国公立大学通信
 始めまして。金沢大学教養教育機構教務・学生委員会委員長の青野透(法学部
教授)と申します。本日は、大学改革の新たな試みを紹介させてください。

 金沢大学の教養教育では、今年度より、学生自身が企画した科目が開講されま
した。全国の大学でも全く初めての取組のはずです。

 すでに、以下のように朝日新聞の大阪本社版で紹介されましたのでご存知の方
も多いとは思います。

 「授業改革、学生発で 金沢大、講師・題材を自ら選定 【大阪】 
       2002年11月24日 朝刊 011ページ 教育1   

 自分たちで意見を出し合って授業をつくろう――そんな実践を金沢大(金沢市
角間町)の学生たちが続けている。学生自身が学んでみたいテーマを設定し、講
師も選ぶ。少子化による学生数の減少や再編・統合など様々な課題を抱えて大学
間競争が進むなか、学生の意欲を引き出す取り組みとして注目されている。

 教養的科目を検討する教養教育機構研究調査部所属の青野透法学部教授が昨年
6月、「授業を変えるためには、学生たち自身が意見を出し合い、教官側との意
識の差を埋める必要がある」と学生たちに呼びかけた。法学部や文学部、経済学
部などから約10人が応じ、総合科目企画学生委員会をつくった。

 昨年10月から今年度の授業計画づくりに本格的に取りかかり、「生と死を見
つめて−死生学入門」(前期)と「NPOと私たち」(後期)の二つの講座をつ
くった。

 授業は前後期合わせて約30コマ。講師は学内で約700人いる教員を中心に
選んだ。大学の正規授業の扱いで、前期、後期ともに2単位ずつ取得できる。

 実際に授業が始まると受講希望者が殺到し、学内で最も大きい約300人受講
可能な教室でさえ立ち見の学生が出るほどだった。

 総合科目企画学生委員会のメンバーは今年も来年度の授業の準備に追われてい
る。来春開講する授業は「恋愛論」と「金沢学(仮称)」。提案者の一人で法学
部2年の三摩愛子さん(19)は「身近に感じる恋愛を様々な観点から学んでみ
たい。そして自分を見つめるきっかけになればと思う」と語る。

 中心的なメンバーで当初から活動にかかわっている大学院修士課程1年の鎌田
康裕さん(23)は「講義が講演会にならないようにみんなで工夫した。学部が
違う学生同士の情報交換によって学内に様々な教授がいることがわかり、視野も
広がった」と話している。

 前期の責任者だった細見博志医学部教授は「学生の反応がこれほどとは思わな
かった」と振り返る。青野さんも「一般的に学生は、単位が取りやすいと評判の
授業に流れる。だから、新しい講座で学生がこんなに集まることはこれまでなかっ
た」と反響に自分でも驚いている。」

 この他、毎日新聞社
http://www.mainichi.co.jp/life/kyoiku/edumail/archive/04/200201/16-06.html
 や中日新聞社(北陸中日新聞では2001年11月30日付 朝刊)も取材結果を報じ
 ています。
 
 これらの科目の誕生経過や、その理念について解説した、拙稿「学生を学ぶ主
体として育てる」(4〜18頁)掲載の『大学と教育』(東海高等教育研究所発
行)34号、2003年1月、が刊行されました。

 同誌19頁以下には授業を企画した学生自身の文章も載っています。いずれも
東海高等教育研究所主催の研究会(2002年7月6日、於:名古屋市)で報告
したものが内容の中心です。

 できれば感想を以下のメールアドレスへいただければ幸いです。

 ちなみに、私は、教育改革も(専門で研究している)医療改革も、学生や患者
が主体にならなければならないという点では全く同じように捉えることができる
という立場です。
 
 以上。

青野 透 金沢大学法学部教授
http://www.law.kanazawa-u.ac.jp/aono/
aono@sgkit.ge.kanazawa-u.ac.jp
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