Date: Wed, 23 May 2001 14:19:08 +0900 Subject: 5月18日全学座談会 記録 From: 服部 昭仁 To: hu-members 5月18日全学座談会 記録 北海道大学構成員各位 北大ネットワーク世話人 去る18日午後6時半から学術交流会館で開催された全学座談会は、8部局 (農・理・工・歯・獣医・医短・地環・北方生物圏センター)から19名が 集まり、北大ネットワーク世話人の一人である服部の司会の下で2時間余り 意見交換を行いました。北大での法人化問題検討WGでの議論の方向、国大 協の対応に対する評価等、「北大ネット」の運動のあり方に対する意見等、 様々な意見が出され、継続的な意見交換と多様な形態の運動の必要性が確認 されたと思います。その中での議論のいくつかを紹介します。 ---全学座談会 2001.5.18 記録----------------------------------------- [1]独立行政法人化問題概説(北大ネットワーク) 。 経緯・制度・文脈の説明と「意見交換のための問題提起4点」 配付資料: http://www.ac-net.org/home/hokudai/doc/01518-zadankai-shiryou.pdf [1-1](1)独立行政法人化の道を国立大学が進んで選んでよいのか? ・1999.4 の閣議決定では独立行政法人化の検討では「国大の自主性を尊重する」 ことになっている。 ・大学構成員の意思を確かめずに、部局長だけで議論を進めて良い問題か? ・(小泉首相をアイドル視するような)「世論」に受動的に従うのが大学のあ るべき姿か? ・ 大学はなぜ世論に反論しようとしないのか? [1-2](2)世論の中で耳を傾けるべき的確な大学批判はどれか? 以下の批判で、どれが的確で、どれが「木を見て森を見ない」批判か? ・大学受験競争が初等中等教育に与えている悪影響に無関心 ・国大教員が政府の政策を支えている ・アカデミックハラスメント、学生・院生の人権侵害 ・大学教育が機能していない。 (eg. 研究を優先し教育は手抜き、「十年一律の授業」、国際競争力がない、) ・「既得権益にあぐらをかく大学教授」,国立大学教授の官僚的姿勢 ・ その他 [1-3](3)国立大学関係者における民営化回避の論理はおかしくはないか? ・民営化回避のために、民営化の実質的準備となる独立行政法人化をしようとしてい る。 ・国立・私立の違いを議論することは出来ない(条件が違い過ぎるから) ・主張すべきこと:高等教育予算全体の増大・予算配分における行政指導を排 除・国公私が「対等」に。 [1-4](4)「文部科学省が示す方向に向けて自主的に改革をする」のではな く、改革の方向を自主的に呈示すべきではないか? ・ユネスコの「21世紀の高等教育に向けての世界宣言:展望と行動」をなぜ大学は 無視するのか? ---------------------------------------------------------------------- ◆太田原高昭氏(O)(農学研究科長、法人化問題検討WG委員)のご発言 O[2]1999年11月の農学部・農学研究科拡大教授会では「通則法による 独立行政法人化反対」を決議している。この内容の決議は全国でもこれが初め てであり、その後用いられるようになった。私は研究科長としてこの決議に縛 られている。 O[3]昨年5月の文部大臣挨拶は、文部省が独立行政法人化をする、と宣言し たもので、独立行政法人化問題に関するターニングポイントとなった。独立行 政法人化について賛否が割れ、分裂寸前だった国立大学協会は「調整法」作り に参加することで意見が一致した。調査検討会議には国立大学関係の委員が過 半数入っている。そういう場で国立大学は意見を主張できるようになったこと は大きな意義がある。 O[4]昨年6月に、どういう独立行政法人化にするか(公平な評価とは何かな ど)に問題はシフトしており、今は独立行政法人化の是非が問題ではない、と 考える。 O[5]問題提起(2)のような批判は調査検討会議で、数人の委員がくり返し 行っていると聞いているが、それに対し、国立大学関係の委員がきちんと反論 したかどうか、何度も照会しているが答えがないことが不満である。 O[6]国立大学協会の中間まとめは、国立大学の「要望書」的なものである。 調査検討会議の中間まとめは、これとほぼ同じものと予想される。 O[7]調査検討会議の報告を参考に政府部内意見調整をして作られる国立大学 法人法案は国立大学の要望をどこまで取り入れかは予断を許さない。しかし、 最終的に法案を認めるかどうか国立大学協会総会を開き議論し決めることになっ ている。その議論は、各大学での議論を踏まえてのことになる。 O[8]5月17日の評議会で出た法人化問題検討WG中間報告は、5月7日の国立 大学協会委員会の「中間まとめ案」とほぼ同じである。実際に、国立大学協会 の専門委員と、WGの委員とは密接に連絡を取り、議論を進めてきた。北大で の議論が、国立大学協会の中間まとめに取り入れられたものもある。 O[9]法人化したとき大学では経営ができないから、外部から人を入れよう、 という議論がある。しかし、法人化して経営ができないと予想されるなら、法 人化せずに国立大学のまま文部科学省に経営を引き続き委ねるべきではないか。 