましたような問題を抱えている。私ども民主党としては、既存の検定教科書を拡大した拡大教科書を検定教科書に位置付けていただきたい。あるいは、弱視の子供さんたちに対してすべての教科の、これまだ拡大教科書が全教科あるわけじゃございませんので、すべての教科の拡大教科書を無料で、無償で提供をしていただきたい。あるいは、子供たちの障害の程度やニーズの多様性に応じて保護者の方々が独自に作成をされておられます拡大教科書について、その作成費用を行政が助成をしていただきたい。あるいは、点字の教科書は著作権法上の様々な措置がなされておりますが、この拡大教科書はされておりません。そういう意味で、著作権法第三十三条の適用など検討をしていただきたいというようなお願いをさせていただいております。
 必要な場合には著作権法の改正もしていただきたいということを、お願いを今度再度確認という意味でさせていただきましたし、以前よりもお願いをしておりますし、それから遠山大臣のお耳にも以前からこうした弱視の子供の皆さんが大変苦労されているという声は届いておるというふうに思っておりますので、ぜひこの点についての前向きな大臣の御答弁をお願いを申し上げたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 弱視の児童生徒さんたちは、持っている視力を活用しながら、その可能性を最大限に生かして、自立し、社会参加するために必要な力を培ってもらうということは大変大事だと思っております。
 そのために二つのことが大事でございまして、一つは、その弱視の児童生徒が、視力は同じでも見え方が様々でありますので、その状況を踏まえて、通常の検定教科書を無償供与して、弱視レンズでありますとか拡大読書器などの視覚補助器を用いて、一人一人の見え方に配慮した指導を行うということも大事だと思っております。これは実施されているところでございます。
 それからもう一つ大事なことは、今おっしゃった拡大教科書のようなものを作りまして、その教科の内容を十分に自分の力で読めるようにしていくということを助けるのも大変大事だと思います。
 盲学校や弱視特殊学級において、検定教科書に代えまして、いわゆる百七条図書といたしまして、各都道府県教育委員会等が採択した場合には無償供与できるようにしているわけでございまして、現在、小学部、中学部の国語、算数、数学、英語において活用が図られているところでございます。また、就学奨励費による教材購入費等の補助も行っているところでございます。
 今お話にありますように、しかしまだ十分にこの対策がすべて終わっているわけでございませんで、いわゆる拡大教科書を含みます教材の作成がより適切かつ円滑に行われることが大切だと考えております。拡大教材の作成ノウハウの研究でありますとか、著作権の許諾を円滑に得ることができるような仕組みなどの検討を始めているところでございまして、今後、弱視の児童生徒に対する教育の一層の充実を図ってまいりたいと考えております。
○鈴木寛君 教科書といいますのは、いろんな知恵、知識を集めてくるわけでありまして、とりわけ今、大臣もおっしゃいましたが、著作権許諾を取る手間というのは物すごい掛かるということを聞いております。
 それで、先ほどルーペなどでというお話もございましたけれども、これはなかなか、やっぱり私もお話を伺いますと相当大変だなということも分かりますので、是非この問題はきちっと対応をしていただきたいと思います。
 この話は、恐らく社会正義の観点からしますと委員のすべての皆様方の御賛同を得られるお話だと思うのでございますが、こういうときに著作権許諾という問題がそうした御苦労をされている方々の前に出てきますと、そもそも著作権法というのはどういうものなのかということを少し疑問を持たざるを得ないなというふうな気もいたしますので、是非、よろしく大臣のリーダーシップを発揮して、これは速やかに御対応お願いをしたいというふうに思います。
 それで、本日は著作権法改正についての議論でございますが、この改正案を見させていただきまして、その背景に、文部科学省の方からも御説明がございましたけれども、正にデジタルネットワーク社会というものがより一段、一層高度化しているなと。正にブロードバンド化と、いわゆるリアルタイムでの配信というものがかなり実態になってきて、そのことに対応していかなければいけないんだな、こういうことによる法律の改正だということはよく分かります。
 私自身もインターネットテレビ局を主宰しておりますので、送信可能化権を、あるいは映像権のコンテンツホルダー、コピーライトホルダーでございますので、そういった意味ではこの改正の必要性というのはよく分かるわけであります。
 それから、そうしたデジタルネットワーク社会が相当本格化したということと、もう一つは、正に一九九六年のWIPOの二つの条約、まず著作権WIPO条約と著作隣接権の条約と、この二つの国内への導入といいますか、国際ハーモナイゼーションと、こういう文脈の中で今回の法改正が行われている、その背景は理解できるわけであります。
 後者のWIPO対応と、こういうことでありますが、平成八年、平成九年、平成十一年、平成十二年と、ほとんど毎年のようにWIPO対応をしてきたわけでありますが、いわゆるWIPO条約対応は、今回のことで大体卒業するというふうに、そして晴れて発効に向けて、いわゆる単位の取りこぼしなく卒業と、こういうふうに理解をしていいのかどうか、お尋ねをさせていただきたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君) WIPOの条約につきましては、既に成立しております条約については国内的な措置は今回の対応で一応すべて終えるということになろうかと思います。
 もちろん、WIPOの方では、例えば放送の問題ですとか映像の実演家の問題などについて更に新たな条約制定について協議を進めておりますけれども、でき上がった条約についての対応は今回で一通り終わるということになろうかと思います。
○鈴木寛君 一応卒業すると、こういうことでございますので、今回は大変にいい機会でございますので是非議論をしたいことは、今まで毎年毎年の著作権法改正、WIPOにそろえなきゃいけません、よろしくお願いしますということで、どんどんどんどん法改正もやってきたわけであります。
 九六年のWIPO条約というのは、基本的に、インターネットが導入されて、そしてインタラクティブ送信ということに起因します新しい情報コミュニケーション時代に著作権法制というものをどういうふうにしていくのかと、隣接権も含めてですけれども、ということで対応をするということが基本的な流れだろうと。そのことに日本は加盟各国の中でも相当頑張ってやってこられたと、こういうことは私も理解ができるわけであります。
 しかし、こういう時期でございますので、もう一回ちょっと著作権法の原点といいますか、情報化というのは何なのかとか、あるいは著作権とは何なのか、そういうことをもう一回きちっと議論をし直して、そしてやっぱり何が重要なのかということをきちんと見据えて、今度は一応先進国の中では日本がトップに立っているわけですから、正にこれから世の中がどういうふうに、情報社会と俗に言われますけれども、なっていくのかということを他国に先駆けてやっぱりきちっと骨太の議論を作り上げていきたいなというふうに思います。
 それで、私は、情報社会というのは、単なる経済発展よりも人々のコミュニケーションが大事にされる社会というのが情報社会の非常に重要な要素だというふうに思います。そうした情報社会づくりに向けた新しい著作権法も含む情報社会のルールというものを是非今日の議論から、この日本の国会からスタートをさせていきたいと、そんな思いで質問をさせていただいているわけでございます。
 まず冒頭に、まず初めに、著作権法の性格論について御議論をさせていただきたいんですが、カリフォルニア大学のバークレー校にパメラ・サミュエルソンという教授がいらっしゃいます、私も多少のお付き合いはございますが。その論文の中に「情報化社会の未来と著作権の役割」という論文がございますが、学者の中で著作権について大きく言うと二つの説があるということを紹介しておられます。
 一つは、著作権というのは商品だということでございまして、収益活動に従事する著作者の自由を最大化するために財産権を確立するということがこの商品論なわけでありますが、それ以外の機能というのは著作権に、正に経済合理主義に立った著作権商品論というのが第一説であります。
 二つ目の有力説が、著作権というのは社会的な目的を達成するために調整され得るべきだ、そうすべきものだと。したがって、著作権法制というのは、その経済性もさることながら、社会的及び文化的目的に重点を置くべきであると。法律が、著作権法が著作者に与えた権利というのは本来限定をされるべきものであって、より大きな社会目的を実現をされるためにはそこは調整をされてしかるべきだと、こういう二つの説があると、こういうふうに言っております。
 それで、これはどっちですか、日本は、ということを問いたいわけでありますが、私の理解は、著作権法第一条は「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」というふうにございますし、それから、本日のこの法改正のもとにもなってございます実演及びレコード製作、正に著作隣接権に関するWIPO条約の前文でも、実演家及びレコード製作者の権利と著作隣接権者、これは同様のことが著作権法のWIPO条約にもあると思いますが、そうした権利と、特に教育、研究及び情報の入手のような広範な公共の利益との均衡を保つ必要があることを認めていると。要するに、ちゃんとバランスをさせろというふうになっていますから、私は先ほどのパメラ・サミュエルソン教授の分類の中でいえば後者の説といいますか、きちっと著作権とその他の法目的といいますか社会構成というものはバランス均衡をさせるべきだというふうに考えていいんだというふうに思いますが、そこはそういうことでよろしいんでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) 今の御議論、大変興味深い御議論でございまして、後でより緻密な答弁があるかもしれませんけれども、私の考えでは、日本における著作権制度の発達の歴史を考えましても、当初はやはり著作者の権利というものをいかに確立していくかということで進んでまいったと思っております。
 しかし、時代の変遷に応じていろんな著作物の使い方というものができてきた、あるいは著作物をクリエートする人の範囲も広がったり利用形態も広がったりということになってまいって、そもそもが個人の、クリエーターの人格権なり財産権を守るということではありますけれども、それを通じて文化の創造でありますとか、あるいはそれがうまく社会に使われることによって、社会のいろんな知的なレベルを高めたり、あるいは生産性を高めたりということにつながっていくという波及効果もあるわけでございまして、次第に社会の変化に伴って後者の部分、それが経済的な活動にも使われていくということ、それが広く使われることのメリットというものが注目をされていって、元々の権利はもちろん保持しながら、それがいかにうまく流通をし、いろんな知的な活動ないし人間の感性に訴える財物として利用されるかという角度で、私は正に社会的な調整といいますかバランス論というか、そこのところが非常に大事だと思っておりますし、今後ともその基本だけは守っていくというのが著作権制度の本来の在り方ではないかと思っております。
 次長からもしあれば。いいですか。
○鈴木寛君 ありがとうございます。
 正にバランスを取る、均衡を取るということでございますが、この均衡の取り方というのは立法論上は、英米法的に言うとフェアユースとかフェアディーリングということの方法もありますが、日本の著作権法は第二章第三節第五款で「著作権の制限」というのが第三十条から第五十条までございますよね。私は、ここの三十条から五十条までの二十条というのは大変重要な、今の正に均衡を図るところがここに表れているわけでありまして、数ある日本の法律の中でも最も重要な二十条だというふうに思っております。
 それで、私も、「文化審議会著作権分科会審議経過の概要」という、これは昨年の十二月にお出しになったレポートを勉強させていただきました。そこでも、正に権利制限規定の在り方について議論がされています。そして、その権利制限の必要性について極めて明快な整理論に基づく整理がされているということでございますが、この正に新しい著作権を設定をしてくれということと、それから設定をされた著作権を制限をするという、大きく言うと二つの方向のダイナミズムというのがありまして、恐らくこの二つの方向のダイナミズムというのは、時代の移り変わりとともに、あるいは特に技術の発達とか普及とか、そういったことを踏まえながら総合的に調整をされていくべき性格であるというふうに、そのことが三十条から五十条に反映をされているというふうに理解をしております。
