詳細:http://ac-net.org/go/cstp/027-titeki-tokku.txt
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http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu20/siryo2.pdf より抜粋

知的特区について
                    平成1 4 年7 月2 4 日
                    科学技術政策担当大臣
                    総合科学技術会議有識者議員

1.目的
(略)

2.基本的考え方
((((特区の位置付けけ))))

一定期間後の全国展開を前提に、先導的に規制改革を実施する地域として特区
を設ける。したがって、個々の規制改革について、特に問題が生じないと認め
られるものは、全国に拡大して導入する。

((((対象となる規制制))))

対象となる規制は、地方公共団体等から要望のある事項を含め、科学技術の振
興に関連する、可能な限り幅広いものとする。

「規制改革推進3か年計画(改定)」に掲げられている規制改革や総合科学技
術会議において提言した科学技術システム改革等については、できる限り前倒
しで実施し、特に規制改革の進展が遅いものについては特区制度を活用する。
特に、大学の設置、内部管理等に係る規制については、国立大学の法人化を待
たず、できる限り前倒しで導入する。

((((特区の設置・運営営))))

特区の設置・運営に当たっては、地方公共団体の自主性を最大限尊重するとと
もに、個別の規制の特例措置については、地方公共団体が責任をもって実施す
ることとする。

3 想定される規制改革の具体的内容
(略)
4.今後の進め方
(略)

(別添)想定される規制改革の具体的内容

(1)共通的な事項

@ 大学等における教育研究活動の推進

優れた研究成果を次々と生み出すため、外国人も含めた様々な人材が世界中か
ら集まり、能力を最大限発揮できる自由で柔軟な環境をつくる。また、こうし
た環境を活かした人材教育を行い、次代の個性ある研究者の育成を図る。

(教育研究機関関連)

・大学等における教育機関設置基準の見直し

(省令等)

・IT技術を活用した遠隔授業を自由に行えるよう、遠隔授業に係る卒業要件
(修得すべき124単位のうち、遠隔授業による単位は60単位が上限)を撤廃す
る。

・大学等の設置にあたって、校地面積の1/2以上は大学自らが所有しなけれ
ばならない、校舎面積の3倍以上の校地面積を確保しなければならない等の基
準を撤廃し、例えば企業等から土地を借りて大学等を設置できるようにする。
等

・大学の学部・学科の設置・改組の認可制の撤廃

(法律等)

大学の判断で機動的に学部・学科の設置・改組をできるようにするため、認可
制を届出制にする。

・学校教育における英語の授業の自由化(運用)現在は、学校教育法における
教科書使用義務等のため、小中高において英語以外の教科の授業を英語で行う
ことがほとんどできないが、こうした制約をはずし英語による授業を自由に行
えるようにする。

・予算執行の柔軟化(運用)

国立大学や国の研究機関について、部局相互間や項目相互間の予算の移用・流
用、複数年度にわたる予算執行をより柔軟にできるようにし、研究費執行の自
由度を高める。等

(教育研究者関連)

・大学等における任期付教員の任用要件の撤廃等

(法律)

・任期付任用の対象となる職の制限(多様な人材の確保が特に求められる教育
研究組織の職、自ら研究目標を定めて行う助手の職等)を撤廃し、自由に教員
を任期付きで任用できるようにする。

・任期付教員を総定員法の定員枠から除外し、定員規模にかかわらず任用でき
るようにする。

・大学等への裁量労働制の導入(法律)

大学、国立の研究機関等の研究活動に関して裁量労働制を導入し、あらかじめ
決められている勤務時間に拘束されることなく、研究の進捗等にあわせて自由
に都合のよい時間に勤務できるようにする。

(外国人研究者関連)

・外国人研究者の任用の自由化(法律)

国立大学、研究機関の長等への外国人の任用を可能とする。国の研究機関と同
様に公立研究機関への外国人の任用を認める。

・外国人研究者の在留資格等の見直し(法律・省令)

・外国人研究者について、在留期間(3年又は1年)を延長し、一定の研究が
終了するまで在留できるようにする。

・在留資格要件(修士学位取得等又は10年以上の実務経験)を緩和し、高い
技術力を有する外国人研究者が我が国で研究できるようにする。

・「研究」の在留資格で、研究とともに研究に関連するベンチャー企業等の経
営等もできるようにする。等

・インターナショナルスクールに関する環境整備インターナショナルスクール
卒業者に対して大学受験資格を付与し、卒業生が自由に大学受験できる機会を
与えるようにする。

