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誰も望んでいない道を誰もが歩むことになるときが近づいている


香田さんが殺された。イラクで何が起きているか命の危険を冒してまで自分自身で確認しようとした香田さんが殺された。自分自身の無関心と戦うためにはイラク行きどうしても必要だと思いつめたように私には思える。

香田さんがわたしたちに残していったものは、日本が直面している歴史的岐路を正面から見据え、勇気ある冷静な選択をする機会である。おそらくは最後の機会である。

イラクの青年ライードさんは日本人への公開書簡の中で、自衛隊のイラク駐留の役割は、イラクに対する米国の戦争に「国際的」という隠れ蓑を与えることに尽きる、と指摘している。イラク戦争の開戦の根拠が間違いだったことを米国自身が明かにし、イラクにおける自衛隊の人道支援の内実がイラクの人々にも国際的にも明かになり、また、世論の2/3がイラク駐留延長に反対している中で、自衛隊のイラク駐留延長の準備が当然のように始められている。日本の主権が不完全であることを端的に示す状況がここにある。1952年に日本の主権が国際法的に回復してすでに半世紀を経過したが、いまなお主権は完全には回復しておらず、特に軍事面では主権は全く回復していないことを、これほど明確に示すものはないだろう。

よく知っているマスメディアがほとんど触れず、多くの人が気付いていても見てみぬふりをしている、日本の半主権状況は、わたしたちの誰もが望んでいない道をわたしたちに歩ませようとしている。間違いであることを誰でも気付いている選択を思い留まらせる機会を、香田さんは私たちに与えてくれたのである。




posted on 2004-10-31 by admin - Category: Memos