通信ログ
Subject:「でも、真実はどのように伝えればよいであろうか?」
Date: Sun, 09 Mar 2003

国公立大学通信 2003.03.09(日)

--[kd 03-03-09 目次]--------------------------------------------
[1] 市大の存続・発展を求める声明 2003.3.8
[2]『3月27日 教育基本法と国立大学の法人化を考える集い』
[3] 教育学関連学会会長有志:教育基本法の見直しに対する要望2003.3.4
[4] 日本科学者会議の国立大学法人法案に対する見解 2003.3.7
[5] 随清遠「「借金漬け体質」に関する苦悶と検討――より美しい市大のために」
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各位

国立大学の独立行政法人化政策に3度(1999.8.10,2000.5.19,2001.5.26)警
告を発してきた日本科学者会議が、国立大学法人法案についての声明[4]にお
いて「大学からの抵抗を避けるためにほとんど秘密裏に構想・設計されたもの
で、短期間での国会審議で強行に実現させようとする政治的スケジュールは、
日本の学問・研究を行政が支配する暴挙に他ならない。」と指摘しています。
法人化政策自身が行政による教育への大規模な「不当な支配」となっています。

教育学関連学会会長有志25名の声明[3]は、「教育基本法の見直し」を、内
容的にも、検討過程の杜撰さについても、根本から批判し、「教育振興基本計
画」が教育の「不当な支配」となることも指摘しています。国立大学の法人化
は教育振興基本計画の柱の一つともなっていますので、国立大学法人化が政府
による教育の「不当な支配」であるという認識が教育学研究者コミュニティに
より認識されはじめていると言ってよいと思います。3月27日に開催される
集会[2]は、国立大学法人化が教育基本法見直し政策の一環であることが広く
認識される契機となるに違いありません。

横浜市立大学についての行革的視点に偏った「大学改革」も、教育基本法が禁
じる「不当な支配」の典型ですが、学術的価値観に裏づけられた力強い異議申
し立てが、学内外に賛同の輪を広げつつあるようです。昨日の集会声明[1] へ
の賛同署名運動が第一次締切を3月22日として開始されました。

横浜市大の随氏の悲痛な言葉「ある患者は、出血多量のところが腎臓であるに
もかかわらず、それをほとんど不問のまま、いたって健全な心臓を摘出しよう
とされている。・・・でも、真実はどのように伝えればよいであろうか?」
[5]は、日本の大学関係者全員の思いを代弁していると言っても過言ではない
と思います。おそらくは、「構造改革」についての99%の日本の人々の思い
を代弁しているのかも知れません。しかし、伝えることを諦めなければ真実は
必ずつたわると信じます。それが真実の特徴なのですから。      (編集人)


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[1] 市大の存続・発展を求める声明 2003.3.8
http://www2.big.or.jp/~yabuki/doc03/seimei38.htm
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                       市大の存続・発展を求める声明

                                                    2003年3月8日

                      市大を考える市民の会第2回シンポジウム参加者一同

 去る2月27日に「市立大学の今後のあり方懇談会」の答申が中田市長に提出
されました。

 答申は、横浜市立大学は「公立大学としては標準かそれ以上の実績をあげてき
た」と評価しながらも、膨大な「横浜市立大学の累積負債」を抱えているから、
廃校をも選択肢のひとつとして残しつつ、事実上の縮小改編を求めています。し
かし、ここでいう「横浜市立大学の累積負債」とは、その大部分が大学病院建設
や医療設備購入にあてられた市債発行によるものなのであり、これは市民の貴重
な財産となっているものなのです。この答申は、資産を見ないで赤字を論じると
いう誤りを前提としています。

 横浜市立大学の縮小や廃校ということになれば、これまで市民に提供されてき
た先端医療サービスの低下につながります。また、350万人が住む世界的な大
都市、国際港都横浜がその役割を世界に向けて果たすには、文化都市であるとい
うことが何よりの条件です。学術文化の中心である大学を横浜市は発展させるべ
きであり、ましてや、「答申」が選択肢のひとつとして残した廃校案は許されま
せん。

 私たちは、横浜市立大学が、日本国憲法、教育基本法、ユネスコ高等教育世界
宣言の精神にのっとり、自由な精神と高い教養をそなえた実践力ゆたかな人材を
生み出すとともに、人類の未来に益する可能性をもつすべての研究に積極的に取
り組み、横浜市民はもとより世界人類に貢献できる大学となるよう、市民、学生、
教職員の協力による真の改革が行われることを望みます。
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[2]『3月27日 教育基本法と国立大学の法人化を考える集い』
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030309327syuukai.html
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『3月27日 教育基本法と国立大学の法人化を考える集い』を呼びかけます!