A 研究成果の実用化等産学官連携の推進

大学を核として自治体や企業が相互に連携して個性ある研究成果を創出し、大
学教員や研究者が中心となって自らの研究成果の実用化を図る。

・大学教員と企業・研究機関の兼業の弾力化(運用)営利企業の役員等との兼
業を学長等の判断により認め、より迅速にベンチャー企業等との兼業が行える
ようにする。

・大学等への裁量労働制の導入(法律)(再掲)大学、国立の研究機関等の研
究活動に関して裁量労働制を導入し、あらかじめ決められた勤務時間に拘束さ
れることなく必要な時間に兼業ができるようにする。

・地方公共団体から国立大学等国の機関に対する寄附金等の禁止の撤廃(法律・
政令)

以下のような措置をできるようにする。

・企業と大学の連携を推進するため、大学研究者が常駐して企業への技術相談
や大学研究室への橋渡しを行うためのオフィスを県で整備したが、私立大学に
対しては無償で貸し出すことができるものの、国立大学に対しては無償貸出が
できない。

・県から国立大学に対して研究委託を行う場合、研究費で購入した設備や、研
究により開発した機器について、大学側に無償で移転してより有効活用を図っ
てもらいたいにもかかわらず、こうした設備や機器を大学に無償で移転するこ
とができない。

・地域における産学官連携を推進するため、市町村の施設を利用して国立大学
のサテライトを誘致しようとしても、施設を無償で貸与することができない。

・基礎研究と産業を結びつけ、地域の産学官連携に寄与するため、国立大学に
大学院の専攻学科を新設し産学官クラスター形成の核となる教育研究センター
を研究開発施設の集積地区へ設置しようとしても、講座開設や施設・設備の支
援ができない。等

B ベンチャー・新産業創出促進

大学や研究機関の研究成果を産業に結びつけるため、ベンチャー企業等の活躍
の場を提供・確保するとともに、できるだけ自由な活動を可能とする。

・ベンチャー・研究開発型企業からの調達(運用)公的機関の調達にあたって、
創業間もないベンチャー企業であっても、その商品に競争力がある場合には、
過去の売上実績や自己資本額などと関係なく、技術力そのものを評価して調達
することができるようにする。

・大学・研究機関等の施設・設備等の企業等による利用促進(法律・政令・運
用)

・国立大学、研究機関等の敷地について、企業と共同研究を行う場合のみなら
ず、企業単独で研究を行う場合やインキュベーションを行う場合等も廉価使用
を認める。

・企業等が対価を払って施設等を使用する場合には研究結果の提供等の条件は
付さないことを徹底する。

・設備等の利用手続について簡素化を徹底する。等

(2)特定分野に関する事項

@ 医療環境の整備

国内外から人材の集積を図り、大学等の先端的研究を速やかに臨床につなげる
「橋渡し研究」(トランスレーショナル・リサーチ)を推進して、先端医療の
展開を図る。

(先端的な医療の推進)

・臨床研究における特定療養費の導入(告示)

治験以外の臨床研究(医薬品、医療用具の研究に当たらない細胞・遺伝子治療
等)を行う場合に、特定療養費制度の対象とし、これまで保険給付の対象となっ
ていない一般療養(診察料、入院基本料等)に係る部分について保険給付の対
象とする。

・高度先進医療制度の要件見直し(省令、通達)

保険給付を得て高度先進医療の実施が認められる医療機関の要件(原則として
300床以上の病床等)を見直し、高度な医療水準を有する医療機関により広
く高度先進医療の実施を認める。

・臨床修練制度の拡大(法律)

先端的な医療を推進するため、先端技術を持った外国人医師が我が国の医師を
指導する必要がある場合には、我が国で医療行為を行うことを認める。

・特定病床等の特例の見直し(省令)

特定病床の設置要件を緩和し、高度な医療等を行う新たな医療機関の設置を一
層容易にする。

A特定分野に関する事項としては、他に、再生可能エネルギー等の円滑な導入
(太陽光発電、バイオマスエネルギー、燃料電池等)や、社会・行政における
IT技術の導入による情報化の推進(遠隔医療等)等に係る規制改革が考えら
れる。
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 第20回総合科学技術会議議事要旨より抜粋
http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/giji/giji-si20.htm

(2)知的特区について

 第18回本会議において小泉総理より検討の指示のあった「知的特区」につ
いて、資料2に基づき、これまでの検討結果を井村議員から報告。

 今後、内閣官房において構造改革特区の具体化が図られる際に、本日示した
考え方が適切に実現されるよう、フォローアップを行っていくこととした。

 本議題に関する議員の意見は以下のとおり。

(片山議員)

 地方公共団体から国立大学等の国の機関に対する寄附金の禁止は規制ではな
い。大学の設置基準や労働力の規制等とは全然違う。国と地方の財政事情をきっ
ちり守るためにつくった規定で、国が持つべきものを負担転嫁をして地方に救
済させたり、負担させるのは困るという考え方である。