 例えば、一九七〇年に三十条の私的使用といいますか利用というのが作られました。しかし、その後に、いわゆる複製機器がはんらんをしてきますと三十条の二項ができて、私的録音録画補償金制度というのが九二年にできる、こういうふうにその時々の社会状況というものをかんがみながら、いわゆるウエルバランスというんですかね、適切なバランス、均衡ということを議論をしてきているし、そのことが反映をされているんだろうというふうに思います。
 先ほども私、拡大教科書の件をお願いをいたしましたけれども、是非ウエルバランスの議論で考えていただきたいというふうなことなんですけれども、正にこの権利の保護と著作物の利用調整をすると、そのルールづくり、権利のルールづくりですね、これどういうふうに今やっておられるのか、あるいは今抱えておられる幾つかの論点があると思いますので、その論点とそれぞれのルールの均衡という問題について、文部科学省、文化庁がどういうふうな今問題、課題に取り組んでおられるのかということについて御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君) 先生からるるお話がございましたけれども、御指摘のとおり、デジタル化時代を迎えまして著作権につきましては保護される著作物そのものが変化、多様化してきている。それから、著作物のその利用形態が非常にこれも変化、多様化してきている。それから、先生も著作者だとおっしゃいましたけれども、いわゆる権利者、クリエーターとユーザー、利用者の双方がこのインターネット時代を迎えまして急激に拡大しつつあるといった変化が起こりつつあるわけでございます。こうした時代にありましても、良質なコンテンツの創作、流通を確保する、そしてその上で著作権の適切な保護をするということは私は極めて重要なことであると考えております。
 ただ、新しい時代に対応してその著作物についてもっと利用しやくするという観点から、一定の場合について例外を認める、いわゆる権利制限規定と呼ばれる規定を設けるということもこれは条約上認められており、こうした例外的な場合には他人の著作物を無断で利用することができるという仕組みになっているわけでございます。
 先ほどお引きをいただきました文化審議会の著作権分科会におきましては、こういった観点も踏まえまして、これからの著作権制度の基本的な課題について昨年一年間議論をしてまいりまして、十二月に審議経過の報告を取りまとめたところでございます。
 話題になりました権利制限規定、この問題につきましては、主として教育の場面においてどういう例外規定を認めるのか、それから図書館についてどういう例外規定を設けるのか、この辺りを中心に昨年一年間は議論をし、その論点を整理をしたという状況でございます。
○鈴木寛君 正に権利の制限の均衡というのは非常に重要だと思うんです。特に教育あるいは図書館の議論というのは是非早急に進めていただきたいと思いますが、私がちょっと御質問を申し上げたいのは、要するに調整には、話合いが決着するのにはかなり時間が掛かるわけですね、もちろん物によりますけれども。しかし、教育とか図書館の問題も、これは社会教育を担う重要な拠点でありますから広く言えば教育利用ということになるんだと思いますが、そういったものを、現行の著作権法というのは非常にかなりクリアカットに書き出して、それを、私は毎年著作権法を改正していいと思っていますが、国会の中で議論するということはいいことだと思っていますので、そのことを云々言っているわけじゃありませんけれども、やや柔軟性というか弾力性に欠けるというものもある。
 著作権法は整備されないと、先ほどの拡大教科書じゃございませんけれども、やっぱりそれは権利者の許諾を取っていかなきゃいけないと。片やアメリカはフェアユースで大ぐくりにしてこの問題を決着をしているということで、このいわゆる三十条から五十条まで逐次どんどんどんどん条を追加していく、あるいはそこを変更していくと、こういった方式自体、要するに著作権法制の在り方なんですけれども、法制の立法的なフレームワークの議論をさせていただいているわけでありますが、ここについてはどういう御議論がありますでしょうか。
○政府参考人(銭谷眞美君) 著作者の権利を制限をするいわゆる例外規定の取扱いについて、そのような例外の範囲をどうするのかということとともに、法文の書き表し方、条文としてどのような書き方をするかということが問題になろうかと思います。
 具体的には例外規定を、大ざっぱな書き方と言うと大変変な言い方でございますが、大まかに書いておいて後は運用で判断してもらうというやり方と、我が国のように詳細な書き方をするというやり方があろうかと思います。
 大ざっぱな書き方にした場合には、条文が非常に読みやすいという一方で、具体的な場面でその例外規定が適用されるのかどうかということがあいまいになりがちだということはあろうかと思います。逆に詳細な書き方をする場合には、条文は難解になりますけれども、若干細かくなりますので難解になりますけれども、具体的な場面での適用関係は比較的に明確になるということがあろうかと思います。
 先生お話がございましたように、多くのヨーロッパ諸国あるいは日本では、これまでは後者の詳細な規定ぶりで例外規定を書いてきたわけでございます。アメリカはいわゆるフェアユース、公正な利用は許されるという、こういう言い方がいいのかどうかは別にいたしまして、大ざっぱな書き方を残しておって具体的な解釈というのは裁判にゆだねると、裁判所にゆだねるということになっているわけでございます。
 それで、先ほど申し上げました文化審議会の著作権分科会の中で、今後の著作権制度の在り方をやや中長期的に議論する場面においてこういった規定ぶりについても御意見は出ましたけれども、これまでの著作権法の詳細な書きぶりを変えるというようなところまでは至っていない状況でございます。
 と申しますのは、我が国でもやっぱりアメリカのような考え方を取り入れて例外規定を大ざっぱな書き方にすべきじゃないかという御意見は、あるいはそういう考え方を御紹介する方はいるわけでございますけれども、このことにつきましては、アメリカでのフェアユースの考え方が、アメリカの司法制度の状況とか、あるいは著作物を利用したりその権利を持っている関係者、関係団体の間での一定のルールといいましょうかガイドラインができている状況があるとか、あるいはその契約システムが発達しているとか、そういったアメリカの状況に支えられているということにも留意する必要があるのではないかというふうに私は思っております。
 いずれにいたしましても、文化審議会の著作権分科会の中での議論にはなってはいるということはお話しできるかと思います。
○鈴木寛君 どうしてこういうことを申し上げるかといいますと、著作権法というのは、結局、産業政策上とか文化政策上の観点から人工的にそうした財産権を作り出して、それが創造者の、制作者の、創作者のインセンティブを確保するとともに、併せてそれがちゃんとどんどん転々流通する、情報流通がなされると、この二つの恐らく命題を持って、それはフェアユースと呼ぶのか、あるいはいろんな言い方はあると思いますし、フェアユースもその一つだと思う。
 私は、現状の我が国の著作権法の運用状況というか著作物についての実態を見ますと、この著作権にあぐらをかいて、その利用というものについて必ずしも熱心でないといいますか、そのことによって社会全体の利益、公正が損なわれている事例というのは一杯あるんじゃないかと。デジタル化ということは、要するにデジタル化というのはコピーされやすい、あるいはデジタル処理されやすいということからいうと何となく権利侵害っぽく聞こえますが、しかしデジタル化のメリットというのは、情報流通が非常にこれによって簡易になると、こういうことでありますから、情報流通がなされなければ意味がないわけですね。
 それで、現行日本のそうした規定ぶりを維持をするというその合理性は私も認めますけれども、ということになりますと、結局、産業政策上は、そういう著作権者がその著作権の行使ということについて独占禁止法にかんがみて問題行動がある場合には、むしろ公取も頑張っていただいて独禁法を強化すると、こういうようなこととか、あるいは文化政策、社会政策上もこの著作権法制というのは大事なことだというふうな御説明が冒頭大臣からございましたが、この非営利の利用についてはもう少し積極的に、除外規定というんですか、著作権制限ということを踏み込んでもいいのではないかなというふうな気がいたしております。
 更に申し上げると、私的録音補償制度なんかもその端緒だと思いますけれども、著作権者には財産権の中で報酬請求権だけ認めて、もうちょっと、今強制許諾というシステムがありますけれども、余りこれは多分活用されていないんだというふうに思いますので、その辺の創作者のインセンティブの確保とちゃんと情報流通・共有がなされると、この二つの考え方から、是非今やっておられる議論を更に進めていただければ有り難いなというふうに思いますし、さらには、最近はトランスコピーライトとかあるいはデジタル創作権といった新しいアイデアについてもいろいろな有識者から提言もされております。そうしたことも含めて、是非相当骨太な議論をこの分科会の中で引き続き検討していただきたいということをお願いをしたいというふうに思います。
 それで、もう少しこの分科会の点について御議論をしたいわけでありますけれども、この分科会の中で情報通信技術の進展に対応した権利と権利制限規定の在り方についてと、そして先ほども御紹介がありましたけれども、教育図書館における権利制限見直しについて検討がされているわけです。このことは大変いいことだと思うんですけれども、私は、今我々は産業社会から情報社会の大変な時代の大転換期にあるわけであります。情報社会化といった場合に、単にその情報技術が世の中に普及するということだけでは足らないのではないかということを申し上げたいと思います。
 情報社会革命というのは、正にIT革命に端を発してはおりますけれども、経済革命であり、社会革命であり、政治革命であり、文化革命であるという、すべての社会的な要素が変わっていくと。先ほども申し上げました、経済至上主義からコミュニケーションをもっと大事にする、社会の価値観も変わっていくし、それから文化というものが人間の諸活動の中でより相対的に大事な活動になっていくとか、そういうことを含んでいるわけであります。
 でありますから、WIPO条約の前文でも、経済的、社会的、文化的及び技術的発展に生ずる問題についてということが言われているわけでありまして、今までこの数年間の文化庁の対応というのは、WIPO条約にとにかく早く合わせなきゃいけないということで、大変だったということは分かりますけれども、どうも日本の議論というのが、ITが普及した、コピーがやりやすくなる、だから経済的損失が増える、大変だと、だから何とかしなきゃいけない、デジタル関連の著作権の手当てを、こういう議論。いわゆる表面的な理解に流れ過ぎていて、私は、文化とか社会とか、正に情報社会の最大の意味というのは、物質的価値に勝って情報とか知とか知恵とか、そういったものが大事になる社会が情報社会革命の本質だと私は思っておりますから、今までの政府の御議論というのは、情報というのは単に産業活動の付加価値を上げていく、あるいはそれを高付加価値化する、そういう情報道具論なんですね。私は、情報社会革命になりますと、情報とか情報活動、コミュニケーション活動それ自体が価値ある、尊重されるべき価値だと、こういうことに立脚をした著作権法制議論ということがやや欠けていたのではないか、今まではお忙しかったので、ですから今日からやりましょうと、こういうことを御提言を申し上げているわけでありますが。
 そうなりますと、例えば文化多元主義をこれから二十一世紀どう実現をしていくのかとか、科学技術をどう発展させていくのかとか、それからやっぱりそれぞれのコミュニケーション主体としての個人のコミュニケーション能力、情報編集能力を付けていくということ、更に申し上げると、私は、このITに端を発した時代と時間と空間を超えたコミュニケーションの充実というのは政治の政策形成過程にも大変重要な影響を与えると思っております。特に公共領域における民主的対話、熟議の民主主義という言葉がございますが、それを実現する契機もこの情報社会革命は含んでいると。正にこうした情報社会革命あるいは文化革命、そういうふうな人材革命、そういった点での議論が私は必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) 情報社会といいますか、情報化社会に今突入しつつありまして、その中での知の資産をどのように活用していくかということは確かに大変重要な課題だと思います。
