通信ログ
Subject: [kd 03-03-02] 理事会報告の誤り/読売社説における誤り
Date: Sun, 02 Mar 2003 00:59:22 +0900


国公立大学通信 2003.03.02(日)

--[kd 03-03-02 目次]--------------------------------------------
[1] 全国ネット事務局長から読売新聞社へ「1日付け社説についての申し入れ」
[2] 読売新聞社説3/1 [国立大法人化]「自主運営は結果への責任を伴う」
[3] 首都圏ネット事務局:2・25国大協会長報告について
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各位

これまで独立行政法人化問題について何度も虚偽報道をし、一度は国大協から
公式に抗議された(*1)こともある読売新聞が、3月1日付け社説[2]で、法人化
について誤りのある記述をしています。小中学校で、メディアリテラシー教育
なしに新聞を神聖なる情報源として教育している日本社会においては、戦前を
想起するまでもなく、大新聞による誤報道は国の歩みを左右するほどの影響が
ありますから、情報操作を意図的にする大新聞は国賊に近い罪を犯しているこ
とになります。この虚偽社説に対し、全国ネット事務局は公開で訂正要求書を
送りました[1]。同社からの回答が注目されます。回答と謝罪ががなければ、
同社は情報操作を意図的に行なっていることを証明されることになります。
(*1)http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/net/netkougi991210.html

			  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

昨日紹介しました4国大協理事会報告では、合意事項がかなり歪曲されて報告
されてることが明らかになりました[3]。またか、という思いです。ご記憶の
ことと思いますが、一昨年6月の国大協総会で、法人化を容認する設置形態検
討特別委員会報告が了承されなかったにもかかわらず、国大協会長は総会後の
記者会見で「了承された」たと記者に報告したため、国大協が法人化を了承し
たと報じられました。そのため大学全体がしばらく混乱しましたが、結局、全
国立大学に「訂正通知」(*2) が送付されました。そこには、記者が解釈を間
違えただけ、と説明があるだけで「謝罪」はありませんでした。今回も同じこ
とを繰りかえしている以上、そもそも会議での合意内容を正確に認識し伝えよ
うとする意思をこの方はお持ちなのか、という思いにかられます。理事の方々
は理事会の議論を歪めた「報告」を許容しないようお願いしたいと思います。
(編集人)

(*2) 国大協総第69号 http://ac-net.org/dgh/01/711-nagao.html
http://ac-net.org/dgh/01/613-kdk-houdou.html
http://ac-net.org/dgh/01/628-nagao-problem.html

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[1] 豊島耕一氏から読売新聞社へ「1日付け社説についての申し入れ」
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読売新聞社御中
                国立大学独法化阻止全国ネットワーク事務局長
                  豊島耕一(佐賀大学教授)
                 佐賀大学理工学部物理科学科
                 840-8507 佐賀市本庄町1
                 電話・ファクス 0952-28-8845

 拝啓

 私たちは国立大学の独立行政法人化に反対する運動に取り組んでいる全国組織
で,全国の国立大学教職員や市民,学者,文化人など300名の会員・賛同者か
らなり,また21の団体の賛同を得ています.詳しくは下記をご覧いただければ
幸いです.

  http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet.html
  http://www003.upp.so-net.ne.jp/znet/znet.html

 さて,貴紙の3月1日付社説「自主運営は結果への責任を伴う」の文章には重
要な誤りがありますので,紙面での速やかな訂正をお願いしたいと思います.社
説はニュースとは違うのでしょうが,しかしその中の事実についての誤った記述
は,報道機関がみずからのメディアを使って配布する文書における重大な欠陥で
あり,責任が問われるものと考えます.

 具体的に誤りを指摘する前に,まずこの社説の論旨とその姿勢について一言申
し上げます.この文章は,貴紙が独立したジャーナリズムなのか,それとも単な
る政府の広報紙なのか,という根本的な姿勢が問われる内容となっています.い
うまでもなく,法案が国会に提出されたということは,「国権の最高機関」がこ
れからその内容を精査し審議するということです.つまりその是非の判断は国会
と,その主人である全国民に委ねられたことを意味するのです.しかしこの社説
は,法案自体について吟味しようという姿勢は全く見られません.それどころか,
この法案が当然のものであるとの前提で,もはや実行の段階であると言わんばか
りの内容になっています.

