Date: Sat, 9 Feb 2002 12:17:50 +0900
From: Toru Tsujishita 
Subject: [kd 02-02-09] 中教審意見募集について/3意見転送
--[begin kd 020209 目次]----------------------------------------------

[0] 辻下 徹:中央教育審議会「大学等における社会人受入れの推進方策につ
いて (答申案)」に対する意見提出[4]の呼びかけ

[1] (転送)B(国立大学教員)Re: [kd 020208] (転送)活動方針の提案
 [知的好奇心という言葉づかいそのものを止めてください]

[2] (転送)C(国立大学付属病院教員)Re: [kd 020208] (転送)活動方針の提案
 <国内外頭脳流出の危機 & あなたの治療費は不況と大学の治療費? >

[3] (転送)D(私立大学教員)Re: [kd 020208] (転送)活動方針の提案
  活動方針の提案・感想  

[4] (転載)「中央教育審議会「大学等における社会人受入れの推進方策につ
いて(答申案)」に対する意見募集(2月13日締切)

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凡例:ハンドル名は、今後の引用、再発言の場合の便宜のために管理者が付け
たもの。[]は管理者が本文から抜き出した見出し。♯で始まる文は管理者が
挿入したもの。
--[end kd 020209 目次]------------------------------------------------


--[begin kd 020209-0]-------------------------------------------------
Subject: 中央教育審議会「大学等における社会人受入れの推進方策について 
(答申案)」に対する意見提出[4]の呼びかけ
From: 辻下 徹 tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp

 現在、文部科学省が行っている中央教育審議会「大学等における社会人受入
れの推進方策について (答申案)」に対する意見募集(*1)の締切が2月
13日です。

(*1)http://www.mext.go.jp/b_menu/public/2002/020101.htm

 大学と社会の新しい絆を模索する趣旨に誰も異論はないと思います。今回の
答申案では長期履修学生(いわゆる「パートタイム学生」)制度・専門大学院
1年制コースの制度化・通信制博士課程の制度化の3提案がされています。大
学関係者全員に間も無く深く関係する事ですので、少なくとも一読し、素朴に
疑問に感じる点、新しいアイディア等があれば、数行のものでも意見書として
提出してはどうでしょうか。

 社会とのどういう絆を求めるかを真剣に考えることが社会との絆の核心にあ
ると思います。この3提案の趣旨が良いものであったとしても、それがトップ
ダウンな形で実現した場合に、社会との絆を求める余裕や意欲が大学社会に残
るのかどうか、よく考えて見るべきではないでしょうか。

 なお、中教審委員は提出された意見書に目を通す義務があります。中教審委
員にアイディアや意見を伝える機会としても活用できると思います。また、文
部科学省の中にも種々の意見の方が居られると思います。現在の政策に批判的
な方もおられるに違いありません。文部科学省内で種々な発言が起き議論が深
まる契機となる可能性も、微小ながらあるかも知れません。

 ところで、答申案は、長期履修学生制度を「例外的」なものと位置づけてい
るように感じます。「もとより,学生の卒業時における質の確保を図ることは,
大学等の社会的責任であり,長期履修学生に対しても,厳格な成績評価を実施
するなど,安易な単位認定や卒業を抑制することにより,教育水準の維持向上
を図ることが必要である。」という一節は、現在の科目等履修生制度との連携
を困難にする面があり、このままは「仏を作って魂入れず」の制度となってし
まうことが懸念されます。

 「大学の社会的責任」は、「卒業」というラベルの品質を保つことではなく、
若干単純化して言えば、各学生に、科目(あるいはコース)の内容を完全に習
得させることです。しかし、完全に習得できる科目の種類や数は学生の能力と
意図に応じて多様なことは当然のことです。パートタイム学生制度を活かすた
めには、科目等履修生制度との連携を諮り、さらには、教員にも学生にも不毛
な活動を強いている「単位取得卒業制度」そのものの見直し(*2)まで踏み
込んで頂きたいと思います。

 以上は私の個人的な意見ですが、それぞれの大学教員は経験に基づき種々の
意見があると思います。大学という場のルール形成に関心を持つことは、大学
教員の重要な責務の一つであり、当事者として社会から付託されている業務の
一つではないでしょうか。