O[10]北大の部局長会議では、1昨年より独立行政法人化問題について議論を 重ねてきたが、その議論はWGには継承されておらず、東京の実働部隊をサポー トする論議しか行っていない。 F[10-1]WGの以前からの議論に参加している委員は少ないので、違和感がな いかも知れない。 O[11]学内に「運動」がないとWGの議論の流れは変らない。 TT[11-1]全学で議論を展開しない限り流れは変らない。WGで議論している 方々の中で実際に独立行政法人化を体験する人はほとんど居ないために、長期 的議論が行われないのではないか。 ---------------------------------------------------------------------- ◆藤田正一氏(F)(副学長、法人化問題検討WG副座長)から5月16日の 評議会でのWG中間報告の紹介(O:「国立大学協会特別委員会の中間まとめ (最後に添付[A-1])とほぼ同じ」)の他、以下のような意見があった。 F[12]副座長なため、意見を自由に言いにくいのが残念だ。 F[13]国立大学協会は、「独立行政法人通則法」がなくなっても自立するよう な「大学法人法」を目指している。 TS[14]:国大協としてはなんとか特例法によって独法化の骨抜きを狙ってい るのだとは思うが、今の議論では法律を殺すための法律を作ろうとしているよ うに見える。そんなこと(特例法で通則法を殺すなどということ)が法制度上、 許されるのだろうか? F[15]現在の議論の焦点は、学外者が大学にどこまで入るか、にある。 F[16]国立大学協会が調査検討会議から脱退して独立行政法人化反対を掲げ国 大に留まることを主張したとき、どうなるだろうか?単に、文部科学省が審議 会を作り、大学の意見を無視して、独立行政法人化よりも大学にとっても問題 が大きな法人化が実現するとしか思えない。 TT[17]国立大学に関する施策で国立大学協会が承認せず実施されたものは過 去に一つもない。他の審議会が大学の意見を無視して法人化案を作っても、国 立大学協会の反対を押し切って実現することは有りえないのではないか。 F[18]ユネスコ高等教育に関する世界会議「21世紀の高等教育に向けての世 界宣言:展望と行動」にある「倫理的・文化的・社会的問題に関し、責任を自 覚した上で、完全に独立した発言ができなければならない・・」というような 事を主張しても、WGの反応は鈍い」 TT[19:静岡大学の報告では「学生の大学運営への関与」について述べている F[20]:学生の運営への参加のような具体的なことでは、余り問題はないと 思うが、上のような理念的なことについては大学は受け入れない。 TS[20-1]:今は理念の話をしているのではないということで、理念を語るこ とを拒否されているのだと思う。こうやって理念を語る機会を奪われたまま、 話が進行していくのだろう。 F[21]:国立大学協会の中間まとめ[A-1]がもしも否定された時は、国立大学 は断固とした態度を取らなければならない。 TT[21-1]:しかし、[A-1] にある100近い「項目」の中の40程が満たさ れている時にどういう態度を取るのか、難しいと思う。こういう「要望書」の ような形式自身が問題なのではないか。 ◆「運動」について([10] に関連して) [22]:メールでの情報交換はバーチャルなもので、それだけでは運動は起 きないと思う。それぞれの研究室を訪ねるようなことが必要ではないか。 ST[23]:自分の所属している部局で、草の根的に議論を起こそうと、一念発 起して活動を始めてみたものの、構成員の方々に関心を持ってもらうのは、極 めて難しいということがわかった。各研究室を廻って、各人と議論していく以 外ないと思うが、そのような方法は現実的には難しい。今は一時期よりは、冷 めている状態である。 [24]:歯学部のアンケートは大きな意義があったと思う。 [25]:確かに、歯学研究科教授会では、この問題について議論することはない。 TT[26]:理学研究科教授会でも、この問題について発言しても議論にはならない。 F[27]:全学に向けて何度か意見を述べてきたが、獣医学研究科長としてすべ きことかどうか、部局内で批判はあった。 ◆その他 [28]:私は今でも独立行政法人化に反対だ。 ---------------------------------------------------------------------- [A-1] http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010517kidaikyou-0507wakugumi.html 国立大学法人化の枠組(検討案) 平成13年5月7日 国立大学協会・設置形態検討特別委員会 (以下略) ---------------------------------------------------------------------- なお、5月21日の国立大学協会設置形態検討特別委員会専門委員連絡会で配 られた「中間まとめ」は次にあります。5月7日の案[A-1]との違いは僅少です: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/521-kdk-shiryou.html ---全学座談会記録終---------------------------------------------- |