 一方で、産業といいますか、経済の論理からいえば、情報はなるべく活用しながら使っていくということで、著作権法を代表とする知的財産について、クリエーターの権利というものを余り認め過ぎると流通が阻害されてかえって新たな情報社会に対応できないのではないかという御議論かと思います。
 しかしながら、情報社会において、情報が思わぬような技術的手段の開発などによって流布されていくという中で、しかしクリエートする人の意欲でありますとかあるいはクリエートされたものについての価値そのものを否定しては、私は、かえってその社会における知的な活動というのが阻害されるのではないかと思います。
 その意味で、これまで、ある見方によれば、科学技術が発達して権利関係が十分でないので、じゃどうするかということで著作権法は追い掛けてきたというふうな見方もあろうかと思いますけれども、私は、むしろそうではなくて、著作権法が元々守ろうとしている人間の思想及び感情における創作的な労作といったものをどのように守りながら、しかし社会の要求ないし科学技術の発展にアジャストしていくかということにおいて知恵を使ってきた法体系が現在の著作権法であろうかと思っております。
 したがいまして、今の委員の御議論は大変耳に入りやすいのでございますけれども、その角度からだけ論じていくと、かえって本来の人間の知的な活動についての大事に守るべきもの、あるいは意欲といったものが阻害されるという面もあるということはやはり考えていかなくてはならないと思います。
 それからもう一つは、やはり知的財産に関する、あるいは著作権に関するような法体系というのは、それぞれの国の法制度の在り方にもかなり、規制の体系につきましては影響されると思っております。英米を中心とする判例法の社会と、それから成文法の社会との違いもあります。
 先ほど次長も言いましたように、判例法の社会におきましては、それに対応できる司法制度とかいろんなことがあるわけでございまして、日本の場合には、やはり私は、この著作権法というのは、明治のいろんな制度を形成していくときに、ベルヌ条約に入るという目的もあったわけでございますが、私はいち早く日本がこの面で世界の水準を守ろうとした意欲というのは大変重要であったと思っておりますし、その後の著作権法のいろんな整備についての関係者の努力というものは、その精神を基にしながら、日本の著作権制度は世界に誇るべきものだと私は考えております。
 例えば、日本が昭和六十一年に世界で初めてインターネットへの対応について法整備を行いましたし、これを国際的なルールにするように訴えました結果、平成八年に日本の著作権法と同趣旨の規定を盛り込んだ条約が策定されているところでございます。これは著作権に関する世界知的所有権条約でございますが、これを策定しておりますし、また、本日御議論いただいております放送事業者、有線放送事業者への送信可能化権の付与も世界初のものでございます。現在、WIPOで検討中の放送機関の権利に関する条約にもこの権利を盛り込むよう提案を行っているところでございますし、着メロの問題も日本独自の開発によるものでございます。そういう中で、私は、これまで形成してきたこの日本の著作権体系というものは世界各国の法体系においてむしろリードをしていける、そういう分野であろうと思っております。
 したがいまして、今の委員のようなお考えというのももちろん非常に大事で、そういうことも十分に配慮をしながら、しかし日本の築いてきたこれを守りつつ時代の変化に対応して法体系を整備し、そして本当に先ほどのバランス論がうまくいくようにやっていくというのが我々の使命であろうかと考えるところでございます。
○鈴木寛君 正にこの二十世紀といいますか、百年ぐらいはよくやってきたと思っているんです。
 ただ、冒頭申し上げましたように、今やっぱり、先ほど大臣がベルヌ条約のお話をされました。日本は一八九九年に批准をしているんですかね。これ、元々は八六年に、一八八六年、ちょうど今から一世紀ちょっと前にできた条約でありまして、当時は、結局、近代というのは一七八九年のフランス市民革命以来、財産権の神聖不可侵性というものを規定をして、そして経済行為というものは大事な行為なんだということで近代のフレームワークというのは作ってきたと。
 物だけじゃなくて、やっぱり情報行動、特に情報経済、情報産業ということも重要であるから、そういった財産権のフレームワークというものをこうした著作活動にも充てていこうと、こういうことで、正に二十世紀、それがかなり機能してきて、それの最後の、究極の姿が今できつつあるわけでありますが、だからこそもう一回きちっと私はその議論をすべきだというふうに思っているわけでありまして、例えば教育とか図書館についての権利制限の御議論がされている。このことは私はいいことだと思うんです。
 ただ、いいことなんですけれども、どういうコンテクストでそれをしていますかということを私は申し上げておりまして、私は、産業社会から情報社会に変わるんだと。そうすると、単なる情報産業政策とか情報経済政策以上に大事な価値がありますよねということを申し上げていて、文部科学大臣は、文化行政を所管する、正に著作権行政を所管するトップであられると同時に、科学技術政策の最高責任者でもあるし、それから何といっても教育の最高責任者であります。となりますと、その情報社会における正に人材を作っていく、正にコミュニケーションの主体である人材を作っていく。教育というものをより充実をさせていくという価値は、私は、その知的財産制度を守るということと同値ないしは、これからの傾向でいえば、それ以上にそういうその知的創作活動あるいは知的創作主体になる、そういう学習支援制度を作っていくとか、それは教育システムということだと思いますが、教育システムとか研究システムとか、あるいは文化的な創作システムとか、そういう社会インフラを作っていく上で、財産権の、知的財産権制度と並んで、あるいは情報社会というのは大事だということになってくれば、これは正に今日は国のありようとか社会のありようということを見据えたときに、相当大事な話ですよねということを私は申し上げていて、そういう理解の下で、是非この教育とか図書館とかといった権利制限の問題ということは考えていただきたいということを申し上げているわけであります。
 その割には、教育とか図書については両論併記なのは分かるんです。両論併記で、それはそうでしょう、産業側の方からすれば、あるいは経済価値ほど重要だと思う方々からすれば、自分の経済的な基本的人権を守れという声は強いのは当然だと思います。しかし、新しい時代のビジョンとか新しい社会のイメージというものを持って、そこにある種のリーダーシップを持ってドライビングフォースを掛けていくというのは、これは私は政治の仕事だというふうに思っておりまして、これは別に、文部省の官僚の方々は著作権体系をより精緻にすばらしく磨いていくと、そのことについて、私は、大変御努力をされてきたと、国際的なハーモナイゼーションもWIPOというフレームワークの中で努力してきたことについて何ら私はけちを付けているわけではございません。
 しかし、正にここは国会の場でございまして、参議院でございますから、やっぱり次なる社会がどういうふうになるのかということを見据えて、ですから、是非委員の皆様方に御理解をいただきたいのは、これは正に国家運営の根本にかかわる問題を議論をさせていただいているわけであります。知的財産制度と並んで、我々はこれから作っていかなければいけない重要な社会システムがあるということを皆さんに御理解をいただきたいと、そういうコンテクストの中で、文脈の中でこの著作権の在り方ということもきちっと議論をしていくべきではないかと。
 幸い、アメリカはまだ経済パラダイムの中で著作権問題を議論せざるを得ないという政治状況にありますと。日本は、いったんそこのところは卒業して、次なるところに向けて、一応その中では優等生と言われているわけですから、しかし優等生は油断してはいけませんで、更に更にこの世の中を引っ張っていく、そしてやっぱり本当に何が社会にとって大事な価値なのかということをやっぱり議論をした上で社会システムというのは作っていかなければいけないというふうに思います。
 例えば、だから、憲法の議論の中でも、もちろん二十九条大事です。財産権は重要です。当然そこに対する公共の福祉という観点でさっきの権利制限条項がだあっと入っているんだと思いますけれども、あわせて、例えば学問の自由とか教育の、正に学習権の確立とかいう問題というのは非常に大事になっているわけですね。
 それから、若干今の議論で見落とされていますのは、著作権管理ということが進行していきますと、確かに経済的な価値の実現からすれば、だれがどこで私が作った著作物をパソコンを使って、インターネットを使って見ているのかというのはチェックできるようになるわけです。それは著作権管理ということによって、技術の進歩によってできるようになる。しかし、これは裏を返せば、私の経済的価値はより実現をされますが、その見られている方、例えば私の本をごらんになっている、インターネット、ネットワークでごらんになっている方からすればプライバシーの侵害ですから、これは。
 そうすると、実はこれは憲法十三条、プライバシーの侵害の問題があるわけですね。だから、今、現行の憲法上でもいろんな拮抗する人権があって、その中でどう濃淡、めり張りを付けていきますかという中で私はこの議論をすべきではないかという問題提起をしているわけであるということは、是非委員の先生方にも御理解をいただきたいと思いますし、そういう意味で先ほど遠山大臣にそうしたお話をさせていただいたというふうなことであります。
 実は、私は、本当に遠山大臣はずっと文化庁次長と文化庁長官も、正にインターネット対応時代のこの一九九〇年、大変重要なインターネット時代に対応した著作権法制どうするかという、ずっと責任者をやってこられて、恐らくこの問題について日本の中でも第一人者だというふうに高く尊敬をいたしておりますし、大変に期待もいたしております。加えて、今回、今日はお越しいただけなかったんですけれども、文化庁長官に河合隼雄先生が御就任されて、そうした産業社会から情報社会に移っていくんだと。
 そして、その中で恐らく、私は人格というか個人というものをどういうふうにとらえるか、人間をどうとらえるのかということ自体変わってくるんだと思います。今までは近代合理人で、要するに利己的な判断の下に経済合理的な活動をするという前提ですべてのその法体系というのは作られてきたわけでありますが、その人格ということも、相当インタラクティブにいろんな人と影響をし合いながらその人格というのは形成されている。そのコミュニケーションの中で、情報というのは別に独りでは生まれないわけでありまして、いろんな人たちがコミュニケーションをする、コラボレーションする中で情報というのは生まれてくるんだと、そのこと自体がすばらしいんだと、そのことに参画をしていく次世代を作っていくんだと。
 こういうことが、私は情報社会を作るという意味で非常に重要なわけでありますから、正にこの、私は、今、日本が望むことができる最良の大臣、長官コンビをせっかく頂いているわけでありますから、是非そうしたことに向けて頑張っていただきたいということでありますし、我々文教科学委員会も、そうした二十一世紀の日本をつくり、ひいては私は、相当日本というのはいろんな二千年間にわたる情報の歴史を持っていますから、その中でいろんな知恵があります。権利設定のやり方も、昔でいえば結とか講とか座とかいろんなことをやってきたわけですね。そういう文化的な知恵の蓄積もありますし、そういうことを一つ一つほどいていきながら、ひもといていきながら、今回は、今回はと言ったらおかしいんですけれども、日本発で新しい社会のパラダイムを発信できる絶好のチャンスに今立っているわけでありますので、そうした議論を是非ここからやっていただきたいなということであります。
 そして是非、もう時間もございませんので、最後に大臣からコメントをいただく時間を残して終わりたいと思いますので、最後にちょっとだけ申し上げますが。
