通信ログ
国公立大学通信 2003.03.04(火)

--[kd 03-03-04 目次]--------------------------------------------
[1] 日本科学者会議北海道支部幹事会声明「国立大学法人法案に反対する」
[2] 「大阪大学社会経済研究所の存亡についての一言」のページより
[3] 光本 滋(北海道大学)「法人化の国立大  債券発行に不安」
[4] 法案第二章 組織及び業務 第一節 国立大学法人 第一款 役員及び職員
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各位

「未来は予測するものではない、選び取るものだ」というヨアン・ノルゴーの言
葉に象徴される知の姿勢が、日本の学術活動にこれから必要となるのではないか、
その姿勢が日常的になれば、行政法人化は政治的に不可避であると「予測」して、
行政法人化の準備を始めることで、避けようと思えば避けられる予測を実現して
しまう、ということ愚行は避けられると思います。そして、実は今が、そういう
姿勢を学ぶ最後の機会、かも知れません。なぜなら、行政法人化後には研究者が
「自ら選び取る」というタイプの自由は制度的には残らないからです。

  行政法人化後には、「日の当らない研究分野」を大事にしなければならない、
ということばをしばしば聞きます。学術世界では余り日の当らない応用研究が、
国や産業界をバックにして大学の資源の多くを占有し、そうでない大多数の分野
が「日の当たらない研究分野」とラベルを張られて保護の対象であるかのように、
大学内部でも語られていること自身が、大学が独自の価値観を見失っていること
を象徴しているように感じます。

 阪大社会経済研究所の存続問題[2]の適切な解決は、「30人以下の付置研を
なくす」という、法人化した場合の典型的「中期目標」に対し、大学が、学術的
価値を尊重できるかどうか、その試金石となります。研究者としての価値観を優
先し妥協しなかった所員の方々に敬意を表したいと思います。(編集人)


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[1] 日本科学者会議北海道支部幹事会声明「国立大学法人法案に反対する」
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「政府は,2月28日,国立大学法人法案を国会に提出した.この法案は大きな問
題を含んでおり,日本科学者会議北海道支部は,この法案について声明を発表す
る.

  大学の役割は,人類の優れた学術的・思想的・文化的遺産を正しく受け継ぐと
ともに,それらを創造的に発展させて,社会の要請に応えることにある.大学は
公共機関として,この二つの役割を果すことによって,人類の発展に貢献してき
た.したがって,もし大学が,特定の政権の恣意的な課題設定に振り回されるよ
うなものになれば,大学はその役割りを果すことができず,人類・社会の発展に
寄与することができなくなる.

  この大学の役割を保障するものとして,過去の反省から,日本国憲法で「学問
の自由」が規定されており,教育基本法で「教育は,不当な支配に服することな
く,国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」と記されてい
る.

  しかしながら,この法案は,大学がこうした役割を果すことを妨げるとともに,
こうした役割を保障する日本国憲法ならびに教育基本法に反するものであり,と
うてい容認できるものではない.

  したがって,日本科学者会議北海道支部は国立大学法人法案に反対することを
ここに表明する.

2003年3月2日」
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[2] 「大阪大学社会経済研究所の存亡についての一言」のページより
http://w3iser.iser.osaka-u.ac.jp/~kajii/future_of_shaken.htm
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#(管理者の許可を得て転載)

「・・・今回の経緯を総括するに、文部省にしろ大阪大学にしろ、研究業績の
評価なしに社会経済研究所を廃止することにまったく懸念をはさむことはなかっ
たことが、私にとって大きな驚きであった。特に、素朴な客観論を振りかざす
文部科学省に対して、学内の知的資産を守るよう反論してしかるべき大阪大学
が、むしろ積極的に世界的な経済学の研究所の廃止を前向きに推し進めたとい
う事実は特記すべきである。これに対して自分が抱く気持ちを表現するだけの
表現力を、私はもっていない。来年度に行われる経済学系の評価にしても、文
科系21世紀COEの選考にしても、大阪大学と文部科学省の間で、同様なドタ
バタ劇が繰り返されるに違いない。