 これをもし日本中に広げると、地方から国が支出すべきものに金を出せとい
うことになり、地方財政は無茶苦茶になるし、財政秩序も無くなる。地方は弱
い。先生方があれこれやればと言えば、地方は支出しますということになるの
で、そうならないための歯止めである。

 ただ、そうは言っても、神戸市のような例があるので、政令で例外として認
める場合の基準を書いている。神戸市の場合には政令を直して追加しようと思
うが、特区だからこれを撤廃するなどということはできない。案件の内容で、
政令の緩和の基準に該当するものはできるだけ認めていくということである。
誘致で競争させるようなことをやると、これはかえって大変なことになる。

(井村議員)

 法律というのはすべて枠組みであり、それが決定されるときにはその枠組み
が必要であったと思うが、何十年か経つと状況が変わり、その中でいろいろと
不便が生じてきたときに、これこそ「規制」ではないかと私は考えている。

(片山議員)

 規制ではない。最適に当てはめるように必ず基準をつくっている。

(井村議員)

 例えば、大学設置基準は、最初は大学をつくるときにその品質保証を入り口
でやるべきだという方針であったが、最近はそれでは新しい分野がなかなか開
けないということで、現在文部科学省でもこれを検討していただいており、改
正する予定であると聞いている。

 現在、全国各地でいろいろな新しい産業を起こすための知的クラスターや産
業クラスターができており、そこでは地方自治体と大学等が共同してやらない
といけないので、そういうものに対してだけ規制緩和を我々は考えている。

(片山議員)

 私は、国が持つべきものは国が持ち、地方が持つべきものは地方が持つと言っ
ている。国が持つべきものを地方に負担転嫁させるのは困るということである。

 ただ、先生が言われるようないろいろな状況や問題があるので、それは政令
で緩和する基準をつくっている。その中で検討すると言っているのであって、
何でも国が持つものを地方が持てばいいということではない。例えば、共同で
実施するのであれば、共同化の方式を考えるとか、委託の方式を考えるとかい
ろんな知恵を出せると思う。地方公共団体もいろいろな言い方をする。先生に
はそう言うが、我々には別のことを言う。国と地方の財政をごちゃごちゃにし
たらいいということにはならない。

(井村議員)

 別にごちゃごちゃにしてほしいということではなく、一定の協力の下でやれ
るようにしていただきたいということである。

(片山議員)

 それについては知恵を出せばいいし、政令の基準の緩和も考えられる。一方
的に地方が金を出せというのではだめである。

(尾身議員)

 以前、今と同じ議論が行われたときに、総理から知的特区という考え方はど
うかというご発言があった。私どもは、地方公共団体からの意見、要望を踏ま
えて、そういう問題があるということを提起しているので、これから個別の知
的特区の中身を議論をしていく中で、今のテーマも取り上げていただきたい。

(片山議員)

 特区だからこの制限を全部撤廃するということではなくて、個別案件ごとに
適用しようと言っている。そのために政令の基準をつくっているので、特区の
中身によって個別案件で審査して判断していくべきだと思う。

(井村議員)

 今回、規制をいろいろ調べてみると法律や政令、省令によるもの、また運用
によるものなどがある。法律等の上では認められていても、実際には手続が極
めて繁雑であり、例えば中央省庁までいかないと認められないものもたくさん
ある。そうすると何か月もかかり、急いで研究をするのには向かないものもあ
るので、それぞれのレベルで検討をしていく必要があると思う。

(片山議員)

 手続の簡素化は我々も考えるが、基本的には今の仕分けで国が責任を持って
いる部分は国が出すということであり、それを地方に出せというところに問題
がある。

(小泉議長)

 運用にしても、法にしても、政令にしても、今まで出来なかったことを出来
るようにするということが特区の考え方なのだから、知恵を出し合って欲しい。

(片山議員)

 知恵を出すことは賛成。

(小泉議長)

 今まで出来なかったことをやるための特区だから、出来ない理由はたくさん
あるが、よく知恵を出して欲しい。

(遠山議員)

 知的特区を通じて、大学等における研究成果を活用して新産業創出に結び付
けるという知の循環を実現することは大変大事だと思う。文部科学省でも知的
クラスターや地域結集型共同研究等の施策を講じてきた地域から、知的特区に
ついていろいろな要望がきており、それを検討していきたいと思う。

 今、説明があった資料にも幾つか具体的な点が挙げられているが、既に緩和
の方向に向かっている、あるいは緩和されているものについての誤解があるの
で、実際に特区という形で認める場合にはよく精査をした上でやっていきたい
と思うので、よろしくお願いする。

(狩野議員代理)

 構造改革特区、あるいは知的特区構想については、科学技術の振興を始め、
地方公共団体の自発性を生かした地域づくりという観点からも重要であると考
えている。厚生労働省では昨日、構造改革特区についての考え方を公表してお
り、健康や安全の確保には特に留意しながら取り組んでいきたいと考えている。

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