 やはり、こういうことは本当に政治主導、ポリティカルアポインティーであります大臣も含めて考えていただきたいわけでありますが、もちろん審議会での御議論とか大事だと思います、大変な高名な先生方に、学者の、有識者の方々に御議論いただいていますが。しかし、この二十一世紀というのはどうなるかというのはだれも、逆に言うとみんな同じ一線だと思うんですね。
 もちろん二十世紀パラダイムの近代西洋合理主義における有識者の方々に入っていただいていると思いますが、そこを丸投げにしないで、是非やっぱり自らの、我々のチームというかコミュニティーで新しいものをやっぱり作っていきたいということを私も思っておりますし、ちょうど大日本帝国憲法、日本が近代憲法作るときにやっぱり伊藤博文が一生懸命頑張ってやっていますので、そういう政治家であっても、あるいは政治家だからこそそうしたいろいろな知恵者とともに新しい社会をつくっていく、やっぱりそうしたイニシアチブを是非遠山大臣に取っていただきたいと。それから、我々も取っていきたいということを橋本委員長にもお願いを申し上げて、遠山大臣のちょっとコメントを伺いたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 委員の大変柔軟な発想とそれから志の高さといいますか、その御議論、私は大変興味深く拝聴いたしました。そういう視点も十分に入れながら、これからの日本の在り方を考えていくというのは大変大事だと思っております。
 おっしゃるように、日本は本当に長い歴史、しかも単なる錯綜した国土の奪い合いというような歴史というよりは、我が民族がこう蓄積をしてきた大変な文化の厚みがございます。
 その意味で、これからの情報時代のコンテンツにおいては、私は日本は本当に誇るべきものがあると思っております。それは一朝一夕にできるわけでないようなものを我々は持っているわけでございまして、そういった大事な資産というのをどのように活用していくかということも踏まえた上で、更にクリエイティブな活動をし、そしてそういう創作者たちの意欲を十分にこれをサポートしながら、新たな知に向かってどのように日本が資産を作っていくかということは非常に大事だと思っております。
 一方で、こういう情報化時代といいますか、そういう中で容易にいろんなものをインターネット上あるいは機器の上で使い得る社会において、人々が基本的に持っているべき倫理観といいますか、他者のクリエイトしたものを大事にしていくということをベースにした社会でなくてはならないわけでございます。
 私は、日本の国内では、いろんな問題あるにしても、ある程度のレベルは保たれると思います。しかしながら、虎視たんたんとねらっているそのレベルにおよそ達していない国民あるいは国家が日本の周辺にもあるわけでございますね。そんな中で、容易にとにかく社会のために使おうよということでやっていくことの問題点というのも十分考えていかなくてはならないと思っているわけでございます。その意味で、正に英知を大いに働かせながらこの問題はやっていきたいと思います。
 それから、委員のおっしゃいました大きな方向性とか視点の大事さというのは分かるわけでございますが、むしろ個別にこういったときにどうするかというような議論の積み重ねも大変大事だと思っておりまして、今後とも是非いろんなアドバイスをいただきながら、協力をして日本の知的な世紀の形成に向けて努力をしたいものだと思います。
○鈴木寛君 是非そうした方向でこれからともに新しい時代、世紀の創造に向けて頑張っていきたいと思いますが、そうした意味で大学というのはやっぱり非常に重要な役割をこれから担うんだと思います。
 それで、そうした知的時代といいますか、知の時代を作っていく人材育成の場として、あるいはそうした知の創造の場の大学として、今、特に今日も議論になりましたけれども、知的所有権あるいは知的財産権制度に非常にたけた人材をつくっていくというのは重要だと思っています。
 御質問が二つございまして、ちょっとまとめてさせていただきますが、今議論になっていますロースクールですね、ロースクールの中で、例えば知財に特化した、あるいは、特化はできないですけれども法律ですから、非常に重点を置いた大学づくりというのは今後可能なのかどうかということの確認と、それから、これはむしろお願いでございますが、今、大臣もおっしゃいましたデジタルコンテンツの作成、あるいはそういった産業の育成、これは日本のリーディングインダストリーとしてこれから頑張っていけると思いますし、単に産業のみならず、非常に重要な文化的なむしろプラスの効用も私は見逃してはいけないというふうに思っております。
 そういう中で、この産業を育てるための金融支援制度というのも重要だと思っていまして、これはもう要望だけにとどめますけれども、先ごろ、金融の流動化、債権の流動化のためにSPC法というのができていまして、知的所有権、知的財産権を資産担保として、それを資産担保とした証券、債券を発行することができるというスキームができています。ここは文部科学省の御努力で知的所有権、知的財産権、デジタルコンテンツも対象にするようにはなっているわけでありますが、先ほど、平成十四年度、契約システムの研究ということをやるというお話がございましたが、これがきちっと使える制度になるように、法的な措置はできているんでしょうけれども、政令とかあるいは規則とか、あるいは実態上の、ビジネス上の運用とか、是非チェックをしていただいて、この点についても円滑な資金調達という観点、それからそのことを担える経済人材、法律人材、そして創作者と、そのための大学の自由なそうした知的な主体、次代を作る主体としての大学づくりについて、そうした自由が確保されているのかどうかということについて最後ちょっと確認だけさせていただきたいと思います。
○政府参考人(工藤智規君) 法科大学院についてのお尋ねがございました。
 これは、先生御存じのように今、日本の司法制度大改革に乗り出しているところでございまして、昨年六月に司法制度改革審議会の方から御答申を得まして、今、政府で全力を挙げて準備中でございます。これまでの司法試験という、点のみの選抜から資質の高い法曹養成をプロセスとして法曹人を養成していこうということで、質的、量的両面の課題を克服するために今制度設計について関係の審議会で審議中でございます。
 現在検討されております内容は、いわゆる基本六法など、法曹人におよそ共通に必要な部分の学習は当然でございますけれども、それ以外には、各法科大学院が独自にいろいろ取り組めるようなカリキュラム編成をすべきであるという御提言がございまして、例えば国際取引にたけた人材でございますとか、あるいは環境とか労働法関係に強い人材でございますとか、今御指摘ありました知財関係に強い法曹人養成ということもございます。
 私どもは、広く、整備運営のできた大学について広く参入を認めるような方向での制度設計を考えてございますが、昨年十二月に司法制度改革推進本部事務局で各大学調査した結果によりますと、回答がございました九十一大学のうち、七十八大学までが知的財産権、著作権や特許あるいは工業所有権等を含めた知的財産権の開設を予定してございまして、各大学の意識の高まりと取組の高さといいましょうか熱意を感じているところでございます。おっしゃいますような社会の需要もあるわけでございますし、それを大学側がしっかり受け止めて多様な法科大学院が設置されますよう私どもも支援してまいりたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君) 著作権の活用のためには著作物の円滑な流通が不可欠でございます。著作物がより一層利用されるためには、製品化あるいは販売促進等に係る費用を確実に調達できるような環境が必要でございますが、先生お話ございましたように、平成十年にいわゆるSPC法が施行されまして、著作権及び著作隣接権を証券化して当該証券を販売することによりまして資金調達を行う仕組みなどが整備されました。文化庁といたしましても、今後このような金融ツール等を組み合わせた新しいビジネスモデルが開発され、より一層の著作権の活用が図られるよう支援してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○鈴木寛君 はい、ありがとうございました。
○委員長(橋本聖子君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時三分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(橋本聖子君) ただいまから文教科学委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、扇千景君が委員を辞任され、その補欠として泉信也君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(橋本聖子君) 休憩前に引き続きまして、著作権法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○風間昶君 午前中に引き続き議論をさせていただきたいと思いますけれども、資料によりますと、本当に著作権条約は昭和五十三年から、まあまあ本当に社会的状況の変化に応じて、よくもいろいろこう改正があるなということを感じます。しようがないといえばしようがないんですけれども、いずれにしてもそういう適宜制度の見直しで社会に対応していく、なおかつ著作物の保護を図っていくということが目的だと思いますので。
 そこで、この法案の中に入っておりますWIPOの著作権条約については、いずれにしても二年前に締結して、条約としては今年の三月六日発効して、今度、WIPOの実演・レコード条約については今年の五月二十日に発効予定で、そういう意味で、条約に伴ってというか、条約と相まって国内法の改正をするということがねらいだと思いますけれども。
 そこで、前段であれですけれども、それぞれの二つのこのWIPO著作権条約とそれからWIPO実演・レコード条約について、何か国締結しているのか、そのうち先進国はそれぞれどこがあるのか、そしてその締結していない国に対する働き掛けを日本はどういう形で進めていこうとしているのか、まずお伺いしたいと思いますけれども。
○政府参考人(銭谷眞美君) まず、いわゆるWIPOの新条約の締約国の数でございますけれども、この四月十日現在で、著作権に関する条約につきましては三十五か国、それから実演及びレコードに関する条約につきましては三十二か国が締結をいたしております。
 また、いわゆる先進国といいますか、主要国の締結状況でございますけれども、現在のところ、G8の主要先進国といたしましては、アメリカが著作権の条約及び実演及びレコードに関する条約を締結済みでございます。それから、我が国が著作権に関する条約を締結をしているという状況でございます。
 なお、ヨーロッパ諸国はまだ締結していないわけでございますけれども、昨年六月に欧州共同体、EUが加盟国に対しましてこのWIPOの新条約締結のための指令を公布をいたしております。EU加盟十五か国はこの指令から十八か月以内に条約締結のために必要な国内法の整備を行う義務を負っております。したがって、EU加盟国は本年中にも相次いで本条約を締結することが予想されております。
 それから、三点目でございますが、このWIPOの新条約を締結していない国に対する政府の対応といったようなことでございますけれども、御案内のように、このWIPOの二つの新条約は、インターネットの普及やデジタル化、ネットワーク化の進展を踏まえまして、著作者や実演家及びレコード製作者の権利の保護拡充を目指すものでございます。インターネットの普及に伴いまして、国境を越えた著作物の流通が容易になった今日、できる限り多くの国々がこれらの新条約に加盟することが権利保護の実効性を高める上で重要であると思っております。
 そのような観点から、我が国はまず平成十二年に著作権の条約を締結したわけでございますが、今次国会におきまして実演・レコードの条約について締結の承認を求めているところでございまして、我が国としてはこれらの条約を自ら率先して締結するということ自体が未締結国に対する働き掛けに資すると考えております。
 また、WIPOや関係国内団体とも連携をしまして、途上国の関係者を対象とする研修事業の実施、国際的なセミナーやシンポジウムの開催、専門家の招致や派遣などを毎年実施することによりまして、途上国を中心とする各国のWIPO新条約に対する理解、加盟促進の働き掛けを行っているところでございます。
 今後とも、様々な機会を活用して、WIPO新条約への加盟を各国に働き掛けてまいりたいと考えております。
