民主的新学長の選出により、独法化に反対して二十一世紀初頭の自主的改革推進を! ―学長選挙にあたり北大の皆さんに訴えますー 北大の皆さん、新年おめでとうございます。二十一世紀の幕開けをそれぞれ感 慨あらたにお迎えのことと思います。 丹保学長の任期が二〇〇一年四月三十日で満了するため、次期学長候補者を選 ぶ選挙(以下、学長選挙)が二〇〇一年一月二十九日(月)に開始され、その 週内に決着します。今度の学長選挙は、投票所が各部局に分散すること、初日 投票日の翌日は十人にしぼられた候補者のプロフィール等を宣伝するため選挙 休止日になることなど、若干の選挙規定の変更があります。しかしそのような 細部の変更もさることながら、今度の学長選挙は以下に述べるような意味で特 別の意義があります。私たち北大教職員組合は、北大をめぐる現在の問題点と その解決方向をここに明らかにして、学長選挙の意義を皆さんに訴えます。 一、特別の意義ある学長選挙一 新学長はいうまでもなく二十一世紀初頭の北大の舵取りを担当しますが、北大 の現在と将来をめぐって難問が山積しています。特に国立大学の独立行政法人 化(独法化)問題は北大を含む全国立大学の、二十一世紀初頭のみならず二十 一世紀全体を規定する極めて重要な問題です。文部省の「調査検討会議」の審 議と関連して、新学長は就任早そうの時期に北大としての態度決定を迫られる ことになります。また研究・教育組織のあり方、教職員の定員削減や身分・待 遇問題、予算配分方式などさまざまな問題への対応が新学長の手に引き継がれ ます。山積する重大な諸問題に対処するため、新学長には大学運営に関する深 い洞察力と豊かな知性、そして高度な民主主義的感覚が要求されます。このよ うな新学長を選出する今回の選挙の意義は、過去にないほど大きなものがあり ます。 二、いささかの予断も許さない独法化問題二 一九九九年以降、国の行政改革の一環としてにわかに緊急の課題と化した国立 大学の独法化問題は、目下、文部省の「調査検討会議」で審議が行われていま すが、文部省は二〇〇一年度中にその結論を得て、二〇〇二年度には必要な法 的整備を行う予定であると伝えられています。だが二〇〇〇年夏期の「調査検 討会議」設置以降、この半年間の経過から判断すると、その結論の枠組みは独 立行政法人通則法そのものに基づくか、あるいはせいぜい通則法の部分的手直 し策を採用する可能性が非常に大きく、文部省は国立大学にとって最悪のシナ リオを描いていると見なければなりません。二十一世紀の国立大学のあり方を 決定する独法化問題は、いささかの予断も許さない状況下にあります。 三、北大は文部省の方針に従っているだけで良いのか (一)予算の運用、公開の問題予算の運用、公開の問題予算の運用、公開の問 題予算の運用、公開の問題独法化を先取りする具体的措置の一つが、競争原理 の導入です。それを推進するため二〇〇〇年度に、教育研究校費が教官当積算 校費・学生当積算校費から教育研究基盤校費(教官数積算分、学生数積算分、 大学分等)に変更されました。二〇〇〇年十二月の北大部局長会議において、 二〇〇一年度に、教育研究基盤校費(約六十九億円)の六十八%を占める大学 分等(約四十七億円)のうちから、その十五%(約七億五百万円)を北大内で 競争的経費として使用する案がWG より報告されました。だがWG は従来の 均等配分校費の意義をどのように総括して、部分的とはいえ競争的方式を導入 する結論に至ったのでしょうか。WG 報告書はこの点に全くといってよいほ どふれていませんが、これは重大な欠陥です。 校費配分方式のあり方は大学において最も重要な問題の一つです。したがって 丹保学長は残された在任期間、WG 報告書の全学的討議を提起すべきですし、 次期学長は実際の予算運用に当たって全学の意見を十分にくみ上げるべきです。 その際、大学の研究・教育とは本質的に矛盾する競争と効率化が、文部省の予 算措置を通じて強引に導入されつつある現状にどのように対処するのか、次期 学長の基本的態度が問われます。予算の問題ではその他に、水光熱費に充当し ていた教育研究特別経費が消滅した問題、部局・施設の運営にかかわるいくつ かの費目が減額された問題などがありますが、それらの復活に向けて北大はど れほど努力したでしょうか。二〇〇一年度以降、さらに多くの費目が減額され ることも十分に予想される折りから、文部省の行政措置の一つ一つに対して北 大の要求をもらさず伝える態度の積み重ねが非常に重要です。北大職組は、北 大でおよそ六億円にのぼるといわれる教育改善推進費(学長裁量経費、国立大 学全体で約二百十億円)の全面公開を丹保学長に申し入れましたが、学長はそ の公開を拒否しました。そのため学長に対して再度、公開要求しています。国 立大学の学長は大学予算の使途を公開して、大学構成員と国民に説明責任を果 たす義務があります。北大職組は次期学長にも学長裁量経費を含む大学財政の 公開を求めていきますので、次期学長は説明責任を果たさなければなりません。 (二) 定員削減、労働条件などの問題員削減、 一九六八年の定員削減開始以降、第九次定削までで北大ではすでに一〇〇〇人 あまりの定員が削減されました。部局増などによる定員増を差し引いてもおよ そ六〇〇人の純減です。