あえて今回の社研廃止劇がもたらした貢献を探せば、社研がこのような形で廃止
を余儀なくされたということを歴史に残すことで、わが国の文部行政、大学、経
済学会のあり方に、ひとつの問題提起をしたということであろう.すなわち、社
研の主張にもかかわらず、附置研等特別委員会の決定で社研が廃止されるという
事実が重要なのだ。廃止の決定をした人々は誰なのか、また廃止に対して反論し
なかった人々は誰なのかということが明確に記録に残るため、社研を葬り去る責
任の所在が明確になったのだ。初期の案の通りに産研との合併を大学の言いなり
に進め、文部科学省に対しても産研との合併をひたすら乞うていたならば、これ
らの経緯は日の目を見ることはなかったであろうし、合併劇がどのようになぜ起
こったかということなど、即座に闇の中に消えていったであろう.これに関して
は、産研との合併に前向きであった私自身の不明を恥じるばかりである。・・・」
                                                   (梶井厚志 2003-02-10)
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[3] 光本 滋(北海道大学)「法人化の国立大  債券発行に不安」
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(北海道新聞2003-03-01 読者の声)

「国立大学を法人化する国立大学法人関連六法案が、閣議決定され、国会に提出
された。法案は国立大法人に対し、大学名を付けた債券の発行を認めている。こ
れまで国の責任で行われてきた用地取得や施設改修などが、国立大学自らが債券
市場から資金を調達しなければ行えないことになる。出資者の目が財務内容の評
価に傾き、大学の研究・教育活動が二の次にされることはないのか、大学が財務
改善を研究や教育より優先するという過ちを犯すことはないのか、気になるとこ
ろである。

新聞が報じるように、これまでの検討では債券発行の論議はされてこなかった。
各国立大学にも、債券発行には触れていない「法案の概要」なる文書が配布され
ているだけであり、教職員は管理職も含めこのことを知る由もない。

政府は、なぜ債券発行のことを隠してきたのか。高等教育の整偏責任を放棄する
後ろめたさがあったと思われてならない。」
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[4] 法案第二章 組織及び業務 第一節 国立大学法人 第一款 役員及び職員
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/030201c.pdf
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/030228hiuanhou2.htm
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第二章 組織及び業務 
  第一節 国立大学法人  
    第一款 役員及び職員(第十条〜第十九条)
#(以下は次回以降)
  第二款 経営協議会等(第二十条・第二十一条)
  第三款 業務等(第二十二条・第二十三条)
 第二節 大学共同利用機関法人
  第一款 役員及び職員(第二十四条〜第二十六条)
  第二款 経営協議会等(第二十七条・第二十八条)
  第三款 業務等(第二十九条)
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第二章  組織及び業務

 第一節  国立大学法人

  第一款  役員及び職員

(役員)

第十条  各国立大学法人に、役員として、その長である学長及び監事二人を置く。

2 各国立大学法人に、役員として、それぞれ別表第一の第四欄に定める員数以
内の理事を置く。

(役員の職務及び権限)

第十一条  学長は、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第五十八条第
三項に規定する職務を行うとともに、国立大学法人を代表し、その業務を総理する。

2  学長は、次の事項について決定をしようとするときは、学長及び理事で構成
する会議(第五号において「役員会」という。)の議を経なければならない。

 一  中期目標についての意見(国立大学法人等が第三十条第三項の規定によ
り文部科学大臣に対し述べる意見をいう。以下同じ。)及び年度計画に関する事項

 二  この法律により文部科学大臣の認可又は承認を受けなければならない事項

 三  予算の作成及び執行並びに決算に関する事項

 四  当該国立大学、学部,学科その他の重要な組織の設置又は廃止に関する事項

 五  その他役員会が定める重要事項


3  理事は、学長の定めるところにより、学長を補佐して国立大学法人の業務を
掌理し、学長に事故があるときはその職務を代理し、学長が欠員のときはその職
務を行う。


4  監事は、国立大学法人の業務を監査する。


5  監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、学長又は文部科
学大臣に意見を提出することができる。