「わたしたちは憂慮しています。それどころか、それがやがてもたらすものを真
剣に 恐怖してさえいます。−−政府は、国立大学を「国立大学法人」という名
のいびつな組織に作りかえ、それによって高等教育と学術研究を、狭隘な目先の
効用に委ねてしまう法案を、今国会に提出しようとしています。そこに書き込ま
れているトップダウ ン的な制度のもとでは、大学の自治や学問研究の自由は破
壊され、教授会は意味を失 い、大学は根底から性格を変えられています。文部
科学大臣は、大学の教育研究を規 定する「中期目標・中期計画」の認可する権
限をもち、学長を業績不振などを理由に 解任する力まで持つなど、「規制緩和」
どころか、強力な官僚統制・国家統制が学園 を支配することになるのです。こ
の法案が明らかに未来に禍根を残すものであるの に、また実際に高等教育学術
研究に従事してきた専門家からの批判や警告が相次いで いるにも関わらず、政
府与党はそれらを黙殺して、拙速に成立させようとしていま す。

 かたや、戦後教育の最良の部分を理念的に表現してきた教育基本法にも、いま
手がつけられようとしています。目論まれている改悪案は、上からの「道徳」
教育を押しつけ、「個性化」の名目で教育における階層的差別を肯定するもの
になっていますが、その改悪内容は、国立大学の法人化にも密接に関わってい
ます。そもそも教育基本法の第10条で保証されている「教育への不当な支配」
からの自由は、憲法23条の「学問の自由」に裏づけられた不可侵の権利です
が、国立大学の法人化は、まさにその教育研究の自由を官僚や業界が侵害する
行為だからです。法人化のためにも教育基本法は邪魔になっている、というわ
けです。

 ところで、これまでは教育基本法の問題は、主として初等中等教育の現場から
問い直されてきました。また法人化は、もっぱら高等教育や研究者たちの問題で
あると理解されるきらいがありました。このふたつは、ともすると別のこととし
て考えられ、別々の課題として取り組まれがちでした。しかし、教育基本法の改
悪と国立大学の法人化というふたつの問題は、密接に補完しあいながら、戦後教
育の最良の達成を、あるいは抑圧し、あるいは市場という神に売り渡してしまう
ひとつの悪夢の二局面に他なりません。

 このように初等教育から高等教育にいたるまで、知とその社会的な継承の基礎
条件がまるごと破壊されようとしているいま、わたしたちには、未来の世代のた
めにこれをストップさせる責任があります。わたしたちは、教育基本法の改悪を
危惧する人々、国立大学の法人化に異を唱えてきた大学人、さまざまな職場や生
活のなかから感じ行動してきた市民・労働者、そして何よりもこれまで最初の一
歩、最初の一言を始めることにためらってきた多くの人々と、危機の深刻さにつ
いて思いの丈を交換し、協力して危機に立ち向かっていきたいと考えています。
手始めに、市民や大学人たちの四つの異なったネットワークが手を携えて、標記
のような「教育基本法と国立大学の法人化を考える集い」を呼びかけます。ひと
りひとりの憂慮をそのままにとどめないために、ひとりひとりの良識に力を与え
るために、ぜひ一堂に会しましょう。

日時:3月27日 午後6時−8時半
場所:中央大学駿河台記念館281
(JR御茶ノ水駅、営団地下鉄千代田線新御茶ノ水駅より徒歩2分)
講演

「学問の自由と国立大学法人化について思うこと−ミミズ博士の憂い」
 中村方子(中央大学名誉教授)

「教育基本法改悪と国立大学法人法の意味」
小森陽一(東京大学教授)

「国立大学法人法案とは何であるのか」
小沢弘明(千葉大学教授)

呼びかけ:
大学改革を考えるアピールの会
独立行政法人反対首都圏ネットワーク
国立大学独法化阻止全国ネットワーク
「子どもたちを大切に−いまこそ生かそう教育基本法」全国ネットワーク
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[3]教育学関連学会会長有志:教育基本法の見直しに対する要望2003.3.4
http://ac-net.org/dgh/03/334-kkh.html
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教育基本法の見直しに対する要望

