2001年4月11日
法人化間題検討WG
目標と評価について
中村研一作成
「中期目標」「中期計面」「評価」は、法人化の検討の各論のなかで、現行制
度に比べて、国の関与のありかたが制度的に大きく変化する問題である.また、
この「中期目標」「中期計画」「評価」は、独立行攻法入制度の中核であり、
かつ、それをはたして国立大学の特性にふさわしい形で運用することが可能か
否かを熟慮して見極める必要がある課題である.そのため、自由に検討いただ
けるよう、今回はあえて「検討の方向」を示さず、判断の素材をてきるだけそ
のままの形て整理することにした.
1. 目標・評価の一般論的な考え方
「目標」・「評価」の意味は、一般論として、次のようなものではないか.
1)国立大学は、国が法令によって設置され、主に国の税金を資金として運営
される。また、法人化した場合には、国より国立大学に対して一定の権限が移
行し、また、運営交付金など国費の自由度が高まることになろう.そこで行な
われる大学の活動および資金の使用に対して、国立大学はより強い透明性と説
明責任が生じることになる。
2)国が予算支出を行なう基礎とし、また、国費などの使途の透明性と説明責
任を担保するための制度が必要となる.国立大学が、合意した「目標」のもと
に、「目標」の実現のための「計画」を定めて活動を展開し、一定期間後、そ
の活動の結果に対して国などから「評価」を受ける「目標・評価」システムは、
有効であると考えられる。
3)また「評価」は、「計画」が実施された状況に対する事後チェックシステ
ムとして位置付けられ、また「評価」によって、その後の国立大学の活動の改
善をもたらす性格を持つ必要がある.
2. 法人化において「中期目標」「中期計画」「評価」が外せない理由
1)制度の概要:問題となる独立行政法人制度はどのようなものか、整理する。
もしも独立行政法人通則法がそのまま適用されるならば、(1)主務大臣による
「中期目標」の指示・公表、(2)各法人の「中期計画」の作成と主務大臣の認
可、(3)各法人による年度計画の届出、の3つの手続きによって独立行政法人の
業務目標・計画が明示され、同時に予算枠組みが定められる.
そして5年後に、(4)主務省評価委員会(文部科学省の場合、今のところ5つの
部会が置かれることになる.教育・研究については「大学評価・学位授与機構」
の評価を踏まえることは後述。)、(5)総務省評価委員会、による評価が実施
される。その評価の結果は、運営交付金の配分に反映され、また総務省評価委
員会は当該機関の改廃を勧告する権限を有している。
このような独立行政法人通則法の定める「中期計画」「中期目標」「評価」は、
国立大学に直接に適用される場合には、現行制度からの大幅な変更になる.ま
た、独立行政法人通則法という枠組みと国立大学の間には、矛盾と問題がある。
にもかかわらず、この「中期計画」「中期目標」「評価」という制度は、その
外形を外すことが極めて困難と考えられる.その根拠を以下に述ぺる.
2)総務庁・財務省など:総務省・中央省庁等改革推進本部、および財務省は、
「中期目標」「中期計画」「評価」を独立行政法人制度の根幹と位置付けてい
る。(総務省高官の発言などは、第一回WGの議事要旨参照。)反対に、「中
期目標」「中期計画」「評価」が外れると、それは独立行攻法人制度の枠外と
なると判断している.
3)文部科学省の基本スタンス:文部科学省は、国立大学を独立行攻法人化す
るが、しかし、それを国立大学法人法によって、国立大学の特性にふさわしい
ように部分修正する、という方針である.1999年9月20日、国立大学学長に対
して、文部省は、「文部大臣説明」と「国立大学の独立行政法人化の検討の方
向」を表明したが、それは、なにより、国立大学の設置者である文部大臣およ
び文部省が、国立大学を独立行政法人化する法案を準備する、そしてそのため
検討を開始する、という方針の表明であった。.(文部(科学)省が、独立行
政法人制度の中核として「中期目標」などを位置付けている点は、以下3参照.
また同時に、それを部分修正するとしている点は、4参照.
4)別個の立法が必要:国立大学が、「中期目標」「中期計画」「評価」をは
すしたいと考える場合は、独立行政法人制度からまったく離れ、別個に法案を
準備し、立法する必要が生じる.国立大学の設置者であり、国立大学法人法案
を準備する主務省である文部科学省は、上記3)のような立場である.