(*2)参考文献:藤田  整「大学教育に「卒業」という制度は必要か」
大阪市立大学「経済学雑誌」第73巻第4号(1975.10.25) p64-74 時論 
http://www.ac-net.org/doc/01/705-fujita.shtml

藤田  整「大学に「卒業」は無用ー学校教育活性化のための提案」
(人文書院 2000.10)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4409240641/

--[end kd 020209-0]---------------------------------------------------



           エリ・ヴィーゼル「ふたつの世界大戦を超えて」より
                   

     「愛の対極にあるのは憎しみではない。無関心である。美の対極に
      あるのは醜さではない。無関心である。知の対極にあるのは無知で
      はない。それもまた無関心である。平和の対極にあるのは戦争では
      ない。無関心である。生の対極にあるのは死ではない。無関心、生
      と死に対する無関心である。」(文芸春秋2000年1月号 p214)

       http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/00101-mukanshin.html 



--[begin kd 020209-1]-------------------------------------------------
Date: Fri, 8 Feb 2002
From: B(国立大学教員)

♯(Re: [kd 020208] (転送)活動方針の提案)

私も行政と学術をまたぐ関係の仕事をしていますが,本ご提案は「己を知り的
を知れば百戦百勝」の理に叶う,これまでのニュースで一番即応性のあるご提
案だと思います。

しかし,先のNHKが放映した名古屋大の総長の言葉にも出てしまっていますが,
大學人が発する

【知的好奇心】

という言葉づかいそのものを止めてください!!

→いただいたニュースにもありますが,この【好奇心】は,一般人には

「大學の人の勝手気まま,納税者たる一般には理解不能の,やり放題の【趣味】」
=「社会の現状の痛みを全く理解してない連中」
=「大學人は全く無意味に金を食いつぶす連中で,その戯れ事に真理あり哉?」

という3段論法が無意識に成立してしまいます。

更に悪いことに,「有識者・なまえの知れた人」が言えば言う程このマイナス
効果は広がっていきますよ!

誰が,「金食い虫の趣味」のための手助けをするでしょうか?我々以外の「良
心」をもった第三者のアドバイスを入れなければ議論の正当性評価を行うべき
「色無しの議論の場」が,実は色つきの答えが既にある場になってしまいます。
(多くの行政・民間のコンフリクトをこのような視点で分析することができま
す)

今回の匿名投稿はこのことも物語っていると思います。

独法化の側面は,教育による受益者集団の偏りを経済的側面から発生させるこ
とは,この案件がでてきた時からすでに明白でした。

草々
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--[begin kd 020209-2]-------------------------------------------------
Date: Fri, 08 Feb 2002 
From: C(国立大学付属病院教員)

♯(Re: [kd 020208] (転送)活動方針の提案)

<国内外頭脳流出の危機 & あなたの治療費は不況と大学の治療費? >

現在とり沙汰されている、独立行政法人システムは将来以下のような問題を発
生させ、ボディブローのようにじわじわと(旧!)国公立大学を知の場所から似
非産業試験場(昨今の評価原理?であるインパクトファクターは利益の保証に
も工業権の実績にもならない!)へと変質させ、研究者の私立大学、国外への
流失をきたすことは自明である。バブル経済同様に結局アメリカが日本の頭脳
を安く手にいれて、最後に日本に逆襲がくる。

1)独立行政法人大学と私立大学の差異は(曖昧模糊たる官僚的解答は別とし
て)どうあるのか?。独立行政法人大学に足枷のみあるようでは、競争での敗
北は必至である。

2)独立行政法人の目的が、いまでも当初の国家公務員人員削減であるなら、
単なる統計処理の項目の変更にしかすぎず、国家財政に寄与するところが無い
のは自明である。バカな役人のその場しのぎのアイディア(?)を後生大事
(アヤマチヲ認メナイノハ役人ノ努メナリ!)にしても諫早湾干拓のような事
態になり、後の負担(JR同様、身分を巡って大量の訴訟案件の発生が当然予想
される。憲法、労働法規、人事院規則等をすべて変えないかぎり、JRと同様、
多額の費用発生は必至。)は増え、係争処理で教育、研究どころでは無くなる。