教育学関連学会会長有志

2003年3月4日

文部科学大臣遠山敦子 殿
中央教育審議会会長鳥居泰彦 殿

教育学関連学会会長有志(アイウエオ順、2003年3月3日現在)
奥田 和弘(日本キリスト教教育学会会長、聖和大学教授)
小澤 周三(日本産業教育学会理事長、東京外国語大学名誉教授)
小島 弘道(日本教育経営学会会長、筑波大学教授)
神辺 靖光(全国地方教育史学会会長)
絹川 正吉(大学教育学会会長、国際基督教大学学長)
桑原 敏明(日本教育制度学会会長、昭和女子大学教授)
榊  達雄(日本教育行政学会会長、名古屋大学教授)
柴田 義松(日本教育方法学会代表理事、東京大学名誉教授)
島田 修一(日本社会教育学会会長、中央大学教授)
清水 貞夫(特別なニーズ教育とインテグレーション学会会長、
宮城教育大学教授)
竹内登規夫(日本進路指導学会会長、愛知教育大学教授)
津守  眞(日本保育学会会長、お茶の水女子大学名誉教授)
寺崎 昌男(日本教育学会会長、桜美林大学教授)
延岡  繁(日本国際教育学会会長、中部大学教授)
原  聡介(フランス教育学会会長 目白大学教授)
藤井 敏彦(日本ペスタロッチー・フレーベル学会会長、
広島大学名誉教授)
藤田 英典(日本教育社会学会会長 東京大学教授)
藤田 昌士(日本生活指導学会代表理事、帝京平成大学教授)
逸見 勝亮(教育史学会事務局長、北海道大学教授)
堀尾 輝久(日本教育法学会会長 中央大学教授)
嶺井 正也(日本教育政策学会会長、専修大学教授)
三浦 軍三(日本公民教育学会会長、東京学芸大学教授)
三輪 定宣(日本教師教育学会会長、千葉大学教授)
吉野 公喜(日本特殊教育学会会長、高知女子大学学長)
米田 伸次(日本国際理解教育学会会長、帝塚山学院大学教授)
                        以上25名


		教育基本法の見直しに対する要望


 教育学関連学会は教育に関する研究者の立場から中央教育審議会(中教審)の
教育基本法見直し論議に強い関心をもち、昨年秋以降、15学会の代表が出席す
る会議を重ね11月14日の中教審「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育
振興基本計画の在り方について(中間報告)」発表後の12月7日には、共同公
開シンポジウム「教育基本法改正問題を考える−−中教審『中間報告』の検討」
を開催しました。また、この問題に対する関連学会の態度表明についても協議し
てきました。これらの経過を踏まえ、教育学関連学会会長の名においてここに本
要望書を提出いたします。


要  望

 教育基本法は、第二次世界大戦と日本の敗戦という未曾有の惨禍のなかから、
その反省に基づき制定されたものであり、地球時代にふさわしい人類普遍的理念
を規定し、戦後の教育や社会の発展の大きな礎となりました。それは、時代や社
会の変化を理由に、安易に改正されてはならず、これからの教育に生かすことが
求められます。

 中教審の教育基本法見直し論議については、例えば、つぎのような幾多の疑問
点、問題点が指摘されますので、審議の中止を含め、慎重に審議されるよう要望
いたします.

1.国民的合意の欠如

 今日、多数の国民が、教育基本法を支持しており、中教審のその見直し動向に
は強い危機感を抱き、多くの反対声明等も発表されています。教育基本法改正の
コンセンサス(国民的合意)は成立していないと判断されます。

2.審議手続きの不備

(1)教育基本法は、憲法と一体的に制定されており、憲法と切り離し、その精神
と遊離した改正は、それとの整合性を損ない、教育基本法を変質させるおそれが
あります。

(2)教育基本法見直し論議は、首相のたんなる私的諮問機関である教育改革国民
会議や中教審の基本問題部会を中心にすすめられていますが、それでは公正、民
主的で幅広い審議を期待することは困難です。

3.審議の低調さや偏り

(1)中教審の教育基本法見直しの審議は、基本問題部会の出席状況に示されるよ
うに、問題の重要性に照らし、きわめて低調、不十分といわざるをえません。

(2)中間報告に掲げる教育基本法の見直しの理由は、特定の立場の意見が目立ち、
教育基本法を評価する意見、その意義や役割に関する専門的知見や学術研究の成
果が十分に生かされていません。

4.審議内容への疑問や懸念

(1)今日の教育の危機や困難な諸問題が、教育基本法の改正によって解決できる
のか、その根拠や見通しは定かではありません。むしろ、教育基本法第10条が
禁止する教育の「不当な支配」が強まるなど、教育のいっそうの危機や困難が懸
念されます。
 政府は、学級規模の改善、教育予算の増額など、実効の期待できる教育条件整
備の施策を着実にすすめるべきです。

