==> 法人化問題検討WG
北大法人化問題検討WG第一回別紙資料4 2001/3/28

憲法上の大学の自治について.


 1 【意義】
 2 日本国憲法は大学の自治を明文で規定していないが、学問の自由と大学の自治
 3 が密接不可分の関係にあることに照らし、大学の自治は、学問の自由を謳う憲
 4 法28条によって保障されていると考えられている。なお、大学の自治は学問の
 5 自由を保障するための客観的rな制度の保障であって、それ自身が人権である
 6 わけではない。大学の自治を制度的保障と捉えることの意義は、第一に、大学
 7 の自治は学問の自由から独立して存在するものではなく、学問の自由の保障に
 8 とって必要不可欠な制度としてのみ存在していること、第二に、大学の自治の
 9 具体的内容は法律によって規律されうるが、当該制度を廃止したり、その本質
10 的内容に及ぶ制約を加えることは許されないこと、である。
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12 【内容】
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14 憲法上の概念としての大学の自治の内容としては、(1)学長・教授その他の教
15 員・研究者の人事、(2)大学の施設の管理、(3)学生の管理、(4)研究教育の内
16 容及び方法の自主的決定、(5)財政自治権、を拳げる学説が多い。これらのう
17 ち、(1)が大学の自治の核心ないし本質的内容であることは疑いがなく、最高
18 裁の判例においても認められている。
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20 実際の大学制度を見ると、大学教員の人事については、法令で教員の資格が定
21 められている(学教8条、大学設置基準14-17条)だけで、大学が自主的に決定
22 できる(教公特4-12条)。また、研究教育の内容及び方法についても、教育に
23 関しては「教育課程」(大学設置基準19−26条)、「卒業の要件等」(同27−
24 33条)が定められているほか、大学が自主的に決定できることとされている。
25 それ以外については、第一に、国立大学は組織上行政機関の一部(文部科学省
26 の施設等機関)であり、内部組織の自由な設置・改廃は認められておらず、そ
27 のためには法令の変更を要する。第二に、定員には総定員法の枠がはめられて
28 おり、教員や事務職員は文部科学省の職員であって、任命権は(教員について
29 は形式的なものにとどまるとしても)文部科学大臣に属する。第三に、大学の
30 予算は、原則として国立学校特別会計によって一元管理され、個々の大学は予
31 算要求を行う「省内一部局」という扱いになっている。第四に、施設・設備・
32 知的財産権(個人帰属分を除く)も国有財産であり、大学による自由な処分は
33 許されていない。これらの法令上の定めの他、文部科学省等による法令解釈権
34 および予算配分権をもとにした日常的指導監督もある。
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36 こうしてみると、現状においても自治の内容として確保されているといいうる
37 のは、主として教員の人事権であり、その人事権を担ってきた学部教授会が大
38 学の自治の主体であるとされているのにも理由がないわけではない。
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40 なお、近時、例えば「開かれた大学自治」とか「貢献する大学自治」などの言
41 説が見られるが、これらは憲法ないし法的概念というより、理念ないし社会行
42 動準則を語っているものといえよう。
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44 【主体】
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46 自治の主体については、大正2年の京大沢柳事件において教員人事に関する教
47 授会の自治権が確立したという伝統もあり、前述のように、学部(研究科)教
48 授会の自治を中心に据える考え方が強いといえる。一方、大学そのものが自治
49 の主体であるとする見解もあり、その典型は、日本私立大学連盟・私立大学管
50 理運営問題研究会の「法人の理事会と大学の学部長会・評議会・教授会などを
51 含めた大学の自治」という表現などに見られる。この見解を支持する学説によ
52 れば、この考え方は国立・私立を問わず妥当するとされる。後者の考え方を採っ
53 た場合は、学部教授会の権限を限定しても、評議会などの他の大学機関がそれ
54 を補うことによって、大学全体として自治を確保することができるという考え
55 方が成り立つ余地がある。
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57 要点は、いずれが排他的に正しいかではなく、大学の自治の内容に何が含まれ
58 ると考えるべきか、そしてそれらの事柄のうち、学部教受会の自主的決定に委
59 ねるべき事項と総長(および評議会による)全学的決定になじむ事項をどのよ
60 うに仕分けすべきか、というこ
61  とであるように思われる。