 この法案が与野党のいわゆる「対決法案」になるのか,それともそうならない
のかは分かりません.もし後者であるとしても,いや,むしろ対決法案でなけれ
ばなおさら,言論・報道機関が厳しいチェックの目を光らせなければなりません.
そのような意識のかけらも見られないこのような文書を発表されたことに,気後
れも何も感じられないのか,大変不思議に思います.あるいは,長年の「記者ク
ラブ」制度という「護送船団」方式に浸りきっておられるため,感覚が麻痺して
おられるのでしょうか.

 さて,問題の誤報は次の2点です.

(1)第11段落(3段目最後)の記述の誤り

「法人化された大学は、六年ごとに、運営、教育、研究などに関する中期目標や
計画を文科省に提出し、その達成度に応じて予算配分を受ける。」

 「中期目標」は大学が「提出」するものではなく,「文部科学大臣が定める」
ものです(第二条5項).これは完全に180度方向が違います.また「中期計
画」は「提出」だけではすまされず,文部科学省の「認可」を受けなければなり
ません.

(2)第2段落の「大学は自らの責任で予算を決め」るという記述の誤り

 法案では予算は文部科学大臣の認可制となっており,大学が自由に決められる
ものではありません(第三十一条).それとも貴紙は許認可制の事を「自らの責
任で決める」ものと通常表現されるのでしょうか.

 以上,これら二点は法案に照らして明かな誤りです.これらは意図的なねじ曲
げなのか,それとも法案を良く読んでおられないための誤りなのでしょうか.あ
るいは,これらの問題は些細なことに過ぎないと考えておられるのでしょうか.

 この文章が,法案に含まれる規制強化の側面に少しでも言及しておられるので
あれば,細かい字句まであげつらう必要はないかも知れません.しかし社説は,
「独立した法人になる」「国の規制は大幅に緩和」という表現に見られるように,
この制度をもっぱら「規制緩和」として描いています.上に指摘した誤った記述
と合わせて,読者にこの法案について全くの誤解を広めるものとなっています.

 そこで貴紙にお願いしたいのは,この誤解を一刻も早く解くために,同等程度
に読者の目に触れる形で,訂正の記事を掲載して頂きたいと思います.もしそれ
ができないのであれば,その理由を是非ともご回答下さい.もしもこの件につい
て何十通も意見が寄せられているとすれば,個別に回答をいただくことは無理か
と思います.しかしその場合でも,その中には私どもが提出したものと同様の疑
問があるかと思いますので,それに対する貴紙の対応を紙面等で注目申し上げた
いと思います.

 最後に,この社説の大学批判の姿勢について一言申し上げます.

 どのような組織や業界にも欠陥や問題点はあります.それを,当事者の意見に
も耳を傾けながら真摯な態度でその改善策を探る態度がジャーナリズムには求め
られると思います.しかしこの社説は「自己改革の意欲に乏しいところがあった」
「多くの教員は狭い研究分野に閉じこもり,社会貢献意識も希薄だった」と断定
し,「大学の状況に対する批判」について「大学関係者はそのことを心せねばな
らない」と説教しており,ここにはとても尊大な態度しか感じられません.メディ
アに必要なのはそのような尊大さなのでしょうか.大いに疑問に感じます.

 また,「護送船団」という言葉が相変わらず大学に対して用いられていますが,
その適切性についていま一度吟味していただきたいと思います.この言葉はもと
もと,石油業界などに対する政府の過剰な保護政策を批判するものとして,つま
り経済界の問題に対して使われたものです.この言葉を国立大学に使用するとい
うことは,「護送を外すべきだ」,つまり高等教育への公的支援を縮小せよ,教
育分野も「市場原理」にさらすべし,という意味合いを暗に持つことになります.
今でさえOECDレベルに比べて少ないとされる高等教育への政府支出を一層減らす
べきだという論旨にもつながりかねません.「競争」の必要性とその程度の議論
は別として,この言葉は教育分野を経済活動と同列に論じる効果を持つもので,
少なくともそのことをはっきり意識することは必要かと思います.