(2)法律に新たに、「たくましい日本人」「国を愛する心」などの教育目的を規
定することは、国民の思想・信条の自由を侵害することになりかねず、憲法違反
のおそれがあります。

(3)教育基本法は、21世紀に通用する人類普遍的な教育理念・原則を規定して
おり、新しい時代や社会の変化には、それを基礎とする新しい法令の制定等によ
り十分に対応できるものと考えられます。

(4)中間報告の教育振興基本計画は、教育目的を詳細に記述するなど、教育の
「不当な支配」となることが懸念されます。                
                               以上
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[4]日本科学者会議の国立大学法人法案に対する見解2003.3.7
http://www.jsa.gr.jp/03statement/030307kenkai.htm
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			日本の高等教育を破壊する
		国立大学法人法案の撤回を求める

		−国立大学法人法案に対する見解−

		2003年3月7日    日本科学者会議

 2月28日、政府は国立大学法人化関連6法案を閣議決定し、国会に上程した。
今年2月10日の国立大学長会議において、遠山文部科学大臣は、「国際的な競争
の中で、国立大学の持つ能力を最大限に発揮し、国民の期待に応える国立大学と
して発展していくための手段であり、方法である」と国立大学法人法案の趣旨を
説明しているが、その本質は、国立大学に対する国の財政責任を放棄しながら、
高等教育に対する政府の直接的コントロールを現行よりもさらに強めるものであ
る。

大学を「知の企業体」に

 国立大学法人法案は、これまで国立大学がつくりあげてきた教育・研究の蓄積
とその方法を全面的に否定し、国民の共有財産であるべきその知の方法と集積を
国家の科学技術戦略と産業界の要請に直結させ、これを「知の企業体」に大転換
させる極めて重大な内容をもっている。それを可能とするために、自治と自由に
よって社会から相対的に自立した組織である大学を、国家的統制のもとで、産業
界・官界から役員・委員を大学経営の中枢に招き入れ、経営戦略をトップダウン
で遂行する経営体に変質させるものとなっている。

 法案は、「学問の自由」(憲法23条)、教育の「不当な支配」からの自由(教
育基本法10条)を全面的に否定し、学校教育法や教育公務員特例法などによって
定められてきた国立大学の国民全体に対する責務と責任を放棄するものである。
このように大学と社会との関係を大きく転換させる重要な法案にもかかわらず、
その詳細な法制度を大学内部の議論はおろか国民的な議論にかけることをせず短
期間で結論を出すという暴挙をなそうとしている。また、法人化に関する法制度
や財政的仕組みが不明のまま、国立大学は文部科学省によって脅迫的に法人化へ
の準備作業を強いられてきた。

非公務員化などで独立行政法人通則法(以下、通則法)の枠すら超える内容

 国立大学法人法案の内容は、その骨格部分には通則法を準用するとしているば
かりか、教職員の身分を非公務員化するなど通則法を超えてより身分を不安定に
するものである。それは、国立大学独立行政法人化がやむをえない場合には、行
政の「実施機能」を担当する機関を前提に設計されている通則法とは別に、教育
研究の特殊性に配慮する特別立法が必要としていた文部科学省の調査検討会議最
終報告の内容を遥かに逸脱した規定となっている。

 教職員の身分の非公務員化によって、教員は教育公務員特例法の対象外となり、
任免・分限・懲戒・研修などの身分保障の法的根拠を失った。教育公務員は、教
育基本法に定めるところにより「全体の奉仕者」としての職務と責任を有してい
たが、法案は、これを否定するばかりではなく、非公務員化が導入されていない
先行する独立行政法人の職員の身分のありかたに重大な影響を与えることにもな
るだろう。また、これは教育公務員特例法に準拠していた私立大学の教員の地位
にも波及する可能性が大きい。

大学の自治・学問の自由への敵対

 法案では、文部科学大臣は、教育研究の基本方向を定める大学の中期目標を提
示し、その計画を認可事項とし、経営に参加する学外者の任命から学長の任免権
までをも掌握する仕組みをとり、国立大学法人を文部科学大臣直轄下に置くもの
となっている。また、大学業務を監査する学長のお目付け役である監事は文科学
大臣が任命することになっている。

