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受取日時:7 Nov 2001 12:50:53 +0900
発信者:辻下 徹
電子住所:tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
電話番号:3823
保存場所:http://www.ac-net.org/home/hokudai/doc/01b07-tjst-toi.html

To: nakamura
From: Toru Tsujishita
Subject: 10/29国大協意見書に関する質問状
Cc: hu-members

                         2001年11月7日

北海道大学学長 
中村 睦男 殿

CC:北海道大学構成員

 10月23日の北大ネットワーク公開質問状に対するご回答*0を拝見しまし
たが、その中で、国立大学協会が用意している意見書を妥当と考える、と述べ
ておられます。しかし、公開された国立大学協会意見書*1には、納得しがたい
点がありますので、北大ネットワークの一会員として以下の点について質問さ
せて頂きます。11月12日(月)までに回答を頂ければ幸いです。

なお、本日午後に部局長会議が予定されておりますが、法人化問題について、
実質的な議論をされて、来週の国立大学協会総会に臨まれますようお願い致し
ます。

北大ネットワーク会員
辻下 徹  内線3823 
tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
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                質問状


(1)大学の自治について

意見書項目5「中期目標の策定」において、中期目標を各大学が作成し文部科
学大臣が認可する方式を要望しています。その理由として、

「「認可」では、「申請」があって「認可」があるわけで、文部科学大臣が個
別大学の意志を全体的・部分的に認めたり否定したりするのであって、両者の
意思が反映される。その点が違う。」

と説明していますが、「文部科学省大臣が大学の意志を全体的・部分的に否定
する」ことを良しとすることが前提となっています。これは「大学の自治」を
明白に否定する考え方であると思いますが、大学自治を重視される中村学長が
10月29日の国立大学協会臨時総会でこの部分を問題にされなかった理由を
お聞かせください。


(2)非公務員身分と財政基盤との関係について

意見書は「全体のパイ(国費投入の総額)を現状より相当程度大きくすること」
を強調する一方で、非公務員型は移行時のフリクションを除けば評価できると
述べています。しかし、政府が法的に歳出を義務づけられている大学予算は人
件費だけです。非公務員型への移行は、大学財政の唯一の法的基盤を失うこと
を意味しますので、代替の法的基盤を提案することなしに非公務員型への移行
を容認することは、大学の財政基盤拡大の要求とは両立しないものと思います。

10月10日の第3回財政制度等審議会財政制度分科会歳出合理化部会及び財
政構造改革部会合同部会で、国立大学関係の予算合理化についての方針が述べ
られていますが、その中で、国立大学法人化と独立行政法人化とは財務的な違
いはなく歳出合理化の手段として活用したいという趣旨の説明がありました*2。
また、学部別・大学別学費の導入や学生納付金による国立大学施設整備の案も
述べられています。

こういった文教予算削減の財務省方針は堅固なものと思われますので、国民的
議論が沸き上がらない限り文部科学省の力だけでは如何ともしがたく、国立大
学法人化が国立大学予算削減を加速させることは不可避と思われます。

このような状況認識に立つとき、国立大学法人化移行を容認することは、高等
教育予算の大幅な縮小を法的に可能とし、学費値上げや大学統廃合等によって
大学進学機会を大幅に悪化させる科を伴うものではないでしょうか。

この問題について、中村学長のご認識を明らかにしてください。もしも、以上
に述べた状況認識と同様のお考えでしたら、国立大学法人への移行について傍
観する理由をお聞かせください。


(3)国立大学協会意見書作成過程についての疑問

国立大学協会の意見書は、設置形態検討特別委員会の専門委員が作成したもの
であるのに対し、10月中旬の北大評議会で配付され意見書案は、国立大学協
会理事会の将来構想ワーキンググループによるもの(以下、WG意見書案)と
聞いています。メンバーの5学長(佐々木東大学長・佐藤静岡大学長・吉川島
根大学長・鮎川愛媛大学長・池田長崎大学長)が調査検討会議に加わっていな
点で、WGは中間報告検討作業を先入観なしに行うのに専門委員連絡会よりは
適していると思われます。

