Academia e-Network Project

AcNet Letter 編集人への手紙:著作権延長反対運動展開に向けて


Date: Mon, 17 Jan 2005 21:14:47 +0900
From:「著作権法改正要望のパブリックコメントを追跡する」サイトhttp://publiccomment.seesaa.net/作成者より

本日(17日)、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会は「著作権法に係る今後の検討課題」16項目を決定しました。共同通信社の報道では「私的録音補償金制度の見直し」が中心であるかのように伝えられていますが、これは「おとり」であって文化庁が「本命」と位置付けているのは10月に行った一般からの意見募集では賛成意見がほぼ皆無であったにも関わらず検討課題素案に残された「著作権保護期間の延長」であることは確実です。一応、本日決定された検討課題では「必ずしも法改正を行うことが必要であるとの判断にまで及んでいるものではない」との但し書きが冒頭に在るものの、昨今の吉川晃・著作権課課長による講演での発言や2003年1月の「ミッキーマウス延命法」合憲判決を受けて強まる一方のアメリカ政府による外圧、そして文化庁から大量の天下りを受け入れている日本音楽著作権協会(JASRAC)を中心とする音楽業界の強い要望の存在と言った周辺事情を考える限り、文化庁が今後ますます「強行突破」の姿勢を強めることは疑うべくもありません。

もし、現実に著作権延長が強行された場合、青空文庫や国立国会図書館近代アーカイブ・プロジェクトと言った保護期間を満了し、公有に帰した著作物の新たな利用形態はその芽を積まれ、それは著作権法第1条に謳われる「文化の発展に寄与」する目的に反することにもなりかねません。著作権法第1条に謳われる「文化の発展」が特定産業の既得権益を「延命」させ続けることに矮小化されて良いはずは無いのです。2003年1月に米国でE.Eldredが「ミッキーマウス延命法」訴訟において敗れ去った後、アメリカ政府はますます各国への外圧を強めています。2004年初頭にはオーストラリアがこのこれに屈して著作権保護期間を延長、Project Gutenberg of Australiaは文字通り「ハリウッドに蹴散らされる」形で最低でも今後20年間の大幅な活動規模縮小を強いられることとなりました。
Libraries caught in copyright changes(The Age・2004.2.11)

2002年7月14日放送のNHKスペシャル「変革の世紀・第3集“知”は誰のものか」に出演してから日本でも知名度が上昇しているL.Lessigスタンフォード大学教授は近著である『FREE CULTURE』(山形浩生/守岡桜・訳、翔泳社)を始め、特定産業界が「文化の発展」を大義名分に掲げてゴリ押しする著作権延長が如何に有害無益であるかを力説し、支持者も世界的に増加しているもののその主張が一国の著作権政策に積極的に採り入れられるまでには至っておりません(むしろ、ますます全世界規模で「逆行」の傾向を強める一方です)。
『FREE CULTURE』(翔泳社)
Lessig「2002年オライリー・オープンソースコンベンション基調講演」(FLASHムービー・日本語字幕付き

この他『NBL』(商事法務)2003年1月1月号掲載「創造を育むコモンズ」(白石忠志・訳)など参照。

そして、日本では最近になって[AcNet Letter 227]【17】でも紹介された横山久芳・学習院大学助教授による「著作権の保護期間延長立法と表現の自由に関する一考察――アメリカのCTEA 憲法訴訟を素材として」(学習院大学法学会雑誌 39(2) p.19-97 20040300)が発表されるなど、2003年に映画著作物に関してのみ法人著作権を「公表後50年」から「70年」に延長した際には大した議論が巻き起こらなかった状況とは異なり、Lessigが訴える著作権延長の有害無益性を多角的に検証する試みが始められようとしています。それ故、文化庁は本格的な議論が進み著作権延長に(とりわけ、学術・教育分野に関しては全くと言っていいほど)メリットが無いことが証明されるよりも前に「強行突破」する姿勢を強めているのであり、文化審議会著作権分科会が最終答申を出すまでの今後1年間、様々な立場の者が手を携えて大々的かつ積極的な反対運動を展開して行く覚悟が必要であると考えます。

とりわけ、緊急に求められるのは以下の3点です。

*A4判3枚・11ポイント前後の大活字による著作権延長の有害無益性を説明する資料の作成
【参考】小倉秀夫弁護士「パワーポイント部隊の創設」

*国会への延長反対請願署名提出
【参考】昨年、いわゆる「レコード輸入権」反対署名は2ヶ月弱で59050名分が集まり、衆議院に提出された(紹介議員17名/受理件数33057名。審査未了)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_seigan.nsf/html/seigan/1592940.htm

*学識経験者の連名による延長反対声明の公表
【参考】独禁法改正案に学者ら賛同声明(朝日新聞・2004.9.20)

いずれも、現時点での拙案でありこれ以外にも案が有れば以下の掲示板やメールなどで提案していただければ幸いです。

「著作権法改正要望のパブリックコメントを追跡する」掲示板

※メールアドレスはサイト(http://publiccomment.seesaa.net/)に掲載しています。





posted on 2005-01-18 by admin - Category: AcNetLetter