3)現在の議論は、既に周知のごとく、教育ではなく産業の芽としての研究に
しか置かれていない。種(人文科学を当然含めた広い意味での基礎科学)の無
いところには芽が出ない。土地と水と太陽(教育)がなければ芽は育たない。
昨今の不況で、貧すれば鈍するで種を食べ、土地を売ろうとしている。我々に
明日はない。無論、政財界、産業界は国立大学に言ったことはキレイに忘れて、
アメリカにまた“産業の芽”とやらを探しにいって、“日本の大学はxxxx
xx”と勝手な批判をまたまた繰り返すでしょう。

4)一部の心ある研究者は自らの仕事を擲って、抵抗するであろうが、多くは
嫌気がさしてきて、魅力ある外国あるいは私立大学への移籍をおこなうであろ
う。このため広く共有されるべき知的財産の海外流出と、売れない不良債権部
分のみが独立行政法人に停留することになる。(特に独立採算といっても2で
述べたように現行の公務員の権利の一方的な剥奪は後の係争負担という特大の
不良債権を増やすのみである。)

そして国民の皆さん、あなたの病気の治療費は不況治療費と独立行政法人大学
の維持費になります。

5)大学病院を主とした一部現業部分については切り離して独立行政法人も当
然必要である(念のため小生は大学病院籍の教官)。医療保険その他の社会制
度を流用して研究している現状、研修教育と称して、若年者を安価な労働力と
してこき使うシステムなど、独立行政法人でなければ、是正は困難である。現
在の国立大学病院は群雄割拠の教授個人医院と中央施設設備の集合体の感があ
まりに強い。とても総合病院としての機能を果たしていない。また大学にこの
ような現業機能を持たせることは土台、無理な話である。

ところが、多くの大学で大学病院の収入を財源に見こんでいる!。多くの公立
病院が赤字に苦しんでいるのに、大学病院が他学部に巨額の財政支援をできる
はずなどない。もしできるのであれば、今度はその分は社会保険を非常に圧迫
することになる!。政府の役人がこんな初歩的な事もわからんようでは…。

え、そうではない、そうか、医療費や社会保障費、患者の自己負担(また上が
るそうで。)という財源で産業の芽とやらを育成できるのか! いやー、頭の
良いことを考えるな。
 
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 --[begin kd 020209-3]-------------------------------------------------
Date: Fri, 8 Feb 2002
Subject: 活動方針の提案・感想
From: D(私立大学教員)

♯(Re: [kd 020208] (転送)活動方針の提案)

[kd 020208] (転送)活動方針の提案 を拝見しました。ご意見理解できると
ころがあります。現在の政治家、マスコミの科学や技術などの認識状況はいわ
れるとおりと思うところがあります。

しかし運動の方針としては、あまりに乱暴で、誰を味方につけるつもりなのか、
理解できません。お人好しではだめだというのはその通りと思いますが、だか
らといってどんな結果になるかの見通しがわかるように提案しないと理解して
もらえないのではないでしょうか。
 
> 「年間の学費600万円だって!あなたのお子さんは独行大学に通えますか?」
>
> などのように分かりやすいスローガンを掲げる必要があると思います。
 
これは確かにわかりやすいのですが、それは受験生を抱えている親の場合でしょ
う。いま、学生が勉強しないという宣伝が強力に行われています。そういうも
のが大学に入らないためには、学費を上げるのが一法という考えもあるでしょ
う。こういう考えからは、優秀なものには奨学金を出すから権利を侵害したこ
とにならないという議論がでてきます。

問題は、どのくらいの人数が大学に行くことが認められるかです。この議論だ
けでは、優秀なもの(勉強をしっかりやるもの)だけが大学にいけばよいとい
う前提が、暗黙のうちに入ってきます。いまの政府の方針はエリートだけに集
中的に教育すればよいというものです。多くて1割程度を考えているといえま
す。