5)別個の立法は可能か:与党の中にも、野党にも、「中期目標」「中期計画」
「評価」に関し、国立大学の意向をより反映し、国立大学に都合の良いようよ
うな国立大学法人法を立法すべきてあるという意見は、極めて弱い。(橋本龍
太郎「200日計画」は、独立行政法人が柱の一つ.民主党は、文部科学省の一
部廃止・国立大学廃止に近い)また調査検討会議でも、第一回本WGて報告し
たように、独立行政法人通則法を完全に離れた立法形熊とするという意見は、
小数意見である。
6)国立大学協会:国立大学協会の設置形態検討特別委員会、同専門委員会、
第8常置委員会などの議事録を見ると、「中期目標」「中期計画」「評価」を
外そうとしたり、独立行政法人通則法と別個の立法形態をとるべきであるとい
う意見は、多くない.
7)作業委:目標評価専門委員会作業委の作成した「「中期目標」の論点整理」
(2001年2月21日)は、「中期目標・中期計画という用語は適切でない」とい
う意見と、「中期目標・中期計画は、独立行政法人通則法の基本てある.形式
的でも残したほうがよい」という意見を対置している。その結論では、「検討
の方向」として「名称として中期目標・中期計画とする。」という方針を打ち
出している。「この方針でいこうよ」(奥野名大副総長)とのご意見であった.
8)小括:以上より、事ここに至って、なお「別個の立法を」と要求すること
には意味は見いだせないと考える.
3 文部(科学)省における「中期目標」「中期計画」
「評価」の位置付けとその部分的修正
文部科学省は、「国立大学の独立行政法人化の検討の方向」などで、「中期目
標」「中期計画」「評価」を以下のように位置付ける。
1)事後チェックへの重点移動:「検討の方向」は、「独立行政法人制度は、
原則として、国の事前関与・統制を極カ排し、事後チェックへの重点移動を図
る」制度と意味付け、国立大学法人の「自主性・自律性を高める」もの、と見
る.
2)最小限の関与:文部(科学)省の「検討の方向」によれば、国の公的機関
として設置され、「公財政支出によって支えられることに伴う国による最小限
の関与は避けられず」、そのような関与(の一部)として「中期目標」「中期
計画」「評価」を認識する。そしてこの制度を文部(科学)省として解釈して、
次の3)〜6)の4点に、「留意が必要」としている。
(1)「主務大臣による「中期目標」の「指示」、「中期計画」の「認可」は、唯
一の事前関与システムである.」
(2)「主務大臣による「中期計画」の認可は、予算の弾カ的な運用が認められ
る前提条件と解される」と留意している.
(3)「主務省におかれる評価委員会による「評価は、事後チェックの中核的シ
ステムてある。」
(4)「中期目標終了時における主務大臣による検討は、行政責任を負う主務大
臣としての事後チェックである。」
要するに、これらの4点は、他省の認識でもあり、また文部科学省としても大
枠として外すわけにはいかないでしょう、と言っているのである。
3)「部分調整」の必要性の承認:このように「検討の方向」は、「中期目標」
「中期計画」「評価」を独立行政法人制度を大枠として活用する方針を示して
いる.しかしながら、その他方で、通則法の枠組みが大学に適合しないことを
認め、大学自身の判断・意見が反映される形での一定の制度修正を求めている.
「部分修正」の必要性は、文部科学省自身の判断である点は注意しておく必要
がある。文部科学省の方針は、国立大学の教育研究の特性に由来する基本的要
請と独立行政法人制度の基本的枠組みとの間を調整するために「調整法または
特例法」を定める、ことてある.そして現在、独立行政法人通則法の特例法と
しての「国立大学法人法(仮称)」の検討・準備を行ない、調査検討会議や国
立大学協会、そして本WGが「中期目標」「中期計画」「評価」を検討している、
という文脈になる.ただし、他の修正や調整の課題と比較して、「中期目標」
「中期計画」「評価」は、修正余地が大きくなく、また、前例や慣行が成立し
ていないため、とくに熟慮すべき問題なのである.
「検討の方向」が必要と認めている「中期目標」「中期計画」「評価」に関す
る主な修正点は、以下の通り。
(1)「文部大臣説明」は、「中期目標」「中期計画」「評価」について、大学の
教育研究の特性を踏まえた幅広い検討が必要である、と認めている.
(2)「検討の方向」は、「「中期目標」が各大学の教育研究の長期的展望の下に
設定されるよう配慮すべきてある」としている。
(3)「文部科学大臣が「中期目標」を定める際には、大学の教育研究の自主性・
自律性を担保するために、大臣は各大学からの事前の意見聴取義務を負う」と
している.
