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北海道新聞2001.10.20

新渡戸稲造の理想遠く 地域との交流企画まだ1件 北大「遠友学舎」
 北大の創立百二十五周年を記念して、研究者、学生と道民をつなぐ交流施設
「遠友学舎」が九月末、同大構内に完成した。明治時代、北大の前身の札幌農
学校教師だった新渡戸稲造が、地域住民に無償で学問を教えた「遠友夜学校」
の精神を受け継ごうと建設されたが、一般市民を対象にした「講座」は、今の
ところ年内に三回予定しているだけ。「地域と大学を結ぶ拠点」「市民との応
接間に」という理想の実現は、出だしで早くもつまずいた格好だ。

 「遠友学舎」は、北大一八条門の北側にあり、鉄筋コンクリート平屋四百三
十平方m。総工費は一億五千万円。人と人とのふれあいを重視しようと、大き
な会議室ではなく、十五人程度が入る談話室四室と五十人規模のラウンジなど、
こぢんまりとした施設にした。北大の同窓生らの寄付で建てたが、少なくとも
年間百万円の維持費がかかることから、建設後に国に寄付した。

 完成から約一カ月たったものの、肝心の「市民公開講座」は、三十日から始
まる須田力・教育学部教授の「遠友体育学級」だけ。十二月十八日まで三回行
われるが、これ以外の予定はない。

 建設計画発表からだと、すでに一年近くたつのに、交流計画が一件しかない
ことに、徳永正晴副学長は「教官らへのPR不足」と話す。「講座の企画担当
者を学内に設けたい」と言うが、それも「来年四月から」と完全に後手に回っ
ている。

 一方、ある北大幹部は「先生たちから、もっと積極的な取り組みがあるかと
思ったのだが」と漏らす。「国の将来担う人材を育てるため、一人でも多くの
人に教育の機会を提供する」という新渡戸の「大志」への思いは空振りの状態。
だが、教官の間からは「大学院重点化で院生が増え、研究や指導に忙しい。と
てもほかのことに手が回らない」「そもそも、まず建物ありきという発想に疑
問を感じる」との反論も出ている。

 徳永副学長は、教授、名誉教授のほか、大学院生らにも講座開講の協力を呼
び掛け、「内容は今後詰めるが、来年度は、さまざまな知的サービスを提供で
きると思う」と話している。