 なお,この手紙はネット等で公開することをお許し下さい.敬具

2003年3月1日
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[2] 読売新聞社説3/1 [国立大法人化]「自主運営は結果への責任を伴う」
http://www.yomiuri.co.jp/08/20030228ig90.htm
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「今後の国立大学のあるべき姿がまとまった。

 国立大学法人化に向けた一括法案が閣議決定され、国会に提出された。成立す
れば来年四月から、すべての国立大学が、文部科学省の組織から離れ、それぞれ
独立した法人になる。

 国の規制は大幅に緩和され、大学は自らの責任で予算を決め、運営できるよう
になる。大学運営や学長選出には、学外者も関与する。

 国の保護と規制の下にあった護送船団方式から、大学の責任と競争重視への方
向転換である。戦後の新制大学発足以来の改革となる。

 各大学は明確な将来像を打ち出し、教育、研究などの活性化を図らねばならな
い。改革に失敗すると、国の運営費交付金の大幅な削減もあり得る。

 国立大学の法人化は元々、国家公務員の定数削減のために求められた。だが文
科省の調査検討会議などの論議で、法人化は、教育、研究の体制にも及ぶ、大学
改革の契機としてとらえられた。

 法人化に対しては、「全国一律」の保護を失う地方国立大学などから強い反対
があった。だが、社会の賛同を得るものとはならなかった。

 国立大学には自己改革の意欲に乏しいところがあった。意思形成の過程も不明
確で、多くの教員は狭い研究分野に閉じこもり、社会貢献意識も希薄だった。

 法人化反対論に、地方自治体などの反応が鈍かったのは、そうした大学の状況
に対する批判の表れとも言える。大学関係者はそのことを心せねばならない。

 変化の兆しは既に見え始めている。学外から学長を招いたり、研究に地域貢献
や産官学連携の視点を取り入れたりする試みが見られるようになった。

 法人化された大学は、六年ごとに、運営、教育、研究などに関する中期目標や
計画を文科省に提出し、その達成度に応じて予算配分を受ける。目標や計画策定
のため、これまでなかった全学的な論議をしている大学もある。

 こうした流れを大切にし、大学人の意識改革を進めて行かねばならない。

 法人化の成否は、大学の業績を判定する評価制度にかかる。公正で客観的な評
価方法の早急な策定が求められる。

 各大学には、六年の評価期間を生かし短期的な成果のみを求めるのではなく、
長期的な展望による改革を望みたい。

 「大学の自治」は戦後長く、大学内だけの閉ざされた自治だった。それは既得
権擁護の手段ともされた。競争と評価にさらされる今後は、結果に責任のとれる
開かれた自治のありようが問われる。(3月1日08:40)」
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[3] 2.25国大協会長報告について
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030301syutoken.html
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                    2.25国大協会長報告について

           2003年3月2日 独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局

○2月25日、国立大学協会の長尾会長は、2つの文書を別添して「理事会に
おける検討の結果について(報告)」(国大協総第56号)
(http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web0300301rijikaihoukoku.html)を
発表した。同報告によれば、2月24日の理事会では「「法案の概要」に対す
る見解」が、「全体として了承され」たが、「同(国立大学法人法:引用者注)
法案が国会に提出され、その全貌が明らかになった時点において、法案の内容
を点検し、その結果などを踏まえて、国立大学協会としての対応の仕方を検討
することも、併せて了承され」たとされる。いまだ議事要旨は公表されていな
いが、複数の理事への問い合わせの結果によれば、「国立大学協会としての対
応」という文言は、総会開催を求める議論が理事会の大勢を占めたこと(首都
圏ネットワーク事務局「2.24理事会速報」
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030226syuto.html参照)によって挿
入されたことは疑いない。それにもかかわらず、総会の開催を明示しないのは、
このかん国大協の民主的運営を蔑ろにしてきた会長の意思によるものであろう。
すでに法案が提出された以上、長尾会長は、理事会の議論に基づいて、速やか
に国大協総会の招集を行うべきである。

○公表された法案についての全面的な分析の結果は追って発表するが、法案に
は、2月24日の理事会で了承されたとされる「概要」からも重大な逸脱箇所
がある。すなわち、東大職員組合の小林委員長が指摘するように、「学部、研
究科、研究所の省令規定」条文が削除されたのである(「法人化法案の新たな
問題点」(http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/netre44444.html参照)。こ
れは極めて深刻な逸脱であり、理事会として到底了承できないはずである。実
は、少なくとも22日の段階で、この「学部、研究科、研究所の省令規定」条
文を削除した法人法案(最終版)が自民党文部科学部会等で議論されていたと
思われる(舛添議員のHP、
http://www.masuzoe.gr.jp/topics/fuji/2003_02_22.htmlによる)。国大協トッ
プ層がその事実を調べないまま、「文部科学省においては、引き続き「最終報
告」に沿って、国立大学法人法案の立案に当たるよう求めるものである」(添
付資料2)などと書いていたとしたら、無責任きわまりない。もし、理事会の
時点で知っていたとするならば、理事会を欺いたことになる。いずれにせよ、
長尾会長以下国大協執行部の態度は糾弾されなければならないであろう。
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