(4)「主務省に置かれる評価委員会による「中期目標」の設定、「中期計画」
の認可にあたり、教育研究にかかる事項の評価に際しては、第三者評価機関で
ある「大学評価・学位授与機構」の専門的な評価を踏まえて意見を表明すべき
もの」としている.
(5)「大学の教育研究が非定量的な性格を有し、また経済的な効率性に必ずし
もなじまない点を考慮して、「中期目標」の内容を検討する」としている.
4)小括:このように、文部科学省は「中期目標」「中期計画」「評価」の大
枠を守りながら、必要な部分修正参正を認めるという基本的立場をとっている
が、この(1)〜(5)の修正だけて十分なのか、を検討しなければならない。
4 原則上の批判など一一東大「国立大学の法人化について」
「長尾試案B」などを素材にして
しかし「中期目標」「中期計画」「評価」に対して、基本的な考え方のレべル
て修正が必要になる.その考え方とは、国立大学が、大学の特性から、自ら企
面立案し、自ら評価することを組織の原則としており、そのように認められて
きた、ということてある.言い換えれば、国立大学と主務大臣の両者が企面立
案を行なう点て、国立大学は他の独立行政法人とは異なっている.その点を明
確た指摘した東大「国立大学の法人化について」は、国立大学の立場を鮮明に
打ち出し、国立大学の企面立案は大学何が行い、主務大臣はそれに「関与」す
るという構成をとっている.ここでは主務大臣側の企画立案は、どのように位
置付けられるか明らかてないが、国立大学何の主張を強く打ち出した例として
紹介しておく。
1)大学による企画立案:「(独立行政法人制度は、企画立案とは切り離され
た)実施機能をになうものとされる独立行政法人の業務運営の効率化を念頭に
らいて構築されたものである。しかるに国立大学法人は、教育研究について自
ら企画立案した上これを実施する機能を有し、また効率化は目標の一部にすぎ
す教育研究の質を高める.ことを、はるかに高次の目標としなければならない.」)
2)中期目標の設定:このように、:国立大学が自らの企画立案を行なうこと
を原則とすると、独立行政法人通則法の定める、「主務大臣が目標を設定し、
それを独立行政法人に指示する」という一方的指示は、国立大学には不適当と
いうことになる.それでは、文部科学省の部分修正案(「文部科学大臣が「中
期目標」を定める際には、大学の教育研究の自主性・自律性を担保するために、
大臣は各大学からの事前の意見聴取義務を負う」)はどの評価されるか.東大
「国立大学の法人化について」は、次のように述べる.「中期目標を定める際、
各大学から事前に意見を聴取する義務を負うこと等、一定の配慮をしている」
が、しかし、「他律的な目標設定は、大学の企画立案を主務大臣に委譲するこ
とになり、大学の本質を損なう」のであり、「(この部分修正も)文部大臣が
設定し指示する」原則は変更しておらず、事柄の本質の理解が欠如していると
いわざるをえない。」
3)国の関与の一形態としての中期目標:このように国立大学が企画立案を自
ら行なうことは、しかし、主務大臣の企画立案を否定するものでない。また、
国立大学の企画立案に関する国の関与を否定するものてはない。実際、文部科
学省は、研究と高等教育上の企画立案を行ない、国立大学に関与し、それに対
し意見表明や勧告を行なってきている。このように、大学の企画立案と文部科
学省の企画立案の2つが併存し、その間の調整と協議が必要なことは、従来と
変わらない。ただし、そのような国の関与の一部が、「中期目標」「中期計画」
「評価」という定型・仕組みを与えられることになる.ここで問題は、その2
つの併存と両者の調整と協議を、どのような原則からとらえるかである。それ
を東大「国立大学の法人化について」は、もっぱら国立大学の立場から次のよ
うに述べる.
「もとより国立大学法人が国により設置され維持される限りにおいいて、活動
目標の設定において国、具体的には主務大臣が関与しないことはありえない。
しかし、関与の仕方としては、各国立大学法人に一方的に目標を指示するとい
うではなく、国立大学法人の設定しようとする目標について大学の設置者とし
て要請すべきとことは要請するということであり、そのために国立大学法人は
目標の設定については主務大臣との協議を経なければならず、双方の合意に基
づいて目標が設定されることになる仕組みをとるべきである.」
要するに、この東大案は、中期目標の設定はもっぱら国立大学法人の企画立案
行為として位置付け、その過程に関与する国との間で協議と合意が必要である
という構成をとっている。ただし、文部科学大臣の企画立案については、ここ
では位置付けられておらず、その点て、独立行政法人制度の枠組みに適合する
解釈か否かは不明てある.