○風間昶君 締結自体が働き掛けを促進するのは間違いないんだけれども、どういうように働き掛けていくのかを含めて対応はというふうに聞いているから、丁寧ではないですね、答弁が。
 外務省、一緒にどうせ行くんでしょうから、外務省はどういうふうにしようと思っていますか。
○政府参考人(鈴木庸一君) 外務省といたしましても、まずは、文部科学省から今御説明がございましたように、日本が率先して条約を締結するということがまず大事であると思っておりまして、それを実現したいということで今回国会の御承認をお願いしているわけでございますが、それに加えまして、文部科学省と協力して、アジアの国を中心にセミナー等の開催を通じて働き掛けをしていきたいと思っております。
 もちろん、知的所有権の保護強化というのが我が国の政府にとって、あるいは経済の活性化にとって重要であるということは十分に認識しているわけでございます。
 御指摘のように、これまでは我が国が条約を締結するということを主眼に置いてまいりましたので、働き掛けはこれからという面はございますが、これからはWIPOあるいはWTOにおきます知的所有権の議論を通じて積極的な途上国を中心とした締結の働き掛けを行っていきたいと考えている次第でございます。
○風間昶君 そこで、ちょっと細かくなりますけれども、著作隣接権に関する条約としては、締約国はレコードの二次使用に関して留保宣言、すなわちある部分については日本が適用しないということを宣言することができるというふうになっていますけれども、今度のWIPO実演・レコード条約においても同じような規定があると思うので、日本は留保宣言をされるというふうに聞いていますが、その留保宣言、何項目かあるようでありますけれども、それを主張して何を得ようとしているのか、それを文部科学省にお伺いしたいと思いますけれども。
○政府参考人(銭谷眞美君) 今、先生からお話がございましたように、実演及びレコードに関する条約では、第十五条の(1)におきまして、商業用レコードを放送や公衆への伝達のために用いた場合には、実演家やレコード製作者は報酬を請求する権利を定めているわけでございますが、同じ十五条の(3)におきまして、この報酬請求権につきまして、一つには特定の利用形態についてのみ適用する、二つには一定の制限を課す、三つには全く適用しないということをWIPOの事務局長に寄託する通告において宣言することができると規定されております。
 我が国は、この十五条(3)の規定に基づきまして、次の三つの留保の宣言を行う予定にいたしております。
 第一は、報酬請求権は商業用レコードが放送及び有線放送において利用される場合にのみ適用することでございます。これは放送・有線放送においてはレコードを大量に使用するものでございまして、結果として実演家が実演の機会を失うことになるなど、実演家、レコード製作者に与える影響が非常に大きいことを踏まえまして、国内法で報酬請求権を放送・有線放送に限定して適用していることと整合を取ったものでございます。
 それから、第二は、十五条の(3)の規定により留保を付している国の国民をレコード製作者とするレコードにつきましては、報酬請求権の規定を当該留保の範囲に限定して適用することでございます。これは相手国の保護の水準に応じた相互主義というものを採用するためでございます。
 第三は、インターネットからダウンロードした音源を用いた放送等については報酬請求権の対象としないということでございます。これは、我が国においては放送事業者等がインターネットからダウンロードした音源を放送等に用いるという実態がなく、また著作権法上もそのような場合に報酬請求権は与えていないことと整合を取ったものでございます。
○風間昶君 何を得ようとしているのかということを聞いている。
○政府参考人(銭谷眞美君) この十五条につきまして、報酬請求権を認める中で我が国が三つの留保を行うことによりまして、例えば第一の留保でございます商業用レコードが二次利用される場合の報酬請求権については、実演家の方が、本来であれば実演によって実演家の方は報酬を得るわけでございますけれども、放送などにおいてそのレコードが使用されるということになりますとその実演の機会がなくなる、そうすると実演家の方にとっては報酬を得る機会が少なくなる、だからその点についてはこれは報酬請求権を認めましょうと、そこまでは認めましょうというようなことの効果があるわけでございます。
○風間昶君 何かよく分からないですね。一方的な主張をして、それに代わるものが、日本として戦略がどういうふうに描かれているのかということが今の御答弁ではちょっと何か回りくどくて分かりづらいんですが。
 そこで、午前中の議論にありました、三月の十四日に総合科学技術会議でも知的財産の保護と活用に関する第一回の会合が開かれて、そして三月の二十日に大臣も出席されての知的財産戦略会議、ここでお話をされたことが、先ほど答弁された著作権の問題と研究開発の成果とその権利化、そして人材育成というお話を戦略的な構築の柱として伺ったわけでありますけれども、問題は、それは文化庁における検討、文部科学省における検討であって、関係省庁とのことをどういうふうに連携をして構築を図っていくのかということが一番中身的には大事でありまして、そこについて大臣は、実務的には大臣自身はやらないんだろうけれども、どういうふうにお考えでしょうか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 連携をすべきこと、たくさんあると思います。一番分かりやすいのが、著作権ではなくてむしろ特許の権利を取るということについての一連の作業について、私は、これは文部科学省だけでやるのか、それとももっと国の戦略として大学の研究成果あるいは特殊法人、独立行政法人における研究の成果というものを権利化していくときのやり方などについては、私はこれは国家的な戦略で今後やっていかなくちゃいけないなと思っております。
 それから、人材養成につきましても、それぞれの大学のその独自性というのは尊重しながら、知的財産の形成及び活用にかかわる人材ということにおいて、新たにできようとしているロースクールについては関連の省庁との、そこでねらいとしていることについても大学に伝えていく、また、その大学におけるいろいろな仕組み及びカリキュラムなどについても、そういうことが達成できるようにしていくように私どもとしても促進をしていくというような作業もございますし、さらには司法救済ですね。
 司法救済の問題などは、私はこれは正に今、司法制度の改革が行われておりますけれども、その中においても知的財産の、これはむしろ守るためにあるいは公平を期すために日本の司法制度を随分直さなくちゃいけないと思いますが、そういう点においても、文部科学省としては人材養成の観点あるいは権利化の観点、そして大学及び大学の研究者が保有する権利についてのいろんな訴訟上の問題をどう解決していくかというようなことについて大変その関連が深いわけでございます。
 その意味で、我が方は著作権、人材養成そして研究開発とそれの知的財産化というような、幅広い角度でと申し上げたのは我が方の守備範囲でございまして、それをベースとして本来的なその国家戦略の在り方について我が省としても十分に協力をしていくという姿勢を述べたわけでございます。
 御指摘のありました著作権制度については、その中で様々なコンテンツあるいはその利用形態の多様化に対応するということを目指して取り組んでいるところでございまして、個人、企業などのコンテンツ創作者を適切に保護してコンテンツの創作、生産の推進を図ること、それからもう一つはそのコンテンツの円滑な流通の促進を行うことと、この二つのことによって創作者、利用者双方の利益を増進するということを基本的な方針として、それに対応し得る著作権制度の整備を更に進めるということでございます。
 また、アジア地域を中心といたします海賊版対策、それから著作権教育の推進、それから先ほど申しました司法救済制度の充実なども進めまして、こうした施策を総合的に展開することによりまして、人々のニーズに対応した良質で多様なコンテンツが広く生産され、かつ円滑に流通されるように私どもとしてはいろいろな取組をしていきたいと考えているところでございます。
○風間昶君 ありがとうございます。
 問題は、その著作権制度に関して、情報化の進展した現代において、今、大臣もおっしゃったように、ファイル交換ソフトによる違法コピーの例でも明らかなように国際的な対応が必要でありますから、その今の大臣のコンテンツの保護と円滑流通に関して、これは文部科学省単独ではできる話じゃないので、どういう形で国際的な検討に対応するのかというのが問われているわけで、そういう意味で外務省においでになっていただいておりますので、文部科学省からの情報を受けた上での対応にこれからなると思いますけれども、どういうふうに考えているかお伺いしたいと思います、外務省に。
○政府参考人(鈴木庸一君) 外務省といたしましても、文部科学省と協力しながらWIPOにおける議論に積極的に参加するとともに、WTOにおきましても貿易関連知的所有権保護協定の実施のための議論を積極的に進めてまいりたいと思っております。同時に、外務省といたしましては、国内的にも、知的財産戦略会議のメンバーには今なっておりませんが、積極的にこの会議に参加をしていきたいと思っている次第でございます。
○風間昶君 それでは、そのソフトによる違法コピーについての著作権侵害について伺います。
 まず、昨日、おとついでしたか、日本エム・エム・オーという会社が、交換されるファイル、ファイルローグを一般に、いわゆる若い人たちに頒布して、これを使ったファイル交換の仕組みを提供している日本エム・エム・オー社に対して、レコード、著作権それぞれの団体から訴えが出されて、仮処分申請が出されて、九日に東京地裁で差止め請求の判断が出ました。
 このことについて、所管であります文部科学省の大臣として所感をお伺いしたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君) インターネットを通じまして、例えば音楽コンテンツを多くの人々に送信する場合、従来は業者が管理するサーバーにそのコンテンツを蓄積しておきまして、そこから利用者のアクセスに応じて利用者の端末へ送信をするという形態が一般的でございました。
 これに対しまして、日本エム・エム・オー社あるいはアメリカのナップスター社などのいわゆるファイル交換システムは、個々人のパソコンにサーバーとしての送信機能を持たせるものでございまして、多数の人々の間で音楽コンテンツを相互に送信し合う形態でございます。このようなシステムには幾つかの種類がございますが、MMOの場合は、各利用者がそれぞれのパソコンの中に持っております音楽情報、例えば自分のパソコンの中に蓄積している音楽の曲名のリストですね……
○風間昶君 そんなこと聞いていないんです。
○政府参考人(銭谷眞美君) はい、分かりました、業者のサーバーに登録して、業者のサーバーからは情報提供だけを受けるものでございます。
 今回の仮処分は、音楽のコンテンツの送信そのものは行っていないものの、ファイルローグというシステムによって各利用者がそれぞれのパソコンに持っている音楽コンテンツの曲名情報や所在情報を提供するサービス管理をしていることについて、レコード会社のいわゆる送信可能化権を侵害するとして、その差止めを認めたものと承知をいたしております。
 本件に関しましては、日本エム・エム・オー社が抗告を行うとの新聞報道もあることから、文部科学省としては、当面今後の行方を見守ってまいりたいと思っております。
○風間昶君 今後の行方を見守ると。大臣も同じですか。これは著作権侵害なのか著作隣接権侵害なのかということも含めて、大臣としては認識どういうふうに持っておられますか。
○国務大臣(遠山敦子君) 本件に関しましては、仮処分出たところでございますし、今、次長が答えましたとおり、私としましては今後の行方を見守っていきたいと考えております。
○風間昶君 同じように、この問題だけでなくて、また大変あれですけれども、「千と千尋」の海賊版がかなり東南アジアを中心に出回っていると。つまり、インターネットを通じて国境を越えて今CD海賊版が多数製造販売されているということで、こういうような二国間あるいは多国間で協議を国際的な場で行うということが必要になってくると思います。このことについての、何といいましょうか、対処、対策をそういうことで文部科学省としてはどういうふうにお考えになっているか、伺います。
○国務大臣(遠山敦子君) 本当に風間委員の御指摘のとおり、海賊版の横行というのは本当に私は国家的な問題でもありますし、個人の著作権者にとっても大変大きな問題だと思っております。