 大学の自治・学問の自由への言及は一切なく、むしろ、「大学自治、部局自治
の名のもとに、社会から閉ざされた、あるいは社会から隔離された存在になりが
ちな面があったことは否定できない」(2月10日の国立大学長会議での遠山文部
科学大臣挨拶)と、大学の自治への敵意を込めている。大学の自治と学問の自由
を弱体化させそれを支える教職員の身分を不安定にすることは、広くは、人類の
平和・福祉・教育・安全・環境などに大きな影響を及ぼし、政府や社会への批判
的機能を衰退させ、日本全体の自由と民主主義の理念的モデルを喪失させること
になる。

学長権限の強大化と教育・研究の自立性の制限

 法案は、学長を法人の長とし、理事や経営協議会など大学経営の中枢機関メン
バーの指名権・任免権をもち、かつ、役員会、経営協議会、教育研究評議会のす
べてを主宰するという、私立学校法にもみられない強大な権限を学長に与える。
学長選考においても学内構成員の参画が大幅に制限され、学長選考会議に学長を
加えることができるとすらされている。

 役員会が、中期目標の原案作成、予算や大学の組織改廃という大学全体に関わ
る重要な事項の最高審議機関として位置けられ、その下に、二分の一以上を学外
者が占める経営協議会が置かれ大学経営を審議する。教育研究評議会は研究や教
育に関する重要事項を審議するが、経営協議会に従属する形とされ、教育・研究
に関わる自律性は大幅に制限される構造となっている。また、法案には教授会に
ついての規定・位置づけがなく、教授会の弱体化が意図されている。


国家的観点からの評価とその結果による予算査定

 大学運営の成果は、国家的観点・基準によって何重にも外部から評価され、そ
の結果に基づいて次期中期目標期間中の運営資金が査定されるシステムが前提に
され、国家的観点・基準に沿う成果のあげられないところや自前で資金調達ので
きない大学法人は、運営資金を減額されたり、縮小・統廃合などを迫られること
になる。すなわち、文部科学省は、学長任命−中期目標の提示−評価−学長解任
の仕組みによって、研究や学問の自律的論理とは関係なく大学経営を直接的に支
配できるシステムとなっている。

 国は大学設置者から外れ、国立大学の財政に関する責任も放棄する内容となっ
ている。国はこれまでの水準に達しない運営資金を交付するが、不足分は各大学
法人の責任において外部資金の導入なり、自己収入の拡大でこれを補填しながら、
評価される目標の達成を図らねばならない。したがって、各大学法人は常に経営
の合理化を迫られ、採算に合わない部門を縮小・切り捨てをするか、外部資金導
入の可能な部門の拡充をはかるようになる。また、文部科学省は、経営について
の窓口指導を一層強化して大学支配を強めることができる。学長に権限を集中さ
せるトップダウンの管理運営システムは、こうした経営優先の仕組を作り上げる
ことにある。


異常な法案の即時撤回を

 以上のように、示されている国立大学法人法案は、日本社会から自由と自治を
根絶やしにし、教育と研究を国家戦略従属と競争原理に投げ込もうとするもので
ある。しかも、大学からの抵抗を避けるためにほとんど秘密裏に構想・設計され
たもので、短期間での国会審議で強行に実現させようとする政治的スケジュール
は、日本の学問・研究を行政が支配する暴挙に他ならない。

 国立大学から学問の自由、大学の自治を奪う、このような統制と誘導による大
学支配の手法がより財政基盤の脆弱な公立大学、私立大学に波及することは必至
であり、日本の高等教育のみならず、これを頂点とする学問・教育全体の破壊に
つながるものと言わざるを得ない。

 このような不当な内容をもち、政治主義的な手法によって法制化しようとする
法案の即時撤回を強く要求する。
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[5]随清遠「「借金漬け体質」に関する苦悶と検討――より美しい市大のために」
2003.2.27http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~zuiz/sha00.htm
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http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~zuiz/shazz.htm

     結びにかえて:より美しい市大のために

     美しい市大は、一人の教員だけでなく、
     真に市大のことを愛する人たちの共同努力
     によって初めて実現されるものであろう。
     数年前に、大学付属病院で患者取り違い
     という痛ましい事故があった。
     今の大学経営では、同じぐらい深刻な問題が
     発生しようとしている。
     ある患者は、出血多量のところが腎臓である
     にもかかわらず、それをほとんど不問のまま、
     いたって健全な心臓を摘出しようとされている。

     あり方懇談会は来週木曜日に最終結論を
     まとめる予定である。

     でも、真実はどのように伝えればよいであろうか?
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