4)「中期計画」:中期計画の内容に何を盛り込むかは、制度設計上、重要な
判断となる.その点に関し、東大「国立大学の法人化について」は、「中期計
画」の項目として、次の2つに言及しているが、このうち(1)は限定主義を示
唆し、(2)ば網羅的包括的である可能性を残している.
(1)「その計画の妥当性を示すとともに説明責任と透明性を確保するための必
要十分な範囲に設定されれば足りる。」
(2)「「活動計画」は、機能的には予算作成の基礎として利用される側面を持つ.」
5)「活動計画」の見直し」:国立大学法人から主務大臣への届出によって可能に
すべきてある、という点が多致の意見である.
6)「改廃の勧告」:もう1つの重要な変更点は、文部科学省、総務省に評価
委員会におかれ、それらが「意見表明」「勧告」などの権限を有すると規定さ
れたことである.たとえば、「総務省に、独立行政法人の事業の主要な事務及
び事業の改廃の勧告等を行なう委員会を置く」(中央省庁等改革基本法」39条)
と規定されている。この「改廃」の条文をそのまま国立大学に適用することは
問題ではないのか、との指摘が、国立大学協会などでなされている.また、
「改廃の勧告」(総務省)、および「改善の勧告」「意見表明」(文部科学省)
などの勧告は、発表の仕方などによって包括的な意味を帯び、あるいは政策の
優先順位付けに影響することがありえるものと、考えられる.
その点について、「長尾試案B」は、II 7)「総務省評価委員会による、国立
大学法人の改廃に関する勧告については、例えば「大学評議会」のような組織
を学術会議などに設置し、そこでの決定を踏まえることとするなどの手続きを
求めることが大事である。」と述べ、なんらかの形の協議や調整の可能性を示
唆している.ただし、そのような「大学評議会」が設置できるか否かの実効性
については、大いに疑問がある.また、II 5)で「大学評価委員会は評価結果
を決定公表する前に、その結果を大学に示し、異議などの申し立てを聞き、必
要に応じて修正する過程を経なければならない」としている。
5 評価の問題点一一「大阪大学国立大学法人化問題中間報告」(3月21日)
1)評価者:評価については、主務官庁および大学評価機関による評価内容を
考えるうえで、評価者のありかたが最も重要となろう.そして評価者の選択、
評価委員会の構成、評価のプロセス、評価の資源配分への反映の仕方など、多
くの問題がある、それを検討する必要性が指摘されている。「長尾試案B」は、
II 6)「大学評価委員会は、評価の項目、基準、方法、プロセスなどについて、
公平で透明な評価の実施に努める」とし、評価委員に「大学の教育研究に深い
知見を有するものを選任することとする」としている.ただし、どのようにそ
のような評価者を選び、どのように「公平と透明」を確保するについて、言及
はない。
2)「厳密な評価」:東大「国立大学の法人化について」は、「厳密な評価」
という立場をとる。そこでいう「効率化の目標を設定し、その達成度で評価を
行なう単純な図式をもってしては、高等教育や学術研究の真の活性化を期待す
ることはてきない.」という言葉は我々も合意できよう.この場合、東大は
「事後チェックとして厳密な「評価」がおこなわれる」ことを前提としている.
そして、「国立大学の活動が多様てある以上、評価も多元的であるべきてあり、
独立行政法人通則法とは別の評価のシステムが必要である」とし、つぎのよう
な、「厳密な評価」のシステムを提案している.
(1)基本的内容の評価:基盤的な教育研究費の配分に重要な意味を有する重層的な評価
(2)達成度評価:提示した目標ごとの達成度評価
(3)多座標軸評価:教育・研究・管理運営は座標軸を変えて評価すべきてある.
(4)多元的評価:大学評価・学位授与機構以外の多くの評価システムの構築
(5)目的としての「教育研究の改善」:経営効率のみを目標としない.