 そこで、多国間や二国間の枠組みを活用いたしまして、その国におきます国際条約への加入を含めました著作権法制の整備、それから権利管理団体の育成を促すというのがひとつ大事だと思います。それから、侵害の原因がその国の法制度や法の執行面にあります場合には改善措置を求めていくと。これはもう国際的なこの問題についての解決の方策もあるわけでございますので、ここは私はしっかりと改善措置を求めていく必要があろうかと思っております。
 このために、我が省といたしましては、これまで、WIPOとの共同によります、アジア地域を対象とした著作権法及び管理体制の整備を支援するためのシンポジウムの開催、あるいは専門家の招致、派遣をすることによって理解を深めていくという方策、それからもう一つはWTOの枠組みを活用した各国法制度等の監視などに努めてきたところでございます。今後は、これらに加えまして、日中、日韓の政府間協議の定期開催などを実施していくことといたしておりまして、現在その準備もしているところでございます。
○風間昶君 大変ありがとうございます。
 恐らく物自体は、これは経済産業省が扱うことになるのかなというふうに思うんです、文部科学省が扱うのかどうかちょっと分からないんですけれども。
 それで、いずれにしても、文部科学省としても、今、大臣から各国の法制度の監視のことも伺いました。協議になっていった場合に、具体的に今度どうするこうするとなったときに、日本がノウハウを持っている、警察がどういう形で関与していくのかということも考えられますので、済みません、おいでになっていただいたので、警察庁の方にそうなった場合にどういうふうに日本のノウハウを利用していけるかということを含めて対応をお聞きして、質問を終わりたいと思います。
○政府参考人(堀内文隆君) 警察における国際的な対応ということでありますけれども、警察といたしましては、海外における海賊版事犯への対策として、これまでも外国取締り機関との情報交換やこうした機関の人材育成への協力等の活動を実施してきたところであります。
 今後も我が国の知的財産保護に向け、このような活動を更に積極的に推進し、外国取締り機関等との国際的な連携協力を一層強化するとともに、その成果の国内権利者へのフィードバック、これを図ってまいりたいというふうに考えております。
○風間昶君 終わります。
○畑野君枝君 日本共産党の畑野君枝でございます。
 著作権法の一部改正案の内容につきましては、実演家にも第三者に著作物を勝手に改変させない権利、つまり同一性保持権や名前の表示を求める権利、氏名表示権などの人格権を創設する。放送局、有線放送局にインターネットを用いた無断再送信を防止するための権利を拡大する。CDなど、録音物の保護の起算点を録音時から発行時に変えて保護期間を延長するなどにあります。
 この改正は、新たな情報伝達手段等の発達に伴って権利を適切に保護する改正であり、特に我が党も以前から要求をし、実演家にとっては四十年来の悲願でありました名誉、声望等を保護する著作隣接権の人格権が認められるということは大きな前進であり、この法案に賛成をするものでございます。
 その立場から本日は質問をいたします。
 まず、著作隣接権の財産権である報酬請求権についてであります。
 今回の改正案では著作隣接権者の人格権が創設されました。これは歴史的に大きな意義を持っております。しかし、財産権である報酬請求権は認められておりません。ビデオやDVDの売上げは急増する反面、顔が売れているのに一円も請求できない範囲というのはますますこれも急増するという結果になっております。
 日本映像ソフト協会によりますと、DVDの売上げは前年度比で約一・五倍、一千五百二十二億円にも達しているという報道もございます。DVDはビデオに比べますと三分の一の値段で購入できるということで、今後、再生機が安価になればもっと売上げが伸びると言われております。
 DVDに関連した、それでは請求権があればどれぐらい請求できるのかということをアメリカのスクリーン・アクターズ・ギルドの基準、例えば配給収入の四・五%ということで仮に計算いたしますと、日本の場合は二〇〇一年度は約七十億円になるというふうにも計算できると思うんですね。ですから、歌手の方は音楽CD売上げに比例して報酬請求ができるわけですが、同じDVDの場合は映像が付いているから請求できない。
 今日、私、お持ちいたしましたけれども、これどちらがどっちだかお分かりになりますでしょうか。(資料を示す)もう大きさも形も同じ。こちらが、右側がCDですね、左側がDVDというふうになっております。ちなみに、三月末の最終の週の売上げヒットチャート一位は、CDの方は宇多田ヒカルさんの「光」、DVDの方は「トゥームレイダー」、二位はちなみにジブリの「紅の豚」というふうになっているわけですね。
 映像が付いておりますと、俳優も声優も何も入らないということなんですね。そういう無権利の状態がどんどんこれから広がっていくというふうになると思います。
 そこで、まず文化庁にこうした問題の御認識があるのかどうか、そして今後これをどういうふうにやはり改善して権利を拡大していくのか、この点について伺いたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君) 今、先生からお話のございました映像の実演の取扱いの問題でございますけれども、実は、我が国を含む多くの国において、CDなどに録音されている歌手の歌などの音の実演とそれからビデオやDVDなどに録画されている俳優の演技などの映像の実演については取扱いに差異がございます。
 具体的には、CDなどに録音されている歌手の歌などの音の実演につきましては、これを複製販売したり放送などで利用する場合には、歌手などの実演家の許諾を得るかあるいは報酬の支払が必要であるということになっております。これに対しまして、ビデオやDVDなどに録画されている俳優の方の演技などの映像の実演については、これを放送するなどに利用する場合には実演家の許諾や報酬の支払は必要がないということとされております。ある意味では実演家に権利がないということでございます。
 実は、このような音の実演と映像の実演の差異をなくして、ビデオやDVDなどに録画されている映像の実演について音の実演と同様の権利を付与することについて、現在、世界知的所有権機関、WIPOにおきまして新条約の検討がなされております。
 ただ、この条約はまだ採択に至っておりませんで、一昨年になりますか、平成十二年の十二月にジュネーブで開催されました外交会議においてすべての条項について合意が得られなかったということはございます。ただ、実演家に財産的権利を付与するということについては暫定合意が行われたということでございます。
 ただ、具体の国内における適用については、将来、映像の実演家の方に権利を付与するということを前提といたしまして、その場合に必要な契約システムの在り方などについてよく協議をしておく必要がございますので、文化庁では映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会というのを設けまして、国内法での対応について検討を行っているところでございます。
 我が省といたしましては、こういった国際的な動向を踏まえながら、映像の実演家のこの財産権の問題について適切に対応してまいりたいと考えております。
○畑野君枝君 成立いたしました文化芸術振興基本法の中では、初めて「地位の向上」というのが入りました。これも長年の皆さんの御要望だったというふうに思いますけれども、その地位とは何かということをその法律の審議のときに議論をいたしまして、それは社会保障を含む経済的かつ社会的権利が含まれているということが立法の趣旨だというふうに提案者からも御答弁をいただきました。ですから、これは懇談会などで議論されているということですが、速やかに皆さんの要望が通るようにしていただきたいということをもう一回確認をさせていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(銭谷眞美君) 芸術家の方々の社会的な地位あるいは経済的な地位の向上の問題につきましては、先般成立をいたしました文化芸術振興法の中でもその必要性がうたわれているところでございます。
 例えば、芸術家の方の社会保障の問題につきましては、昨年末の文化芸術振興法の成立の後、芸術家の方々の就業時の事故の際の補償の状況などについて日本芸能実演家団体協議会から私どもお話を伺ったり、あるいは厚生労働省にも労災保険制度についてお話を伺いに行ったりしたところでございます。
 これらの話合いを踏まえまして、労働災害に対する補償について、結局、その芸術家の方が労働基準法に定める労働者として認定されるか否かの問題であって、それをどう判断するか、その辺、幾つかの判断基準にゆだねられているというふうに理解をしているところでございます。
○畑野君枝君 先に御答弁いただいたんですが、私がここで確認したかったのは、地位の向上というものもありますから、隣接権にかかわる報酬請求権につきましても懇談会で論議されているということなのですが、それも早く結論が出るようにしていただきたいと思うけれどもいかがでしょうかということなのですが、いかがでしょうか、その点は。
○政府参考人(銭谷眞美君) 先ほども申し上げましたように、視聴覚的実演に係る実演家の方の財産権の問題につきましては、国際的な動向も十分踏まえながら、私どもとしては結論を出し得るよう更に検討を進めてまいりたいと思っております。
○畑野君枝君 是非、速やかな結論を出していただきたいと思うんです。
 これは、参議院の文教科学委員会の調査室が委託調査をいたしました「主要国の知的財産法制度における著作権制度の位置づけとその概要に関する調査報告書」ということで、今年の二月に出されております。これでも、主要国にいろんな状況がありまして、各国いろんな状況がありますが、しかし、人格権あるいは財産権、報酬請求権、そういうものがそれぞれのところで進められているというふうに、イギリス、ドイツ、フランスあるいはイタリアなどであると思いますし、また、そういうものがないアメリカでも、ハリウッド映画では組合によってそういうものがきちっと報酬が保障されているということですから、本当に日本が後れて、優秀な俳優さんがどんどん外国に行ってしまうという流出のないようにきちっとしていただきたいというふうに思います。
 さて次に、先ほど御説明がございました地位の向上にかかわりまして、審議のときに御答弁をいただいた点でございます。もう一回重なってしまいますけれども、芸術家の社会的、経済的な地位が向上していくことは大変大事だというふうにお答えいただきましたし、今後、芸術家の皆さんの御意見を伺って、また社会保障関係の制度のそれぞれの実態も考慮して、各関係省庁とも相談していきたいということを承りました。
 今、どのように文化庁としては進められているのか。また、関係省庁としては厚生労働省になると思いますけれども、その点について併せて伺いたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君) 先ほど少し先走って答弁をしてしまったのでございますけれども、先ほどの答弁の繰り返しになるかもしれませんが、私ども、芸術家の方の社会的、経済的地位の向上につきましては、文化芸術振興法の趣旨を受けまして、文化庁として考え得ることはやっていかなければいけないというふうに思っております。
 ただ、そういう意味で、芸団協からお話を伺ったり厚生労働省にもお話を伺ったりはしているわけでございますが、文化庁としての最も一つ大切なことは、口幅ったいようでございますけれども、文化芸術団体の行う活動そのものの支援の充実を図って、その成果として実演家の方の社会的、経済的地位も向上していくということにもあろうかと思っておりますので、そちらの方にも力を注いでいきたいと思っております。
○政府参考人(石本宏昭君) この文化芸術振興基本法の成立、あるいはその中で文化芸術活動を行う者の地位の向上が図られるよう考慮すべきという規定があることは十分承知しておりますし、また、その過程におきまして、当文教科学委員会での御議論もよく承知しております。
 先ほど文部科学省の方から御答弁ございましたとおり、労災保険制度の仕組みなどについて説明をしているところでございます。
○畑野君枝君 芸術家の地位に関するユネスコ勧告もあるわけですから、当然のことであり、是非具体的に進めていただきたいというふうに思うんです。