(役員の任命)


第十二条  学長の任命は、国立大学法人の申出に基づいて、文部科学大臣が行う。


2  前項の申出は、第一号に掲げる委員及び第二号に掲げる委員各同数をもって
構成する会議(以下「学長選考会議」という。)の選考により行うものとする。

 一 第二十条第二項第三号に掲げる者の中から同条第一項に規定する経営協議
会において選出された者

 二  第二十一条第二項第三号又は第四号に掲げる者の中から同条第一項に規
定する教育研究評議会において選出された者


3 前項各号に掲げる者のほか、学長選考会議の定めるところにより、学長又は理
事を学長選考会議の委員に加えることができる。ただし,その数は、学長選考会
議の委員の総数の三分の一を超えてはならない。


4 学長選考会議に議長を置き、委員の互選によってこれを定める。

5 議長は、学長選考会議を主宰する。

6 この条に定めるもののほか、学長選考会議の議事の手続その他学長選考会議
に関し必要な事項は、議長が学長選考会議に諮って定める。

7 第二項に規定する学長の選考は、人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学に
おける教育研究活動を適切かつ効果的に運営することができる能力を有する者の
うちから行わなければならない。

8 監事は、文部科学大臣が任命する。



第十三条  理事は、前条第七項に規定する者のうちから、学長が任命する。

2 学長は、前項の規定により理事を任命したときは、遅滞なく、文部科学大臣
に届け出るとともに、これを公表しなければならない。

第十四条  学長又は文部科学大臣は、それぞれ理事又は監事を任命するに当たっ
ては、その任命の際現に当該国立大学法人の役員又は職員でない者が含まれるよ
うにしなければならない。



(役員の任期)

第十五条  学長の任期は、二年以上六年を超えない範囲内において、学長選考
会議の議を経て、各国立大学法人の規則で定める。

2  理事の任期は、六年を超えない範囲内で、学長が定める。ただし、理事の任
期の末日は、当該理事を任命する学長の任期の末日以前でなければならない。

3  監事の任期は、二年とする。ただし、補欠の監事の任期は、前任者の残任期
間とする。

4  役員は、再任されることができる。この場合において、当該役員がその最初
の任命の際限に当該国立大学法人の役員又は職員でなかったときの前条の規定の
適用については,その再任の際限に当該国立大学法人の役員又は職員でない者と
みなす。


(役員の欠格条項)

第十六条  政府又は地方公共団体の職員(非常動の者を除く。)は、役員とな
ることができない。

2  前項の規定にかかわらず、教育公務員で政令で定める者は、非常勤の理事又
は監事となることができる。


(役員の解任)

第十七条  文部科学大臣又は学長は、それぞれその任命に係る役員が前条の規
定により役員になることができない者に該当するに至ったときは、その役員を解
任しなければならない。

2  文部科学大臣又は学長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号のいずれ
かに該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任
することができる。

 一  心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認められるとき。

 二  職務上の義務違反があるとき。


3  前項に規定するもののほか、文部科学大臣又は学長は、それぞれその任命に
係る役員(監事を除く。)の職務の執行が適当でないため当該国立大学法人の業
務の実績が悪化した場合であって、その役員に引き続き当該職務を行わせること
が適当でないと認めるときは、その役員を解任することができる。


4  前二項の規定により文部科学大臣が行う学長の解任は、当該国立大学法人の
学長選考会議の申出により行うものとする。


5  学長は、第一項から第三項までの規定により理事を解任したときは、遅滞な
く、文部科学大臣に届け出るとともに、これを公表しなければならない。


(役員及び職員の秘密保持義務)

第十八条  国立大学法人の役員及び職員は、職務上知ることのできた秘密を漏
らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

(役員及び職員の地位)

第十九条  国立大学法人の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)
その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
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