そのためサービス残業に代表される職員の労働過重、 業務の外注による各種の問題発生、新規採用の抑制による職員の高齢化、定員 外職員の増加など、定員削減に伴う問題が数多く発生しています。それにもか かわらず北大当局は、二〇〇一年度から始まる第十次定削についても文部省か ら指示された削減数の消化に汲きゅうとなるだけで、北大の実情を政府・文部 省に、国民に訴える行動は何一つ行っていません。この問題についてもWG の検討と部局長会議、評議会での承認だけですから、学内世論を喚起する問 題提起は行われていません。 文部省の言いなりになっている状況と裏腹の関係にあるのが、職員の身分・待 遇問題の放置です。他省庁に比べて行政職職員の待遇改善の遅れは甚だしいも のがあります。また定員外職員が劣悪な労働条件に据え置かれているのも重大 な問題です。さらに、水産学部附属練習船「北星丸」が二〇〇二年三月末で廃 船になるため、その関係者二十人あまりの身分保障をどのように行うのか、北 大の真価が問われる大問題です。四、北大の自主的改革はどの程度、成果があ がっているのか四、北大の自主的改革はどの程度、成果があがっているのか四、 北大の自主的改革はどの程度、成果があがっているのか四、北大の自主的改革 はどの程度、成果があがっているのか 一九九四年度から開始された大学院重点化は、二〇〇〇年四月時点で完了しました。他方、大学院重点化と密接 に関連して教養部の解体が行われ、一九九五年四月に高等教育機能開発総合センターが発足しました。こうして全 学教育、学部一貫教育が開始され、また大学院重点化が行われましたが、むしろ新たな問題点が生じています。ほ とんどの研究科で大学院生が急増したにもかかわらず、教官数は基本的に変化していないので(第十次定削により 逆に減少する)、教官の負担感、多忙感が著しく高まっています。また部局によっては研究室のスペースが絶対的に 足りないため、大学院生の机が確保できないところもあります。 全学教育については、旧教養部時代の全学支援方式の問題点がどれほど改善されたのか虚心坦懐に検討すべきで す。文部省の指導で教養課程の内容が縮減され、十分な学問的興味や学習成熟を得ることなく学部専門教育を受け るため、教育の効果が不十分なまま進級してしまう状況が見られます。そのため学部学生の質的低下がささやかれ、 学部の教養化さらには大学院修士課程の学部化といわれる現象が生じています。 しかし教官サイドは大学院生の増加により負担が増えているので、そのしわ寄せを学部学生に対する教育軽減に 向けざるを得ません。二〇〇〇年十二月の部局長会議では、このような実情を是正するための方策として、北大の 十二学部を単一学部に再編する案や、九州大学と東京大学が二〇〇〇年度に実施したように研究と教育の制度的分 離を行って教官の研究遂行を保障する案などがWG から報告されました。だが、果たしてリベラル・アーツ(教養 教育)の不足、学部の教養化、修士課程の学部化、院生数の相対的過剰問題などに抜本的に対処し得る方策かどう かは疑問です。むしろ現状の問題点に対する緊急避難的対応に過ぎないというべきでしょう。また研究と教育は本 来的に分離できない関連性を持っているにもかかわらず、その制度的分離を安易に図る方策は、研究・教育の発展 を阻害する危険性をはらんでいるといわなければなりません。 五、新学長に求めるもの 以上に述べたことを踏まえて、新学長には次の諸点を望みたいと思います。 第一に、北大の運営に当たり学内論議を十分に行って民主主義を貫く姿勢を備 えていることです。出来るだけ広く構成員の意思を集約し、また構成員各層の 権利を擁護、発展させる基本的態度が重要です。 第二に、国立大学の独法化に対しては、北大の研究・教育を守り発展させる立 場から、毅然として反対の態度をとることです。通則法の適用に反対するのは もちろん、個別法や調整法などのような通則法の部分的手直し策についてもそ の危険性を見抜く洞察力を備えていることが重要です。そのためにも活発に学 内論議を提起して、そのうえで学内の世論を固めていく民主主義的感覚が求め られます。 第三に、独法化を先取りする形で次つぎと北大に押し寄せる文部省の大学政策 の危険性を認識して、その本質を北大の構成員に常に周知させ、そして構成員 の総意を基礎に、北大の自主的な管理運営の道を追求する基本的姿勢を持って いることです。特に競争的予算配分措置、予算の削減ないし締め付け、果てし ない定員削減などについては政府・文部省そして国民に向かって問題点をはっ きりと訴える勇気が求められます。 第四に、独法化とその先取り政策に対抗する気概を持って北大における研究・ 教育を自主的、民主的に発展させようとする姿勢を持っていることであり、そ の視点に立って全学教育、学部一貫教育及び重点化された大学院教育の問題点 を摘出し、正面から教育体制改善の方策を探る姿勢を保持していることです。 第五に、日の丸、君が代の押しつけや事務局庁舎屋上の日の丸掲揚を絶対に行 わないのは、構成員の思想・良心の自由を前提とする大学運営では当然のこと です。 第六に、大学財政の公開を含めて、北大の運営上、情報公開と透明性を確保す ること、学長選挙における現在の民主的投票方法を将来も堅持することなども 必須事項です。このような基本的態度と資質を備えた新学長を選出して、二十 一世紀初頭における北大の自主的改革を押し進めたいものです。 二〇〇一年一月 北海道大学教職員組合