 それで、そのユネスコが勧告を出すに当たって、やはり芸術家が置かれている不安定な状況を是正するために当局による対応が必要かつ喫緊のものであるということで出されたわけなんですね。そういう点では、不安定な状況があるということについて、やはり実態調査というのを求めているというふうに思うんです。
 時間の関係から、私、今日はアニメ制作労働者と、そして芸能関係の社会保障の実態について、絞って伺いたいんです。
 まず、アニメについてなんですが、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」、先ほどもお話がありましたが、ベルリン映画祭で最高賞に当たる金熊賞を受賞されました。アニメ作品がカンヌあるいはベネチアの映画祭を含めた世界三大映画祭で最高賞を獲得したのは初めてであります。これは、アニメが実写映画と同等の芸術的評価を得るようになったということで、日本のアニメ界の役割というのは大変大きいものがあると思いますが、その世界一と言われる現場では大変御苦労をされているというふうにも伺っております。
 アニメ共闘会議の百五十人のアンケートというのが九九年にございますけれども、九四年の平均労働時間が九・六時間だったのが、九九年になると十・八時間に増える、一日平均労働時間ですね。ところが、平均年収は二百五十五万円から二百四十七万円に減っている。九九年、五〇%以上の方は二百万円以下、百万円以下は一五%強という状況であります。雇用保険未加入も五五%という状況になっております。この点では、若い人が多い、あるいは長く続けられないような過酷な状況もあると。そして、その中にはやはりアニメ制作費、放送局の制作費が低いと。低賃金が生まれるような状況、アメリカの三分の一、ヨーロッパの六分の一と言われるような制作費にもあるということであります。
 このようなアニメの現場の実態というのは御存じなのかということを文化庁と厚生労働省に伺いたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君) 日本のアニメというのが、今、先生お話ございましたように、大変世界に誇れる文化であり、その役割が大変大きくなってきているというのは、私どももそう認識をいたしております。
 文化庁としてアニメの制作現場の実態をどういうふうに把握しているかということでございますけれども、私ども、実際のアニメを描くアニメーターや声優の方々から賃金が必ずしも高くないといったような声があること、あるいは海外の業者に下請に出していることがあるといったような報道に接したのはございますけれども、詳細な実態を調査したとか、そういうことはございません。
○政府参考人(坂本哲也君) 私どもといたしましては、労働者の労働時間あるいは賃金の実態、こういったものにつきまして、全国三万三千事業所を対象に毎月勤労統計調査といったものを行いまして、その実態把握に努めておるところでございます。
 しかしながら、アニメーション制作現場の労働者のみを対象としてそういった労働時間なり賃金等の実態について、それに絞っての調査というものはしたことはございません。
○畑野君枝君 例えば「映像情報化の諸機能の有機的連携に関する調査報告書」というのがありまして、その中では主にアニメの状況が中心に書かれております。それで、この中でも三十年後には日本のアニメに優秀な人材が残らないんじゃないか、人材確保でも大変苦労されているということで、その一番が四八・九%で給与水準が低いとか、元々人がいないとか、不規則で長時間労働というのがあるわけですね。ですから、こういう点の実態をまずつかんでいただきたいというふうに思いますし、それから、芸能現場の実態でございますけれども、芸能関連労災問題連絡会や芸団協からは、例えば、撮影スタジオで火災のために多くのスタッフが亡くなったりけがをされたりする、舞台から奈落に落ちてスタッフが死亡される、衣装が舞台機構に絡まって腕をなくした俳優、タレントを猛獣のいるおりの中に入れたり、凍傷で指を切断するほど寒い現場で仕事をさせるなどなど、非人間的な扱いがされているという話もあるわけです。
 こういう点からも、今アニメの話をいたしました。それから芸能現場のお話をいたしました。文化芸術振興法第二条で言っている地位の向上を本当に始めていくためにも、まず実態を調査すべきではないかと思いますが、それぞれいかがでしょうか。
○政府参考人(銭谷眞美君) 先ほども申し上げましたが、私ども文化庁といたしましては、基本的には文化芸術団体の行う活動支援の充実を図って、その成果として実演家の社会的、経済的地位も向上していくようになればというふうにまず思っております。
 アニメにつきましても、従来から映画振興の一環として、アニメーション映画に対しまして芸術文化振興基金による制作活動への助成、あるいは優秀映画作品賞における顕彰、さらには平成九年度からはメディア芸術祭の中で優れたアニメーション作品に対する顕彰、鑑賞機会の提供などを行っているところでございます。また、本年度からトップレベルの芸術創造活動の支援の中に映画も対象として含めまして、支援を行っていくということにいたしております。
 こういった芸術文化団体の活動支援を通しまして地位向上を目指していくというのが文化庁の基本的な立場かなと思うわけでございます。
 なお、実際、芸能活動に当たっている方々の活動や生活実態の問題につきましては、私ども直接実態調査をするということはちょっと考えにくいわけでございますが、文化庁がかかわっている事業を一つだけ御紹介を申し上げれば、社団法人の日本芸能実演家団体協議会が五年ごとに実施をいたしております芸能実演家の活動と生活実態調査に対しまして文化庁としても支援をしているということはございます。
○政府参考人(石本宏昭君) 先生御指摘の芸術家等の地位向上のためにふさわしい社会保障あるいは雇用対策というものを講じるべきという考え方につきましては、私どもとしては、現在、全国民を対象とした社会保障セーフティーネットを構築し、またこれを堅持するということを最大目標にしておりまして、ある意味では芸術家であるかないかを問わず、広く一人一人の国民が尊厳を持って生きるセーフティーネットの構築に今後とも邁進していきたいという気持ちの上で、更に芸術家などの方々に対して何ができるか。例えば、年金であれば厚生年金、あるいは被用者であれば健保組合、あるいは自営業の方であれば国民年金基金等の一応のシステムは用意されておりますけれども、更にこの社団法人日本芸能実演家団体協議会から既に御要望を幾つかいただいておりまして、引き続きこの協議会と御相談してまいりたいというふうに思っております。
○畑野君枝君 具体的な要望が本当に出されておりますから、是非それは実現に向けて努力をしていただきたいというふうに思いますし、いろいろな調査も含めて、聞き取りなどを含めてやっていただきたいというふうに思います。
 そこで、地位の向上にかかわってもう一つ別の角度から伺いたいのですが、芸団協などからは、所得税法百七十四条十号等に規定されている芸能法人に係る所得税の源泉前納制度が芸能法人が泡沫企業であるとの過去の認識に基づき制定されたものであり、文化立国を目指す国の税制として、前世紀の遺物として撤廃を求める声が出されているんです。
 これについて、やはり他の法人と同じ扱いをすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(大武健一郎君) お答えさせていただきます。
 御指摘のように、芸能プロダクションが支払を受ける報酬については、その支払の際に所得税を源泉徴収しなければならないことになっております。これは、一口に芸能法人といっても、やはりまだ様々な法人が現在存在しているということ、それからその所得の把握が必ずしも容易ではないというようなことを踏まえまして、適正な確実な課税を確保するという観点から行われているものでございます。
 当然のことながら、これらの方が源泉徴収された税金は、確定申告における法人税額の計算の際に差し引くということになっておりまして、これらの方に特に重い負担を求めていることにはなっていないということにも御理解を賜りたいと思います。
○畑野君枝君 それはもう本当に三十年来変わっていない御答弁なんですよね。そういう制度ができたのは三十八年前です。四十年来運動ができて、今日、著作権法でやっと実演家に人格権を認めようというときになって、いまだにそういう答弁じゃ本当にこの二十一世紀にふさわしいのかというのを私申し上げなくちゃいけないと思うんです。
 文化振興と言って国では芸術団体の助成もやって、そして書類も出して申請してもらう。その一方で、税制上は信用できないから先に取る。こんな差別的なことがありますか。しかも、それはもう二十九年前の国会の審議の中で検討するというふうに言って、何にも検討していないんでしょうか。
○政府参考人(大武健一郎君) 今、先生から言われました要望といいますか、それは我々にも伺っておりますし、出されたその要望の中にも、実は一口に芸能法人といいましてもいろいろな企業があると思いますということを実はお認めになっている文書もございます。我々としては、しかしそうはいっても実態をよく聞かなければならないということで関係者の声を、特にこれは国税庁におきましても、引き続き聞かしていただこうということで、勉強していきたいと思っております。
○畑野君枝君 是非、その勉強が早く進んで前世紀の遺物にならないように改善を図っていただきたいということを強く申し上げると同時に、文部科学大臣にもそうした芸術家の地位向上が税制面あるいは著作権法含めて広がっていくように努力をしていただきたいということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。
○山本正和君 実は、この著作権の問題については、私も質問を一問ぐらいにしようと思っておったんですが、ちょっと調べてみたら大変な苦労があった歴史が出てまいりまして、特に私が尊敬している昔の文部省の事務次官をしておった佐野文一郎さんが課長をして、著作権課長をして、またその当時に安達さんだったんですか、この人が次長だったんですかね、担当審議官ですかね。その後、実はまた大変仲のよかった加戸さんとか、今愛媛の知事になった、あるいは国分さんとか、みんなこれをやってきて、そしてまた現職の尊敬している文部大臣も銭谷次長も、本当にこの辺大変な取組をしておられたという中での問題なものですから、ちょっと勉強してしまったんです。
 勉強いたしまして、そうしたら阿南先生が中曽根文部大臣に質問した質問内容なんかも出てきまして、それは、中曽根文部大臣がこれは非常に大事だ、子供たちにしっかりこのことを教えにゃいかぬというふうな答弁をされておられますし、国民にこれをうんと広げていかなきゃいけないと、こういうお話が出ました。
 今日ずっと聞いておりまして、各委員の質問を聞いておりまして、要するに、二十一世紀の我が国がどうしても乗り越えていかなきゃいけない、取り組んでいかなきゃいけない非常に重要なものだと、こういうものをひとつお聞きしたんですが。
 そこで、文化庁がホームページで「著作権制度の概要」というのを出しておるんですね。ここで著作物というものについて、思想又は感情を表現したものであること、以下いろいろあって、特に、思想又は感情を創作的に、クリエートですね、表現したものであることと、こういうふうな表現になっておるんですね。これ、すばらしい言い方ですよね。思想又は感情を創造的に表現する、思想又は感情を他のいろんな今まで表わされたものと違って全く独創というか、初めて作り出す形で表現すると、これはもうすばらしい言葉なんですよね。ところが、実はこれはアメリカ合衆国のブリタニカにも同じようなのが載っておって、ひょっとしたら文化庁が盗んだんじゃないかと心配したんだけれども、そんなことはないと思いますけれどもね。
 それで、そういうふうなことを見ていきますと、これは、文部科学省は、二十一世紀に当面する非常に重要な課題なんだろうと。さて、それでは学校現場ではどうなんだろうかというので学習指導要領を調べてみたら、何と、小学校はないんですよね、これ。ただ、中曽根文部大臣のときに説明しておられたように、漫画の本をここに持ってきましたけれども、大変これはすばらしい作品だったんですね。すばらしい作品です、これ。(資料を示す)これを中学校三年生には全部配っています、小学校にも全部配っています、こういうふうに言っておられるので、大変これはいいんですけれども。ところが、これは入学試験には出ないんですよ。高等学校の入学試験に全然これ出ない。まして大学で、著作権なんということを知らぬでも全部大学入試通るでしょう、何も知らぬ人でも。