実際、WG意見書案には、昨年6月の国立大学協会総会合意事項第四項を尊重
した「日本の高等教育の将来を議論し、文部科学省に提言・勧告する機関の設
置」という要求が含まれていました。この点は調査検討会議での議論では全く
欠如していたものです。国立大学協会の意見表明としては、より適切な面を持っ
ていたWG意見書がパブリックコメントとならなかった事情について御説明を
お願い致します。また、WG意見書を今後活かす予定があるかどうかについて
も御説明をお願い致します。


(4)北大からの意見表明がなかったことについて

北大あるいは北大の部局からパブリックコメントがあったということは今のと
ころ伝わっていません。しかし、本学では評議会法人化問題検討ワーキンググ
ループが4〜5月に集中的な検討作業を行っており、中間報告について北大独
自の見解をまとめることはできたはずです。大学が教育行政担当者に対し公的
に意見表明する数少ない機会を見送ったことは、大学の自主性・自律性を重視
する立場とは調和しないのではないでしょうか。この点について、どのように
お考えでしょうか。


(5)国立大学協会における北大の役割について

10月の評議会で、中村学長は、法人化問題については、北大から国立大学協
会に特には働きかけない、という趣旨の方針を述べられたと聞いております。
国立大学協会内では、法人化問題について多様な意見があり対立もあると聞い
ております。このような状況において、北海道大学が傍観することは適切なこ
とでしょうか。国立大学協会会員である北海道大学を代表して、学内の意見を
的確に把握し国立大学協会の議論に反映させる方針に変えて頂けないでしょう
か。この点について、どのようにお考えでしょうか。
(添付資料)
*0 北大ネット公開質問状(2001年10月23日)への中村学長のご回答

| これまで法人化問題に対する考えや意見は、部局長会議及び評議
|会の場でも説明してきたとおり、国立大学協会を通じて行ってまい
|りました。
|
| 文部科学省から出されたこのたびの中間報告に対し、国立大学協
|会会長が談話を発表するとともに、現在、同協会の理事会等におい
|ても、同報告に対する意見の取りまとめが行われています。
|
| 私としては、これら意見等の内容は、本学の法人化問題検討ワー
|キンググループでの検討の方向と基本的に相違はなく、妥当なもの
|と考えております。
|
| 今後も法人化問題に関しては、同協会を通じて対応していきたい
|と考えています。
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*1 「新しい『国立大学法人』像について(中間報告)」に対する意見
    http://zendaikyo.or.jp/dokuhouka/kokudaikyo/01-10-29iken.htm
(・・・ウェブ転載時に略・・・)
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*2 財政制度等審議会 財政制度分科会 歳出合理化部会及び財政構造改革部
会合同部会(第3回)議事録より抜粋
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/gijiroku/zaiseic131010.htm
*2a 国立大学関係の抜粋:
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/a10-zaiseishingikai.html

「国立大学法人化についての質疑 

質問〔渡辺恒雄(読売新聞社長)委員〕

「・・・・ところが、今度は国立大学法人という考え方で、独立行政法人との
違いということが書いてあるけれども、独立行政法人というものの概念は、そ
もそも独立採算である、企業会計原則を取り入れる、非官庁化を図る、国費の
負担を減らすというようなことであったんだけれども、これを読んでいると、
多少、学外の者を入れたり、第三者の評価を入れると、学長選挙なんかをどう
いうふうにするか、これも余り明確ではないけれども、そういうことだけで、
財務的には、やっぱり今までどおり、国の税金をたっぷりもらって、国立大学
の特権を享受していこうと、こういうことのように思えるんだけれども、もう
ちょっと財務的な面で独立行政法人と国立大学法人との考え方の違いを説明し
てもらいたいと思うんですが。」