多くの国民・市民を教育する必要があるから、通学可能な範囲に大学(国立大
学)がなければならない、というのでなければ現在動きつつある再編の動きに
対してブレーキにはならないでしょう。そしてそれが教育を受ける本人だけで
なく、日本の社会や世界にとって必要であるということが強調されるべきです。
 
政治家、マスコミだけが「世論の大多数を占める」とは思いません。国民全体
の認識が代わらなければならないでしょう。ですから、私はあくまでも、学問
は広く深く教育してこそ優秀な(大切な)結果がうまれる、エリートだけを教
育しようとしてもうまくいかないということを、しっかり宣伝するべきと思い
ます。独立行政法人というものは、その運営手続きなどに多くの問題があるこ
とはすでに指摘されているとおりと思いますが、大学をそれにするという基本
的な精神は効率よく人材を育て、研究を進める点にあるのですから、独立行政
法人化された大学はけっして学問を発展させず、人材も育てられないというこ
とをあくまでも訴える必要があります。

国民に理解され支持されなければ、何事もすすまないでしょう。まだ時間はあ
ります。この点を最後まであきらめずに主張することが重要だと考えます。
 
> 「パソコンの頭脳をアメリカに売り渡してしまわせたチョーアホな日本人は誰
> だか知ってる?」
>
> 「あなた!まさかその新聞の科学記事、正しいって信じてるの!?」
>
> 「腐った奴取り除く作業を腐った奴にまかせて大丈夫だって思う?」

これらのスローガンは、どんな大学にするかの展望(イメージ)を示すことに
なるのでしょうか。いまの大学をつぶせばいいのではなく、また今のままでい
いのではないでしょうから、ある主張の結果大学がどうなっていくことをかん
がえているのかを、わかるように示さないといけないのではないでしょうか。
私はその意味で大変乱暴だといわざるをえません。
--[end kd 020209-3]---------------------------------------------------- 


--[begin kd 020209-4]-------------------------------------------------
♯ http://www.mext.go.jp/b_menu/public/2002/020101.htm より転載

中央教育審議会「大学等における社会人受入れの推進方策について(答申案)」
に対する意見募集について 

「中央教育審議会は、平成13年4月に文部科学大臣より諮問された「今後の高
等教育改革の推進方策について」に関し幅広く審議を重ねており、審議の区切
りがついた事項から逐次答申することとしております。このたび、標記事項に
関し、大学分科会としての答申案がとりまとめられ、中央教育審議会総会にお
いて審議されているところです。

つきましては、本答申案について広く皆様から御意見をいただくべく、下記の
要領で意見募集を行いますので、忌憚のない御意見をお寄せいただきたく思い
ます。

中央教育審議会では、今後、皆様からいただいた御意見も踏まえつつ、今年度
中に最終答申として文部科学大臣に提出する予定です。

なお、御意見に対しての個別の回答は致しかねますので、その旨御了承願います。 

記
・意見提出期間	平成14年1月31日(木)〜平成14年2月13日(水)
・意見提出方法	郵便・電子メール
(電話による御意見の受付は致しかねますので、あらかじめご了承下さい)
・意見提出先	〒100−8959 東京都千代田区霞が関3−2−2
	文部科学省高等教育局高等教育企画課 企画審議係 宛
	メールアドレス koukyoik@mext.go.jp
・意見提出様式	様式は自由です。次の6つの項目を明記して下さい。 

1.	氏名 
2.	性別、年齢 
3.	職業(会社名/部署名または学校名) 
4.	住所 
5.	電話番号 
6.	意見 

注)メールで御意見を提出していただく場合は、添付ファイルはセキュリティ
上の理由により開くことができませんので、御注意下さい。

注)なお、御提出いただいた御意見(記載内容)は氏名、会社名(部署名)、
学校名、住所、電話番号を除き、全て公表される可能性があることを御承知お
きください。

・本件問い合わせ先	文部科学省高等教育局高等教育企画課 企画審議係
03−5253−4111(代表) (内線2483)」


                      --------------------


    大学等における社会人受入れの推進方策について(答申)案
     http://www.mext.go.jp/b_menu/public/2002/020101a.htm

--[end kd 020209-4]-------------------------------------------------
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管理者:辻下 徹 tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp   (配信数:9208)
関連ページ:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh
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