 ところが、著作権って非常に重要なんだと言うのになぜ学習指導要領にないんだろうと一生懸命探してみたんです。私が勘違いしておったんですけれども、あったんです。何とそれが情けないことに中学校では技術・家庭の中にある。学習指導要領、僕は当然、公民とか社会科とか、そういうところで相当大きく位置付けているだろうと思ったら、何と技術・家庭です。その中に一項ちょこっとあって、著作権にも触れることと書いてある。これは文部大臣が言われたことと、中曽根文部大臣が言われたことと大分違うんですよね。
 それから、しかも昭和四十五年の法の成立のときの坂田文部大臣が、これは長々と提案趣旨を演説しておるんですね。そのときの担当の、何といいましたかな、この方も趣旨説明が、物すごく長い時間説明した、慎重審議している。今日はちょっと出ていったけれども、西岡さんに聞いたら、当時の自民党文教部会では灰皿が吹っ飛ぶぐらい大激論をしてこの法案審議したと。
 それは、なぜ一体これ学習指導要領の位置付けはこんななのかということをまず質問で聞いておきたいんですけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(矢野重典君) 結論から申し上げますと、その辺のところをきちんと御説明できることについて、今そういう状況にないわけでございますが、まず状況を申し上げますと、学校教育における著作権につきましては、先生先ほど御紹介がございましたように、指導要領上明確に位置付けておりますのは中学校の技術・家庭科と高等学校の公民科等において取り上げることといたしているところでございます。
 具体的に申し上げますと、中学校の技術・家庭科では、著作権は文学や音楽、美術作品などを無断使用から守るための権利であること、それから他人の著作権は尊重されなければならず、書籍やコンピューターソフトなどを無断でコピーすることは著作権の侵害となること。また、これは高等学校の公民科でございますけれども、戦後の国際社会においては著作権等の知的所有権の保護についても検討がなされてきたことなどについて主張されているところでございまして、特に新しい指導要領、先生、技術・家庭科だけでは問題ではないかと御指摘がございましたけれども、新しい学習指導要領では、情報化の進展に対応いたしまして、御案内のように、中学校の技術・家庭科の情報とコンピューターに関する内容、これが必修になったわけでございますし、また新たに高等学校の新設教科として情報を必修といたしたところでございます。
 その中で、先ほどお話がございましたけれども、これまでは中学校の技術・家庭科においても著作権の取扱いがきちんと、きちんとといいましょうか、あいまいなままでなっていたわけでございますが、今回の指導要領の改訂におきまして、著作権の保護について新たに明確に位置付けたわけでございます。
 すなわち、情報とコンピューターということを学ばす中で、情報化が社会や生活に及ぼす影響を知り、情報モラルの必要性について考えさせるという、そういう目的、教育内容の目的として位置付けまして、内容の取扱いとしては、そうした情報とコンピューターについて学ばせる際には、著作権の保護について扱うことということを今回新たに明確に位置付けたというふうな状況にあるわけでございます。
 そういう意味では、学習指導要領上の取扱いが学校教育においてはこれまではいささか不十分であったという御指摘は、御批判はそのとおりだと思うわけでございますが、後ればせではございますけれども、こういう形で学校教育においても指導、明確に位置付けることとしたところでございますので、そういう意味で、私どもとしては、今後とも学校教育において著作権に関する教育が適切に行われますように引き続き努力をしてまいりたいと考えます。
○山本正和君 大変取り組んで、今からまた更に取り組んでいこうと、こういうお答えですから、しっかりやっていただきたいと思うんですけれども。
 ただ、位置付けが、実際は学習指導要領に書いてある事柄が学校で現実にどう教えられて、また、教科書ではどういうふうに扱われているかという問題になってくるんですね。ところが、高等学校の入学試験問題に出ないやつは、教科書では書いてあっても、もう本当に勉強せぬで飛ばしていくんですね、どんどん、実際問題は。
 だけど、これは中曽根文部大臣当時にお話があったように、我が国が今とにかく教育の場で何よりも大切に取り上げなきゃいけない課題なんだということならば、そういうふうな方向でやっぱり学習指導要領の中における位置付けも、ちょっと正直言って、高等学校の方は情報の中にあるんですよね。高等学校の方は情報の中に、これもちょっと記述は極めて少ないんですわ。(資料を示す)これは、「内容の取扱い」の中で、そしてこういう問題について、「ウについては、情報の伝達手段の信頼性、情報の信憑性」、何々の責任、個人の責任、プライバシー、そしてそこでついでに「著作権への配慮などを扱うものとする。」と。これが高等学校における著作権の扱い方。
 で、やっぱり著作権というものがなぜ今大事なのかと。特に、正に情報化社会、正に情報革命ですよ、これね。もう世界が変わろうとしている中での著作権というものの意義が非常に大きいんだということでいくんならば、もうちょっとこの位置付けを、学習指導を検討する人たちはみんな立派な人ばっかりなんだから、そこで議論が出そうなものだと思うんで、どうもだからまだ今の局長の御答弁では、そんなことでいいんかしらんと、こういう気がしてならないんですがね。
○政府参考人(矢野重典君) 高等学校の取扱いは、先ほど委員から御指摘がございましたように、新しく新設された情報科において先ほどお話にあったような形で位置付けられているわけでございますが、情報科以外に、高等学校では公民科の中の現代社会においてこういう形で位置付けております。現代社会の特色として、大衆化、少子高齢化、国際化などと並んで高度情報化ということを現代社会の特質として位置付けまして、その高度情報化を理解させるという観点から、その一つのポイントとして、知的所有権などに対する情報モラルの確立が必要であることについて気付かせることが大切であるという形で、現代社会における、また現代社会の特色、特質を考える中で、この問題についてもきちんと位置付けて指導を行うことといたしているところでございます。
○山本正和君 これは、日本が、例の何とも言えない空白の十年間と言われているその出発点で、アメリカから特許権の侵害でぼろぼろにやられたんですよね。結局、今、今度二十一世紀の社会の中で、やっぱり特許権、商標、これの著作権という問題が国際社会の中での様々な議論になるわけですよね。アメリカは憲法の中にこの著作権があって、しかも著作権というそのものについての物すごい大変なもう、私もびっくりしたんですけれども、著作権の対象及び範囲、定義からすれば、定義だけでこんなにたくさんある、こんなにたくさんある。(資料を示す)憲法の中にある一つの文章なんですよ、これ。それぐらい、これ、やかましくやっている。同じように、特許の問題でもアメリカは非常に厳しいんですよね。
 だから、日本人が考えてこれぐらいのものはいいんだろうと思ったやつがどんどん特許違反で摘発されて、ひどい目に遭わされているんでしょう。我が国は、先ほどアニメの話がありましたけれども、世界に誇るような様々な文化遺産を持っているんです、文化財産を持っているんですね。その文化財産をそれじゃこれからどうするかということでいくときに、今のようなことでいいんだろうかと。
 極端なこと言ったら、行政職の試験は著作権が全部分からぬと駄目よというぐらいせぬとこれから立ち行かぬと私は思うんですよ。ところが、著作権なんか何も知らぬでもちゃんと東京大学入れますし、それから行政職のあれにも通るでしょう、これもし何も知らぬでも。ところが、本当からいったら、行政をやる人は少なくともこういう国際社会の中で生きていくものだけの基礎知識は持っとらないかぬと私は思うんですね。そういう意味での取組というものが何よりも必要なんじゃないか。
 今度の改定は、どんどん時代が変わっていくことの先駆け、それの先触れみたいなもので、また更に一層複雑に入り組んでいくだろうと思うんですね。そういう意味で、これはもう時間がありませんから、最後に大臣の決意だけでいいですから、やっぱり私が思うのは、これを作るときの、昭和三十五、六年から始まった文部省内の論議、各政党内の論議。その当時は、今はもうぼろくそに言われている五五年体制ですよね、野党で大きいのが社会党ぐらいで、それも三分の一あったら限界ぐらいですよね、勢力が。共産党さん、数少なかった。民社党さんはちょっとおったけど。そのときに文部省がどんな苦労をしたかといったら、与党に行って、もうぶん殴られるような思いで文教部会で、まあここにぶん殴る立場の人がおったけれども、大変な、激励の方ですよ、激励。そういう大変な中で、野党にもいろいろ話しながら、著作権のこと一生懸命苦労して説明しなきゃいけない。
 だって、我々の時代は、私どものような戦前の教育を受けた者は著作権ってぴんとこないです、全く。ぴんとこない者が国会議員であの当時みんなおるわけですからね。その分からない者を当時の文部省はどんな苦労をしてやられたかと、私はそれを思い起こすんですよ。
 しかし、今、実は本当に今必要なのは今度は何かといったら、今の制度のままでもいいじゃないかと思っている、財界も含めてですよ、経済人も含めて、そして今、日本の中でいろんなリーダーの立場、指導的立場にある人たち全体含めて、この問題についての国としての訴えをきちっとしていかぬと勝てないんじゃないかという気がしてならないんですよね。そういう意味で、文部科学省ですから、科学技術の振興というものを、大変重要な役割ですけれども、こういうことを含めて文部省の仕事は物すごく重要になってくると思うんですよね。
 だから、ひとつ、残された時間、この前は中曽根文部大臣のときに、国民に向かってこれが徹底に広がるように頑張りますと、こう言ってもらったんだけれども、何かそういう決意を聞かしていただいて、私の質問を終わります。
○国務大臣(遠山敦子君) 今、新しい著作権法の制定の経緯についてお話しいただきましたが、私も文部省に、当時の文部省に入りまして、その経緯をるる横から、あるいは時に自分も担ぎながら経験いたしてまいりました者といたしましては、山本委員の大変そういうことについてまで御配慮の行き渡った御質問といいますか激励をいただきまして、本当にうれしく思うところでございます。それへのお礼がまず一つ。
 それから、最近は大変工夫が行き渡っておりまして、これ是非お読みいただきたいと思いますが、十分か二十分でごらんいただけば、著作権って何かというのがすぐ分かります。(資料を示す)しかも、著作権とか同一性保持権とか、そんな難しいことを言ったって頭に入らない人も、これを読めば、著作権って小説や音楽など文化的な作品をぱくりから守るための権利のことってこう書いてありまして、無断利用。およそそれは学校で、いろんな著作権侵害が起きますと、そのケースを全部取り上げて、ここで皆さん考えなさい、ここは著作権侵害ですというような、そこまでPRの精神が行き渡ってまいっております。
 これは今年できたものでございまして、今から使われるものでございます。これは、私は、これが各子供に行き渡るまでよりも、むしろ先生に行き渡らしてもらって、先生が、今、みんなコピー取ってこいと言うけれども、これは学校では許されるけれども、うちでは、どこどこでは駄目だよというたぐいの教育をしていただけば、直ちに今の子供たちは著作権の思想が分かるかと思います。
 そういったことのほかに、文部省といたしましては文化庁を中心といたしまして、文部科学省ですか、著作権学ぼうプロジェクトといたしまして、児童生徒から高齢者に至るまで広く多くの人々を対象として、それぞれのニーズに対応した総合的な教育事業、情報提供を実施していくことにいたしておりまして、これからはサイトをクリックすれば全部分かるというような時代に入ってまいると思います。
 中曽根大臣のころのように何か格調の高いあれではなかったかもしれませんけれども、決意を表明いたしまして、答弁に代えさせていただきます。
○委員長(橋本聖子君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 著作権法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(橋本聖子君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(橋本聖子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時十一分散会