回答〔桑原主計官〕

「財務的な面で、独立行政法人と国立大学法人について、財務というところで、
特に国立大学法人だから違ってくるというようなことはないと思います。

 ただ、国立大学法人という新たな形態をつくるわけですから、そこについて、
一体どういう財務体系にしていくかということは、新たには議論できると思い
ます。
 ・・・・
 そこで、結局、運営費交付金の、話になると思います。独立行政法人におい
ても、運営費交付金というのは、やはり今出しております。国立大学法人につ
きましても、これは国立学校から国立大学法人になったからといって、すべて
国庫の負担をなくすことができるかというと、それは、現実的ではないと思い
ます。そこで、ある一定の運営費交付金というものを、独立行政法人と同じよ
うな形で出すことになろうと思いますけれども、ここからは、実はやはり運営
の話になって、実際の運営費交付金の算定の仕方、それから、その後のまた運
営費交付金をどう出していくのかという実際の問題になっていくんだと思いま
す。
 そこで、結局、一生懸命努力したところについては、ある程度インセンティ
ブは必要ですけれども、要するに、運営費交付金というのは、最後のしりを単
に垂れ流すのではなくて、もうこれだけしか、あなたにはあげませんよと、基
本的には固定でやって、あとは自由にしなさいという制度でございますので、
そういうところを突破口にして、財政負担をできるだけ縮小するような方向で
運営はしていきたいということでございますけれども、制度的に、今よりずっ
と減らせる制度にできるかどうかというと、なかなかそこは難しいと思います。
 ですから、とりあえず運営費交付金という形をつくらざるを得ないとは思い
ますけれども、それを一体どういう形で、どういう額で出していくのかという
ところが、今後の勝負になってくるのだと思います。それについては、今後の
議論でございます。」

〔渡辺委員〕「 国の負担も余り変わらんし、悪いことには、学長とか学部長
を選挙する制度ぐらい悪いものはないと思っているんだけれども、その方向に、
さらにそれを固めようというのには反対であることだけ、ちょっとつけ加えて
おきます。」

以下は文教予算に関連する桑原主計官の合理化方針説明から抜粋、数字は*2a
における行番号

○育英事業

127 「もう1つのポイントがございまして、教育・研究職の返還免除制度とい
うものがございます。・・・これにつきましても、若手研究者の確保という政
策目標があるのでしょうが、その達成手段として、果たして適当なのか。それ
で、(参考)に書きましたように、別途、日本学術振興会で特別研究員制度み
たいなものがございまして、ドクターコースの人たちに研究奨励費というもの
を支給している。これを相当伸ばしてきておるということも踏まえて、廃止の
方向で検討すべきではないかと考えております。」

144 「育英奨学事業のところの3つのポイントで、無利子奨学金の絞込み、そ
れから大学院返還免除制度の廃止、それから高校奨学金の地方移管、3つとも、
実は行革推進事務局が8月に出しました指摘事項にも入っておりまして、・・・」

○国立大学授業料・入学金

194 「国立はすべて、文科系も理科系も医歯系も1本、一律の授業料、入学料
でございます。この辺も、どう考えていくのかというのが議論になろうかと思
います。」


○国立大学施設整備 198

219 「施設整備に充てられるような学生納付金の相当程度の引上げを、今回検
討すべきではないかなと考えております。」

○国立大学関係まとめ

 251 「以上を大体まとめますと、国立学校、受益者負担の徹底及び自己財源
の充実、特に、先ほど見ていただきました「国立大学等施設緊急5か年計画」
等を踏まえた施設整備等に充てるための学生納付金の増額や、学校財産処分収
入の一層の確保等が1つのポイントかなと。」

 257 「国立大学の法人化に向けて、市場原理、競争原理の徹底等による自律
化・自立化の推進をしていく必要があろうかと。必ずしも14年度は、大学別と
いうのは、今の状況ではちょっと無理だとは思いますけれども、行く行くは大
学別、学部別授業料の導入が必要になってくるであろうと。それから、競争的、
重点的資金配分、事務組織等の合理化の徹底、これらを議論していきたいなと
考えております。」

○ 科学技術  

408 「そういうことも受けまして、私ども、予算編成をしていく中でも、今申
しました重点4分野へ優先的な配分をすると。重点4分野の中でも、さらにめ
りはりをつけていく。それから、大規模プロジェクトにつきましては、必要性、
緊急性、費用対効果等を十分に検討する必要があると考えておりまして、特に
新規着手については慎重に対処してまいりたいと。」


415 「大きな柱の2つ目としては、先ほど申しましたように、競争的資金を拡
充していく一方で、1人当たりという、いわば平板的な配分の仕方をしておる
基盤的経費については、抑制していきたいと。あとは、先ほど申しました評価
の徹底を図っていきたい、こういう方針で臨んでいきたいと思います。」

---以上 桑原主計官の説明--