(6)資源配分への活用:評価によって資源配分すべきである
3)「厳密な評価」ヘの疑い:しかるに「大阪大学国立大学法人化問題中問報
告」(3月21日)は、現在進行している「評価」という作業が混乱し、試行錯
誤的に行なわれている作業現場を重視しており、より参考になる.そこで阪大
「中間報告」から、重要と思われる指摘を抜き書きする。
(1)「(大学評価)機構による評価について問題があるとすれば、あらゆる機会
を捉え、それを指摘すべきであろう。」(大学「評価」なるものは、完成した
ものでない.)
(2)「大学評価には、評価する方も評価される方も、極めて多くの時間と労カ
が要求される.そうしたことに忙殺され、大学が生気を失い、本来行なうべき
教育研究がおろそかになる事態は避けなければならない.評価の方法や内容は、
できるだけ簡便なものでなけれぱならない。」(「厳密な評価」は望ましいが、
その追求はコストとのバランスの上で考える必要がある.)
(3)「評価項目の設定にあたっては、(学内の評価項目と)大学評価機構の要
求する「自己評価」項目を、てきるだけ整合的にしておくことが「評価疲れ」
を回避するための知恵てあろう」」(思いつくことすべてを「評価」と称して
実施し、また何重にも同じような「評価」作業を増やすことは、かえって「評
価」作業への意欲を失わせ、逆効果となる恐れがある.)
(4)「他大学との比較に当たって、それぞれの「目的」や「目標」から切り離
された、単なる「水準」の比較がなされるのならば、それは評価の本旨てはな
い.」(「評価」と「水準付け・ランク付け」との同視・混同があり、その同
視・混同を払拭することは困難である。)
(5)「(阪大)独自の自己評価に対する批判の最大のものは、評価が改善に結
びつかなかったということてある。」(教官集団内に「評価」制度が定着して
いないし、従来の「評価」は「改善」とは無関係であったという負の遺産がす
でに蓄積されている。)
(6)「評価される側が提示する基準と評価する側が適切と考える基準を統合す
る必要がある。」(評価される側と評価する側の基準のすり合わせが、「評価」
を改善に生かすための条件となるが、そのような努力が足りない。)
(7)「評価結果の公表にあたっては、評価の総体を公開すべきであって、評価
の一部だけを取り出して、それが独り歩きすることのないように十分な注意を
はらうべきである.」(「評価」にことつけて、その文言の一部を政治的に利
用し、「評価」内容を歪めることは、「評価」の意味を殺す結果になる。)
6 調査検討会議目標評価作業委「論点の整理」(2001年2月21日〉
作業委の目標評価に関する意見は、「長尾試案BJとほとんど同じである。そ
の当該部分を参照されるなら、その概要は理解できる。なお作業委の「論点の
整理」(2001年2月21日)の特徴は下記の通り.
1)名称:「中期目標」「中期計画」という名称を残す。
2)理念・長期目標:各国立大学が、その理念・長期目標にしたがって中期目
標を位置付けることは(主務大臣が指示する)「中期目標」を相対化する意味
を持つが、その一方、長期目標の法的位置付けはあいまいてある。また、各国
立大学の長期目標なるものを「中期目標・中期計画」に含めて記述することが、
制度になじむか否かも問題てある。この点では、作業委の立場は揺れていて、
かつでの作業文書(「構成例」)では、長期目標の記述があったが、その後に
作成された「イメージ例」では、記述がない.
3)中期目標の主体:大学と主務省の双方が企画立案を行う以上、「大学と主
務大臣との間で協議し、合意する」ということが国立大学にとって最も望まし
いが、最低限でも国立大学からの申請行為」を残す必要がある、としている。
4)期聞:「3年から7年」
5)「評価」における限定主義:調査検討会議の目標評価委員会の作業文書は、
評価に対し、限定主義的な考え方をとっている.評価の限定主義的の意味は、
5-3)に紹介した阪大の主張を参照されたい.作業委ては、次のような方向か
ら限定を付すことを試みている.
(1)新規事業分に限ることはできないか。
(2)改革・改善を図るべき項目に限ることはできないか.
(3)業務運営の根幹業務のみを記述するできないか.
(4)基盤的校費でまかなう継続的な業務の経費については、文部科学省大臣と
の協議を要しない、とはできないか。
(5)基盤的校費は外形標準的に定めることはできないか。(「外形」とは何か
は、問題であり、内容が不明である.)
6)評価者の問題:誰を評価委員とするのか、そのプロセスどうするのか、評価
の透明性と公平性はどう確保てきるのか、作業委の文書のなかに、問題の指摘
はあるがその内容には踏み込んでいない。(以上)
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