『北海道新聞』2001年1月26日付
29日に北大学長選、5候補中心に静かな選挙戦
任期満了に伴う北大学長選挙の一次選挙が、二十九日に行われる。学部の名
誉をかけ、事実上は五候補を中心に混戦模様だが、キャンパスにはポスターや
張り紙も目立たず、表面上は静かな戦い。農学部から複数候補が推されたり、
有権者が最も多い工学部では結束が弱いと言われ、各陣営ともお家の事情も垣
間見える。また今回は、国立大の独立行政法人化の問題もあり、初めて候補者
へのアンケートをインターネットで公開したり、公開討論会を開くなど、新た
な動きも出ている。
各推薦団体が推している候補の顔ぶれは、農学部から副学長の富田房男教授
と学部長の太田原高昭教授の二人、工学部から学部長の福迫尚一郎教授、前学
長ら二人の学長を出している医学部から阿部和厚教授、唯一の文系の法学部か
ら中村睦男教授。事実上、この五人の争いだ。
「五十一年ぶりに総長を出しましょう」。薄い緑色の封書に、大きな文字を
印刷したシール。中には、農学部教授を紹介するチラシが入っている。同学部
の教授を推す推薦団体が、学部内の教官全員に出したものだ。しかし、そんな
意気込みとは裏腹に、候補を一人に絞れ込めなかった。
有権者が全体の五分の一を占めて最も多い工学部は、選挙に有利と言われる
が、現在の学長を含め過去に二人しか選ばれていない。「研究分野は幅広く、
分野が違えば、横のつながりは薄い」(理系の教授)からだ。また、歯学部と
合わせると工学部と有権者が並ぶ医学部も「一枚岩になるのは難しい」という。
理系中心の政策に一矢報いようとする法学部も、有権者の九割近くが理系と
いう構成の中では苦戦を強いられ「五人の中に、抜きに出た人がおらず、決選
投票までもつれるのではないか」との見方が強い。
丹保憲仁学長が再選された二年前の前回は事実上の無風、六年前の前々回も
一騎打ちの様相が強く、これだけ多くの有力候補がいるのは最近では珍しい。
また、今回の学長選は、国立大の独立行政法人化の問題を焦点に、危機感を
持った教授らの有志が、候補者の主張を聞く公開討論会を開いたり、候補者へ
のアンケートをインターネットで公開するなど、新しい試みが行われた。
アンケートを企画した教授の一人は「みんな真剣に答えてくれて、有権者に
は一票を投じる十分な判断材料になったのではないか」と話し、北大の情報公
開の重要性を強調した。
【北大学長選】立候補制ではなく、講師以上(千四百十九人)による二十九
日の一次選挙で十人まで絞り込み、助手以上(二千百二十七人)による三十一
日の二次選挙で過半数を獲得した候補が学長になる。過半数を得た候補がいな
い場合、二月一日に上位三人による再選挙を行い、それでも過半数を獲得する
候補がいない場合、同二日に上位二人による決選投票を行う。選考される資格
のある人は、学内外を問わず大学教授経験者。任期は四年だが、再選の場合、
一回に限り二年だけ務めることができる。
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